9 / 11
第9話 救世主とは、
しおりを挟む
「…………なるほど」
友達として、ね。あくまで。
よくわかっていなかったけれども、一応の返事はしておいた。
一瞬誤解しかけたものの、義経が淡々とした様子だったのでそういう意味じゃないんだとはっきりとわかった。
そして続く言葉で確信した。
「向日葵はわしのことが好きだ。おいのことが好きだ。わしら幼馴染がみんな好きなのじゃ。だから、わしらがみんな縁を切ってしまった氷雨と、まだ縁を切れずにいる」
氷雨は、中学に上がってから変わってしまった。
立場が氷雨を変えた。
氷雨は僕が知る限り、一番の美人だった。親も会社の社長で社会的地位も高く、付き合う人間は選びなさいと言うような親だった。
そんな彼女は中学で荼毘という女の子に知り合った。
荼毘は政治家の娘で、社長である氷雨の父親と懇意にしている。その関係もあり、氷雨は荼毘との仲を深めていった。
そして攻撃的な性格になっていった。
元々プライドの高くて純粋な奴だったけど、荼毘と付き合うにつれて人の悪口を言ったり、平気で人を傷つけるようになった。
挙句の果てには、僕たちに荼毘のグループにいるように強要してきた。
大人の目からすると、あるいは客観的に見ると、僕と氷雨の決別のきっかけは本当に些細で、馬鹿馬鹿しく、程度の低いものだ。
僕がSNSのコミュニティグループに入るのを断ったのだ。
『LAME』という名前のSNSアプリの、荼毘が作ったコミュニティグループ「ダビンチファミリー」。そこに所属しろ、と氷雨から招待が来て、僕はそれを断った。
そしてはっきりと「僕は荼毘が嫌いだ。だから、氷雨も縁を切れ」と言った。
ただそれだけ。
ただそれだけのことだ。
その日から一気に氷雨と僕の間には心の距離が生まれ、「ダビンチファミリー」に入ってしまった向日葵はいじめられるようになった。
「向日葵は理由があって氷雨と距離を取ることができない。それは未練じゃ。向日葵は我々幼馴染四人の関係性を絶対のものと考え、それを崩したくないからこそあの扱いを甘んじて受けている。例えそのことに氷雨が気づくことないとしても。その優しさを向けている相手から気持ち悪いと思われていたとしても、向日葵はその理想を抱いて、いつかまたわしら幼馴染四人がまた楽しく遊べる日を夢見ているのじゃ。そんな中に氷雨と同じように向日葵の気も知らんおいが突っ込んでいっても、向日葵の心を救うことはできんだろう。下手をすれば向日葵は懲りずにまた氷雨に接近し、懲りた氷雨がいじめを陰湿なものへと変更し、攻撃を続けると言うことも考えられる。おいの間違った行動が向日葵を更に追い込むと言うことも考えられる」
「なら、どうしろっていうんだよ?」
助けに行かなければ後悔する。助けに行っても向日葵の気持ちは救えない。
じゃあ、僕に一体どうしろと言うんだよ……!
