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悪役令嬢、いざ決戦の地へ

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 そして迎えた運命の1/1。
 太陽がてっぺんに昇る頃、エドワードの王位継承と私との結婚の儀が執り行われようとしていた。

 会場はエドワードたちが住むリセンティア城。私は何度か来たことはあったのだが、びっくりするほど大きな建物だ。
 いかにも絵本に出てくるような城で少しだけときめいてしまう。
 しかしここが私の墓標になるかもしれないと思うと、うすら寒い何かが背筋を走った。

 窓から少しだけ下の様子を覗くと、たくさんの来客たちが訪れている。誰もこれも有名な貴族やその関係者らしく、かなり盛大なパーティになりそうだ。

 そんな中、私はメイクされながらバクバクと高鳴る心臓を何とか制御していた。

 落ち着け、絶対に大丈夫。私は死なない。

 思い出すのはゲームの中のイリアの死。
 処刑人の手により首を切り落とされ、誰にも愛されることのないままその生涯を終えるのだ。
 そして死してなお、彼女の死を悼む者など誰もいない。
 まあ悪役令嬢なのだから扱いが雑で当たり前っちゃ当たり前なのだけど、いざ当事者になると本当に恐ろしい。

「お美しいですわ」 

 メイク係の女性が仕上げに私の唇に口紅を引き、媚びたような笑顔で言った。

 メイクし終わった自分の顔をまじまじと見つめる。透き通るような白い肌、すっとした切れ長の目に彫りの深い顔立ち。確かに美しい。けれど蛇のような狡猾さを纏う私は

「悪役令嬢そのものだわ」

「ん? 何かおっしゃいました? 」

 メイクの人が怪訝そうに聞き返すが、私はなんでもないわ、と誤魔化す。 

「イリア様そろそろご準備を」

「はい」

 声をかけられ、いよいよ式は開始する。
 私はすっと背筋を伸ばして、エントランスの前に立つ。
 深く呼吸をし、きちんとロキの使い魔を連れてきていることを確認する。

 さぁ、行こうかーー。

 入口が開放されると、途端に人々の歓声が私に降り注いだ。そして腕利きの奏者たちによる楽器の演奏に合わせて私は少しずつ彼の元へと向かう。

「イリア様だ……! お美しい」

「流石の美貌ね」

 しかし私が見ているのはレッドカーペットの先に佇む、彼。
 王子様そのものの容姿をした彼は驚くほど冷たい瞳で私を見据えていた。

 絶対にこの勝負に勝つ。私は生きてロキに再会しなければいけないのだから。

 エドワードの横に辿り着いた私は、式の進行に身を委ねた。
 まず最初は王位継承式。と、言ってもそんなに大袈裟なものではなく、エドワードの父、つまり国王からエドワードが王冠を受け取り、こうして新たな王がこの国に誕生する。これだけの儀式だ。

「ここに新たな王、エドワード=リセンティアが誕生した!」

 割れんばかりの拍手がエドワードに降り注ぐ。
 少しだけ誇らしげな顔でエドワードが唇を噛み締めていた。

「次に、エドワード=リセンティアとイリア=クリミアの婚姻の儀式を行う。これにより王と王妃が揃うことになろう」

 向かい合わせになる私たち。

「それでは、指輪の交換を」

 言われた通りにお互いに指輪を交換しようとする。

 白銀で出来たシンプルな指輪で、おそらくダイヤモンドであろう宝石が嵌め込まれている。

 本来はお互いのこれを交換するのだが。

 エドワードはそれを拒んだ。

 私に渡すはずの指輪を、いつの間にかそばにいたエミリアに投げ渡す。

 私はエドワードに渡すはずの指輪をただ握り締めた。

「エドワード……様……?」

 何が起きたのか分からないふりをしている私はアホ面を晒す。
 そして国王でさえも自分の息子の行動の意味が分からず、ただ呆然と口を開けていた。
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