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第六十八話 マトリョーシカな彼女
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俺は落ち着くまでベリルと空の散歩を楽しみ、子供達は孤児院へと連れて行き面倒を見る様に頼んだ
彼と彼女は両親を殺した俺の事を特に恨んでいる様子はなく、むしろ感謝すらしているようだった。 彼、彼女の特殊な環境下で色々と辛かったのだろう
そうして家に帰るとみんなが暖かく迎えてくれ、俺の大好物なベーコンエッグが用意されており、それを食べてると心がじんわりと温まった気がして泣きそうになるが、何とか堪えイレスティに心からの感謝を告げるとイレスティは泣き出してしまい俺は大いに慌てた。
みな俺の話をしっかり聞き優しく俺を労ってくれたのだが、俺の心には罪悪感や罪の意識で出来た楔が深く打ち付けられたままだ…
心を静める為に俺は王都を見下ろせる場所に一人で来た。 ここは人も来ないし一人で過ごすのにはいい場所なのだが、この日は予想もしていなかった男が現れた
「ショウ伯爵ですね?」
振り返るとそこには耳に四つのピアスを付けた旅人の様な恰好をした男が立っていた。 こいつも記憶の中に居た男だ、薬を売りさばいていた幹部の一人。
俺は刀を取り出し向き合う
「大丈夫です、戦う気はありません私は貴方にお礼を言いたくてここまできたのです」
「お礼?」
「はい。 貴方はピンゲラの民を救いました。 そして仲間たちを苦痛から解放してくれた」
彼の顔はとても晴れやかだ
「私はピンゲラがどうなったかを見届ける為の最後の一人。 これでやっと同胞達が喜ぶ土産話を持って会いに行けますよ」
彼は心から嬉しそうな顔をしていた、もう思い残すこともなく死ぬのだろう。
「貴方も死ぬつもりなんですか?」
「死んで罪が消えるわけではありませんが、生きていてはいけないでしょう。 何も救えなかった私には生きている意味はありません…」
「…どうしてみんな…」
「もっと早く貴方に会えればよかったんですけどね、それでは失礼します」
そういって彼はニコっと笑って颯爽と消え、少し離れた場所で起こった爆発音が風に乗って俺の耳まで届いた
「はぁ…」
深く打ち付けられた楔が彼の死によって更に深くめり込み言葉に出来ない感情がため息となり出ていくが、それは心を軽くすることもなく風と共に消えた
そして俺はリンデの両親の遺体を届ける為にダルシエルへと転移
「おーいリンデ」
俺は【チェイサー】を使いリンデをすぐに見つける
「…あんた大丈夫? 寝てないでしょ? 冴えない顔が更に冴えなくなってるわよ?」
俺の顔を見るや否やいじって来た
「まぁ色々あってね、復興の方は?」
「本当に調子悪いみたいね」
いつもの俺なら言い返す所なので少し心配そうな顔をしていた
「倒れた場所がよくてあんまり被害がなかったの。 だから私のやる事もほぼないわね。 まぁいい機会だからこのままダルシエルに戻るわ」
「そっか…」
俺はリンデが居ない生活を考えてしまい少し暗い気分になった
「それじゃあ埋めに行きましょう。 その為に来てくれたんでしょ?」
彼女はいつもの様に笑った。 悲壮感はない
「うん、でも葬儀とか上げないの?」
「死体が見つかってないからね、暫くは生きてる事にすると思うわよ。 教皇と大司祭が同時に居なくなったなんて言えないでしょう?」
「それもそうだね、じゃあ行こうか」
そして俺達は日の光がよく当たる静かでどこか落ち着く丘に着いた
「ここはお母様とお父様が初めて会った場所なんだって、今日はね二人の結婚記念日だからここがいいなって思ったのよ」
両手を広げて丘に立って風を感じる彼女はとても綺麗だ
「そうなんだ…」
「ちょっと暗くならないでよ、もう整理はついてるわ」
リンデは俺なんかと違ってとても強い
「ごめん」
そう言って俺は遺体を取り出し二人で穴を掘りリンデの両親を埋めた
「ありがとうね手伝ってくれて」
彼女は二人を埋めた場所に花を置き俺にお礼を言った
「気にすんなよ」
「それで何があったの? あんた様子が変よ? ただ疲れてるってだけじゃない。 ほらほら言ってみなさい!」
リンデは錫杖の様な物をグリグリと俺に押し付けた
「実は…」
俺は事細かくピンゲラでやった事をリンデに話す
彼女は途中で口をはさむでもなく黙って聞いていた
彼女はこんな俺はどう思うんだろう? 気持ち悪い? 怖い? 狂人? 罪人? 俺は話し終わるのが怖くなっていた。 嫌われたらもう前みたいに一緒にじゃれ合う事も出来なくなってしまうんだろうか…
そう思いながら俺が話終わるとリンデは目を瞑った
そしてそよ風が吹き髪が揺れる
刹那
錫杖の鋭い金属音が鼓膜を揺らす
「ぐはぁ!」
俺はリンデの錫杖で強打され後方へと吹き飛ばされた!