「悲しいな。おい、正解なんて何もないんじゃ……」
「義経?」
「この世界にはそんなもので溢れかえっておる。そうは思わんか、おいよ。正しい行動をしても、結果的にそれが正しくなるとは限らない。もしかしたら事態が更に悪くなるかもしれない。絶対的な正義がないように、絶対的な悪もない。だから、悪を成敗して終わると言うことができん。ずっとその問題の解決のためにずっと付き合っていかねばならなん。もしかしたら、〝問題〟には〝解決〟というものがないのかもしれん。〝問題〟とは誰かが悪いから起きたモノではなく、自然と発生してしまうもので、それを片付けるにはまた自然の力が必要で、人間にはどうすることもできんのかもしれん。人間は所詮、自然のなすがままに、川に流される木の葉のようにゆらりゆらりと流されるだけなのかもしれん。いや、そうなのだ」
義経は断言した。
「僕には結局、向日葵を救えないからここで黙って見てろって? 向日葵のことをずっと放っておけって言いたいのか?」
「わしはそうした」
義経の言うことは、正論だ。
義経は正しいのだろう。
「———だけど、僕はその正しいことをして後悔した人間だ。そうやって見ていることだけじゃなにも変えられない。なら、例えそれが悪い事でも僕は行動したい」
僕の言葉を聞いた義経は「クァクァ」と吹きだすように笑った。
「ならば行け」
「……? 僕を止めたかったんじゃないのか?」
「何を勘違いしておる? 言ったじゃろう。〝考えろ〟とわしはおいに少し考えて欲しかっただけじゃ。向日葵の気持ちと氷雨の現状とこの世界のままならなさを———。じゃから問うたのじゃ、おいは〝人間〟なのか〝神〟なのか、と」
「だから———人間か? 神か? っていう問いかけをしてるの?」
やっぱりわからない。
義経の言うことは難しくて、理解に時間がかかる。
「ああ、人間では人を救うことはできん。人を上から導く神でなければ救うことはできん。人に寄り添う人では、そいつの理想を叶えてやれんのだ」
———なんとなく分かった気がする。
いじめられている向日葵を救うには寄り添うだけじゃダメなんだ。
導かなけばいけない。
例え、それが傲慢な行動だとしても。
導かずに寄り添うだけでは、またその人は迷ってしまうから。
「おいにはそれができる。わしを救った神であるおいにはな」
「神のつもりなんてないけれども……わかったよ。決めたから。後悔しないって。僕は迷わない。僕は迷わずにためらわずに向日葵を救う」
心の奥底で、自分には救えないかもという不安が沸き上がったが、それを無理やり消す。
躊躇ってもどうにもならない。
義経の時のように、救えたのか救えていないのか、ずっと引きずるような気持ちを持っていてもどうにもならない。
自分なりのやり方で、自分が正しいというやり方じゃなければ、何も変わらないし向日葵の心も救うことができない。
何があっても意志を貫け、と義経はそう言いたいのだ。
「わかったよ。義経……って結局、最初とやることは全く変わっていないんだけど……この呼び止められた時間は何だったの?」
「だから、考えろ、と———、」
「ああ、わかったよ……わかった。僕の気持ちを改めて整理するための時間だったのね。わかったよ。ありがとう、義経」
僕があの荼毘たちのグループに介入し、向日葵が救われるのかどうかというのはわからない。やることは義経が話しかける前と何も変わらない。
だけど、義経と話すことで少し自信が持てた。
向日葵に全力の気持ちをぶつければ、少しはいい結果になるような気がした。
氷雨にも。
「おいよ———」
義経を残して屋上から出ようとした時、彼女に話しかけられた。
「何? 義経?」
階段に続くさび付いたドアノブに手をかける。隣には最近できたんであろう車いす利用者用エレベーターがあり、それと比較すると更に古臭く感じる。ガチャンと捻るだけでも大きな音をドアノブは立てた。
「———おいよ。今のお前さんになら、なんでもできる。人の心を救うことすらできる。だから迷うなよ」
「できるかな? 自信は……そうだね。持たなきゃダメだよね。僕はこれから向日葵を、幼馴染の女の子を救うんだから」
「ああ、一度死んだおいには天使が付いておる。だから、おいはおいの正しいと思ったことをしろ」
「……死んだ、ね」
流石に例えだとわかる。
僕は義経を救った。その時に車に轢かれた。
義経が死の可能性があった事故を僕も共有したのだ。その時に死んでもおかしくはなかった。
もしかしたら、僕はあの時に一度死んだのかもしれない。
だから、死ぬ気でやれ———とそういうことだろう。
そうしたら、天使の祝福があるかのように運も向いてくる。
「おいよ。キリストはな———」
「ん?」
いい加減にお礼を言ってここから立ち去ろうとしたらさらに義経は言葉を続けた。
「一度死んで、〝神〟になったぞ」
「……なっては、なくない?」
あれ? キリスト教ってそんな感じじゃないよな?
