悲劇の清純ヒロインやめて神様のしもべになりました。

寿司

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第1話 この世界って…?

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 ある日目が覚めたら、あたしは弟の好きなゲームのキャラクターになっていた。

 ……何言ってるか分かんないよね。うん、あたしも未だにこの状況を受け入れてないもん。でもこれが事実なのだ。

「……ええ? 」

  鏡の前に映っているのは腰まである長い金髪を靡かせ、青い瞳をした美少女。おまけにスタイルも良く、あたしは思わずまじまじと見つめてしまった。

 前世のあたしの名前は小谷 里奈こだに りな。確か高校二年生だったと思う。そりゃあもうごく普通の女子高生だ。頭はあんまり良くないけど友達は結構いたし、イケメンな彼氏もいた。それなりに充実した日々を過ごしていたのだ。

 両親や弟のしょうともそれなりに仲が良く、そりゃたまには喧嘩もするけれど幸せだったと思う。

 それが、こんなことになるなんて……。

 今のあたしの姿は明らかにゲームのキャラクターだ。オタクの弟の影響で、少しだけあたしも知っている。えーとタイトルはなんだっけな……。

「あ! クロノス=レジェンディアだ! 」

 そうそう、そんな名前だった。あたしは思わず声を出してしまう。ジャンルはよくあるRPGで、悪い魔族を勇者である主人公が倒す、というストーリーだ。

 しかしこのゲームが人気な理由はそんなことではない。……とは翔の言葉だ。

 このゲームはかなーり恋愛要素に重きを置いていて、結構エロい描写も多いらしい。魅力的なヒロインたちと恋人になれることが良いんだよ! とキモく語っていた。

 あのときはふーん、と話を流していたけど、その中にはルーナ=クロノティスというキャラクターがいた。

 主人公の幼なじみで、とてつもない魔力を秘めた聖女。グラマラスなスタイルに、あどけない顔立ち。そして主人公に尽くす健気な姿から一番人気のキャラクターらしい。

 ーーしかし、ルーナはシナリオの途中に死んでしまう。

 というのも、神様を復活させるために自分の命と引き換えにし、世界を救う悲劇のヒロインなのだ。

「ん? 」

「あれれ?? 」

 そ、それってまずくないか?

 あたしは思わず目の前の鏡につかみかかる。

「もしあたしがルーナに転生しまったのなら、死んじゃうのでは?? 」

 そんなことを考えていると、ガチャリとドアが開いた。

「おーい、ルーナ。準備でき……」

「変態!!! 」

 何の気なしに入ってきたのは主人公ギル。だがあたしは今着替えの最中だったのか、ほぼ全裸だ。
 乙女の着替えを覗いた罪は重い!! あたしは容赦なしに彼の脇腹に鋭い蹴りをいれたのだ。

 ゴホッ! と嗚咽をあげてギルが崩れ落ちる。
 うわ、思ってたより深く入ってしまったようだ。

「……ノックしないのが悪いんだからね!! 」

 あたしはそう言うと、ギルはまるで幽霊でも見たかのような顔でこちらを見る。

「ル、ルーナか……? 」

「そりゃそうよ。変なこと言うのね」

「で、でもいつもならきゃあ! 見ないで下さい~! とか言いながらしゃがみこむだけなのに……」

「はぁ? あたしはそんな甘くないよ。調子に乗るな! 」

 人の部屋に入るときはノックする!
 これは当たり前でしょ!

 ほら出てけ出てけ、とあたしはギルを廊下に放り出した。

「まあともかく着替えはしなくちゃね」

 何の服にしようかなとあたしはクローゼットを漁る。
 ……うーんどれもこれも地味な色だしデザインもダサい。
 あんまりあたしの趣味に合うようなものはなさそうだ。

「ま、仕方ないか」

 あたしは消去法で白色のワンピースを手に取った。フリルがたくさんついてて動きにくそうだけどこれが一番マシだ。

 そのワンピースを手早く着込むと、鏡台に入っていたヘアゴムで適当にポニーテールを作る。それにしても腰まで髪があるなんて邪魔すぎないか? それにメイク用品もないし鏡台の意味があるのだろうか。

「いやー、お待たせお待たせ」

 適当に準備を終えたあたしは廊下でへばっているギルに声をかけた。

「……やっとかよ。それじゃあ行くぞ」

 ギルは鼻をうちつけたのか、赤くなったそれを擦りながら不満げに声を漏らした。

「へ? どこに? 」

 まるで漫画のようにずっこけるギル。

「今日は闇神を倒すための冒険に出る日だろ! 忘れたのか? 」

「あー、そうだっけ」

 あのなぁ……とため息をつくギル。

「しっかりしてくれよ。何か今日のルーナ変だぞ? 」

「ごめんごめん! じゃあ行こっか」

 とりまあたしは生け贄にならないように立ち回らなければ。と一人計画を練っていたのだった。

 転生したことについては……まあしゃーない。
 


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