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第二十六話 旅立ち
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今俺はと~っても重い空気の中に居た。
「それでショウ… その子は誰? 凄く可愛いとは思うけど。」
赤い瞳には何かの感情が宿っている。 が何の感情かは理解はできない、いやしたくない!
「何をどうやったら森に樹液を取りに行って、可愛い女の子も連れて帰って来るのかしら?」
青い瞳に宿るのは… いやこれ以上目を見れない… 見たくない!!
「エメは旦那様の伴侶だよー!」
とても元気に可愛くこの場の空気が一瞬で氷着く言葉を吐いた
一瞬でルーとフララの瞳から光が消える
「へぇ伴侶、だから貴方の膝の上に座っているのね?」
魔術を展開しようとしている?! 確実に命奪う奴だ! 確実に殺してから蘇らせて絶対服従させるやつだ!
「…ショウ。 結婚したの? 私達もまだなのに…」
大鎌を出し姿が消えた?! 違う!!喉に当たる冷たい刃物の感触… ダメだ! こいつらガチだ!
「エメの旦那様をいじめないで!!」
エメが大声で言うと樹が二人に巻き付き動きを止めた。
「こんな物… 取れない?」
ルーが力ずくでちぎろうとするが全く動かない
「何よこれ、ただの樹じゃないのかしら?」
フララも色々試しているようだが全く効果がないようだ
「それはエメの精霊の力で作った樹。 だから簡単にはちぎれないよ! おねぇちゃん達が大人しくするなら離してあげる!」
どうやらエメの精霊魔術か何かの様だ
「…精霊様?」
「私達にも見える精霊様?これはどういう事か説明してくれないかしら?」
「しようとしたらこうなったんだが… エメ、もう大丈夫だから離してあげて」
「はーい!」
そう元気にいうと二人の拘束を解いてくれた
「俺は説明下手だからエメにお願いしていい?」
「良いけどおっきくして!」
「わかった」
エメの頭に手を乗せて力をあげる。
すると体が光り出しあの色っぽい25歳くらいの女性へと変わった。胸は相変わらず大きく柔らかそうだ
「「………」」
二人共その豊満な胸を見て絶句
一泊置いてエメが説明を始めた。
「…そうエメ様は大精霊様なの」
「大精霊様をこの目で拝める日が来るなんて、長生きはしてみるものね」
二人は大層驚いていた
何をそんなに驚くのかという顔をしているとフララが呆れた顔で口を開く
「貴方大精霊様がどんな存在かわかってないでしょ?」
「なんとなく俺が想像してるのは要するに樹をつかさどる偉い子って事でしょ? 例えば死んじゃうとその周辺の樹が死んじゃうみたいな。」
ファンタジーでも精霊ってよく出るけど、自然を具現化したようなものだよね要するに
「…ショウ、正解に近いけど規模が違う、例えばエメ様が死んだとする。 そうするとこの世界全部の樹が死ぬ。 場所によっては神として崇められてさえいる」
「…マジ?」
「マジです。 旦那様は私をどんな存在だと思ってんでしょうか?」
俺の嫁がパンパない件
「いやぶっちゃけ心の中で、異世界精霊きたーーーーーーーーーーーーーーーーぐらいにしか思ってなかったですごめんなさい。」
「口に出さなかったのだけはショウの成長だと認める。」
「簡単に言えば世界の一部ね、そんな大精霊を伴侶って貴方どうかしてるわ」
「俺もそう思うよ…」
「お二人共。 エメ達は同じ男性を愛する女です、もっと気軽で構いません。 エメは元々こんな感じなので気にしないでください。」
「…それじゃあエメ。 これからよろしく」
ルーが手を出す ん?
「大精霊様にっていうのは恐れ多いけど、それでいいなら遠慮しないで行くわ、よろしくねエメ」
フララも手を出す ん?ん?
「はい、よろしくお願いします! 一緒に旦那様を支えていきましょう! 大虐殺でも国の破壊でも、世界を崩壊させるお手伝でもしますよ!」
エメが二人の手をしっかりと握手した。 しかし物騒だよ!なんで俺の周りは物騒なやつばっかりなんだ!
「えっとー二人ともなんかすんなり受け入れてない?」
「エメは大精霊様。 拒む理由がない。 それにショウも帰れるようになるかもしれない」
「これ以上ない位に身元もはっきりしてるし、姿を拝めるだけでもありがたい存在なのよ? 拒む理由なんてないじゃない」
異世界の謎の感覚に俺氏困惑、日本じゃ殆ど神様なんて信じてるやついなかったもんなぁ。 別の国じゃ戦争起こす位信仰あったりもしてたけど。
大好きなご飯屋さんのご飯を食べてたら、神と崇める有名人が来て、それ一緒に食べていいですか? って言われるようなもんか? とんかつなら譲らんがな!
でも三人の仲良く談笑してる姿、凄くいいなぁ。 正直癒される。
エメの事は好きとかそういうのはないけど、大人バージョンも少女バージョンも話してて楽しい。
今は俺の記憶から読み出したのかブラウスとスカートという恰好だ、正直胸がでかすぎてその服はやばいです。服は自在に変えれるらしい
月明かりが差し込み優しく風が入ってくる部屋の窓の側で、風を感じながら、そんな三人を微笑むように見つめていた。
「私はこっちね」「エメはこれですね」「…ショウはどれがいい?」
三人が談笑してる所からルーが俺に呼びかける。
楽しそうに笑顔を浮かべる三人の下へ、幸せを噛みしめながら向かったのだった。
◇ ◇ ◇ ◇
今日は俺の伯爵位の授与式だ、場所は騎士叙任式を行った広場のホール。
普通は謁見の間で王が直接与えるのが、英雄の爵位授与ということで国民にも見れるようにという配慮だ。 授与はルーがやってくれるらしい
正直めちゃくちゃ緊張する。 何故俺が貴族なんかになるかというと
時は国王が戻り、事情説明が終わった所まで遡る
謁見の間の王座には王とその家族。 それと宰相。 段が下がり大勢の貴族が居た
「ご苦労だったショウよ、お前が居なければルーメリアを失ってしまう所でもあった。 そしてこの国を守ってくれてありがとう」
王が頭を下げた
「とんでもありません、頭をお上げ下さい。」
俺は跪きながら答える
「全くまさか本当に英雄になってしまうとはな、こうなるとお前にルーメリアをやらんと仕方なくなるではないか」
ん? 何故?
