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幽霊屋敷の女主人
第49話 誰がお母さん?
しおりを挟む面倒なことになる前にサーカス団を離れた僕たちは、一先ず人気がなさそうな森の中で休息を取ることにした。
薪をくべて火をつけて暖を取る。僕が発生させた雨のせいで体が濡れてしまったので順々に乾かすことになった。
「はー、もう僕足疲れた」
一度死んだとは思えないほど元気な声をあげるコア。
「寒かったね……」
そしてそんな兄を嬉しそうに見るテスカ。
新たな仲間も加わって更にこの旅は賑やかなことになりそうだ。
しかしそんな喜びもつかの間、僕らはとある悩みを抱えていた。
「お金がない……」
自分のカバンを漁って改めて確認する僕だったが、やはりない。
パーティーも5人まで増えて賑やかになったのは良いことなのだが、仕事がない以上お金を稼ぐことが難しかった。
「安心してノア、僕ちょこっとだけ稼ぎ持ってきたから。ただでお世話になる気はさらさらないよ」
さらっととんでもないことを言うコア。そう言うやいなや、懐から取り出した両手いっぱいの金を僕に手渡す。
「お、お兄ちゃん良くないよ……」
「今まではあの女が独り占めして僕らにお金くれなかったんだ。これは正当な稼ぎだろ」
「それはそうかもだけど……」
「もっと持って来ても良かったかな……」
ぽつりと呟くコアは少し悪い顔をしていた。
確かにこのお金があれば数日間は何とかなりそうだ。
だが、子どもからお金を受け取るなんて良いのだろうか……。
「いや、受け取れないよコア。そのお金はいつか二人で遊びに行くときに使いな」
「ええ~~?? でも……」
食い下がるコアを何とかなだめてそのお金を彼の懐に戻す。
「良いの? お金がないのに格好つけちゃって」
一部始終を見ていたソフィアが呆れた様にため息をつく。
「良いよ。一応僕らが保護者なんだからしっかりしなきゃ」
「僕らって……あたしも? 」
当たり前じゃないか、と僕は頷く。
「僕ら二人で彼らの親代わりをしなきゃ」
「そ、そうね」
ん? 何だかソフィアの顔が赤い気がする。
「どうしたソフィア? 熱でもあるのか? 」
「そういう訳じゃないけど……いや、その……なんか、お母さんとお父さんみたいだなーって」
「? 良く分からないけどそういうことになるかもな」
リオンもテスカもコアもまだまだ子どもだし、年齢的にも間違っていないはず。
「えええええ??? 」
更に真っ赤になるソフィア。僕そんなに変なこと言っただろうか?
そしてその様子を見て珍しくテスカが口を挟んだ。
「……私だってお母さんになれます。ソフィアさんじゃなくたって大丈夫です」
「え、でもテスカはまだ子どもだし」
「あら、お子様は無理しなくて良いのよ」
負けじと反論するソフィア。
あれ? もしかしてこの二人仲が悪いのだろうか?
「年齢は関係ありませんよ、それにノアさんは結婚するなら年下が良いですよね? 」
「え、結婚!? 待ってテスカ何の話? 」
「あら、年上の包容力舐めるんじゃないわよ」
ソフィアもテスカも目がまじである。
「リオン、どうしよう。この二人仲が悪いんじゃ……」
ふと隣に張り付いているリオンに耳打ちする。
「え? そうかな? 」
しかし当の彼女はキョトンとした顔でパンをかじっていた。
「女の戦いは怖いんだよ、ノア」
にやにやと笑みを浮かべるコアは心底面白そうであった。
しばらくキョロキョロと皆の様子を見ていたリオンだったが、考え込むように顎に手を当てる。
「でも……」
「でも? 」
「胸は私が一番大きいね」
リオンから突如投下された爆弾発言によって事態は一応静まったのである。
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