蒼炎の魔法使い

山野

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第四十話 アステルニア王都

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ブラシーナから王都に続く街道を行き交う者達が、場違いにお茶菓子を乗せたテーブルを囲み、優雅にお茶をする集団に目を見張り通り過ぎていく。

その驚いた顔を何度か見送っていたのは、ショウ達とドウガと言うらしい四十代程の大司祭の男だ。

「そうか、君は元は人間だったのか… 変わった運命を背負っているんだね」
紅茶をすすりながら話す男は、すっかり棘がなくなった優しい大司祭の顔になっていた。

「それに、リールモルトの王女殿下に大精霊様、輝人まで一緒とは… なんの引き合わせかは分からないが私はリールモルトへ向かう途中だったんだよ、理由までは言えないがね」
こんな所に男1人だ、何かあるのかもしれないが巻き込まれるつもりはない。

男はそう言い終わると、目を閉じて顎に手を当て何か考えるそぶりをした。

「ショウ君、君に受け取って欲しいものがある」
そう言って男が肩に掛けていたショルダーバッグから銀色のブレスレットを取り出した。

「これは? 何か彫ってある??」
俺はブレスレットを受け取り問いかける

「これは… まぁお守りだよ。 身につけておいてくれると嬉しい。」

「はぁ… まぁ構いませんが…」
俺はおじさん趣味ではないのでプレゼントを貰っても嬉しくないのだが…

「それでドウガさん話は変わりますが… 神は居るんですか?」
俺は日本育ちの現代人だ。 余り神という物に接点がなくよくわからないので聞いてみたかった。

彼は目を瞑り一泊置いて口を開く

「神は…」
彼の目が鋭くなるが、遠くの方から誰かを呼ぶ声が聞こえた。

「…ドウガ様~」 
ドウガ呼ぶ綺麗な鎧を着た五人組が、馬にのり蹄で大地を蹴り土埃を巻き起こしながらこっちに向かって来ていた。

「どうやら時間の様だ。 ショウ君、もし次に会う事があれば、私は私でないかもしれない。 その時は一思いに…」
彼はとても優しい目をしていた。

「どういう事ですか?」
自分の事見失う系男子か?

「ドウガ様探しましたよ!」
馬から降りて鎧を着た男は安堵した様な声でドウガの方へ駆け寄った。

「それでそちらの方々は?」
俺達の方を不審そうに見渡した。

「途中出会ってお茶をご馳走になっていたんだ」
お茶を指差して答えた。

「…こんな所で? そんな事よりもお迎えにあがりました。」
鎧の男は驚いた様だがすぐに職務に戻る

「…わかった。 それでは頼む…」
ドウガは浮かない顔だった。

「それではショウ君達に神の… 旅の無事を祈ってます」
なんか違和感あるな…

「はい、ではまた縁があれば」
俺がそう告げると少し悲しそうな顔をして馬の方に向かっていった。

「みんな行くぞ!」
ドウガに声を掛けた男の号令と共にドウガ乗せ、男達は土埃をあげて去って行った。 リールモルトとは逆の方へ。

すまない。 馬に乗って走り去る彼が一度振り向きそう呟いた様に感じた。

俺たちは風の様に去って行った一行を見送り、再び旅路に着いた。


◇  ◇  ◇  ◇


その後は何度か魔物の襲撃にあったり、朝はイレスティの訓練の相手をしたり、レデリとルチルに魔力操作を教えている内にあっという間に時が経ち王都が見えてきた。

「立派な城壁だなーリールモルと以上じゃないか?」

「ここはアステルニア王国の中心。」

「リールモルトは私やルチルがいるから外敵も少ないしこんな立派な城壁は必要ないのよ」

「お兄ちゃんお腹すいたー、眠いー」

「どんな食材があるか楽しみですね。」

「ここに来るのは二回目だけど、まさかこんな女好きな兄さんと一緒とは思わなかったよ」
みんなが長かった旅路に退屈だったのか街が見えて来ると一斉に元気になった

「そういえばルチル、森を出て大丈夫だったの?」

「わらわの子達がおるから大丈夫じゃ」

「ルチルって子沢山だけど、旦那さんは?」

「みんな拾ってきて育てただけなのじゃ」
ルチルがモジモジしだす

「だから独り身じゃよ、それにわらわは自分より強い雄としか一緒にならん」
何故かルチルの顔が赤い。 ルチルより強い狼ってのも中々いないだろうなぁ

ルチルがモジモジしていると列が前に進み俺達の番が近づいてくる

「カード持ってる人はカード出してね魔法かけるから」
また面倒になっても困るので種族などを魔法で誤魔化す事にしたのだが…

「な、なぁ… なんでみんな年齢の所隠すんだ?」
ルーにフララ、イレスティにエメまで年齢の所を隠している。

「…私の年齢を知るのと、片手を失うのとどっちがいい?」
代償が重いよ!