「また今回もお前の筋書き通りだろ?」
もうヤダこのパターン
「おとーさま! おとーさま! これも真おにーさまの考えた通りの展開なのですか?」
シルメが可愛く父に聞く
「悔しいがきっとそうだろう、麗しきフラミレッラ様をも手籠めにした男だ」
人聞きが悪いぞルーの兄
「こやつは、いち早く黒幕を掴み現状を把握し、国王とその家族を内密に国外に退避させ、三人だけで防衛。 犯人も捕まえ背後の組織まで聞き出しておる。 そしてルーを抱きながら街を練り歩いて帰還」
結果だけ聴くとすげーな! 俺の考え通りだとしたらとんだバケモンだよ! 今更何も考えてないなんて言える空気じゃない…
「知略にも長けるとは末恐ろしい男よ」
違う! 違うの! 俺の事そんなに高く評価しないで! メッキがはがれた時の反動が怖い!
「だがこやつはただの騎士だ、多大な貢献をしてくれたが伯爵位止まりだろう。 それでは本来ならばルーはやれん。 だがこやつはまたやりおったのだ」
「何ですがおとーさま?」
シルメが可愛く首をかしげて聞く
「また国民を巻き込んだのだよ、国を救った英雄。 それに抱かれ嬉しそうに笑う姫。 話題にならないわけがあるまい? 国民もこの二人がくっつくのを熱望しておる。 そして爵位を得ることによって全て整ってしまうのだ。 外堀を埋められたのだよ」
なんやて?! そないなことあるかいな!! ただルーに可愛く抱っこしてって言われたからその願い叶えただけ…はっ?!
ルーの顔を見るとニヤニヤしていた。 図ったな?! あの時の何か黒さを感じる笑みはこれだったのか。 こうなる事を予期してたな?! 外堀を埋められたのは俺の方じゃねぇか!
「お前のようなやつがいればこの国も安心だな、はっはっはっ!」
王が豪快に笑う
「では爵位の授与式は前と同じ場所で一週間後に行うので準備しておくように」
とそんな事があり今日の爵位授与式というわけだ。ったくルーのやつ外堀を埋めるような事しやがって。 そんな事しなくても貰うつもりだっつーの
王達はこの場には来ない。 授与式後のパーティーの支度があるそうだ
そんな事を思いながら大歓声の中を歩いて行く。 緊張で何を言っているかまでは頭に入ってこない。 今日は特に緊張する日なのだ
そしてホールの中央に着きいつかのように跪く。
そうするとルーが出て来た。今日はいつものワンピースではなく髪をアップにしたプリンセスドレスバージョンだ。 たまらなく美しい。
勿論みんな息を飲み大歓声が一瞬やみ、一泊置いてまた木霊した。
そしてあの時の様に俺の前に立つ。
「ショウよ、そなたは国を救いそして二度も私を救った。 大変な功績です。 よってレビルダ・アル・リールモルト国王陛下に代わり伯爵位を授ける。」
ルーが俺に蓋が開いた箱を手渡す。 中には金色に輝くメダルが入っていた。 これがこの国の伯爵と証明するものらしい。
「ありがたき幸せ」
箱を受け取る
「願いがあれば聞き入れると国王陛下から聞いている。 ショウよ、願いがあれば申せ」
ふぅーここが一番の勝負所。 俺が緊張していたのはこれが原因だ!
「はい、レビルダ・アル・リールモルト国王陛下とルーメリア・レネ・リールモルト王女殿下にお願いしたい事があります」
「申せ」
俺は跪いてルーの左手を取った
会場に詰めていた国民全員が息を飲む。
そんな何とも言えない緊張感の中口を開いた。
「俺は出会ってすぐルーの事好きになったよ。 ルーの美しい瞳に、髪に、綺麗な心に、弱い所も、ルーの全部が大好きだ。 ルーの持つ魅了の力の一番の被害者は俺だね」
そういってクスっとお互い笑う。
「愛してる。俺と結婚してくれ」
そういって指輪を左手の薬指に嵌めると、国民全体からどっと歓声が起こるがすぐに静まり返った。
ルーの答えを聞くためだ。 18で結婚…早いけど、今後も離れるつもりはない。 正直早いか遅いかだ、覚悟はとっくの昔に決まってる。
ルーが嬉しそうに瞳に涙を溜め右手で口元を抑えている
そうしてルーが意を決したように桜色の綺麗な唇を震わせながら言葉を紡ぐ
「…ショウ嬉しい、私も貴方と出会ってすぐに好きになった。 貴方の優しい所、私を守る為に頑張ってくれる所、いざという時はとても頼りになる所、情けない所も、弱い所も、本当に、本当に全部大好きだよ。」
最高に輝く笑顔で答えてくれる
辺りの熱気が増す、周りが歓喜で騒ぎ出した
「でも!」
ルーが大声を続けると、周りも黙った。
「ごめんなさい。」
え? 否定の言葉に内臓が全部口から出て着そうな上がってくるような感覚。
「私は貴方とは結婚できない。」
何で? 俺フラれたのか? 胃に鉛でも入れたのかと思う様な重たさに気持ち悪さ。 固形物を吐き出してしまいそうだった
「私には大事な約束があるから。」
約束? なんのだよ… 俺よりも大事なのかよ… 今までの毎日は嘘だったのかよ…
「ショウ誓いの言葉、覚えてる?」
今更何の話だ? さっぱりわからない… ダメだ何も考えたくない今すぐここから去りたい。 フララも俺の事なんて…
「…」
跪いたまま何も答えられなかった。
「ショウが立ててくれた誓い。 今それを果たして。」
俺が立てた誓い……… そうか… そういう事か…
「わかった」
俺は立ち上がりお姫様抱っこして走り出しす。
走りながら首に抱き着いているルーに話しかける。
「ルーは意地悪だね、俺がどれだけ絶望感じたかわかってる?」
ルーは俺が爵位を貰って結婚してしまうとこの国から出れなくなるので、このまま攫って国を出るという事を考えていたのだ。
自分で誓った事なのに動揺のあまり忘れてたわ!