キリスト教信者じゃないからよく覚えていないが、確かキリストは一度死んで蘇って……それでも人間だったはずだ……。
「いや、〝神〟になった」
「そう、だったっけ? まぁ、いいや、わかった。じゃあね義経。また明日」
手を振る。
それに対して義経も手を振り、
「————」
と、告げた。
急に突風が吹き、古い扉が吸い寄せられるように閉じて、義経の言葉は聞き取れなかった。
ただ———。
◆
後野三蔵が旅立ち、夜見義経は夕焼けの空を見上げる。
「転生しろ、おいよ。おいよ、おいおいよ」
頬を紅潮させ、歌うように、いとおしそうに〝名〟を呼ぶ。
「わしを救う、世界の主よ———」
夜見義経の影が、夕陽に照らされて屋上のフロアに真っすぐと伸びる。
そして———不可思議な現象が起きた。
まっすぐ彼女の身体から縦に伸びるだけではなく。横に面積を広げていったのだ。
まるで意志を持っているかのようにうようよと蠢き、フロアを這いまわっていく。
やがて、ポッコリと立体的に地面から空へ向かって小さな黒い山が突き出てきた。それは広がる義経の影全体に発生し、ポコンポコンと山ができていく。
それがドンドン空へ向かって伸びていき、形を整えていく。
人一人分の質量になった山は、形をそのまま人へと変質させた。
広がる義経の影から無数に現れた黒い人形。
気が付けば、屋上はその黒い人形に埋め尽くされている。
それらはただ空を見上げていた。
義経と同じようにジッと空を———。
「世界を転生させよ……」
義経はゆっくりと両手を上げ、人差し指をピンと伸ばした。
「~~~~~♪」
指揮者のような動きで両手を振り回す。
鼻歌を歌いながら。
……………………♪
後ろの黒い人形の身体が揺れる。一定のリズムを持って、揺れ続ける。どこか統制されたような動きで。
歌っていた。
義経の鼻歌に呼応して黒い人形も歌っていた。
「タ~~タタタ~タ~タタタ~~~♪」
歌いだす。
ラヴェルのボレロを———。
スペインのセリビアという街で、一人の踊り子が初めて、やがて酒場中の人間を巻き込んで踊った歓喜の調べを———。
友達として、ね。あくまで。
よくわかっていなかったけれども、一応の返事はしておいた。
一瞬誤解しかけたものの、義経が淡々とした様子だったのでそういう意味じゃないんだとはっきりとわかった。
そして続く言葉で確信した。
「向日葵はわしのことが好きだ。おいのことが好きだ。わしら幼馴染がみんな好きなのじゃ。だから、わしらがみんな縁を切ってしまった氷雨と、まだ縁を切れずにいる」
氷雨は、中学に上がってから変わってしまった。
立場が氷雨を変えた。
氷雨は僕が知る限り、一番の美人だった。親も会社の社長で社会的地位も高く、付き合う人間は選びなさいと言うような親だった。
そんな彼女は中学で荼毘という女の子に知り合った。
荼毘は政治家の娘で、社長である氷雨の父親と懇意にしている。その関係もあり、氷雨は荼毘との仲を深めていった。
そして攻撃的な性格になっていった。
元々プライドの高くて純粋な奴だったけど、荼毘と付き合うにつれて人の悪口を言ったり、平気で人を傷つけるようになった。
挙句の果てには、僕たちに荼毘のグループにいるように強要してきた。
大人の目からすると、あるいは客観的に見ると、僕と氷雨の決別のきっかけは本当に些細で、馬鹿馬鹿しく、程度の低いものだ。
僕がSNSのコミュニティグループに入るのを断ったのだ。
『LAME』という名前のSNSアプリの、荼毘が作ったコミュニティグループ「ダビンチファミリー」。そこに所属しろ、と氷雨から招待が来て、僕はそれを断った。
そしてはっきりと「僕は荼毘が嫌いだ。だから、氷雨も縁を切れ」と言った。
ただそれだけ。
ただそれだけのことだ。
その日から一気に氷雨と僕の間には心の距離が生まれ、「ダビンチファミリー」に入ってしまった向日葵はいじめられるようになった。
「向日葵は理由があって氷雨と距離を取ることができない。それは未練じゃ。向日葵は我々幼馴染四人の関係性を絶対のものと考え、それを崩したくないからこそあの扱いを甘んじて受けている。例えそのことに氷雨が気づくことないとしても。その優しさを向けている相手から気持ち悪いと思われていたとしても、向日葵はその理想を抱いて、いつかまたわしら幼馴染四人がまた楽しく遊べる日を夢見ているのじゃ。そんな中に氷雨と同じように向日葵の気も知らんおいが突っ込んでいっても、向日葵の心を救うことはできんだろう。下手をすれば向日葵は懲りずにまた氷雨に接近し、懲りた氷雨がいじめを陰湿なものへと変更し、攻撃を続けると言うことも考えられる。おいの間違った行動が向日葵を更に追い込むと言うことも考えられる」
「なら、どうしろっていうんだよ?」
助けに行かなければ後悔する。助けに行っても向日葵の気持ちは救えない。
じゃあ、僕に一体どうしろと言うんだよ……!
