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寿司

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エンディング後

悪役令嬢、頑張る

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 ミラン先生に貰った可愛いデザインの下着も身に付けたし、髪や肌の手入れも完璧。

 鏡で確認したがうん、艶々だ。

 でも今日もロキは忙しそうで、一緒に寝れなそうだ。
 ……それなら仕方ないよね。仕事を中断させてまでこんなことに付き合わせるなんて悪いし。

 うん、仕方ない仕方ない。作戦はまた今度にしよう。

 そう思った私は、ひとりもそもそとダブルベッドに潜り込もうとした。

 ほっとした気持ちがなかったと言えば嘘になる。

「おー、お疲れイリア」

 びくんと心臓が跳ね上がった。
 恐る恐る後ろを振り向くと勿論いるのは私の旦那様。

「お疲れ様、ロキ。今日はもう寝るの? 」

「ああ。仕事も片付いたし、久しぶりに早く寝ることにした」

 ふわぁとロキは欠伸を一つ。

「そうなんだ……良かったわね」

「ああ、最近疲れが溜まってるしな」

 そして何の躊躇もなくダブルベッドに潜り込んだ。

 昼間あんな会話をしたからだろう、いつもより緊張して仕方ない。彼が横にいるだけで全身が熱くなる気がする。

「そういや、二人で寝るのも久しぶりだな」

「え、え、え、ええそうね」

 まずい。声が裏返る。

「どうした、何か顔赤いぞ。熱でもあるのか? 」

「ううん、ないよ。ちょっとのぼせたのかも」

 それなら良いけど、ロキはごろりと背を向ける。

 まずい、これではロマンチックなムードなんて出来ない。
 今日はもう諦めようか? 私の中の悪魔が囁く。
 
 そのとき、ミラン先生のあの言葉が脳裏に浮かんだ。

「浮気する人もいるみたいですよ」

 ロキに浮気なんてされたら……私。

 そう思うと勝手に体が動いていた。私は後ろからロキに抱きつく。

「ど、どうしたイリア!? 」

「ね、ロキ……しようよ」

 彼から返事はない。

 あれ?  何か不味いこと言ったかしら。

 すると少し間をあけて彼から返事が来た。

「……何を? 」

「何って……その、あの……えっと……」

 いざ聞かれるとドギマギしてしまい答えを返せない私。
 するとロキが急に上体を起こし、私を押し倒す。

「それ、意味分かって言ってるの?」

 獣のようにギラつく彼の瞳。やや上気した頬が色っぽい。私の肩に触れている彼の手も、火傷するんじゃないかと思うくらい熱い。

「わ、分かってるよ。私だって子どもじゃな……んっ」

 不意に塞がれる唇。
 そして離された後、彼の荒い息遣いがすぐそこにあった。

 ……怖い。

 そんな感情があったのは嘘じゃない。しかし今はそれを隠し通さなきゃいけない。

 私は彼と別れたくない。
 しかし、ロキはあっさりと手を離すと、元の位置に戻った。

「え、ロキ!? 何で!? 」

「嘘だよ、冗談だ」

 もう愛想つかされていたのか……。そう思うと私の目からは勝手に涙が溢れ落ちた。

「は!? 何で泣いてるんだよ」

「だって……ロキはもう私のこと嫌いなんでしょ? だから……辞めちゃったんじゃ……」

「違う違う!! ただお前が震えてるから……」

「え? 」

 そして私は気がつく。いつの間にか指先がブルブルと小刻みに震えていた。
 怖くなんてないはずなのに、体は正直だ。

「ご、ごめん。私、こんなはずじゃ……」

 はぁ、とロキがため息を吐いた。

「どうせ誰かに吹き込まれたんだろ? お世継ぎはどうなってますかーだの、このままじゃ浮気されちゃいますよーとでも言われたのか」

 ギクリ。大正解。

「正解……」

「あのなぁ、そりゃ俺だって男だ。そういうことをしたいとは思うよ。でもそれ以上にイリアの嫌がること、怖がることはしたくない」

「ロキ……」

「だからもう早く寝ろ寝ろ。明日も朝早いんだろ? 」

「ありがと……」

 そして私は彼の頬に口づける。

「大好きよ」

「……そんなことしなくても滅茶苦茶好きだっての」

 彼が一人小さく呟いたのを私には確かに聞こえた。
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