「ごめんなさい、私そんなにうまく話せるほうでもないから」
ちょっと申し訳なさそうな顔だった
「じゃあなんで外堀を埋めるような真似をしたの?」
「お父様は多分怒らない。 そのうち出ていきたいっていうのを知っていたし。 だから帰ってきていつでも一緒になれるように爵位は貰って欲しかった。」
「後…」
そういうと視線を泳がせ顔を真っ赤にして首に回す腕に力が入った。
「プロポーズはしてほしかったから」
真っすぐ俺の目をみて頬を真っ赤に染める彼女の全部が欲しい。 本当にそう思う
許しちゃうよ、そんな顔見せられたんじゃ
「じゃあ断られて結婚はできないけど、誓いのキスはしていい?」
「うん。 何を誓うの?」
「ずっと一緒にいることを誓うよ」
「…そう。」
走りながらルーの唇を奪った。
周りからは祝福の声が多数聞こえてくる。
「姫様を幸せにしてやんな!」「絶対に泣かせんなよ!泣かせたら殺してやるぞ!」「ルーメリア様を大事にしてくださいませ!」「いつでも帰ってこい!この国の国民はいつでもお前を受けいれるぞ!」「いつでも姫様と帰ってきて!」「たまには帰って姫様を見せてくれ! じゃないとルーメニニュウムが!」
まるで俺達が今からこの国を出て行くのを知っているかのようにな口ぶりだった。
そして街と外との境界部分の北の門の前まで来たのだが…
「国王様! お兄様、シルメ、王妃様方! 貴方達まで!」
そう、そこには見送りとしてルーの家族や、兵士長やアルド、一緒に訓練した仲間なんかが集まっていた
俺はそっとルーを下ろす
「私がいつまでもやられてばかりだと思ったか? これくらいのことぐらいはできるぞ?」
国王が悪戯が成功した子供のような顔で笑う
街中が祝福してくれたのも国王が事前に今日国を出るだろうと踏んで、その際は祝福するように通達していたのだ。
「ルー幸せになりなさい」
「しっかりと支えてあげるのよ」
「辛い時はいつでも帰ってきていいからね?」
「お母様達… あり…がとう…ございます。」
ルーの母達もルーも泣いていた
「おねーさま、いつか帰ってきて下さい。その時は本当のおにーさまとおねーさまとしてお話しましょう、シルメは泣きません。 次会った感動の為に取っておきます」
シルメがギュッっとルーに抱き着く
「ルー体に気をつけろ」
ルーのお兄様がそれだけだが暖かい表情で声をかける
「そしてショウ。 妹を泣かすな。 何かあれば手紙でも寄こしてこい兄として相談にぐらいはのってやる。」
「ありがとうございます、お兄さん」
「お前ならしっかり王女殿下をお守りできるだろう。しっかりやれよ」
兵士長が背中をパンと叩いてきた。結局一回も勝てなかったな
「ショウお前凄いな俺なんてさっと抜いて王女様と一緒に逃避行とは…」
アルドだ、こいつとの付き合いも地味に長い
「しっかりルーを守ります。みんなさんもしっかりルーの帰る場所を守って下さい」
最後に王が出て来た
「ショウよ、お前は大罪人だ。 リールモルトの至宝と呼ばれる国一番の美人を盗んで行くんだからな。 しばらくは入国を許さん目的を果たしてこい。 だがもし帰ってくる事があれば… その時は父と息子として一緒に酒でも飲みかわそう。 しっかりやれよ」
俺は大号泣した… 人の優しさに触れて、暖かさに触れて。 こっちに来るまでは家族と居る時以外は、ずっと一人で他人の優しさなんて知らなかった。 異世界に飛ばされ右も左も分からず連れてこられたこの国。 ここは俺に取って第二の故郷だ… 必ずまた帰ってこよう。 家族に会う為に。
「ありがどうございまず!」
泣きべそかきながら伝える
「永遠に別れるわけじゃあるまいに、ほら姫を攫って行け、国王の公認だ」
そういって少し潤んだ瞳で王が促した
「はい!」
ルーを再度抱きかかえ城壁の門をくぐる
「「「「「「「「「「「いってらっしゃい!」」」」」」」」」」」
ルーの家族や一緒に訓練した兵士達、城壁の門に詰めてた兵士や、近くにいた国民全員が、走る俺達の背中を見送ってくれた。
「大丈夫貴方は一人じゃない、私もお姉さまも、エメもいる。」
そういって涙を抱きかかえられながらぬぐってくれた。
「わらわの主様ともあろう男が子供みたいじゃのー」
「我の背中を預けるにしては情けないが、人間らしくていいとも思うがな」
「わしはどんな主殿でも従うまで」
「従うだけ」
「従うのみ」
「お前達見送りに来てくれたのか?」
ルチル、ベリル、イオレースが来てくれた
「私が教えたのよ。」
最後に来たのは我が愛しき人の一人。フララだ
「よく今日出るってわかったね」
「貴方の事ですもの、当然でしょう?」
彼女は見惚れる笑顔で微笑む、この人には勝てないな
「おれっちもきたっすよ!」
