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春
第9話 死神の仕事って?
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「退屈じゃの~、相変わらず教会には誰も来ないの」
神父として呼ばれたからには一応神父業もやっているのだが、一度も人が来たことはなかった。
まあそもそもこの町には俺たち含めて六人しかいないのだから来るわけないと言えばそうだ。
解毒、蘇生、解呪、懺悔。などなど。神父は意外にも色んな仕事がある。
「そういえばこの蘇生って死んだ者を甦らせるんだよね? それって死神の仕事奪っちゃうんじゃ……」
ふと思い付いた疑問を口にだすと、いーやとフレイアが首を振った。
「神父が出来る蘇生ってのは死にかけの人間を回復させるってことじゃ。つまり厳密には死んではいない」
「じゃあ完全に魂が抜けた人間は……」
「無理じゃな。ただわしに触れて本来死ぬはずじゃないのに魂を抜かれた人間は例外じゃ」
なるほどな、と俺は納得する。
つまり神父がしてる蘇生はめっちゃ凄い回復魔法ということか。
「それに! べつにわしは無作為に魂を獲り回ってるわけじゃないぞ! 」
「というと? 」
「寿命が来ると人の魂は自然に体から抜ける。これを回収して無事冥府へと送るのがわしの仕事じゃ」
「え、じゃああの馬鹿でっかい鎌は何のために……」
「たまにいるんじゃよ、執着が強すぎて体にしがみつく魂が。この繋がりを完全に断ち切るために使うんじゃ」
へーと俺は素直に感心する。
死神というのもただ怖いだけの存在ではないんだな、と思う。
「わしだってちゃんと仕事してたんだぞ」
えっへんと胸を張るフレイア。
すると何かに気が付いたように空中を睨んだ。
「アレス……これは」
「ああ、何かが町に近付いたな」
何かがフレイアの霧に触れたのを感じる。おそらく一匹。いや? でもこの気配は魔物ではなさそうだ。
「これ、人かもしれん。行くぞアレス! 」
まさかこんな時間に人間が?
そんな困惑はあったものの、俺たちはその何かの元へと向かった。
◇◇◇
「ま、まずいのう」
「まずいな」
町の入り口で引っくり返っていたのは騎士のような格好をした女性。
うつ伏せになっているため顔は分からないが、おそらく若いだろう。
フレイアの霧に触れたせいで魂を抜かれたようだ。
「はよう戻してやれ!! 」
「分かってるって」
目を凝らし、近くに漂っている彼女の魂を見つける。
よし、まだそこまで時間は経っていないようだ。
魂を掴んだ俺は、彼女の体にそれを押し込んだ。
すると、ゴホゴホという咳と共に、その女性は息を吹き返した。
「あ……れ………」
「大丈夫ですか? 」
その人が顔をあげた。
金色のロングヘアーに青い瞳。垂れ目と目元にある黒子が印象的な気品漂う女性だ。
「私は……一体……」
「説明は後でします。一先ず俺たちの教会に運びます」
「うっ……頭が痛いですわ……。そういえば私、何かと遊んでいたような……」
「遊んでいた? 一体どういうことじゃ? 」
「……どういうことでしょう? 」
ちょこんと首をかしげる女性。魂を抜かれたショックで記憶が抜け落ちているのかもしれない。
そのとき、ビリビリとした殺意を感じた。
直感を感じて横に飛ぶ、すると俺のいた場所を鋭い爪が掠めた。
「げ! 魔物か」
この前倒した熊型の魔物。しかもサイズはずっと大きい。
グオオオオ!!! とうなり声をあげて、威嚇してくる。
そしてよく見ると、その女性の体に無数の傷がついていることに気がついた。
「まさかこの人、この魔物にやられて……? 」
「ごちゃごちゃ考えるのは後じゃ! 町に入れるでない、倒すぞ! 」
フレイアが俺に鎌を投げつけた。俺はそれを受け取ると、立ちはだかるように構える。
「まさか仲間を殺しちまったか? そいつは悪いことした」
ブオオオと空気が震えるような咆哮をあげるパンドラ・ベア
肯定か否定か、俺には分からない。