「知りたいなら教えてあげるわよ、ただ死にながら生きることになるけど」
それって殺すって事だよね?! 

「ご主人様が死にた… 知りたいなら…」
確実に殺る気だよね?! 最近上達した暗殺術使うよね?!

「エメは… ただのノリ!」
お前に関しては何なんだよ!

「わ、わかったよ…」

別に何歳でも関係ないけど女性はそのあたり敏感だからこれ以上は触れないで置こう。
よくよく考えるとレデリ以外はみんな圧倒的に年上なんだよなぁ… 

姉さん女房というか、母も祖母も通り越して先祖じゃん… 先祖女房っていうカテゴリーあるの?

俺はみんなのステータスカードに偽装の魔法をかけて、自分のステータスカードを久々に確認してみる。

【名前】ササヤマショウ
【種族】人間
【年齢】18
【生命力】10000
【魔素量】76800
【魔力量】108000
【筋力】 4060
【速さ】 4090
【知力】 10500
【体力】 4210
【適正魔術】
【火・水・風・土・白・召喚】

【スキル】
【剣術Lv8】【短刀術Lv8】【二刀流Lv7】【体術Lv7】【魔法剣Lv7】【魔法拳Lv7】【気配感知Lv6】【気配遮断Lv6】【魔素操作】【魔素⇔魔力変換】【魔力操作】【魔法創造】【魔力回復大】【マナ操作】【マナ生成】

【称号】
【異世界人】【王女の騎士】【王女の血袋】【宝石泥棒】【二刀嘯風弄月流(笑)開祖】【グールエンペラーの主】【雷狼の主】【フレイムグリフォンの主】【トライデントスネークの主】【常闇の森の支配者】【樹の大精霊の伴侶】【精霊王(仮)】【蒼炎の魔法使い】【Cランク冒険者】【輝人の友】

パラメーターの伸びはそこそこだが、魔素量の伸びが半端ない! おそらく称号【樹の大精霊の伴侶】の、仲が深まる程魔素量が増えるってやつが原因だろうな… 補正凄すぎない?

【蒼炎の魔法使い】
※一定数の人数にその名を認められる事により与えられる二つ名。隠蔽不可

隠蔽出来ないってことは誰かに見られたらこの二つ名がバレるって事か… ブレシーナに入る時はなかったと思うんだが、リールモルトで無駄に活躍が広まったとかそういう事か… 何か恥ずかしいな…

【Cランク冒険者】
※ブレシーナで登録。 隠蔽不可

これも隠蔽不可か。 まぁ職業みたいなもんだしな。 魔法で偽装できるがそこまでする必要はないか

【輝人の友】
※輝人レオナルドの意思を受け継いだ証。 核の力と魔力で【結晶魔法】を使える。

お前の妹可愛いけど辛辣なのは、お前に恨みがあるからじゃないのか?

「なぁルー今の俺ってどんな強さなの?」
ルーにステータスカードの詳細を見せるとルーの顔が火を噴くように赤くなった

「ケダモノなのは知ってるけど… 貴方なんて事してるの…」

「お兄ちゃん流石にそれは体の関係あったとしても…」

「ご主人様凄すぎます… 私は… 拒みはしませんができれば…」

「兄さんが底の底まで落ちているとは思ってなかった。 やっぱり兄さんは兄さんだね」

「主様よ… いや、やめておくのじゃ…」

だからこの世界のステータスカードの詳細を見せる行為ってどういう意味なんだよ?! 何で痴漢を見るような目で俺を見るんだよ!