「悲しいな。おい、正解なんて何もないんじゃ……」
「義経?」
「この世界にはそんなもので溢れかえっておる。そうは思わんか、おいよ。正しい行動をしても、結果的にそれが正しくなるとは限らない。もしかしたら事態が更に悪くなるかもしれない。絶対的な正義がないように、絶対的な悪もない。だから、悪を成敗して終わると言うことができん。ずっとその問題の解決のためにずっと付き合っていかねばならなん。もしかしたら、〝問題〟には〝解決〟というものがないのかもしれん。〝問題〟とは誰かが悪いから起きたモノではなく、自然と発生してしまうもので、それを片付けるにはまた自然の力が必要で、人間にはどうすることもできんのかもしれん。人間は所詮、自然のなすがままに、川に流される木の葉のようにゆらりゆらりと流されるだけなのかもしれん。いや、そうなのだ」
義経は断言した。
「僕には結局、向日葵を救えないからここで黙って見てろって? 向日葵のことをずっと放っておけって言いたいのか?」
「わしはそうした」
義経の言うことは、正論だ。
義経は正しいのだろう。
「———だけど、僕はその正しいことをして後悔した人間だ。そうやって見ていることだけじゃなにも変えられない。なら、例えそれが悪い事でも僕は行動したい」
僕の言葉を聞いた義経は「クァクァ」と吹きだすように笑った。
「ならば行け」
「……? 僕を止めたかったんじゃないのか?」
「何を勘違いしておる? 言ったじゃろう。〝考えろ〟とわしはおいに少し考えて欲しかっただけじゃ。向日葵の気持ちと氷雨の現状とこの世界のままならなさを———。じゃから問うたのじゃ、おいは〝人間〟なのか〝神〟なのか、と」
「だから———人間か? 神か? っていう問いかけをしてるの?」
やっぱりわからない。
義経の言うことは難しくて、理解に時間がかかる。
「ああ、人間では人を救うことはできん。人を上から導く神でなければ救うことはできん。人に寄り添う人では、そいつの理想を叶えてやれんのだ」
———なんとなく分かった気がする。
いじめられている向日葵を救うには寄り添うだけじゃダメなんだ。
導かなけばいけない。
例え、それが傲慢な行動だとしても。
導かずに寄り添うだけでは、またその人は迷ってしまうから。
「おいにはそれができる。わしを救った神であるおいにはな」
「神のつもりなんてないけれども……わかったよ。決めたから。後悔しないって。僕は迷わない。僕は迷わずにためらわずに向日葵を救う」
心の奥底で、自分には救えないかもという不安が沸き上がったが、それを無理やり消す。
躊躇ってもどうにもならない。
義経の時のように、救えたのか救えていないのか、ずっと引きずるような気持ちを持っていてもどうにもならない。
自分なりのやり方で、自分が正しいというやり方じゃなければ、何も変わらないし向日葵の心も救うことができない。
何があっても意志を貫け、と義経はそう言いたいのだ。
「わかったよ。義経……って結局、最初とやることは全く変わっていないんだけど……この呼び止められた時間は何だったの?」
「だから、考えろ、と———、」
「ああ、わかったよ……わかった。僕の気持ちを改めて整理するための時間だったのね。わかったよ。ありがとう、義経」
僕があの荼毘たちのグループに介入し、向日葵が救われるのかどうかというのはわからない。やることは義経が話しかける前と何も変わらない。
だけど、義経と話すことで少し自信が持てた。
向日葵に全力の気持ちをぶつければ、少しはいい結果になるような気がした。
氷雨にも。
「おいよ———」
義経を残して屋上から出ようとした時、彼女に話しかけられた。
「何? 義経?」
階段に続くさび付いたドアノブに手をかける。隣には最近できたんであろう車いす利用者用エレベーターがあり、それと比較すると更に古臭く感じる。ガチャンと捻るだけでも大きな音をドアノブは立てた。
「———おいよ。今のお前さんになら、なんでもできる。人の心を救うことすらできる。だから迷うなよ」
「できるかな? 自信は……そうだね。持たなきゃダメだよね。僕はこれから向日葵を、幼馴染の女の子を救うんだから」
「ああ、一度死んだおいには天使が付いておる。だから、おいはおいの正しいと思ったことをしろ」
「……死んだ、ね」
流石に例えだとわかる。
僕は義経を救った。その時に車に轢かれた。
義経が死の可能性があった事故を僕も共有したのだ。その時に死んでもおかしくはなかった。
もしかしたら、僕はあの時に一度死んだのかもしれない。
だから、死ぬ気でやれ———とそういうことだろう。
そうしたら、天使の祝福があるかのように運も向いてくる。
「おいよ。キリストはな———」
「ん?」
いい加減にお礼を言ってここから立ち去ろうとしたらさらに義経は言葉を続けた。
「一度死んで、〝神〟になったぞ」
「……なっては、なくない?」
