断罪イベント? よろしい、受けて立ちましょう!

寿司

文字の大きさ
1 / 56

プロローグ

しおりを挟む
「イリア=クリミア!! 僕はお前との婚約を破棄する!!! 」

 よく通る声、思わず身をすくめてしまいそうになるぐらい強い言葉。

 呆然と立ち尽くした私は何も言えないまま、ただドレスの裾をきゅっと掴み、血が滲むぐらい唇を強く噛む。

「何が起きましたの? 」

「どういうことだ? 」

 他の貴族たちがざわめき、私を避けるかのようにただ遠巻きにその様子を眺めている。
 皆の注目を一身に集めたような気がして怖くなる。

「エドワード様……」

 そして美しい妹、エミリアがやや上気した頬でうっとりした目をして彼に寄り添っていた。

「イリア、君がエミリアに対して行った数々の非道、僕には見逃すことが出来ない」

「そんな……私が何をしたと言うんですか? 」
  
 私は震える声で問い掛ける。
 するとエドワードが叩き付けたのは刃物で切りつけられたようにボロボロになった一着のドレスだ。

「この酷い有り様のドレス、エミリアのものだ! 君がやったのだろう」

 周りの人々のざわめきが更に大きくなった。

 イリア様がそんなことを……?

 まさか……。

 口々に話始める。

「証拠はあるのですか! 」

 私はつい声を荒げてしまった。そんないくらでも偽装できるような物で犯人認定はあんまりだと思った。

「エミリアがその瞬間を見ていた! 」

 ああっとエミリアがわざとらしく顔を伏せて、くすんくすんと泣き始める。それを見たエドワードが彼女の肩を抱き締め、

「大丈夫だ……辛い記憶を思い起こさせて悪かった……」

 と小さい子どもに囁きかけるように慰めている。

「このドレスは亡くなったお母さんの形見で、凄く大事にしていたんです」

 可哀想……。と誰かが呟くとまるで堰を切ったように溢れだす同情の言葉。

「人の大切なものを傷付けてなんて女だ!! 」

 待ってエドワード。私はそんなことやってない!

「それにまだあるぞ、イリアの部屋からエミリアの食事に混入していた毒と同じものが入った小瓶が発見された! 」

「濡れ衣です! 私、そんなことしてません」

 しかし私の抗議も空しく、恋に溺れた彼の耳には届かない。
 それどころか、周りの人間までも私を悪として裁こうとする空気をはらんでいた。

「罪人を我が王妃として迎える訳にはいかぬ! これよりエミリアを私の妻として迎え、妻の命を狙ったイリアを極悪人として刑に処する! 」

 わああああああと歓声が沸き上がった。

 命を狙うような悪役令嬢は裁かれろ!

 嫉妬に狂ってこんなことをするなんて最低な女だ!

 私は頭がクラクラして思わず座り込んだ。愛する人から婚約破棄を言い渡され、おまけに罪を被ることになってしまうなんてーー。

 それもこれもヒロイン主人公を虐めた私のせい……。

 神様お許しください、きっと来世では清く正しい令嬢になってみせます。心を入れ替えます。




ーーなんてね。

 ここまでは前回通り。だって私はこの物語を一度"経験"してるのだから。

 私は心の中でペロッと舌を出すと、なるべく震えるような掠れたような声でこう言った。

「……分かりました。でも私からもお伝えしたいことがあります。まずはこれをご覧下さいませ」

 パチンと指を鳴らすと、それを合図に大きなスクリーンが現れ、とある映像が大音響で流れ始めた。

「……あっ、エミリア……」

「エドワード……様」

「……愛してる」

「私もです……あっ、あん」

 あんまり詳しく描写すると年齢制限がかかってしまうのでふわっと描写する。

 簡単に言うと、二人の浮気現場だ。

 生まれたままの姿でベッドの上で絡み合い、甘ったるい声を出す二人の姿。

 途端に真っ青になるエドワードとエミリア。エドワードなんて膝から崩れ落ちてしまっている。
 
「なんだこれは!? これはエドワード様とエミリア様では……」

「婚約前にこのようなことをなさるなんて……」

 ふふ、モブ貴族たちの気持ちの流れが変わったのが手に取るように分かる。

 さあ見てなさい、エドワード、エミリア!!
 ここから悪役令嬢の逆襲が始まるのである。

ーーことの始まりは約2週間前に遡る
しおりを挟む
感想 107

あなたにおすすめの小説

居候と婚約者が手を組んでいた!