「何すんだよ!」
内臓も破裂したらしく口から血を流しながらリンデの吠えた
「あんたのやったことは許される事じゃない」
彼女の顔は…怒っていた
彼女がこちらへ距離を詰め錫杖を振り下ろすが俺はそれを躱す
振り下ろされた所には小さいクレーターが出来ていた
「本気でやらないとあんた死ぬわよ?」
クソ何だっていうんだよ…
「何でお前と戦わないといけない…」
「うるさい ※※※※ ※※※※ ※※※※ 神聖魔術【セイントアローレイン】 」
彼女がそう唱え終わると空から蒼白い光の矢がショウを襲う
「ちっ、結晶魔法【輝結界】」
俺の出した結界が空から落ちてくる無数の矢を弾くが
「 ※※※※ ※※※※ ※※※※ 神聖棒術【セイントキャノン】」
彼女が走りながら詠唱を終えると錫杖の様な物が青白く輝きだした!
「でぇぇぇええやぁぁああ!」
リンデがその錫杖で結界を突くと結界にヒビが入り錫杖の先から凝縮された聖なる力が砲撃となって飛び出す!
「ぐっ!」
俺はその聖なる力に貫かれ膝をついた
何でだよリンデ… 俺はお前の事なんだかんだ結構好きで信じてたのに… お前は違うのか?
俺は【リカバリー】をかけ体を回復させ刀を出しリンデへと切りかかる
「やっとやる気になったわね、腑抜けたかと思ったわよ」
「誰が腑抜けだよ!脳筋ゴリラ!」
刀と棒がぶつかり火花を散らす
何度もぶつかっては離れを繰り返しお互いに勝機をうかがっていた
そして俺が距離を詰めた時彼女にスキが出来る、ここだ!
俺は彼女を切るべく刀を振るうが彼女と過ごした日々を思い出してしまい一瞬躊躇ってしまった
「甘い!」
そのスキを彼女が見逃すはずもなく激しい打撃が俺の鳩尾に入り後方へ吹き飛び俺は呼吸すらままならない状態となる
クソ魔力も呼吸が乱れてうまく練れない…
彼女が錫杖を鳴らしながら近づいて来るのを感じる。 こんなことになるなら話さなきゃよかった… まさかこんなゴリラにここまでされるなんて…
今までの優しさは映画版特有の一時的な物だったのか? やはり普段はただのゴリラ、お前の物は俺の物精神の奴なんだこいつは!
