蒼炎の魔法使い

山野

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第一話 異世界だと気付いたら詰でた

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 月明かりがさす広大な樹海の中で一人の男が倒れていた。

 ジーンズにシャツ、黒髪黒目の可もなく不可もなくな顔立ち、言っちゃえばただのモブ。

 男の名前は笹山翔ささやましょう、日本の大学に通う18歳の少年だ。

 風が吹き木々が騒めいて男が目を覚ます。

「……ここどこだ?」

 スマホを取り出し圏外なのを確かめてから、真っ赤に染まった大きな満月を見上げて呟いた。

 うん、今俺絶賛パニック中! なんせ目が覚めれば知らない場所! 見たこともない大きな木々! スマホは圏外で助けも呼べない! 何これ詰んでない?!

 とりあえず体に異常がないか【分析魔法アナライズ】を心の中で唱える。

「体の方に特に問題はなしっと」

 ここに来る前の事を思い出してみる。

 んー確か大学の帰りに特殊な魔力を感じて行ってみれば大きな黒い渦、なんかヤバイ!! そう思って全速力で逃げようとしたら、物凄い勢いで吸い込まれたんだよなぁ。


 転移魔法? 誰が? オカン? いやそれはない、そんな魔法は使えないはず…… それにこんな森に飛ばす必要もない。

 じゃあ誰が? っていうか人為的な物なのか? それとも何か超常現象的な……

 思考の海に沈みかけたが、周りから無数に感じる刺々しい魔力がそうはさせなかった。

「……でかい魔力持ってるヤツ多すぎじゃね?森のあちこちにヤバそうなのが潜んでるんですけっど!」

 何?! 魔法使いの秘境かなんかに招待されちゃったの? もしそうなら絶対厄介な事になりますやん、嫌ですやん。

「とりあえず比較的小さな魔力の方を行くとしますか」

 男は立ち上がりその方へ歩き出す。


 小一時間程歩くと少し開けた場所に出たので少しの休憩を取るために腰を下ろす。

 しっかし広大だなーどれだけ続いてるんだ? 空飛んで全体を確認したいけど、あの大きな魔力の持ち主達に気付かれたくないしなぁ、いやいっその事感付いてもらって事情説明する方がいいのか?

 そんなことを考えていたら後ろからそれが地響きと共に物凄い勢いで何かが迫ってくる。

 目の前に現れたのは3メートル程の左目を切り裂かれ見えてないであろう目を持つ黒い狼。

 何?! 何?! 何?! こんな大きさの黒い狼とか存在するわけないじゃん! いや目の前にいるけど!そういうことじゃなくて!! 逃げないと! 早く逃げないと!

 ……ん?あれれーおかしいなぁ? 何で体が動かないのかなぁ?!
 腰を抜かし震えていた。 恐怖で下の蛇口が緩んで油断すると流れ出てしまいそうである。

 あ、俺終わったわ! 先立つ不孝をお許しくださいませご両親様、お願いだから俺のノートPCの古典文学っていうファイルだけは覗かないで!!!!
 死んでからもう一回死んじゃう!!!! 過去の素晴らしき文学を隠れ蓑に、男の欲望と夢を詰め込んだファイルである。

 今理解した、これ異世界だわ、3メートル越えの狼なんて地球に存在しねぇし!
 クソッ!こんな状況じゃなけりゃ、「異世界キターーーーーーーーーーーーー」って大声で叫びたいとこなのに!

 つか普通異世界行く時ってトラックに引かれたり、どっかの国のお偉いさんに召喚されるもんじゃないの?!
 んで女神とか出て来てチート能力くれるもんでしょ普通?! 何も与えられず体一つで転移とか断固抗議させて頂きますぜ女神さんよぉ!!

 狼が一歩、また一歩と近づいてくる。

 ごめんなさい神様女神様!! 断固抗議とか嘘です!! ネタです!!

 今すぐ誰よりも狂信者になるので今だけでもたすけてぇぇぇぇぇぇええええ!!!

 そんなことを思っていると後ろから透き通った聞き心地のいい女性の声が聞こえた。

「#$"&л%$ê*/」

 振り向くと月夜に負けじと輝きを放つ銀髪に今夜の月よりも深く赤い目、透き通った白い肌におよそ人とはかけ離れた美貌を持つ少女が月を背に真っ白なワンピースをなびかせ大鎌を構えていた。

「はははは! おかしいな、死神様がきちゃったよ!!」

 女がさっきよりも大きな声でこちらに話かける

「#$"&л%$ê*/」

 つか何語だよ!意思の疎通を図るために翻訳魔法を心の中で唱える【翻訳魔法トランスレーション
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