あれ? キリスト教ってそんな感じじゃないよな?
キリスト教信者じゃないからよく覚えていないが、確かキリストは一度死んで蘇って……それでも人間だったはずだ……。
「いや、〝神〟になった」
「そう、だったっけ? まぁ、いいや、わかった。じゃあね義経。また明日」
手を振る。
それに対して義経も手を振り、
「————」
と、告げた。
急に突風が吹き、古い扉が吸い寄せられるように閉じて、義経の言葉は聞き取れなかった。
ただ———。
◆
後野三蔵が旅立ち、夜見義経は夕焼けの空を見上げる。
「転生しろ、おいよ。おいよ、おいおいよ」
頬を紅潮させ、歌うように、いとおしそうに〝名〟を呼ぶ。
「わしを救う、世界の主よ———」
夜見義経の影が、夕陽に照らされて屋上のフロアに真っすぐと伸びる。
そして———不可思議な現象が起きた。
まっすぐ彼女の身体から縦に伸びるだけではなく。横に面積を広げていったのだ。
まるで意志を持っているかのようにうようよと蠢き、フロアを這いまわっていく。
やがて、ポッコリと立体的に地面から空へ向かって小さな黒い山が突き出てきた。それは広がる義経の影全体に発生し、ポコンポコンと山ができていく。
それがドンドン空へ向かって伸びていき、形を整えていく。
人一人分の質量になった山は、形をそのまま人へと変質させた。
広がる義経の影から無数に現れた黒い人形。
気が付けば、屋上はその黒い人形に埋め尽くされている。
それらはただ空を見上げていた。
義経と同じようにジッと空を———。
「世界を転生させよ……」
義経はゆっくりと両手を上げ、人差し指をピンと伸ばした。
「~~~~~♪」
指揮者のような動きで両手を振り回す。
鼻歌を歌いながら。
……………………♪
後ろの黒い人形の身体が揺れる。一定のリズムを持って、揺れ続ける。どこか統制されたような動きで。
歌っていた。
義経の鼻歌に呼応して黒い人形も歌っていた。
「タ~~タタタ~タ~タタタ~~~♪」
歌いだす。
ラヴェルのボレロを———。
スペインのセリビアという街で、一人の踊り子が初めて、やがて酒場中の人間を巻き込んで踊った歓喜の調べを———。
0
あなたにおすすめの小説
悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業
ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。
ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。
タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。
しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。
ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。
激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。
異世界転生おじさんは最強とハーレムを極める
自ら
ファンタジー
定年を半年後に控えた凡庸なサラリーマン、佐藤健一(50歳)は、不慮の交通事故で人生を終える。目覚めた先で出会ったのは、自分の魂をトラックの前に落としたというミスをした女神リナリア。
その「お詫び」として、健一は剣と魔法の異世界へと30代後半の肉体で転生することになる。チート能力の選択を迫られ、彼はあらゆる経験から無限に成長できる**【無限成長(アンリミテッド・グロース)】**を選び取る。
異世界で早速遭遇したゴブリンを一撃で倒し、チート能力を実感した健一は、くたびれた人生を捨て、最強のセカンドライフを謳歌することを決意する。
定年間際のおじさんが、女神の気まぐれチートで異世界最強への道を歩み始める、転生ファンタジーの開幕。
猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る
マーラッシュ
ファンタジー
旧題:狙って勇者パーティーを追放されて猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣だった。そして人間を拾ったら・・・
何かを拾う度にトラブルに巻き込まれるけど、結果成り上がってしまう。
異世界転生者のユートは、バルトフェル帝国の山奥に一人で住んでいた。
ある日、盗賊に襲われている公爵令嬢を助けたことによって、勇者パーティーに推薦されることになる。
断ると角が立つと思い仕方なしに引き受けるが、このパーティーが最悪だった。
勇者ギアベルは皇帝の息子でやりたい放題。活躍すれば咎められ、上手く行かなければユートのせいにされ、パーティーに入った初日から後悔するのだった。そして他の仲間達は全て女性で、ギアベルに絶対服従していたため、味方は誰もいない。