そして彼女がショウの前迄来ると突然屈んだ
「いててて!」
彼女は笑いながら俺の頬を引っ張った
「少しはましになったじゃない」
「え?」
「あんたの顔よ、罰を与えて欲しかったんでしょ?」
「何で…」
「わかるわよ、私はそういう人達を沢山見てるからね」
「…いつの間にゴリラから聖女にクラスチェンジしたんだよ」
「元々聖女だって言ってるでしょ!」
彼女は引っ張っている頬を更に引っ張った
「イタっ! や、やめろよ!」
「ふふ、元気じゃない。 あんたの周りはあんたを叱ったり罰を与えてくれる人がいないんでしょ?」
その通りだ、みんな俺のすることを否定したりなんかしない
「ここに来た理由も私に罰を与えて欲しかったんでしょ? 一人で来たのがその証拠よ」
言われてみればそうだ、俺は彼女に知らず知らずのうちに救いを求めてしまっている
「さっきのがあんたへの罰よ、もう十分自分で自分を痛めつけたんでしょ?」
彼女は膝で立ち俺の頭を優しく抱いた
「あんたのやった事は人としての道を外れてるわ。 でもねそれで助かる人も大勢いる。 何が正義で何が悪かはわからないし、そんな安い言葉で片付けれる物でもない。 誰も出来なかった事をやったあんたはきっと称えられるでしょう、でも称えられれば称えられる程あんたの心には棘が刺さっていく事になるわ」
彼女の暖かさはとても心地よく安心させてくれて、綺麗な声で紡がれる言葉は心を震わせる
「皆があんたを許しても、私はあんたを許さない。 ちゃんと叱ってあげる。 ちゃんと罰を与えてあげる。 間違った方向に行ったのなら私が引き戻してあげる。 懺悔だって禊にだって付き合ってあげる。」
この人は本物の聖女だ。 間違った時にしっかりと叱ってくれる存在がどれだけ大事か… ガスパヴィオさん達もそういう人が身近にいればまた違っていたのだろう
「だから困ったらいつでも私に頼りなさい」
そう言って優しく笑う彼女の顔から眼が離せなかった、胸の高鳴りが抑えられない
「でもリンデはもう…」
そう彼女はダルシエルに戻ってしまうのだ
するとリンデは立ち上がり手を出した
「………帰るわよ我が家へ」
「え?」
「あんたみたいな危なっかしい人をほっといたら聖女失格じゃない、あんたの道は私が照らしてあげるって言ったでしょ?」
震える位嬉しかった。
「いつからお前の家になったんだよ」
「似たようなもんじゃない」
「凄い精神力ですね」
流石お前の物は俺の物精神
「聖女ですから」
リンデは腰に手を当てドヤ顔だ
「褒めてねぇーんだよ!」
こんなやり取りをずっとしていたい
「え? そうなの?」
彼女のキョトンとした顔がとても可愛い
「俺のお前に対する聖女のイメージがまた壊されたよ」
最初は聖女じゃなくただの脳筋ゴリラだと思わされた、でも彼女は聖女の皮をかぶって、ゴリラの皮をかぶった聖女だったのだ、これからはゴリラ聖女じゃなくマトリョーシカ聖女の方がいいのではないだろうか?
「何よそれ、まぁいいわ早く帰りましょう」
「おう!」
彼女の手を取り立ち上がって屋敷へと転移する頃には、俺の心に深く打ち付けられた楔はリンデの優しさによって取り除かれ、重かった心がとても軽くなっていた
◇ ◇ ◇ ◇
戦いばかりだった日々に疲れダラダラと過ごすとあっという間に時間が一週間流れ俺はルーとフララを連れて城に向かっていた
「これってピンゲラの事の事情説明だよね?」
「…間違いなくそうだと思う」
「でも何で俺ってバレたのかな?」
「黒髪で黒目、それに蒼い炎を使うなんて貴方しかいないんだからすぐにバレるわよ」
「はぁ… また変な事にならないといいけど…」
俺が溜息をつくと二人とも顔を見合わせ笑っていた
そうして歩いていると城に着き、三人で王しかない部屋に入る
「それで…お前がピンゲラに神罰の蒼炎をもたらしたという事でいいのだな?」
国王が開口一番単刀直入に聞いて来たのだが…
何ですかその神罰の蒼炎って?! ちょっと中二心が擽られるんですが?!
「神罰の蒼炎っていうのはよくわかりませんが、僕がやったのは間違いないです」
「何故そんな事を?」
「…ムシャクシャしてやりました… うっ!」
両脇から肘内が飛んでくる
「…真面目に」
「はい… まぁ個人的な理由ですよ」
「だろうな」
え?