「お嬢と主様の旅立ちだというのにお前はかわらんな」
師匠と旦那さんだ
「私もいますからね?」
「イレスティさん?! どうして」
「勿論ルーメリア様の専属侍女ですから。 身の回りのお世話がありますので、ついていきますよ!」
「…ショウ、ルーメリアは絶対に引かない。 連れて行くしかない。」
「わかったよ、じゃあイレスティさんも行きましょう」
「おれっち餞別をもってきたっすよ!」
そういって長刀と小太刀を一本ずつ渡してくれた
「これは月華と月影。」
それはどちらも黒い刀身で、見ていると吸い込まれそうなほど不気味で月明かりに生える綺麗な刀だった
「これは伝説の鍛冶屋のアンデッドが打った名刀っす。 うちの旦那の特殊な魔術式が組み込んであり、刃こぼれしても月光で勝手に治ります。 月の光によって切れ味も増します。 満月の日が一番切れるらしいっす、勿論昼間でもよく切れるんで気を付けて下さい。 それと血を吸えば吸う程切れる刀に成長するので、しこたま切って下さい!」
骸骨がニッっと<そう感じる>笑った 怖いよ…
「何か用があればお嬢に頼んで下さい、いつでも助太刀します。」
相変わらず頼もしい旦那さんだ。
「それじゃあ我の背に乗って森の外まで出よう。 乗るがいい」
ルーとイレスティさんが先に乗った、エメは今俺の中だ。
そして俺はゴシック調の黒いワンピースを着た麗しき女性の前に行き片膝を立て跪いて左手を取った。
「フララ、最初は手の届かない高貴で優美で、自分とは次元が違う女性だと思ってた。 でもフララを知れば知るほど好きになっていった。 もうお前なしじゃ生きていけない。 だからってアンデッドにはしないでくれよ?」
冗談を入れてみると、フララも口角を上げた
「愛してる、これからもずっと一緒だ。 一緒に行こう。」
ルーには断れているので正式な結婚はまだだが、俺の気持ちを伝えておきたかった。
左の薬指に指輪を嵌める
「知らない間にずいぶんとエスコートが上手になったのね? 」
フララが今にも泣きだしそうだ
「私は本当に長い間一人だった。 今まで黙っていたけど、私は最初から貴方の事を気になっていたのかもしれないわ。 私も貴方なしなんて考えられない。 これからもずっと一緒よ。 心から愛してるよ、しょう。 」
フララが俺の腕を引っ張り立ち上がらせキスをしてくれた。
そして二人でベリルに乗り込む
「ベリル頼む」
「承知」
そういうと翼を羽ばたかせると、辺りの樹々がしなるほどの風が起こる。
「主様よ、わらわが必要とあらば遠慮なく呼ぶがいい。 たまには散歩もよいのでな、戦闘だけじゃなく、移動の時にでも呼んでたも」
「主殿。 いつでも呼ぶといい。 わしの力が役に立つこともあるだろう」
「あるでしょう」
「あるかも?」
「みんなサンキュー!またね!」
そういうと長く過ごした常闇の森を後にした。
空に出ると久しくみたギラギラとした昼間の太陽だった。今後の異世界の旅に胸が高鳴る。
愛しい二人と、エメが居れば何も怖くない。イレスティさんも守っていこう。
そう思いながら新たな土地へと空を駆けていった。
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森を出る時のステータス
名前】ササヤマショウ
【種族】人間
【年齢】18
【生命力】8000
【魔素量】16800
【魔力量】78000
【筋力】 2060
【速さ】 2090
【知力】 8500
【体力】 2210
【適正魔術】
【火・水・風・土・白・召喚】
【スキル】
【剣術Lv9】【短刀術Lv8】【二刀流Lv7】【体術Lv6】【魔法剣Lv9】【魔法拳Lv6】【気配感知Lv5】【気配遮断Lv4】【魔素操作】【魔素⇔魔力変換】【魔力操作】【魔法創造】【魔力回復大】【マナ操作】【マナ生成】
【称号】
【異世界人】【王女の騎士】【王女の血袋】【宝石泥棒】【二刀嘯風弄月流(笑)開祖】【グールエンペラーの主】【雷狼の主】【フレイムグリフォンの主】【トライデントスネークの主】【常闇の森の支配者】【樹の大精霊の伴侶】【精霊王(仮)】
【常闇の森の支配者】
※東西南北に住まう伝説の魔物を従えし者の称号。召喚時、魔物にステータス補正がかかる。連携がとりやすくなる。
これはありがたい。 合体技とか考えたいな
【樹の大精霊の伴侶】
※樹の大精霊エメの伴侶。 愛が深まるほど魔素量に補正。体 内に居る時のみ、魔力と精霊の力を合わせ樹魔法が使用可能。
愛が深まるってあれしちゃったらどうなるんですかねぇ?
【精霊王(仮)】
※マナの力が扱え、大精霊を伴侶に出来る者の証。 全員を伴侶にすれば仮は取れる
どこかのソシャゲのタイトルかよ! てか全員伴侶って…後四人もいるんですか?
