落ちこぼれ神父、死神と契約して僻地に飛ばされたのでスローライフを送ります

寿司

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第23話 ミシェルの悩み

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 神父業をこなす俺だか未だに教会にそういう目的で来た人はいない。
 まあそもそも町の人々はあまり信仰がなさそうだし、外部から旅人も来ないので当たり前と言えば当たり前なのだけど……。

 それにしても暇だなと俺は欠伸を一つ。すると、トントンと誰かが扉をノックする音がした。

「あのぅ~…… 」

 きたきたきた!! ようやく俺の本職が果たせるってもんよ。

「迷える子羊よ……ってミシェルか」

 神父お決まりの挨拶をしようとした俺だが、すぐにそのノックの主に気がついた。

「すいません」

 何だか申し訳なさそうに頭を下げるミシェル。

「どうした? SMなら俺はパスだぞ」

「あ、今日は違いますわ。それはまた後日お願いしますね」

 後日……。

「それで、今日はどうした? もう夜じゃないか」

「実は……お告げをお願いしたくて来たのですわ」

「お告げ!? 」

 お告げとは、これも神父の仕事の一つである。迷える子羊に道を示すために神の声を聞き、それを伝えるという仕事だ。

 凄い人だと、お告げ一つで国を動かすほどの力を持つ人もいるらしい。

 まあ……俺は聞こえたことがないだけど。あ、死神の声なら毎日のように聞いているか。

「……お願いしますわ」

「分かった、やってみよう」

 内心初めての礼拝者でワクワクする俺。えーっと確かお告げは、意識を空っぽにして耳を澄ませる……。

 …………………………

「アレス!! 怖い夢みた~!!……ってミシェルじゃないか」

 フレイアの声で掻き乱される俺の集中。

「ご機嫌よう、フレイアさん」

「あーもー!! フレイアのせいで集中切れたじゃないか! あと少しで神の声が聞こえそうだったの」

「わし? わしの声なんて普通に聞こえとるではないか」

 そうじゃなくて……。もう駄目だ。

「ふふふ、仲が良いのですわね。すいません、アレスさん。お邪魔しましたわ」

「あ、待ってミシェル! 」

 ガタンと椅子から立ち上がったミシェルを引き留める。

 お告げをお願いしたくて来たということは何らかの悩みがあるということだ。

 それも、神に頼りたくなるほどの。

「何か悩みがあるんじゃないか!? 神のお告げは聞けなかったけど……俺は君の助けになれるかもしれない! 」
  
 ミシェルは一瞬、まるで頭を殴られたような顔をしたが、直ぐにいつものほんわかした笑顔に戻る。 
 
 俺はその僅かなゆらぎを見逃さなかった。

「ふふふ、少しアレスさんとお話したくなっただけですわ」

 それでは、と足早に協会を去るミシェルを見て、俺は何だか不安な気持ちになっていた。

◇◇◇

「……様子が変じゃなかったか? 」

「そうかの? 」

 ミシェルが去った後、フレイアに聞いてみる。しかし彼女は何も気付いてなさそうだ。

「何か……隠してるような」

 フレイアはうーん? と首を捻ると、人間の気持ちはわしには分からん。とだけ言い、再び寝始めてしまった。

 ただ、眠りに落ちる直前、

「そんなに気になるなら……本人に……聞いて……みい」

 と呟いた。

 これはまさしく神のお告げだろう。
 そういえば俺はミシェルのことをあまり知らないな……と思った俺は、彼女を追って走り出したのだった。

 ミシェルのことをもっと知りたい、そして彼女が何を思って俺のところに来たのか、それが知りたくて仕方なかった。
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