「一先ず何があったのか説明してくれ」
「ええ実は…」
そうして俺はダルシエルの事やピンゲラであった事を話した
「なるほどまさかダルシエルの教皇があの組織のトップだとは…」
国王は心底驚いたような顔をした後真面目を作り思い口を開いた
「にしてもあの三国の民は本当に惨い扱いを受けていたのだ。 私も何とかしたかったのだが何分他国なのでな手を出す事も出来ず指をくわえてみている事しかできなかったんだ。 私が言う事じゃないかもしれないがありがとう」
この王様は本当に人格者だ、スラムはあるがあの手この手でどうにかしようとしているし、民思いだ。 完全に光属性の王様! 現代でいうなら超絶ホワイト企業の社長だな、イレスティの天敵だ
「お前は誰も出来ない事をやってのけた。 本当に素晴らしい事だ、まさに君こそ正義だな」
正義か、勝てば正義なのか? こんな言葉で片付けられるのは少し不快だ… 俺は思わず拳を強く握りしめてしまう
両隣に居るルーとフララがそっと優しく俺の手を握る
「ショ、ショウ伯爵! 何を怒っている? 私の国も君の国づくりに協力するからそんなに怒るな!」
………え?! 国作りって何?! 何のこと言ってんですか?!
「な、何の事でしょう?」
「今更何を言っているのだ? 全てお前の思い描いていたシナリオ通りなのだろう? ダルシエルの教皇の思惑通りに動いたというがそれは嘘だ。 今後のダルシエルに混乱を起こさない為に教皇の進言でピンゲラを落としたとするつもりなのだろう?」
嘘じゃねぇーよ! マジだよ! 心の脆さを利用されたんだよ! 深読みしすぎだろあんた! 読みふかぁ~
「ダルシエルの教皇が仮に魔物や狂信者をコマの様に使って取り戻したとしても統治はうまくいかない、味方を自爆させるようなヤツを民は信じれないからな。 だがお前は兵士や貴族を倒し、しっかりと火葬して慈悲深く弔っている」
違うの! あれはただ邪魔だっただけ! ムシャクシャしてやっただけ! 一歩間違えばただの放火魔!
「そして何よりピンゲラの民が君に統治されるのを望んでいる! 切った相手の事を思い涙を流せるお前に心を打たれたのだろう」
いやマジでゴミとしか思ってなかったよあの時は?!
「そして究めつけはあの二人だ」
ん? 殺さなかった王族か?
「あの二人は国は違うがどちらも国王が平民に手を出し孕ませた子なのだよ。 普段からそのあたりにいる女性を捕まえては行為に及んでいた二人の国王だが避妊魔術を掛け忘れる事も多々あったと聞く。 産まれてしまったからには腐っても国王の血が入っているという事で引き取ることになったらしいのだが母親は王妃達逆恨みされ無慈悲に殺されてな…」
国王は悲しそうな顔をした
だからあの二人はあんなに怯えていたのか… ずっと一人で戦ってたんだな…
「国民も虐げられていた二人の事を知っておるのだ。 お前もそれを知り政治に組み込めばオウマとトプロットもたやすく統治できると考えたのだろう? もう両国で二人を救った英雄と称えられておるぞ、瞬時に民を味方に付けるなど一体どこまで知恵が回るのだお前は」
国王は楽しそうに太ももの叩いた
とりあえず目が回りそうなこの場をうまく切り抜けられない位には知恵は回らないよ!
ダメだ! このパターンは非常にまずい! 何か勘違いしている!
「俺は国なんて作りませんよ!」
ここではっきりしておかないと間違いなく拗れる! ハッキリとした否定が必要だ! ここまで否定すれば大丈夫だろう
「ん? 何故だ? …そうかなるほどな」
何を納得したんだよ?!
「安心しろお前が今考えている通り、あそこは一時的にリールモルト王国の土地としショウ伯爵が納める領地という事にしようと思っている。 私も復興もあるのにいきなり国を作るなどバカバカしい事お前がするなんて思ってないさ、孤児院の子供達もまだまだ伸びるみたいだしな」
んな事考えてねぇーよ! おかしい勘違いが訂正されない! そういう事じゃないんだよ! 着実に外堀が埋まって行ってる!