「それでショウ… その子は誰? 凄く可愛いとは思うけど。」
赤い瞳には何かの感情が宿っている。 が何の感情かは理解はできない、いやしたくない!
「何をどうやったら森に樹液を取りに行って、可愛い女の子も連れて帰って来るのかしら?」
青い瞳に宿るのは… いやこれ以上目を見れない… 見たくない!!
「エメは旦那様の伴侶だよー!」
とても元気に可愛くこの場の空気が一瞬で氷着く言葉を吐いた
一瞬でルーとフララの瞳から光が消える
「へぇ伴侶、だから貴方の膝の上に座っているのね?」
魔術を展開しようとしている?! 確実に命奪う奴だ! 確実に殺してから蘇らせて絶対服従させるやつだ!
「…ショウ。 結婚したの? 私達もまだなのに…」
大鎌を出し姿が消えた?! 違う!!喉に当たる冷たい刃物の感触… ダメだ! こいつらガチだ!
「エメの旦那様をいじめないで!!」
エメが大声で言うと樹が二人に巻き付き動きを止めた。
「こんな物… 取れない?」
ルーが力ずくでちぎろうとするが全く動かない
「何よこれ、ただの樹じゃないのかしら?」
フララも色々試しているようだが全く効果がないようだ
「それはエメの精霊の力で作った樹。 だから簡単にはちぎれないよ! おねぇちゃん達が大人しくするなら離してあげる!」
どうやらエメの精霊魔術か何かの様だ
「…精霊様?」
「私達にも見える精霊様?これはどういう事か説明してくれないかしら?」
「しようとしたらこうなったんだが… エメ、もう大丈夫だから離してあげて」
「はーい!」
そう元気にいうと二人の拘束を解いてくれた
「俺は説明下手だからエメにお願いしていい?」
「良いけどおっきくして!」
「わかった」
エメの頭に手を乗せて力をあげる。
すると体が光り出しあの色っぽい25歳くらいの女性へと変わった。胸は相変わらず大きく柔らかそうだ
「「………」」
二人共その豊満な胸を見て絶句
一泊置いてエメが説明を始めた。
「…そうエメ様は大精霊様なの」
「大精霊様をこの目で拝める日が来るなんて、長生きはしてみるものね」
二人は大層驚いていた
何をそんなに驚くのかという顔をしているとフララが呆れた顔で口を開く
「貴方大精霊様がどんな存在かわかってないでしょ?」
「なんとなく俺が想像してるのは要するに樹をつかさどる偉い子って事でしょ? 例えば死んじゃうとその周辺の樹が死んじゃうみたいな。」
ファンタジーでも精霊ってよく出るけど、自然を具現化したようなものだよね要するに
「…ショウ、正解に近いけど規模が違う、例えばエメ様が死んだとする。 そうするとこの世界全部の樹が死ぬ。 場所によっては神として崇められてさえいる」
「…マジ?」
「マジです。 旦那様は私をどんな存在だと思ってんでしょうか?」
俺の嫁がパンパない件
「いやぶっちゃけ心の中で、異世界精霊きたーーーーーーーーーーーーーーーーぐらいにしか思ってなかったですごめんなさい。」
「口に出さなかったのだけはショウの成長だと認める。」
「簡単に言えば世界の一部ね、そんな大精霊を伴侶って貴方どうかしてるわ」
「俺もそう思うよ…」
「お二人共。 エメ達は同じ男性を愛する女です、もっと気軽で構いません。 エメは元々こんな感じなので気にしないでください。」
「…それじゃあエメ。 これからよろしく」
ルーが手を出す ん?
「大精霊様にっていうのは恐れ多いけど、それでいいなら遠慮しないで行くわ、よろしくねエメ」
フララも手を出す ん?ん?
「はい、よろしくお願いします! 一緒に旦那様を支えていきましょう! 大虐殺でも国の破壊でも、世界を崩壊させるお手伝でもしますよ!」
エメが二人の手をしっかりと握手した。 しかし物騒だよ!なんで俺の周りは物騒なやつばっかりなんだ!
「えっとー二人ともなんかすんなり受け入れてない?」
「エメは大精霊様。 拒む理由がない。 それにショウも帰れるようになるかもしれない」
「これ以上ない位に身元もはっきりしてるし、姿を拝めるだけでもありがたい存在なのよ? 拒む理由なんてないじゃない」
異世界の謎の感覚に俺氏困惑、日本じゃ殆ど神様なんて信じてるやついなかったもんなぁ。 別の国じゃ戦争起こす位信仰あったりもしてたけど。
大好きなご飯屋さんのご飯を食べてたら、神と崇める有名人が来て、それ一緒に食べていいですか? って言われるようなもんか? とんかつなら譲らんがな!
でも三人の仲良く談笑してる姿、凄くいいなぁ。 正直癒される。
エメの事は好きとかそういうのはないけど、大人バージョンも少女バージョンも話してて楽しい。
今は俺の記憶から読み出したのかブラウスとスカートという恰好だ、正直胸がでかすぎてその服はやばいです。服は自在に変えれるらしい
月明かりが差し込み優しく風が入ってくる部屋の窓の側で、風を感じながら、そんな三人を微笑むように見つめていた。
「私はこっちね」「エメはこれですね」「…ショウはどれがいい?」
三人が談笑してる所からルーが俺に呼びかける。
楽しそうに笑顔を浮かべる三人の下へ、幸せを噛みしめながら向かったのだった。
◇ ◇ ◇ ◇
今日は俺の伯爵位の授与式だ、場所は騎士叙任式を行った広場のホール。
普通は謁見の間で王が直接与えるのが、英雄の爵位授与ということで国民にも見れるようにという配慮だ。 授与はルーがやってくれるらしい
正直めちゃくちゃ緊張する。 何故俺が貴族なんかになるかというと
時は国王が戻り、事情説明が終わった所まで遡る
謁見の間の王座には王とその家族。 それと宰相。 段が下がり大勢の貴族が居た
「ご苦労だったショウよ、お前が居なければルーメリアを失ってしまう所でもあった。 そしてこの国を守ってくれてありがとう」
王が頭を下げた
「とんでもありません、頭をお上げ下さい。」
俺は跪きながら答える
「全くまさか本当に英雄になってしまうとはな、こうなるとお前にルーメリアをやらんと仕方なくなるではないか」
ん? 何故?
