悲劇の清純ヒロインやめて神様のしもべになりました。

寿司

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第18話 聖女はやめました

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「あ、あたし?! 」

 急に名指しされたあたしは思わず飛び退いた。

「そうだ。貴様には回復魔法が使えるはずだ」

「確かにそうだけど、この病を治せるようなものなの? 」

 回復魔法とやらをまだ一回も使ったことがないあたしには何とも言えない。でも混沌なんて名前が付いてる魔法をほいほい他人に使って良いものなのだろうか……。

「これは病などではない。魂の穢れだ」

 ルティは自信ありげに腕を組むと、そう言った。

「魂の穢れ……? 何その急にスピリチュアルな……」

「回復魔法なんて何度も試しました……でも駄目なんです。効かないんです……」

 キールが申し訳なさそうにおずおずと声をあげるが、ルティはにやりと笑った。

「この娘はただの娘ではない。聖女様だぞ」

「聖女……?! 」

 その単語を聞いたとき、キールの顔色が変わった。
 そしてあたしの手を取ると、ずいと顔を近付ける。

「本当に貴女がアレイス様の加護を受けた聖女様なのですか!?  」

「ええ……まあ……」

 と言っても"元"聖女だけどね。とは言えなかった。
 でもキールに接近されて心臓の高鳴りがうるさい。

「聖女様の魔法なら確かに姉さんを治せるかもしれない……お願いします! 姉さんを、いやこの村を救ってください! 」

 深々とお辞儀をするキール。
 どうやらあたしが偽物の聖女だという話はまだ伝わっていないようだ。

「で、でも……」

 あたしはちらりとルティの方を見る。しかし彼は相変わらずからかうような笑みを浮かべて、こう言う。

「見せてやるが良い。貴様の力、そして我の祝福を」

 あー……これもうあたしに選択肢ないですね。
 やるしか、ないか。

 そう決めたあたしは手を組むと詠唱を始める。
 どうしよ、もし魔法が失敗してシャルロッテさんが死んじゃうなんてことになったら……。

 そうしたらあたしたちは犯罪者になってしまうんだろうか。

 いや、そんなことグズグズ考えていても仕方がないな。

混沌回復魔法カオスヒール!」

 その瞬間、寝ているシャルロッテを包み込むように、漆黒の闇が広がる。あまりの禍々しさにとてもじゃないけど回復魔法とは思えない。

「な、ね、姉さん!? 」

 慌てたキールがシャルロッテに近寄るが、シャルロッテの姿は闇のベールに包まれて見えなくなってしまった。

「え、ちょ、ちょっとルティ! これで良いの?! 」

 あたしもそりゃもう大パニック。
 まさかこんなことが起こるなんて思っていなかったのだから。

「ルーナさん! 本当に大丈夫なんですか? 」

 キールがあたしに詰め寄るが、あたしには何とも言えない。

 しかしルティだけはにやりと楽しげに目を細めた。

「そう騒ぐな小物ども。よく見ていろ」

「え……? 」

 ルティの言葉通り、あたしが生んだ闇は徐々に消えていく。そして顕になっていくシャルロッテの体は、綺麗さっぱり人間のものになっていた。

 あの爬虫類のような鱗はどこにもないし、規則正しい呼吸は彼女が生きているということを示していた。

「姉さん!! 」

 キールがシャルロッテに抱き付く。
 すると彼女がうっすらと目を開いた。

「キー……ル? 」

「姉さん!! 姉さん!! 」

 わあわあと抱き合う二人を見て、あたしは思わず腰が抜けてしまった。

「よ、良かった。成功していたのね」

「当たり前だ。我の眷属に失敗など有り得ない」

「凄い自信……でも何であたしの魔法で治ったの? 魂の穢れって何? 」

 ルティは腕を組み直すと、苦々しそうな顔でこう言う。

「愚かなあいつらは我を封じただろう。そのせいで本来死者の魂を浄化する役目をする者がいなくなってしまったのだ。お陰で転生を繰り返すごとに魂の穢れが溜まり、時折こうした間違いが起こるのだ」

「えー……えーっと? 」

「人間には理解出来ないかもしれない。要はこの世界は死の神である我なしでは存在出来ない世界だったのだ」

「ふーん……」

 ルティの言っていることは抽象的過ぎてよく分からない。まあ結局はルティを封じてしまったせいでこんなことが起きてしまったということらしい。

「それよりも貴様、忙しくなるぞ」

「え?! 」

 するとキールがあたしの方に向き直った。

「ありがとうございます! ありがとうございますルーナさん! もし、その……出来れば更にお力を貸していただけませんか? 」

 ……この後、あたしは村の人々全員の闇死病を治すことになってしまった。

 
 
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