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プロローグ
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「イリア=クリミア!! 僕はお前との婚約を破棄する!!! 」
よく通る声、思わず身をすくめてしまいそうになるぐらい強い言葉。
呆然と立ち尽くした私は何も言えないまま、ただドレスの裾をきゅっと掴み、血が滲むぐらい唇を強く噛む。
「何が起きましたの? 」
「どういうことだ? 」
他の貴族たちがざわめき、私を避けるかのようにただ遠巻きにその様子を眺めている。
皆の注目を一身に集めたような気がして怖くなる。
「エドワード様……」
そして美しい妹、エミリアがやや上気した頬でうっとりした目をして彼に寄り添っていた。
「イリア、君がエミリアに対して行った数々の非道、僕には見逃すことが出来ない」
「そんな……私が何をしたと言うんですか? 」
私は震える声で問い掛ける。
するとエドワードが叩き付けたのは刃物で切りつけられたようにボロボロになった一着のドレスだ。
「この酷い有り様のドレス、エミリアのものだ! 君がやったのだろう」
周りの人々のざわめきが更に大きくなった。
イリア様がそんなことを……?
まさか……。
口々に話始める。
「証拠はあるのですか! 」
私はつい声を荒げてしまった。そんないくらでも偽装できるような物で犯人認定はあんまりだと思った。
「エミリアがその瞬間を見ていた! 」
ああっとエミリアがわざとらしく顔を伏せて、くすんくすんと泣き始める。それを見たエドワードが彼女の肩を抱き締め、
「大丈夫だ……辛い記憶を思い起こさせて悪かった……」
と小さい子どもに囁きかけるように慰めている。
「このドレスは亡くなったお母さんの形見で、凄く大事にしていたんです」
可哀想……。と誰かが呟くとまるで堰を切ったように溢れだす同情の言葉。
「人の大切なものを傷付けてなんて女だ!! 」
待ってエドワード。私はそんなことやってない!
「それにまだあるぞ、イリアの部屋からエミリアの食事に混入していた毒と同じものが入った小瓶が発見された! 」
「濡れ衣です! 私、そんなことしてません」
しかし私の抗議も空しく、恋に溺れた彼の耳には届かない。
それどころか、周りの人間までも私を悪として裁こうとする空気をはらんでいた。
「罪人を我が王妃として迎える訳にはいかぬ! これよりエミリアを私の妻として迎え、妻の命を狙ったイリアを極悪人として刑に処する! 」
わああああああと歓声が沸き上がった。
命を狙うような悪役令嬢は裁かれろ!
嫉妬に狂ってこんなことをするなんて最低な女だ!
私は頭がクラクラして思わず座り込んだ。愛する人から婚約破棄を言い渡され、おまけに罪を被ることになってしまうなんてーー。
それもこれもヒロインを虐めた私のせい……。
神様お許しください、きっと来世では清く正しい令嬢になってみせます。心を入れ替えます。
ーーなんてね。
ここまでは前回通り。だって私はこの物語を一度"経験"してるのだから。
私は心の中でペロッと舌を出すと、なるべく震えるような掠れたような声でこう言った。
「……分かりました。でも私からもお伝えしたいことがあります。まずはこれをご覧下さいませ」
パチンと指を鳴らすと、それを合図に大きなスクリーンが現れ、とある映像が大音響で流れ始めた。
「……あっ、エミリア……」
「エドワード……様」
「……愛してる」
「私もです……あっ、あん」
あんまり詳しく描写すると年齢制限がかかってしまうのでふわっと描写する。
簡単に言うと、二人の浮気現場だ。
生まれたままの姿でベッドの上で絡み合い、甘ったるい声を出す二人の姿。
途端に真っ青になるエドワードとエミリア。エドワードなんて膝から崩れ落ちてしまっている。
「なんだこれは!? これはエドワード様とエミリア様では……」
「婚約前にこのようなことをなさるなんて……」
ふふ、モブ貴族たちの気持ちの流れが変わったのが手に取るように分かる。
さあ見てなさい、エドワード、エミリア!!
