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ようこそアンフェルサーカス団へ
第43話 違和感の正体
しおりを挟む「テスカとコアのことですか? 」
「ああそうだ。あの二人は幼い頃に親を事故で亡くしてしまってね」
「事故? 」
あれ? 僕はクロエの話の違和感に気が付いた。
「そうだ、あれは不幸な事故だった。いや事件と言っても良いのかもしれないな」
そう言って視線を下に落とすクロエ。
「彼らの両親は真面目で子どもたちから人気もある教師だった。しかし彼らは夜がなければこの世界は崩壊してしまうという思想を持っていたんだ」
この世界は元々夜がない。
それにも関わらず夜を望む人間は変わり者扱いされていた。
「じゃあ……」
クロエはコクリと頷いた。
「それを良く思わない奴らに殺されたんだ」
殺された? まさか……と僕はつばを飲む。
「しばらくはコアとテスカの足取りは掴めないままだったんだ。しかしある日、衰弱しきった二人を見つけて、このサーカス団に迎え入れることに成功した」
「……」
「私は二人のことは自分の子どものように愛している。もうあんな貧しい暮らしは仕して欲しくないんだ」
もし、コアと話をしていなければ僕はクロエのことを人格者と思い、リオンを預けていただろう。
しかしお風呂場でコアはこう言っていた。
ーー僕たちはね、団長に拾われるまでは捨て子だったんだ。お母さんもお父さんもいなくて、きっと生まれたときに邪魔だからって捨てられた
コアには両親の記憶はない、しかしクロエは彼らの両親のことを知っている。
もちろん幼過ぎてコアに両親の記憶がないということも考えられるだろう。しかし、僕は直感的にそれだけではないのではないかと思っていた。
「すいません、リオンの意志も確認したいのでもう少し時間を下さい」
「ああ、リオンちゃんが幸せになるような選択をしてくれるよう祈ってるよ」
僕はそうしてクロエのテントから出ようとした。
しかしーー。
立ち上がった瞬間にぐらりと視界が歪んだ。
たちまち吐き気が込み上げてきて、思わず僕はその場に倒れ込む。
「何だ……これは」
「ふむ、やっと効いたか」
カツカツとヒールを鳴らして近づいてくるクロエ。
やっと効いた? まさか……あの紅茶に何か仕込まれていた?
「な……何を」
「すまないねノアくん、私はそんなに気が長くないんだ。せっかく見つけた希少種、逃すわけにはいかないよ」
真っ赤なルージュを引いた唇を三日月型に歪ませるクロエ。
「リオン……」
「安心してくれ、あの娘は私が立派なサーカス団員に育ててあげよう。なーに心配しなくていい。私の指導は厳しいが適格だ」
そうしてクロエは指先に小さな炎を灯す。
「筋書きはこんなのどうだ? 罪人、団長を狙ってテントを襲撃するも、失敗して自分が焼死。なんてな」
クスクスと笑う彼女だが、僕は全身が痺れて声が出せない。
「ふふ、少し陳腐過ぎたかも知れないね。まあ、良い。君はここでさよならだ」
そうしてクロエは火を室内に放り投げた。
瞬く間に燃え広がる炎。充満する煙。
クロエは最後に手を僕に向かって振ると、どこかへと姿を消したのだった。
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