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悪役令嬢、唖然とする
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「ロキ!? 」
私は思わず声をあげてしまった。
ロキは私の方をちらりと見ると、ウインク一つ。間違いなく本人だ。でもなぜここに!? 昨日は行けないみたいなことを言っていたのに……。
ざわめきが大きくなった。
ロキの登場に、皆が驚いているようだ。
「ロキワルド……どうしてお前がここに」
エドワードが言う。
ん? ロキワルド?
「お久しぶりです兄さん。どうしてと言われましても……兄さんの結婚をお祝いしに来たんですよ」
兄さん……? 今、エドワードのこと兄さんって……。
ロキは国王の方に向き直ると、深く一礼した。
「お父様、これらの証拠は私の使い魔によって得たものです。ですから捏造などではありませんよ」
「どうしてお前が……!! 」
ロキはさりげなく私の肩を抱くと、こう続ける。
「イリア様に頼まれたのです。婚約者の浮気を調査して欲しいと。そしたらこの通りの結果ですよ」
私はただこくりと頷く。
すると
「ロキワルド様は魔導の天才。信頼するしかあるまい」
誰かが言った。
「……ロキワルドのものならば疑いようがないな。エドワード、お前は王族の恥だ。王位を剥奪する! 」
国王が落胆したように言った。
「妥当な判断だな」
「当たり前だ」
どこかの国の来賓が口を揃えて言った。皆、エドワードの痴態に呆れ返ったのだろう。
「そんな……!! ですがそうするとリセンティアは王が不在の王国に!! 」
「黙れエドワード。愚か者が王位につくなんて国の恥でしかない」
父親に一蹴されてボタボタと涙を流すエドワード。しかし尚も彼は諦めが悪い。
「でも……高齢のお父様に負担が大きすぎます。ですから私が仮初めでも構いません。心を入れ換えます。王として皆を導いて……」
エドワードがすがるような目で国王を見つめるが、ロキがさりげなくそれを邪魔した。
「お言葉ですが、婚約者を裏切り、悪女に翻弄される男など王の器に相応しくないと私は思うのです」
ロキはまるで台本を読むかのように言葉を続ける。
周りの人たちも彼の言葉に聞き入っているようだ。
「それでこの私、ロキワルド=リセンティアが兄に代わりこの国を正しく導こうと考えております。お父様、いかがでしょう? 」
「ふざけるな!! お前なんて王族であることを捨てて好き勝手暮らしていた親不孝ものじゃないか! 」
エドワードが吐き捨てるように食って掛かる。
「そうですね。確かに私は親不孝かもしれません。でも私は城を抜けて色々なことを学び、様々な人と出会い、学校やお城では学べない大切なことを学んだつもりですよ」
ああ、とロキは一度言葉を止める。
「さすがに浮気の仕方までは勉強してませんがね」
クスクスと大衆が笑いだす。
居たたまれなくなったのか、エドワードは俯いて何も言わなくなった。
周りの人々もそうだな、ロキワルド様が相応しい。血筋は申し分ないし、魔法に関しては天才だ。と口々に肯定の意を示した。
国王ですらも「仕方があるまい」と小さく呟く。
「じゃあこれは私のものということで」
ロキはエドワードの近くに転がる王冠を取り上げる。
「貴様……」
エドワードが怨念を込めた目でロキを睨み付ける。しかしロキは意にも返さず、相変わらず飄々としている。
「おお怖い。そうそうこれはお返ししますね。お二人の結婚式のときにでも使えば良いんじゃないですか?」
そして私の手の中にあった指輪をもぎ取ると、エドワードに向かって放り投げた。
「私たちの指輪に白銀なんて似合わないからね」
私……"たち" ?
ロキが取り出したのは漆黒のリングに、虹色にちらちらと光る宝石が嵌め込まれた見事な指輪。思わず見とれてしまうほどの美しさだ。
「ではお父様、兄さんとイリア様が婚約破棄ということは、私がイリア様と婚約しても良いということですね? 」
「え? ううむ……」
奇想天外な質問に思わず唸る王様。私ですら素で「は? 」と声に出してしまった。
「何か問題でも? イリア様は元々王妃になるお方。そして今の王は私。何も不都合などないでしょう」
うーーーーんと長い間唸る王様。
「確かにそうなるかもしれないな……」
え? ちょっと待って?
