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エンディング後
悪役令嬢、再会する
しおりを挟む「え? エドワードが私に会いたい? 」
朝ごはんを食べている私に、ロキがとんでもないことを言い出す。
ただロキも心底言いたくはなかったかのように苦虫を噛み潰したような顔をする。
「そうなんだ……兄さん、まるでうわ言のようにイリア、イリアに会わせてくれって……」
「ええ……」
何でだろう? エミリアではなくて私に会いたいなんて意味が分からない。
「いやイリアが嫌なら良いんだ。ただ様子がおかしくてな……」
「様子がおかしい? 」
ロキが頷く。
「まるで何かに酔っているような、そんな状態だ」
「なるほどね……」
私はしばし考えたが、結局エドワードに会うことを了承した。
彼が今どうなっているのか、気にならないかと言えば嘘になるからだ。
◇◇◇
兵士たちに案内されて地下牢を目指す私たち。
綺麗で掃除の行き届いた城とは違い、地下への階段はカビ臭くてジメジメしている。
こんなところに牢があるなんて、あまり良い環境とは言えなそうだ。
「イリア様お気をつけ下さい。彼らは大罪人。何をしでかしてくるか分かりません」
兵士の一人が剣を抜きながら言った。
「ええ分かってるわ」
そのままずっと階段を下っていると、屈強な看守たちの姿が見えてきた。槍を構えた彼らの眼光は鋭く、何人もここから逃げ出すのは不可能であった。
「イリア様、エドワード=リセンティアはこの先です」
看守たちが一礼をすると槍を下ろす、私はそれを潜るようにして先に進んだ。
そして一番奥の牢屋、他の牢屋よりも大きく、厳重な鍵がかかった場所に彼はいた。
王子様だった頃の威厳はもはやなく、ボサボサの髪に虚ろな瞳、十歳は老けて見える。
「エドワード……? 」
声をかけるとぴくりと反応を示した。
「イリア……? イリア!! 」
私が返事をするより先に、彼は言葉を重ねていく。
「聞いてくれイリア!! 僕はだまされたんだ……!! あの事は全部あの女にやらされて」
「えっ、ちょ、ちょっと……!! 」
格子を握り締めて顔を寄せるエドワードに私は思わず飛び退く。
その目はまるで獣のようにギラついていて、とても人間のものだとは思えない。
「イリア、僕を信じてくれ!! 本当に好きなのは君だけだ!! 」
「血迷ったんですか!? 」
「全部エミリアがやったんだ~……」
わあわあと声をあげて泣き叫ぶエドワードに、私は声をかけることも出来ずにただ眺めていた。
浮気した罪、その重みというものを痛いほど感じていた。
「イリア様、そろそろ離れましょう。もうまともではありません」
兵士の一人が私の腕を引く。
私は無言で頷いた。
「あら、お姉様」
踵を返そうとしたとき誰かに声をかけられた。思わず振り向くと、案の定そこにはエミリアの姿があった。
「エミリア……」
「イリア様、魔女の言葉に耳を傾けてはいけません!! 」
「魔女? 」
私は思わず首をかしげる。今エミリアのことを魔女って……?
……それにしても何だかエミリアから甘い香りが漂ってくる。何だか頭がズキズキする。
「ふふふ、別に何にもしてないですわ。兵士の皆さんが勝手にそう呼んできますの」
端の方にいて気が付かなかったが、エドワードの牢のすぐ隣にエミリアは捕らえられていた。
身動きが自由に取れるエドワードとは違い、エミリアは両手両足を厳重に拘束されている。
しかしその表情はどこかまだ余裕を残していた。
「あ、今は王妃様だったかしら。挨拶が遅れてごめんなさいね。私が近くにいるとエドワードが暴れるものだから……」
「はぁ……」
「あーあ、本当は私が王妃様になるはずだったのにおかしいわよね」
「さぁ、どうかしらね」
語彙力のない私は上手い返事が出来ない。それを見かねてか兵士が私たちの間に割って入り、エミリアを威嚇する。
「王妃様を侮辱するな! この魔女め!」
「あら怖いわ。私だって被害者なのに」
「被害者!? 姉の婚約者と浮気し、更に殺害を目論んだやつのどこが被害者なんだ」
す、すごい兵士さん口が達者だ。エミリアを言い負かしてくれるのでは……?
しかしエミリアはそんな言葉に意にも返さず、ふふんと鼻で笑う。
「私は被害者、貴女は加害者。運命でそう決まっているのですよ」
運命……?
エミリアの言っていることはよく分からない。
それは兵士も同じだったようで、彼ははあと深いため息を吐くと、吐き捨てるようにこう言った。
「狂っちまってるな……。イリア様出ましょう。もうあの女に構っている暇はありません」
「ええそうね」
私は頷き、逃げるようにして階段をかけ上がる。そして後ろの方からエミリアの声が響いた。
「また会いましょうお姉様、きっと運命は変えられないのだから」
運命は変えられないーー?
エミリアの言葉は私の胸に深い影を落としたのだった。
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