ユートはすぐにでもパーティーを抜けるため、情報屋に金を払い噂を流すことにした。
勇者パーティーはユートがいなければ何も出来ない集団だという内容でだ。
プライドが高いギアベルは、噂を聞いてすぐに「貴様のような役立たずは勇者パーティーには必要ない!」と公衆の面前で追放してくれた。
しかし晴れて自由の身になったが、一つだけ誤算があった。
それはギアベルの怒りを買いすぎたせいで、帝国を追放されてしまったのだ。
そしてユートは荷物を取りに行くため自宅に戻ると、そこには腹をすかした猫が、道端には怪我をした犬が、さらに船の中には女の子が倒れていたが、それぞれの正体はとんでもないものであった。
これは自重できない異世界転生者が色々なものを拾った結果、トラブルに巻き込まれ解決していき成り上がり、幸せな異世界ライフを満喫する物語である。
異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。
もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。
異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。
ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。
残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、
同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、
追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、
清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
MP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
没落ルートの悪役貴族に転生した俺が【鑑定】と【人心掌握】のWスキルで順風満帆な勝ち組ハーレムルートを歩むまで
六志麻あさ
ファンタジー
才能Sランクの逸材たちよ、俺のもとに集え――。
乙女ゲーム『花乙女の誓約』の悪役令息ディオンに転生した俺。
ゲーム内では必ず没落する運命のディオンだが、俺はゲーム知識に加え二つのスキル【鑑定】と【人心掌握】を駆使して領地改革に乗り出す。
有能な人材を発掘・登用し、ヒロインたちとの絆を深めてハーレムを築きつつ領主としても有能ムーブを連発して、領地をみるみる発展させていく。
前世ではロクな思い出がない俺だけど、これからは全てが報われる勝ち組人生が待っている――。
おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう
お餅ミトコンドリア
ファンタジー
パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。
だが、全くの無名。
彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。
若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。
弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。
独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。
が、ある日。
「お久しぶりです、師匠!」
絶世の美少女が家を訪れた。
彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。
「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」
精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。
「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」
これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。
(※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。
もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです!
何卒宜しくお願いいたします!)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる