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エンディング後
悪役令嬢、不穏な空気を感じる
しおりを挟む朝起きると、何故だかお城の中が騒がしかった。
ラビネに尋ねてみても、彼女はただ切羽詰まった表情で、イリア様はもう少しお待ち下さいと繰り返すばかりであった。
そして部屋の扉は固く閉ざされ、誰かの魔法なのだろうか? 窓すら開けられなくなっていた。
異常事態が起きているということは、流石の私にも分かった。
ロキと繋がっているはずの通信機も応答がなく、ただ私はベッドに転がるぐらいしかやることがなかった。
他国が攻めてきたのだろうか?
とも思ったが、窓から見える城下町はいつもと変わらない。
「まあ、火事か何かかしらね……」
そしてこの騒ぎの正体は私の予想を覆すものだったーー。
◇◇◇
お昼頃になって私に会いに来たロキが告げたのは、とんでもないことであった。
「……エミリアが脱獄した」
「エミリアが脱獄した? 」
驚きを隠せない私は思わず彼の言葉を繰り返す。
苦虫を噛み潰したような顔をしてロキが頷く。
「昨日の深夜、見回りに来た兵士が報告に来た、彼女の姿だけがまるで煙のように消えていたんだ……」
「でも、見張りの人が……! 」
「看守はまるで酒に酔わされたように理性を失っていた。魔法、とも考えたのだがエミリアの牢には魔法が使えないように細工が施されてたはずなんだ」
「でもっ、でも! エミリアは拘束もされてて……」
そうだ、自由に動けるわけがない。とロキが頷く。
「でも、確かに拘束具は外されていた。どういう手を使ったのかは不明だ……ただ」
「ただ? 」
するとロキは懐からエメラルドグリーンの色をした液体が入ったビンを取り出した。
光に照らされて艶々と光るそれは、見るからに怪しい。毒……? だろうか、それにしてもなぜそんなものをエミリアが持っていたのだろうか?
「何これ? 」
「分からない。これだけが残されていたんだ」
するとロキはポンとビンの栓を抜く。すると辺りには何だか色々な花の匂いを混ぜ合わせたような不思議な香りが漂い始めた。
「ただの香水だとは思うんだがな」
どこか懐かしいような、眠たくなるような香りだ。
うん、この匂い私は嫌いじゃないかも。
「良い匂いね……でも、これ、なんか……」
おかしい。急に呂律が回らない。
途端に耐え難いような睡魔が私に襲い掛かってきた。
「何……これ。体が……重い………」
「イリア!? 」
ロキの顔が二重に見える。
どうしたの? 彼の酷く焦っている顔が……。
段々と遠くに……。
あれ? 何か目が回る……。
「ロ……キ」
そうしてそのまま私は意識を深い闇の底に落としてしまった。
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