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寿司

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エンディング後

悪役令嬢、デートをする

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 エミリアの言葉が何だか頭から離れず、モヤモヤする日々を送っていた私に、ある日突然ロキがデートしないか? と誘ってきた。

 どこか目線が泳いでいたので彼なりの気遣いなのだろうということは直ぐに分かった。

 そして私たちが来たのはリセンティア城下町だ。

「ここに来たのも、盗聴して以来かしら」

「そうだな、……って人聞きの悪いことを言うな」

 あのときのようにロキの魔法で気配を限りなく薄くする。そのお陰か、思いっきり顔を出しているのに誰も私たちを見て騒がなかった。

「あのときはゆっくり見て回れなかったけど随分活気のある町なのね」

「まぁな、世界でも屈指の城下町だよ」

 へえ、と私は感心する。
 そういえば私ってあんまりこの世界の地名を知らないなと気が付く。

「ねね、他にはどんな町があるの? 」

 そうだな、とロキはしばし考え込む。

「カジノがあるコロッセムとか、海の都、アクアシアなんかもうちに並ぶぐらいの都市だな」

「カジノ!? へえ、面白そうね」

「お、イリアもギャンブル好きか? 行きたいなら今度連れてってやるよ」

 楽しみだわ、と返事する私。久しぶりの夫婦水入らずのデート、やっぱり楽しいなと思う。

 他愛もない会話をしているときが一番楽しかったりするのだ。

「……手繋いでも良いか? 」

「え゛っ゛」

 思わず声が裏返る私。
 そ、そうだよなもう夫婦なんだもん、手ぐらい繋ぐよな。

 ……でも自分の手汗が気になる。気持ち悪いとか思われたりしないだろうか。

「繋いで良いのか? 駄目なのか? 」

 ロキも耳が赤い。
 私はこくりと頷く。

 すると彼の大きな手が私の手を包んだ。
 その途端に私の心臓が跳ね上がる。キスまでしたのにどうして手を繋ぐぐらいでここまで緊張するのか……。耐性がない自分に嫌気がさす。

 しかし彼の手は暖かくて安心する。
 私たちはしばらくそうして街をぶらぶらしていると、ある店の前でロキが不意に足を止めた。


 「お、見ろよイリア」

  店の看板に視線を移すと、『アクセサリーショップ』と書かれていた。

「アクセサリーショップ? 」

 前世でもまったく縁のない店だったな……。この手の店に入ると身がすくんでしまいそうだ。

「ま、取り敢えず入ってみようぜ」

 ロキに背中を押されるようにして店に入ると、私の予想とは違い、店内はまるでカフェのようなほっこりとした空間であった。

「お、ロキか」

 カウンターにいるのは四十そこそこぐらいだろうか、店主らしき男性がちらりとこちらを見て言った。
 渋くてダンディなイケメン、といった風貌で、ゲームにもこんなキャラクターはいなかったと思う。

「久しぶり、ロシャ」

「聞いたぞ、お前国王になったんだって? 冗談じゃないよ、この国も終わりだな」

「うるさいぞ、今すぐこの店潰してやっても良いんだぜ」

 な、何だか険悪な雰囲気……?
 一触即発といった様子だし、もしかして止めた方が良いかしら……?
 思わず私は、オロオロと二人を交互に見比べるのだった。
 
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