どういうこと?
「待ってロキ、それってどういう……」
「どういうって、君はお兄様との婚約は破棄したわけだ。つまり私が君を妻に迎えたって構わないだろ? 」
「そりゃ構わないけど……っていやいやいや。そんな急に!? 」
「イリア様は私のことがお嫌いですか? 」
そんなに真っ直ぐ見つめられると頬が熱くなるのが分かる。
「そ、そういうわけじゃないけど……」
「じゃあ決まりですね。今ここにロキワルド=リセンティア、イリア=クリミア。二人は神の名のもと、夫婦になることを誓う!! 」
わああああああああと今日一番の歓声があがった。いやいやいや、皆、場のノリに飲まれてるけどよく考えて! おかしいことになってるから!
「そして我が妻を陥れようとしたエドワード=リセンティア、エミリア=クリミアは刑に処す。引っ捕らえろ! 」
はっ、と力強く返事をした兵士たちが二人を取り押さえる。エドワードはもう元気もないのか、ぐったりと項垂れていたが、エミリアは私を真っ直ぐ見据えて確かにこう言った。
「ーーあなたもなのね」
あなたも?
「待ってどういう意味!? 」
意味が分からず聞き返したが、すぐに彼らの姿は兵士たちに捕らえられ、どこかへ引きずられていった。
残された私はまるで映画の中に放り込まれたような感覚だった。
早すぎる展開に到底ついていけない……。
しかし天上人たちは逆転劇を面白がっているらしく、ロキに向かって称賛の拍手を浴びせていた。
こうして私の逆断罪イベントは大成功したのだった。
……何だか美味しいところはロキに持っていかれた気がするけど。まあ命が助かっただけ良しとしよう。
ただし私は破棄したはずなのに、なぜか別の人と婚約することになってしまったのである。
私は思わず声をあげてしまった。
ロキは私の方をちらりと見ると、ウインク一つ。間違いなく本人だ。でもなぜここに!? 昨日は行けないみたいなことを言っていたのに……。
ざわめきが大きくなった。
ロキの登場に、皆が驚いているようだ。
「ロキワルド……どうしてお前がここに」
エドワードが言う。
ん? ロキワルド?
「お久しぶりです兄さん。どうしてと言われましても……兄さんの結婚をお祝いしに来たんですよ」
兄さん……? 今、エドワードのこと兄さんって……。
ロキは国王の方に向き直ると、深く一礼した。
「お父様、これらの証拠は私の使い魔によって得たものです。ですから捏造などではありませんよ」
「どうしてお前が……!! 」
ロキはさりげなく私の肩を抱くと、こう続ける。
「イリア様に頼まれたのです。婚約者の浮気を調査して欲しいと。そしたらこの通りの結果ですよ」
私はただこくりと頷く。
すると
「ロキワルド様は魔導の天才。信頼するしかあるまい」
誰かが言った。
「……ロキワルドのものならば疑いようがないな。エドワード、お前は王族の恥だ。王位を剥奪する! 」
国王が落胆したように言った。
「妥当な判断だな」
「当たり前だ」
どこかの国の来賓が口を揃えて言った。皆、エドワードの痴態に呆れ返ったのだろう。
「そんな……!! ですがそうするとリセンティアは王が不在の王国に!! 」
「黙れエドワード。愚か者が王位につくなんて国の恥でしかない」
父親に一蹴されてボタボタと涙を流すエドワード。しかし尚も彼は諦めが悪い。
「でも……高齢のお父様に負担が大きすぎます。ですから私が仮初めでも構いません。心を入れ換えます。王として皆を導いて……」
エドワードがすがるような目で国王を見つめるが、ロキがさりげなくそれを邪魔した。
「お言葉ですが、婚約者を裏切り、悪女に翻弄される男など王の器に相応しくないと私は思うのです」
ロキはまるで台本を読むかのように言葉を続ける。
周りの人たちも彼の言葉に聞き入っているようだ。
「それでこの私、ロキワルド=リセンティアが兄に代わりこの国を正しく導こうと考えております。お父様、いかがでしょう? 」