「また今回もお前の筋書き通りだろ?」
もうヤダこのパターン
「おとーさま! おとーさま! これも真おにーさまの考えた通りの展開なのですか?」
シルメが可愛く父に聞く
「悔しいがきっとそうだろう、麗しきフラミレッラ様をも手籠めにした男だ」
人聞きが悪いぞルーの兄
「こやつは、いち早く黒幕を掴み現状を把握し、国王とその家族を内密に国外に退避させ、三人だけで防衛。 犯人も捕まえ背後の組織まで聞き出しておる。 そしてルーを抱きながら街を練り歩いて帰還」
結果だけ聴くとすげーな! 俺の考え通りだとしたらとんだバケモンだよ! 今更何も考えてないなんて言える空気じゃない…
「知略にも長けるとは末恐ろしい男よ」
違う! 違うの! 俺の事そんなに高く評価しないで! メッキがはがれた時の反動が怖い!
「だがこやつはただの騎士だ、多大な貢献をしてくれたが伯爵位止まりだろう。 それでは本来ならばルーはやれん。 だがこやつはまたやりおったのだ」
「何ですがおとーさま?」
シルメが可愛く首をかしげて聞く
「また国民を巻き込んだのだよ、国を救った英雄。 それに抱かれ嬉しそうに笑う姫。 話題にならないわけがあるまい? 国民もこの二人がくっつくのを熱望しておる。 そして爵位を得ることによって全て整ってしまうのだ。 外堀を埋められたのだよ」
なんやて?! そないなことあるかいな!! ただルーに可愛く抱っこしてって言われたからその願い叶えただけ…はっ?!
ルーの顔を見るとニヤニヤしていた。 図ったな?! あの時の何か黒さを感じる笑みはこれだったのか。 こうなる事を予期してたな?! 外堀を埋められたのは俺の方じゃねぇか!
「お前のようなやつがいればこの国も安心だな、はっはっはっ!」
王が豪快に笑う
「では爵位の授与式は前と同じ場所で一週間後に行うので準備しておくように」
とそんな事があり今日の爵位授与式というわけだ。ったくルーのやつ外堀を埋めるような事しやがって。 そんな事しなくても貰うつもりだっつーの
王達はこの場には来ない。 授与式後のパーティーの支度があるそうだ
そんな事を思いながら大歓声の中を歩いて行く。 緊張で何を言っているかまでは頭に入ってこない。 今日は特に緊張する日なのだ
そしてホールの中央に着きいつかのように跪く。
そうするとルーが出て来た。今日はいつものワンピースではなく髪をアップにしたプリンセスドレスバージョンだ。 たまらなく美しい。
勿論みんな息を飲み大歓声が一瞬やみ、一泊置いてまた木霊した。
そしてあの時の様に俺の前に立つ。
「ショウよ、そなたは国を救いそして二度も私を救った。 大変な功績です。 よってレビルダ・アル・リールモルト国王陛下に代わり伯爵位を授ける。」
ルーが俺に蓋が開いた箱を手渡す。 中には金色に輝くメダルが入っていた。 これがこの国の伯爵と証明するものらしい。
「ありがたき幸せ」
箱を受け取る
「願いがあれば聞き入れると国王陛下から聞いている。 ショウよ、願いがあれば申せ」
ふぅーここが一番の勝負所。 俺が緊張していたのはこれが原因だ!
「はい、レビルダ・アル・リールモルト国王陛下とルーメリア・レネ・リールモルト王女殿下にお願いしたい事があります」
「申せ」
俺は跪いてルーの左手を取った
会場に詰めていた国民全員が息を飲む。
そんな何とも言えない緊張感の中口を開いた。
「俺は出会ってすぐルーの事好きになったよ。 ルーの美しい瞳に、髪に、綺麗な心に、弱い所も、ルーの全部が大好きだ。 ルーの持つ魅了の力の一番の被害者は俺だね」
そういってクスっとお互い笑う。
「愛してる。俺と結婚してくれ」
そういって指輪を左手の薬指に嵌めると、国民全体からどっと歓声が起こるがすぐに静まり返った。
ルーの答えを聞くためだ。 18で結婚…早いけど、今後も離れるつもりはない。 正直早いか遅いかだ、覚悟はとっくの昔に決まってる。
ルーが嬉しそうに瞳に涙を溜め右手で口元を抑えている
そうしてルーが意を決したように桜色の綺麗な唇を震わせながら言葉を紡ぐ
「…ショウ嬉しい、私も貴方と出会ってすぐに好きになった。 貴方の優しい所、私を守る為に頑張ってくれる所、いざという時はとても頼りになる所、情けない所も、弱い所も、本当に、本当に全部大好きだよ。」
最高に輝く笑顔で答えてくれる
辺りの熱気が増す、周りが歓喜で騒ぎ出した
「でも!」
ルーが大声を続けると、周りも黙った。
「ごめんなさい。」
え? 否定の言葉に内臓が全部口から出て着そうな上がってくるような感覚。
「私は貴方とは結婚できない。」
何で? 俺フラれたのか? 胃に鉛でも入れたのかと思う様な重たさに気持ち悪さ。 固形物を吐き出してしまいそうだった
「私には大事な約束があるから。」
約束? なんのだよ… 俺よりも大事なのかよ… 今までの毎日は嘘だったのかよ…
「ショウ誓いの言葉、覚えてる?」
今更何の話だ? さっぱりわからない… ダメだ何も考えたくない今すぐここから去りたい。 フララも俺の事なんて…
「…」
跪いたまま何も答えられなかった。
「ショウが立ててくれた誓い。 今それを果たして。」
俺が立てた誓い……… そうか… そういう事か…
「わかった」
俺は立ち上がりお姫様抱っこして走り出しす。
走りながら首に抱き着いているルーに話しかける。
「ルーは意地悪だね、俺がどれだけ絶望感じたかわかってる?」
ルーは俺が爵位を貰って結婚してしまうとこの国から出れなくなるので、このまま攫って国を出るという事を考えていたのだ。
自分で誓った事なのに動揺のあまり忘れてたわ!