「俺も仕事なんでな、悪く思うなよ!!! 」
そして振り下ろした刃は非情にも対象者を斬り裂いたのであった。
神父として呼ばれたからには一応神父業もやっているのだが、一度も人が来たことはなかった。
まあそもそもこの町には俺たち含めて六人しかいないのだから来るわけないと言えばそうだ。
解毒、蘇生、解呪、懺悔。などなど。神父は意外にも色んな仕事がある。
「そういえばこの蘇生って死んだ者を甦らせるんだよね? それって死神の仕事奪っちゃうんじゃ……」
ふと思い付いた疑問を口にだすと、いーやとフレイアが首を振った。
「神父が出来る蘇生ってのは死にかけの人間を回復させるってことじゃ。つまり厳密には死んではいない」
「じゃあ完全に魂が抜けた人間は……」
「無理じゃな。ただわしに触れて本来死ぬはずじゃないのに魂を抜かれた人間は例外じゃ」
なるほどな、と俺は納得する。
つまり神父がしてる蘇生はめっちゃ凄い回復魔法ということか。
「それに! べつにわしは無作為に魂を獲り回ってるわけじゃないぞ! 」
「というと? 」
「寿命が来ると人の魂は自然に体から抜ける。これを回収して無事冥府へと送るのがわしの仕事じゃ」
「え、じゃああの馬鹿でっかい鎌は何のために……」
「たまにいるんじゃよ、執着が強すぎて体にしがみつく魂が。この繋がりを完全に断ち切るために使うんじゃ」
へーと俺は素直に感心する。
死神というのもただ怖いだけの存在ではないんだな、と思う。
「わしだってちゃんと仕事してたんだぞ」
えっへんと胸を張るフレイア。
すると何かに気が付いたように空中を睨んだ。
「アレス……これは」
「ああ、何かが町に近付いたな」
何かがフレイアの霧に触れたのを感じる。おそらく一匹。いや? でもこの気配は魔物ではなさそうだ。
「これ、人かもしれん。行くぞアレス! 」
まさかこんな時間に人間が?
そんな困惑はあったものの、俺たちはその何かの元へと向かった。
◇◇◇
「ま、まずいのう」
「まずいな」
町の入り口で引っくり返っていたのは騎士のような格好をした女性。
うつ伏せになっているため顔は分からないが、おそらく若いだろう。
フレイアの霧に触れたせいで魂を抜かれたようだ。
「はよう戻してやれ!! 」
「分かってるって」
目を凝らし、近くに漂っている彼女の魂を見つける。
よし、まだそこまで時間は経っていないようだ。
魂を掴んだ俺は、彼女の体にそれを押し込んだ。
すると、ゴホゴホという咳と共に、その女性は息を吹き返した。
「あ……れ………」
「大丈夫ですか? 」
その人が顔をあげた。
金色のロングヘアーに青い瞳。垂れ目と目元にある黒子が印象的な気品漂う女性だ。
「私は……一体……」
「説明は後でします。一先ず俺たちの教会に運びます」
「うっ……頭が痛いですわ……。そういえば私、何かと遊んでいたような……」
「遊んでいた? 一体どういうことじゃ? 」
「……どういうことでしょう? 」
ちょこんと首をかしげる女性。魂を抜かれたショックで記憶が抜け落ちているのかもしれない。
そのとき、ビリビリとした殺意を感じた。
直感を感じて横に飛ぶ、すると俺のいた場所を鋭い爪が掠めた。
「げ! 魔物か」
この前倒した熊型の魔物。しかもサイズはずっと大きい。
グオオオオ!!! とうなり声をあげて、威嚇してくる。
そしてよく見ると、その女性の体に無数の傷がついていることに気がついた。
「まさかこの人、この魔物にやられて……? 」
「ごちゃごちゃ考えるのは後じゃ! 町に入れるでない、倒すぞ! 」
フレイアが俺に鎌を投げつけた。俺はそれを受け取ると、立ちはだかるように構える。
「まさか仲間を殺しちまったか? そいつは悪いことした」
ブオオオと空気が震えるような咆哮をあげるパンドラ・ベア
肯定か否定か、俺には分からない。
「俺も仕事なんでな、悪く思うなよ!!! 」
そして振り下ろした刃は非情にも対象者を斬り裂いたのであった。
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