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第22話 謎
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「うう……酷いやつやの」
いつまでもメソメソと泣き真似をするサクヤ。
「サクヤがくれるって言ったんだろ」
薄汚れたスーツを脱ぎ捨てて、俺は彼女から貰った神衣を見に纏った。驚くほど軽い。まるで何も着ていないみたいだ。
何だが自分がファンタジー世界の住人になったみたいで気恥ずかしいが仕方ない。
「それは月読の神衣や。あ、月読というのはうちの国で崇められてる神様の名前なんよ」
「月読……」
日本でもそんな神様がいた気がするな。
俺は日本神話には詳しくないからうろ覚えだけど。
「サクヤの国ってのはどこにあるんだ? 」
「うちの国か? ずーっと東の方よ。そ、ずっと東」
そう言ってサクヤは顔を伏せた。どこか寂しげなその顔を見て、俺は何も言えなくなってしまった。
「聞いちゃいけないことだったか? 」
「……そんなことはいいんよ。それで、神衣には神の魔力が込められているから、色々な恩恵を得ることが出来るんよ~」
「恩恵か、それは凄いな」
「そそ、魔法反射とか体力自動回復とか。……ただその衣にどんな力があったか忘れてもうたわ」
「え!? 」
慌てて脱ごうとする俺。もし即死とかだったらどうしよう……。
「あ、大丈夫大丈夫! 悪い効果ではなかったと思うから! 」
「ほんとかよ……」
「ほんとよ~」
ウインク一つするサクヤだが、イマイチ信用し切れない。だがまあ特に体に異変はないし、このまま着てても良いだろう。
「そうだ後一つ聞きたい。竜族のことだ」
「うん」
サクヤはその質問が来るのを分かっていたかのように頷いた。
「さっき言ってた目覚めって何のことだ? シエルが竜族であることは知っている。その目覚めというのは悪いことなのか? 」
「そうやねえ……目覚めというのは簡単に言えば竜として覚醒すること。そしてそれは世界の破壊者となることを意味しとる」
「は、破壊者!? 」
突然出てきた物騒な単語に俺は思わず戦いた。
「そ。竜はこの世界の破壊を担う神のこと。破壊と創造は常に一緒じゃなきゃあかんの」
「何だか話が壮大になってきたな……つまりシエルは神の子ということか? 」
「間違ってはないな~」
「じゃあシエルをその……目覚めさせてはいけないってことか? 」
「そんなことが出来れば凄いなぁ。見てみたいわ」
意味深に目を細めるサクヤ。そして傍らのセイヤを撫でた。
「それって……」
更に質問を続けようとしたとき、サクヤが口を挟んだ。
「残念やけど時間切れみたいや。"竜"に関しては色々調べてみると面白いと思うわ」
「え!? 」
「きゃっ!? 」
いつの間にか俺たち二人の足元に魔方陣のようなものが展開していた。
「それじゃね、ヨリ。またいつでもご贔屓に」
ヒラヒラと手を振るサクヤ。
俺は光に包まれながらも必死に彼女に向かって手を伸ばした。
「待てサクヤ!! 」
まだまだ聞きたいことはたくさんある。竜が神というのはどういうことだ? そして目覚めた竜はどうなる? そして俺たちが倒すよう言われた魔王とは何なのか?
しかしその質問をすることなく、俺たちは自宅へと戻されていた。
購入した天使の涙と共に。
いつまでもメソメソと泣き真似をするサクヤ。
「サクヤがくれるって言ったんだろ」
薄汚れたスーツを脱ぎ捨てて、俺は彼女から貰った神衣を見に纏った。驚くほど軽い。まるで何も着ていないみたいだ。
何だが自分がファンタジー世界の住人になったみたいで気恥ずかしいが仕方ない。
「それは月読の神衣や。あ、月読というのはうちの国で崇められてる神様の名前なんよ」
「月読……」
日本でもそんな神様がいた気がするな。
俺は日本神話には詳しくないからうろ覚えだけど。
「サクヤの国ってのはどこにあるんだ? 」
「うちの国か? ずーっと東の方よ。そ、ずっと東」
そう言ってサクヤは顔を伏せた。どこか寂しげなその顔を見て、俺は何も言えなくなってしまった。
「聞いちゃいけないことだったか? 」
「……そんなことはいいんよ。それで、神衣には神の魔力が込められているから、色々な恩恵を得ることが出来るんよ~」
「恩恵か、それは凄いな」
「そそ、魔法反射とか体力自動回復とか。……ただその衣にどんな力があったか忘れてもうたわ」
「え!? 」
慌てて脱ごうとする俺。もし即死とかだったらどうしよう……。
「あ、大丈夫大丈夫! 悪い効果ではなかったと思うから! 」
「ほんとかよ……」
「ほんとよ~」
ウインク一つするサクヤだが、イマイチ信用し切れない。だがまあ特に体に異変はないし、このまま着てても良いだろう。
「そうだ後一つ聞きたい。竜族のことだ」
「うん」
サクヤはその質問が来るのを分かっていたかのように頷いた。
「さっき言ってた目覚めって何のことだ? シエルが竜族であることは知っている。その目覚めというのは悪いことなのか? 」
「そうやねえ……目覚めというのは簡単に言えば竜として覚醒すること。そしてそれは世界の破壊者となることを意味しとる」
「は、破壊者!? 」
突然出てきた物騒な単語に俺は思わず戦いた。
「そ。竜はこの世界の破壊を担う神のこと。破壊と創造は常に一緒じゃなきゃあかんの」
「何だか話が壮大になってきたな……つまりシエルは神の子ということか? 」
「間違ってはないな~」
「じゃあシエルをその……目覚めさせてはいけないってことか? 」
「そんなことが出来れば凄いなぁ。見てみたいわ」
意味深に目を細めるサクヤ。そして傍らのセイヤを撫でた。
「それって……」
更に質問を続けようとしたとき、サクヤが口を挟んだ。
「残念やけど時間切れみたいや。"竜"に関しては色々調べてみると面白いと思うわ」
「え!? 」
「きゃっ!? 」
いつの間にか俺たち二人の足元に魔方陣のようなものが展開していた。
「それじゃね、ヨリ。またいつでもご贔屓に」
ヒラヒラと手を振るサクヤ。
俺は光に包まれながらも必死に彼女に向かって手を伸ばした。
「待てサクヤ!! 」
まだまだ聞きたいことはたくさんある。竜が神というのはどういうことだ? そして目覚めた竜はどうなる? そして俺たちが倒すよう言われた魔王とは何なのか?
しかしその質問をすることなく、俺たちは自宅へと戻されていた。
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