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寿司

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エンディング後

情報屋、回想する

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 物心ついたときから酷く窮屈な生活であった。リセンティアの王子として生を受け、あらゆる学問や剣術、社交術を叩き込まれる毎日。

 朝から晩まで家庭教師がつき、飯を食う時間も風呂に入る時間も管理されたつまらない生活だった。

 そして政略の道具として連れてこられた婚約者たちはどいつもこいつもつまらない女ばかりで興味も惹かれない。
 皆が皆、"ロキワルド"ではなく、リセンティア王家の第2王子として俺を扱ってくるし、そして何より優秀な兄であるエドワードを俺ごしに見ているのが痛いほど分かった。

 俺は正直、真面目で従順な息子ではなかったし、そもそも父は頭の固い老人らしく魔法というものを酷く嫌っていて、魔法に熱中していた俺には思うところがあったのだろう。
  それに俺は妾の子で、母は俺を産んで直ぐに亡くなった。周りの人間からしたら大層扱いづらい子どもだったに違いない。

 ……そんな生活に嫌気がさした俺はある日家を飛び出した。リセンティアの位を捨て、ただの"ロキ"として生活することを夢見て。

 父はそう深くは追って来なかった。そもそもエドワードが王の座に付くのは周知の事実ではあったし、父は兄ばかり溺愛していた。俺のことなど眼中になかったのだろう。

 父は俺という一族の恥を隠すため、ほぼ死んだものとして扱っていたらしい。

 そして身分を捨てた俺が生きていく為に選んだのは情報を売ることだ。
 魔法の才能に物を言わせて使い魔を使役し、対象者のもとに忍ばせることによって情報を得る。そしてこの情報を売り捌くというまあ……褒められたことではないのは分かっている。

 王族だったという過去から、貴族たちの黒い噂や繋がりを小耳に挟んではいたし、お陰で情報屋としてはかなりの知名度を得ることが出来た。

 そんなとき、兄がいよいよ王位に就くと知り、何となしに様子を見に行こうと気が付かれないように見に行ったのだった。

 数年ぶりに見た兄は何やら知らない女と愛を囁きあっていて、面白半分で俺はその会話を録音した。
 あの厳格で威厳に満ちていて、俺のことをゴミのような目で見ていた兄が、女に鼻の下を伸ばしているのが面白かったという理由だけだった。

 それに情報屋としての性とでも言おうか、無意識に要人の会話を記録する癖がついていたのだった。

 しかしこの録音が彼女の運命を変えるきっかけになるなんて、俺は夢にも思わなかった。

 そして俺はたまたまそばの草むらに隠れていた彼女、イリアに気がつく。
 初めはただのエドワードの追っかけかと思ったのだがその身なりや容姿からそうでもなさそうだ。

 まるで深い夜のような雰囲気を纏い、全ての男を誘惑するような美しい女。それが彼女の第一印象だった。

 しかしその印象はすぐに覆される。

 何やらその彼女はエドワードの本当の婚約者らしく、兄がデレデレしているあの女こそ浮気相手らしい。俺はそれを聞いて耳を疑った。あの至極真面目な兄が浮気?

 しかし彼女が嘘を言っているようにも思えない。
 またイリアは自分は前世の記憶を持っていて、ここはおとめげーむで、1/1に兄たちに殺されてしまうということで焦りを見せていた。

 何を言っているのかさっぱり分からなかったが、面白そうだったので彼女に協力しようという気にはなった。
 
 そして何より、あの兄の真面目なふりした仮面の下に、どんな化け物を飼っているのか見てみたかった、というのもある。
 ……生まれながらにして俺は性格が悪いのだ。

◇◇◇

12/24、世間はクリスマスイブで色めき立っている。

「んん! ここのケーキ美味しいのね。ロキ」

 盗聴を終えた後、俺たちはクリスマスを祝いにケーキを食べに来た。
 散々自分の命を脅かすようなことを言われたにも関わらず、イリアは心底美味しそうにケーキをパクつく。

「肝が据わってんなぁ 」

「へ? 」

 口許にクリームをつけたイリアが首をかしげる。

「殺される運命が分かってるのに気楽なもんだ」

 するとイリアは紅茶を一口飲むと、こう言った。

「うーん、まあそうなんだけど。クリスマスイブぐらいお祝いしたいじゃない? 」

 たまにこの女性は全てを達観したような大人びたような目をすることがある。
 いつもはコロコロと表情が変わる子どものような人なのだが、このときばかりは大人の女性だ。

「それに」

 とイリアが続ける。

「ロキといれば何とかなりそうな気がするの」

「何だそれ」

「ただの勘よ勘」

 口を歪ませて笑うイリア。その妖艶な表情に俺は思わず目を奪われる。
 思えばこのときから俺は彼女のことを欲しいと思っていたのかもしれない。

「それにしてもここのケーキ美味しいわね。連れてきてくれてありがとう、ロキ」

 そう言って屈託のない笑顔を浮かべるイリア。

 俺はこのとき、初めて誰かにリセンティアの王子としてでもなく、情報屋としてでもなく、ただの一人の男として見て貰えたような気がした。

「お安いご用だ」

 兄のものだとか王族だからとかそんなのは関係ない。ただ俺がこの人と結ばれて幸せにしたい。

 そんな単純で、馬鹿げてて、それでいて純粋な思いだった。

 これを人は一目惚れと言うのだろう。
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