悲劇の清純ヒロインやめて神様のしもべになりました。

寿司

文字の大きさ
3 / 23

第3話 大都会(?)に到着

しおりを挟む

「ふふ、お金いっぱーい! 」
 
 モンスターを倒しながら進んでいったあたしたちは何やら大きな町へと出た。ここは一先ず目指すように言われた都会で、偉い王様が住んでいるらしい。

 なんかその王様に挨拶? するのが目標なんだって。さっきギルから聞いた。

 ま、そんなことは置いといて、あたしはお金稼ぎに夢中だった。だってモンスターをしばくだけでお金が手に入るんだよ? これって相当楽じゃない?

 しかも光の矢という魔法は結構強い。私は唱えるだけでモンスターを倒してくれるからかなり効率的だ。
 一応魔力というのが尽きてしまうと魔法は使えなくなるらしいのだが、このルーナというキャラクター、ヒロインなだけあってたくさんの魔力を持っている。ちょっとやそっと使ったぐらいで魔力切れにはならないようである。

 ともあれ、そのお陰で今私の懐は温かくなっていた。

「……ルーナ、変わったな」

 そんなあたしをギルは何だか呆れたように見つめる。

「そう? 」

「昔のお前はモンスターも倒せないような優しいやつだっただろ……どうしたんだよ」

「そんなこと言われてもねえ……お金は欲しいし」

 お金がなければ欲しいものも買えない! 第一あたしはこのダサい服もさっさと買い換えたいし、髪も切りたいのだ。それにメイクだってしたい!

「そうか……」

 ギルは何かを諦めたような顔でふぅとため息をつくとさっさと前を行ってしまった。

「あ、ギル! 」

「しばらく一人にしてくれ。後で宿屋の前で会おう」

「はぁい」

 ま、一人の方が好都合かな。
 あたしは町中を見渡し、これからどうしようかワクワクしていた。
 でも何かギル拗ねてた? あたしが一人でお金稼ぎに夢中だったからだろうか?

◇◇◇

  あたしはさっぱり切られた髪の毛の毛先を弄びながら防具屋を見ていた。

 ギルと別行動になったあたしは早速髪を切ってしまった。だってこのルーナとかいうキャラクター、腰まで髪の毛があるんだもん! 確かにロングの方が好きだけどそれは長すぎだ。

 元の世界にあったお洒落なサロンがないのは不満だが、腕は悪くない。肩にギリギリつくセミロングにして貰ったのだがこのぐらいが一番扱いやすいしアレンジもしやすいだろう。

「次は服だけど……あんまり良いのはないわね」

 今のダサダサワンピースをさっさと着替えたいところだけど重そうな鎧とか、地味なローブとかいまいちなものばかり。

 そもそもファンタジーなこの世界ではファッションを楽しむという分化はないのかもしらない。

「そうそう、忘れてたけどこのペンダントはなんだろう? 」

 バタバタして忘れていたけど、記憶を取り戻したときから首にペンダントがかかっていた。といっても子どもがつけるようなオモチャみたいなもので、なぜあたしはこんなものを着けてたんだっけ?

「お客様、何かお探しですか? 」

 気の良さそうなおっちゃんがこちらに近付いてきた。

「うーん、可愛い服やアクセサリーってありませんか? 」

「か、可愛い? 」

 おっちゃんは面食らったようにあたしの言葉を繰り返す。

「そうそう、女の人でも着れるような服が良いんだけど……」

 これなら元の世界でパーカーとジーンズを組み合わせた方がずっとお洒落だよ……。

「そ、そうですねえ……。この絹のワンピースなんていかがでしょう? 体力のない女性でも着れて動きやすいですよ」

 おっちゃんが出してきたのはきなり色をしたワンピース。可愛さなんて欠片もない。そりゃ武骨な鎧よりはマシだけどさ……。せめてリボンぐらい付けようよ……。

「うーん、あんまり可愛くないなぁ……」

 そんなとき、店の奥にあった服にあたしは目を奪われた。

「あ、あれは? 」

 それは水着のようなデザインをした服だった。しかし豪華な飾りがついており、一際お洒落に見える。おまけに下はベルトがついたキュロットのようなデザインなので動きやすそうだ。

「あれですか?! あれは踊り子が着用するような代物ですよ? 」

「踊り子? ああ、ダンサーのことか。うん、あれで良いや」

 確かに露出度は高いけど今の服よりはずっとマシ。ファンタジー世界って極端なんだよねえ。

「毎度ありがとうございます……」  

「あとこのイヤリング下さい。あ、この憤怒のネックレスも良いな」

 あたしはショーケースに入っていた緑の宝石があしらわれたイヤリングを指差した。
 アクセサリーはどれもこれもお洒落なものばかりだ。
 それに元の世界よりもずっと安い。
 丁度今はスライムを倒してゲットしたたくさんのお金がある。

「うーん、めんどくさいし全部下さい! 」

 あたしがそう言うと、おっちゃんはしばらくそこに立ち尽くしていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

10年前に戻れたら…

かのん
恋愛
10年前にあなたから大切な人を奪った

おばさんは、ひっそり暮らしたい

波間柏
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。 たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。 さて、生きるには働かなければならない。 「仕方がない、ご飯屋にするか」 栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。 「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」 意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。 騎士サイド追加しました。2023/05/23 番外編を不定期ですが始めました。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

どうぞ、おかまいなく

こだま。
恋愛
婚約者が他の女性と付き合っていたのを目撃してしまった。 婚約者が好きだった主人公の話。

君は番じゃ無かったと言われた王宮からの帰り道、本物の番に拾われました

ゆきりん(安室 雪)
恋愛
ココはフラワーテイル王国と言います。確率は少ないけど、番に出会うと匂いで分かると言います。かく言う、私の両親は番だったみたいで、未だに甘い匂いがするって言って、ラブラブです。私もそんな両親みたいになりたいっ!と思っていたのに、私に番宣言した人からは、甘い匂いがしません。しかも、番じゃなかったなんて言い出しました。番婚約破棄?そんなの聞いた事無いわっ!! 打ちひしがれたライムは王宮からの帰り道、本物の番に出会えちゃいます。

この世界、イケメンが迫害されてるってマジ!?〜アホの子による無自覚救済物語〜

具なっしー
恋愛
※この表紙は前世基準。本編では美醜逆転してます。AIです 転生先は──美醜逆転、男女比20:1の世界!? 肌は真っ白、顔のパーツは小さければ小さいほど美しい!? その結果、地球基準の超絶イケメンたちは “醜男(キメオ)” と呼ばれ、迫害されていた。 そんな世界に爆誕したのは、脳みそふわふわアホの子・ミーミ。 前世で「喋らなければ可愛い」と言われ続けた彼女に同情した神様は、 「この子は救済が必要だ…!」と世界一の美少女に転生させてしまった。 「ひきわり納豆顔じゃん!これが美しいの??」 己の欲望のために押せ押せ行動するアホの子が、 結果的にイケメン達を救い、世界を変えていく──! 「すきーー♡結婚してください!私が幸せにしますぅ〜♡♡♡」 でも、気づけば彼らが全方向から迫ってくる逆ハーレム状態に……! アホの子が無自覚に世界を救う、 価値観バグりまくりご都合主義100%ファンタジーラブコメ!

処理中です...