「ごめんなさい、私そんなにうまく話せるほうでもないから」
ちょっと申し訳なさそうな顔だった
「じゃあなんで外堀を埋めるような真似をしたの?」
「お父様は多分怒らない。 そのうち出ていきたいっていうのを知っていたし。 だから帰ってきていつでも一緒になれるように爵位は貰って欲しかった。」
「後…」
そういうと視線を泳がせ顔を真っ赤にして首に回す腕に力が入った。
「プロポーズはしてほしかったから」
真っすぐ俺の目をみて頬を真っ赤に染める彼女の全部が欲しい。 本当にそう思う
許しちゃうよ、そんな顔見せられたんじゃ
「じゃあ断られて結婚はできないけど、誓いのキスはしていい?」
「うん。 何を誓うの?」
「ずっと一緒にいることを誓うよ」
「…そう。」
走りながらルーの唇を奪った。
周りからは祝福の声が多数聞こえてくる。
「姫様を幸せにしてやんな!」「絶対に泣かせんなよ!泣かせたら殺してやるぞ!」「ルーメリア様を大事にしてくださいませ!」「いつでも帰ってこい!この国の国民はいつでもお前を受けいれるぞ!」「いつでも姫様と帰ってきて!」「たまには帰って姫様を見せてくれ! じゃないとルーメニニュウムが!」
まるで俺達が今からこの国を出て行くのを知っているかのようにな口ぶりだった。
そして街と外との境界部分の北の門の前まで来たのだが…
「国王様! お兄様、シルメ、王妃様方! 貴方達まで!」
そう、そこには見送りとしてルーの家族や、兵士長やアルド、一緒に訓練した仲間なんかが集まっていた
俺はそっとルーを下ろす
「私がいつまでもやられてばかりだと思ったか? これくらいのことぐらいはできるぞ?」
国王が悪戯が成功した子供のような顔で笑う
街中が祝福してくれたのも国王が事前に今日国を出るだろうと踏んで、その際は祝福するように通達していたのだ。
「ルー幸せになりなさい」
「しっかりと支えてあげるのよ」
「辛い時はいつでも帰ってきていいからね?」
「お母様達… あり…がとう…ございます。」
ルーの母達もルーも泣いていた
「おねーさま、いつか帰ってきて下さい。その時は本当のおにーさまとおねーさまとしてお話しましょう、シルメは泣きません。 次会った感動の為に取っておきます」
シルメがギュッっとルーに抱き着く
「ルー体に気をつけろ」
ルーのお兄様がそれだけだが暖かい表情で声をかける
「そしてショウ。 妹を泣かすな。 何かあれば手紙でも寄こしてこい兄として相談にぐらいはのってやる。」
「ありがとうございます、お兄さん」
「お前ならしっかり王女殿下をお守りできるだろう。しっかりやれよ」
兵士長が背中をパンと叩いてきた。結局一回も勝てなかったな
「ショウお前凄いな俺なんてさっと抜いて王女様と一緒に逃避行とは…」
アルドだ、こいつとの付き合いも地味に長い
「しっかりルーを守ります。みんなさんもしっかりルーの帰る場所を守って下さい」
最後に王が出て来た
「ショウよ、お前は大罪人だ。 リールモルトの至宝と呼ばれる国一番の美人を盗んで行くんだからな。 しばらくは入国を許さん目的を果たしてこい。 だがもし帰ってくる事があれば… その時は父と息子として一緒に酒でも飲みかわそう。 しっかりやれよ」
俺は大号泣した… 人の優しさに触れて、暖かさに触れて。 こっちに来るまでは家族と居る時以外は、ずっと一人で他人の優しさなんて知らなかった。 異世界に飛ばされ右も左も分からず連れてこられたこの国。 ここは俺に取って第二の故郷だ… 必ずまた帰ってこよう。 家族に会う為に。
「ありがどうございまず!」
泣きべそかきながら伝える
「永遠に別れるわけじゃあるまいに、ほら姫を攫って行け、国王の公認だ」
そういって少し潤んだ瞳で王が促した
「はい!」
ルーを再度抱きかかえ城壁の門をくぐる
「「「「「「「「「「「いってらっしゃい!」」」」」」」」」」」
ルーの家族や一緒に訓練した兵士達、城壁の門に詰めてた兵士や、近くにいた国民全員が、走る俺達の背中を見送ってくれた。
「大丈夫貴方は一人じゃない、私もお姉さまも、エメもいる。」
そういって涙を抱きかかえられながらぬぐってくれた。
「わらわの主様ともあろう男が子供みたいじゃのー」
「我の背中を預けるにしては情けないが、人間らしくていいとも思うがな」
「わしはどんな主殿でも従うまで」
「従うだけ」
「従うのみ」
「お前達見送りに来てくれたのか?」
ルチル、ベリル、イオレースが来てくれた
「私が教えたのよ。」
最後に来たのは我が愛しき人の一人。フララだ
「よく今日出るってわかったね」
「貴方の事ですもの、当然でしょう?」
彼女は見惚れる笑顔で微笑む、この人には勝てないな
「おれっちもきたっすよ!」
「お嬢と主様の旅立ちだというのにお前はかわらんな」
師匠と旦那さんだ