ここから悪役令嬢の逆襲が始まるのである。
ーーことの始まりは約2週間前に遡る
よく通る声、思わず身をすくめてしまいそうになるぐらい強い言葉。
呆然と立ち尽くした私は何も言えないまま、ただドレスの裾をきゅっと掴み、血が滲むぐらい唇を強く噛む。
「何が起きましたの? 」
「どういうことだ? 」
他の貴族たちがざわめき、私を避けるかのようにただ遠巻きにその様子を眺めている。
皆の注目を一身に集めたような気がして怖くなる。
「エドワード様……」
そして美しい妹、エミリアがやや上気した頬でうっとりした目をして彼に寄り添っていた。
「イリア、君がエミリアに対して行った数々の非道、僕には見逃すことが出来ない」
「そんな……私が何をしたと言うんですか? 」
私は震える声で問い掛ける。
するとエドワードが叩き付けたのは刃物で切りつけられたようにボロボロになった一着のドレスだ。
「この酷い有り様のドレス、エミリアのものだ! 君がやったのだろう」
周りの人々のざわめきが更に大きくなった。
イリア様がそんなことを……?
まさか……。
口々に話始める。
「証拠はあるのですか! 」
私はつい声を荒げてしまった。そんないくらでも偽装できるような物で犯人認定はあんまりだと思った。
「エミリアがその瞬間を見ていた! 」
ああっとエミリアがわざとらしく顔を伏せて、くすんくすんと泣き始める。それを見たエドワードが彼女の肩を抱き締め、
「大丈夫だ……辛い記憶を思い起こさせて悪かった……」
と小さい子どもに囁きかけるように慰めている。
「このドレスは亡くなったお母さんの形見で、凄く大事にしていたんです」
可哀想……。と誰かが呟くとまるで堰を切ったように溢れだす同情の言葉。
「人の大切なものを傷付けてなんて女だ!! 」
待ってエドワード。私はそんなことやってない!
「それにまだあるぞ、イリアの部屋からエミリアの食事に混入していた毒と同じものが入った小瓶が発見された! 」
「濡れ衣です! 私、そんなことしてません」
しかし私の抗議も空しく、恋に溺れた彼の耳には届かない。
それどころか、周りの人間までも私を悪として裁こうとする空気をはらんでいた。
「罪人を我が王妃として迎える訳にはいかぬ! これよりエミリアを私の妻として迎え、妻の命を狙ったイリアを極悪人として刑に処する! 」
わああああああと歓声が沸き上がった。
命を狙うような悪役令嬢は裁かれろ!
嫉妬に狂ってこんなことをするなんて最低な女だ!
私は頭がクラクラして思わず座り込んだ。愛する人から婚約破棄を言い渡され、おまけに罪を被ることになってしまうなんてーー。
それもこれもヒロインを虐めた私のせい……。
神様お許しください、きっと来世では清く正しい令嬢になってみせます。心を入れ替えます。
ーーなんてね。
ここまでは前回通り。だって私はこの物語を一度"経験"してるのだから。
私は心の中でペロッと舌を出すと、なるべく震えるような掠れたような声でこう言った。
「……分かりました。でも私からもお伝えしたいことがあります。まずはこれをご覧下さいませ」
パチンと指を鳴らすと、それを合図に大きなスクリーンが現れ、とある映像が大音響で流れ始めた。
「……あっ、エミリア……」
「エドワード……様」
「……愛してる」
「私もです……あっ、あん」
あんまり詳しく描写すると年齢制限がかかってしまうのでふわっと描写する。
簡単に言うと、二人の浮気現場だ。
生まれたままの姿でベッドの上で絡み合い、甘ったるい声を出す二人の姿。
途端に真っ青になるエドワードとエミリア。エドワードなんて膝から崩れ落ちてしまっている。
「なんだこれは!? これはエドワード様とエミリア様では……」
「婚約前にこのようなことをなさるなんて……」
ふふ、モブ貴族たちの気持ちの流れが変わったのが手に取るように分かる。
さあ見てなさい、エドワード、エミリア!!
ここから悪役令嬢の逆襲が始まるのである。
ーーことの始まりは約2週間前に遡る
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