すみ 小桜(sumitan)
恋愛
 グリンマトル伯爵家の一人娘のレネットは、前世の記憶を持っていた。前世は体が弱く入院しそのまま亡くなった。その為、病気に苦しむ人を助けたいと思い薬師になる事に。幸いの事に、家業は薬師だったので、いざ学校へ。本来は17歳から通う学校へ7歳から行く事に。ほらそこは、転生者だから!  って、王都の学校だったので寮生活で、数年後に帰ってみると居候がいるではないですか!  父親の妹家族のウルミーシュ子爵家だった。同じ年の従姉妹アンナがこれまたわがまま。  アンアの母親で父親の妹のエルダがこれまたくせ者で。  最悪な事態が起き、レネットの思い描いていた未来は消え去った。家族と末永く幸せと願った未来が――。

【完結】お父様。私、悪役令嬢なんですって。何ですかそれって。

紅月
恋愛
小説家になろうで書いていたものを加筆、訂正したリメイク版です。 「何故、私の娘が処刑されなければならないんだ」 最愛の娘が冤罪で処刑された。 時を巻き戻し、復讐を誓う家族。 娘は前と違う人生を歩み、家族は元凶へ復讐の手を伸ばすが、巻き戻す前と違う展開のため様々な事が見えてきた。

悪役令嬢として断罪? 残念、全員が私を庇うので処刑されませんでした

ゆっこ
恋愛
 豪奢な大広間の中心で、私はただひとり立たされていた。  玉座の上には婚約者である王太子・レオンハルト殿下。その隣には、涙を浮かべながら震えている聖女――いえ、平民出身の婚約者候補、ミリア嬢。  そして取り巻くように並ぶ廷臣や貴族たちの視線は、一斉に私へと向けられていた。  そう、これは断罪劇。 「アリシア・フォン・ヴァレンシュタイン! お前は聖女ミリアを虐げ、幾度も侮辱し、王宮の秩序を乱した。その罪により、婚約破棄を宣告し、さらには……」  殿下が声を張り上げた。 「――処刑とする!」  広間がざわめいた。  けれど私は、ただ静かに微笑んだ。 (あぁ……やっぱり、来たわね。この展開)

初耳なのですが…、本当ですか?

あおくん
恋愛
侯爵令嬢の次女として、父親の仕事を手伝ったり、邸の管理をしたりと忙しくしているアニーに公爵家から婚約の申し込みが来た! でも実際に公爵家に訪れると、異世界から来たという少女が婚約者の隣に立っていて…。

【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……

buchi
恋愛
大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。 みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……

妹がいなくなった

アズやっこ
恋愛
妹が突然家から居なくなった。 メイドが慌ててバタバタと騒いでいる。 お父様とお母様の泣き声が聞こえる。 「うるさくて寝ていられないわ」 妹は我が家の宝。 お父様とお母様は妹しか見えない。ドレスも宝石も妹にだけ買い与える。 妹を探しに出掛けたけど…。見つかるかしら?

死に物狂いで支えた公爵家から捨てられたので、回帰後は全財産を盗んで消えてあげます 〜今さら「戻れ」と言われても、私は隣国の皇太子妃ですので〜

しょくぱん
恋愛
「お前のような無能、我が公爵家の恥だ!」 公爵家の長女エルゼは、放蕩者の父や無能な弟に代わり、寝る間も惜しんで領地経営と外交を支えてきた。しかし家族は彼女の功績を奪った挙句、政治犯の濡れ衣を着せて彼女を処刑した。 死の間際、エルゼは誓う。 「もし次があるのなら――二度と、あいつらのために働かない」 目覚めると、そこは処刑の二年前。 再び「仕事」を押し付けようとする厚顔無恥な家族に対し、エルゼは優雅に微笑んだ。 「ええ、承知いたしました。ただし、これからは**『代金』**をいただきますわ」 隠し金庫の鍵、領地の権利書、優秀な人材、そして莫大な隠し資産――。 エルゼは公爵家のすべてを自分名義に書き換え、着々と「もぬけの殻」にしていく。 そんな彼女の前に、隣国の冷徹な皇太子シオンが現れ、驚くべき提案を持ちかけてきて……? 「君のような恐ろしい女性を、独り占めしたくなった」 資産を奪い尽くして亡命した令嬢と、彼女を溺愛する皇太子。 一方、すべてを失った公爵家が泣きついてくるが、もう遅い。 あなたの家の金庫も、土地も、働く人間も――すべて私のものですから。

目の前で始まった断罪イベントが理不尽すぎたので口出ししたら巻き込まれた結果、何故か王子から求婚されました

歌龍吟伶
恋愛
私、ティーリャ。王都学校の二年生。 卒業生を送る会が終わった瞬間に先輩が婚約破棄の断罪イベントを始めた。 理不尽すぎてイライラしたから口を挟んだら、お前も同罪だ!って謎のトバッチリ…マジないわー。 …と思ったら何故か王子様に気に入られちゃってプロポーズされたお話。 全二話で完結します、予約投稿済み

処理中です...