ルーが軽く咳ばらいをして口を開いた

「知力以外は小隊を任せれる小隊長クラスの実力。」
石をぶつけるだけで死ぬレベルからだいぶ進歩したわ

「魔素量は宮廷魔術師の真ん中辺り。 ジョレーナさんの旦那さんに比べたら遠く及ばない」

「え? あの人そんなに凄い魔術師だったの?!」

「伝説の魔術師の一人。」

「マジか…」
アンデッド軍団おそるべしだな…
意外な事実を知った所で順番が回って来たので前にでる。

今度の入国はCランクで二つ名とは凄いと驚かれたりしたが特に問題なく入国出来た。

門をくぐるとそこには綺麗に並べられた石畳に、優しいレンガ色で統一された建物が立ち並ぶ可愛い街並みだった。

そこらじゅうに露店があり、そこらかしこから料理の匂いや、お店の人の活気ある声が聞こえ、行き交う人も様々で統一感はない。

ここは市場街らしく、露店の他にも色とりどりの野菜や果物、衣類なども綺麗に陳列されており、雑多な中にも秩序があるようで、それを見ているだけで俺達一行を心躍るような気分にさせた。

人種も少し見ただけだが、猫耳や犬耳はもちろんの事、妖精の様な羽を生やしふわふわ浮かびながら移動する物や、植物が擬人化したようなのもいた。

俺は前から考えていたある提案をみんなにすることにする

「みんな! 俺はこの王都で家を買おうと思うんだけどどうかな?」

「…良いと思う。ここはこの大陸のほぼ真ん中に位置してる。」

「貴方の転移があればいつでも帰ってこれし、拠点としてはいいかもしれないわね」

「みんなのおうち?! 大きいのおうちがいい!」

「キッチンが広い所がいいですね」

「兄さんもたまにはまともな事いうんだね。 私の中の兄レベルが全く使えない虫から、少し使える程度の虫になったよ」

「わらわは主様のいる所ならどこでもいいのじゃ! あっいやこれはそういう事ではなくて召喚獣として…」

レデリの中で俺のレベルが上がったらしい、同じ虫ではあるが… うちのペットが可愛すぎる件。
概ねみんな賛成のようだ! よしさっそく不動産だ!

「それで、今うちの財政はどうなのイレスティ?」
フララが金庫番のイレスティの方を向いて聞いた

「白金貨1枚です。」

「「「「「「「…」」」」」」」

馬車での散財がかなり懐に響いていた

「兄さんどんだけ馬車に使い込んだの…」
レデリが呆れていた

「お兄ちゃんは将来どれだけ泣いて頼んでも、無視して毎日酒浸りで生活費をパチンコに全部使う男になる優良株だよ!」
何処が優良株だよ! 紙切れ以下のゴミだよ!

「と、とりあえず冒険者ギルドに行こう、素材を売れば結構なお金になると思うし…」

「…家買える位なら持ってる」

「私も今手元に家が何十件かは買える位はあるわよ」
流石王女と女王! この金持ちどもめ! だがそうはいかん!

「よく聞けみんな!」
俺は皆の方を向き高らかに宣言する

「俺はルーとフララの婚約者、つまり未来の夫だ。 エメに関してはもう夫婦だし、イレスティも… その… 今度ハッキリいいます…」

「はい…」
イレスティはいつもの様に重ねた手をギュッと握り、顔を赤くして下を向いた

「レデリの保護者でもあり、ルチルはペットだ!」

「いやらしい目で見てくる保護者って何?」
い、いやらしい目でなんて見てないんだからね! そりゃかわいいから見ちゃうけど…

「わ、わらわがペット…」
尻尾と耳がシュンとして可愛い

「俺は一家の大黒柱だ!」

「つまり兄さんは綺麗な婚約者二人にお金を出してもらうヒモでなくただのクズだと?」
どうやったらレデリの評価を上げれるの?!