「私もいますからね?」
「イレスティさん?! どうして」
「勿論ルーメリア様の専属侍女ですから。 身の回りのお世話がありますので、ついていきますよ!」
「…ショウ、ルーメリアは絶対に引かない。 連れて行くしかない。」
「わかったよ、じゃあイレスティさんも行きましょう」
「おれっち餞別をもってきたっすよ!」
そういって長刀と小太刀を一本ずつ渡してくれた
「これは月華と月影。」
それはどちらも黒い刀身で、見ていると吸い込まれそうなほど不気味で月明かりに生える綺麗な刀だった
「これは伝説の鍛冶屋のアンデッドが打った名刀っす。 うちの旦那の特殊な魔術式が組み込んであり、刃こぼれしても月光で勝手に治ります。 月の光によって切れ味も増します。 満月の日が一番切れるらしいっす、勿論昼間でもよく切れるんで気を付けて下さい。 それと血を吸えば吸う程切れる刀に成長するので、しこたま切って下さい!」
骸骨がニッっと<そう感じる>笑った 怖いよ…
「何か用があればお嬢に頼んで下さい、いつでも助太刀します。」
相変わらず頼もしい旦那さんだ。
「それじゃあ我の背に乗って森の外まで出よう。 乗るがいい」
ルーとイレスティさんが先に乗った、エメは今俺の中だ。
そして俺はゴシック調の黒いワンピースを着た麗しき女性の前に行き片膝を立て跪いて左手を取った。
「フララ、最初は手の届かない高貴で優美で、自分とは次元が違う女性だと思ってた。 でもフララを知れば知るほど好きになっていった。 もうお前なしじゃ生きていけない。 だからってアンデッドにはしないでくれよ?」
冗談を入れてみると、フララも口角を上げた
「愛してる、これからもずっと一緒だ。 一緒に行こう。」
ルーには断れているので正式な結婚はまだだが、俺の気持ちを伝えておきたかった。
左の薬指に指輪を嵌める
「知らない間にずいぶんとエスコートが上手になったのね? 」
フララが今にも泣きだしそうだ
「私は本当に長い間一人だった。 今まで黙っていたけど、私は最初から貴方の事を気になっていたのかもしれないわ。 私も貴方なしなんて考えられない。 これからもずっと一緒よ。 心から愛してるよ、しょう。 」
フララが俺の腕を引っ張り立ち上がらせキスをしてくれた。
そして二人でベリルに乗り込む
「ベリル頼む」
「承知」
そういうと翼を羽ばたかせると、辺りの樹々がしなるほどの風が起こる。
「主様よ、わらわが必要とあらば遠慮なく呼ぶがいい。 たまには散歩もよいのでな、戦闘だけじゃなく、移動の時にでも呼んでたも」
「主殿。 いつでも呼ぶといい。 わしの力が役に立つこともあるだろう」
「あるでしょう」
「あるかも?」
「みんなサンキュー!またね!」
そういうと長く過ごした常闇の森を後にした。
空に出ると久しくみたギラギラとした昼間の太陽だった。今後の異世界の旅に胸が高鳴る。
愛しい二人と、エメが居れば何も怖くない。イレスティさんも守っていこう。
そう思いながら新たな土地へと空を駆けていった。
----------------------------------------------------------
森を出る時のステータス
名前】ササヤマショウ
【種族】人間
【年齢】18
【生命力】8000
【魔素量】16800
【魔力量】78000
【筋力】 2060
【速さ】 2090
【知力】 8500
【体力】 2210
【適正魔術】
【火・水・風・土・白・召喚】
【スキル】
【剣術Lv9】【短刀術Lv8】【二刀流Lv7】【体術Lv6】【魔法剣Lv9】【魔法拳Lv6】【気配感知Lv5】【気配遮断Lv4】【魔素操作】【魔素⇔魔力変換】【魔力操作】【魔法創造】【魔力回復大】【マナ操作】【マナ生成】
【称号】
【異世界人】【王女の騎士】【王女の血袋】【宝石泥棒】【二刀嘯風弄月流(笑)開祖】【グールエンペラーの主】【雷狼の主】【フレイムグリフォンの主】【トライデントスネークの主】【常闇の森の支配者】【樹の大精霊の伴侶】【精霊王(仮)】
【常闇の森の支配者】
※東西南北に住まう伝説の魔物を従えし者の称号。召喚時、魔物にステータス補正がかかる。連携がとりやすくなる。
これはありがたい。 合体技とか考えたいな
【樹の大精霊の伴侶】
※樹の大精霊エメの伴侶。 愛が深まるほど魔素量に補正。体 内に居る時のみ、魔力と精霊の力を合わせ樹魔法が使用可能。
愛が深まるってあれしちゃったらどうなるんですかねぇ?
【精霊王(仮)】
※マナの力が扱え、大精霊を伴侶に出来る者の証。 全員を伴侶にすれば仮は取れる
どこかのソシャゲのタイトルかよ! てか全員伴侶って…後四人もいるんですか?
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