「ふざけるな!! お前なんて王族であることを捨てて好き勝手暮らしていた親不孝ものじゃないか! 」
エドワードが吐き捨てるように食って掛かる。
「そうですね。確かに私は親不孝かもしれません。でも私は城を抜けて色々なことを学び、様々な人と出会い、学校やお城では学べない大切なことを学んだつもりですよ」
ああ、とロキは一度言葉を止める。
「さすがに浮気の仕方までは勉強してませんがね」
クスクスと大衆が笑いだす。
居たたまれなくなったのか、エドワードは俯いて何も言わなくなった。
周りの人々もそうだな、ロキワルド様が相応しい。血筋は申し分ないし、魔法に関しては天才だ。と口々に肯定の意を示した。
国王ですらも「仕方があるまい」と小さく呟く。
「じゃあこれは私のものということで」
ロキはエドワードの近くに転がる王冠を取り上げる。
「貴様……」
エドワードが怨念を込めた目でロキを睨み付ける。しかしロキは意にも返さず、相変わらず飄々としている。
「おお怖い。そうそうこれはお返ししますね。お二人の結婚式のときにでも使えば良いんじゃないですか?」
そして私の手の中にあった指輪をもぎ取ると、エドワードに向かって放り投げた。
「私たちの指輪に白銀なんて似合わないからね」
私……"たち" ?
ロキが取り出したのは漆黒のリングに、虹色にちらちらと光る宝石が嵌め込まれた見事な指輪。思わず見とれてしまうほどの美しさだ。
「ではお父様、兄さんとイリア様が婚約破棄ということは、私がイリア様と婚約しても良いということですね? 」
「え? ううむ……」
奇想天外な質問に思わず唸る王様。私ですら素で「は? 」と声に出してしまった。
「何か問題でも? イリア様は元々王妃になるお方。そして今の王は私。何も不都合などないでしょう」
うーーーーんと長い間唸る王様。
「確かにそうなるかもしれないな……」
え? ちょっと待って?
どういうこと?
「待ってロキ、それってどういう……」
「どういうって、君はお兄様との婚約は破棄したわけだ。つまり私が君を妻に迎えたって構わないだろ? 」
「そりゃ構わないけど……っていやいやいや。そんな急に!? 」
「イリア様は私のことがお嫌いですか? 」
そんなに真っ直ぐ見つめられると頬が熱くなるのが分かる。
「そ、そういうわけじゃないけど……」
「じゃあ決まりですね。今ここにロキワルド=リセンティア、イリア=クリミア。二人は神の名のもと、夫婦になることを誓う!! 」
わああああああああと今日一番の歓声があがった。いやいやいや、皆、場のノリに飲まれてるけどよく考えて! おかしいことになってるから!
「そして我が妻を陥れようとしたエドワード=リセンティア、エミリア=クリミアは刑に処す。引っ捕らえろ! 」
はっ、と力強く返事をした兵士たちが二人を取り押さえる。エドワードはもう元気もないのか、ぐったりと項垂れていたが、エミリアは私を真っ直ぐ見据えて確かにこう言った。
「ーーあなたもなのね」
あなたも?
「待ってどういう意味!? 」
意味が分からず聞き返したが、すぐに彼らの姿は兵士たちに捕らえられ、どこかへ引きずられていった。
残された私はまるで映画の中に放り込まれたような感覚だった。
早すぎる展開に到底ついていけない……。
しかし天上人たちは逆転劇を面白がっているらしく、ロキに向かって称賛の拍手を浴びせていた。
こうして私の逆断罪イベントは大成功したのだった。
……何だか美味しいところはロキに持っていかれた気がするけど。まあ命が助かっただけ良しとしよう。
ただし私は破棄したはずなのに、なぜか別の人と婚約することになってしまったのである。
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