「ま、まぁクズかどうかは置いておいて… そういう事だね。 男のプライドとしてみんなにお金を出してもらうわけにはいかない!」

「お兄ちゃん実際精神的な面ではみんなにおんぶにだっこだもんね」
…返す言葉もありません、支えられまくってます…

「だから金の事は俺に任せてくれ!」
ドン!と言う効果音が聞こえてきそうな勢いで主張できたと思う…

「…ショウがそうしたいならそれでいい。 でも困ったら言って。」

「全く変な所だけ譲らないんだから。 何かあれば遠慮なく頼りなさい」

「魔物狩るお手伝いならするよお兄ちゃん!」

「私は何も出来ませんが… 何かあれば言ってください」

「私の薬、売ればお金にはなるからクズからカスに降格する覚悟があるならいつでも言ってね!」

「…わらわはペット… わらわはペット…」

若干一名目から光が消えているがみんなとても心強い。 レデリも辛辣ではあるが悪い子じゃないのはわかってる


◇  ◇  ◇  ◇

二階建ての両開きのドアをくぐり冒険者ギルドに入るとブレシーナ様な荒くれ物が集まる場所という感じではなく中はとても綺麗で地球で言う区役所的な感じだった

俺達一行が中に入ると美女と美少女の集団に一気に注目が集まるが、こんな綺麗な場所では俺のテンプレレーダーが反応しそうにない…

レデリとルチルは登録へ、俺は肩を落としながらルー素材の買取カウンターの前に来た。

「すみません買取お願いしたいんですけどー」

後ろを向きながら作業している茶髪の髪を下めに束ねた受付嬢に声をかける

「はいはーい、買取ですね」

美人だ… いてっ! ルーに無表情でつねられる… 女の勘とは鋭い物だ
ルーは認めた女性にはあまり嫉妬心を出さないが本来嫉妬深いのだ。 そんなところも可愛かったりする。

「お、お願いします、結構あるんですが…」

「どれくらいですか?」

「えっと沢山?」

「じゃあ査定部屋へ行きましょう!」
そういって俺とルーを最低部屋へと連れて行った

「ここで出して下さい!」

そう言われたので亜空間がバレないように後ろ向きになり、修業中に狩った魔物の死骸を出した。

「こ、これは!B級の魔物に…A級も…S級まで! こんなに沢山! これをどうしたんですか?!」

「どうしたって倒したんですが…」

「こんなにも?! し、失礼ですがランクは?」

「この前登録して試験を通過してCからです」

「となると実質Cに収まっていない冒険者という事ですか…」
受付嬢が考えるようなそぶりをしていた

「あのーまだまだあるんですが…」

「まだあるんですか?!」

「俺もこっちの女の子も沢山持ってるので…この部屋いっぱいになる位には…」
かなり大きな部屋なので手間を考えるとちょっと申し訳なくなる…

「ちょっと時間がかかると思うので外でお待ちいただいても良いですか?」
受付嬢が申し訳なさそうに頭を下げたのでルーと一緒に登録をしている者達の元へ戻る

「なぁいいじゃねぇかよ! ちょっと位俺達と付き合えよ! ちょっと酒を飲むだけじゃねぇ!」
登録が終わって俺達を待っていたみんながゴリゴリのテンプレ下っ端冒険者5人に絡まれていた。

きたきたきたーーーーーーーーーー!!!!
ついに、ついに冒険者ギルドでのテンプレじゃーーー!!

俺が冒険者に飛び出そうとした刹那、ルチルに触れた男が壁にぶっ飛ばされた!

それに驚いた冒険者二人が剣を抜くとルチルが瞬時に無力化して、残りの二人も含め辺りが静まり返る

何で?! おかしいじゃん! 何で俺が居る時だけ発生しないでいない時にテンプレ発生するの?! 願望センサーみたいなのがあるの?!

「ルチル! 俺のテンプレ返してよ! ずっと待ってたのに! 待ってたのに!」

「な、何なのじゃ主様! わらわは火の粉を払っただけじゃ!」
半泣きで揺すられるルチルが困ったように答える

「ルチル、それは気にしないでいいわ。 ただの病気よ」

「…昔から持ってる持病。」

「お兄ちゃん遅かったねぇ後一歩だった!」

「おいたわしやご主人様…」

「兄さんの病気はどんな薬でも治す事の出来ない頭の病」

みんな俺の気もしらないで! お前ら今度好きな物取り上げて俺の辛さを教えてやる!
例えばルーやフララにはキスなし! ………いや俺が耐えられない!!

「お、おい! 大変だ! 今腕の立つ冒険者は居るか?! 緊急案件だ!」
街の門番らしき男が息を切らし血相を変えて慌てて入って来た。

「あっ! お前は蒼炎の魔法使い! 二つ名持ちの冒険者なんて殆どいない! 頼むお前に依頼をしたい!」

何か面倒事に巻き込まれそうだなぁ… 変な所だけ主人公体質やめれ
よく見れば俺達が入国した時にカードチェックをした門番だった…
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