「ちょ、ちょっと待ってください他の国は認めるんですか?」
「リールモルトは勿論の事、イスブロンからは正式にお前の国作り協力するという声明文が届いておる」
お父さん何してんですかー?! 止めて下さいよ! それにあのエロイ女ボスの一口乗ったっていうのはこういう事か! どいつもこいつも何で肝心な事を教えてくれない?!
「勿論ダルシエルからもだ」
「ダルシエルも?!」
「あぁそうだ、私はダルシエルの代表に手紙を送ったのだ。 」
ゴクリ、俺は唾を飲み込み額から冷や汗がスーっと流れた。 心当たりがあるのだ…
「ちなみに内容は?」
「簡単に言うと、ショウ伯爵が国を作るとしたらダルシエルは協力してくれるかどうかという内容だ。 極秘内容だったので手紙を読まないと私からという事はわからなくしてあるがな」
教皇は塔が倒壊した事故で死んだことになっており、現在のダルシエルのトップは大司祭という事になっている。 が大司祭も死んで今大司祭宛に来る郵便物は全て俺の家のゴリラ聖女へと届くことになっていた…
そして俺はこの前ゴリラ聖女がリビングのテーブルでブツブツ言っていたことを思い出す
『あーミルクティーこぼしちゃったわ… 前半はなんて書いてあるか殆どわからないわね… 協力してるくれるかどうか? 何のことかわからないけど私は聖女、困っているのなら助けるまでよ』
彼女はそう言いながら、ダルシエルは協力しますと書いて返信用封筒に入れ手紙を出した。 その王室用とは違う普通の返信用封筒がアステルニアの国王へ届くものとも知らずに…
あのゴリラ聖女ーーーーーーー!!!!
一瞬でもゴリラを見直した俺を殴りたい!! 一瞬でも好きかもと思った俺を殺したい!!
「この大陸全ての国が協力すると言っているんだ、まったくお前の手腕には驚かされるばかりだよ」
俺が一番驚いてんだよ! どんだけ手回しいいんだよ構ってもらえない人妻を手際よく落とすホストかよ!
俺の両隣に居る二人はクスクスと笑っていた。
おいこれ…何度目だ! 見た事あるぞ! お前らこれも知ってたな?!
「いやでも俺は…」
「ははは、まさかここまでやっておいてやらないなんてことはないだろう、お前は孤児院を作る代わりに私に大きな利益を約束したしな?」
国王の目がすっと鋭くなった
そんな事俺は言って…
『そうですね、僕の息がかかっているかどうかともかく、投資した分はすぐに回収できると思いますよ』
『ほう、すごい自信だな』
『えぇ、難しい事ではないので、この国にも大きな見返りを約束しましょう。』
『わかった良いだろう! 孤児院を作ろう! そして簡易的だが教育施設も用意しよう、そしてその時が来たら私は手を貸すと約束する。 リールモルト国王も喜んで手を貸してくれるだろう』
言ってる!! 言っちゃってる!! 意図は違うけど言ってしまってる!!
「もう後戻りは出来んぞ?」
国王がぐっと顔を近づけニヤリと笑う
「…私は第一王妃」
「私の街も貴方の領地にしていいわよ、国王様? うふふふ」
俺は鼻水を垂らしながら頬を引きつらせた…
俺氏終了のお知らせ…
母さん、父さんお元気ですか? 私は元気ですが何故か偉い人に勘違いされがちです。 どういう教育したらこうなるのか親の顔が見てみたいのでそのうち帰りますね…
◇ ◇ ◇ ◇
ここは地球の日本のとあるマンション
除夜の鐘を聞きながら二人の男女が大晦日恒例のお笑い番組を見て大爆笑していた
「にしてもノリちゃん息子が行方不明だっていうのに笑いすぎじゃない? あの子今頃……あははははは!」
「お前だって笑ってるじゃないか! 明美こそ全く心配してないよね?! プッこれは堪えられないわ!」
ショウの両親だ、地球で想像上の物として扱われている魔法が実際に使える数少ない本物の魔法使い
「まぁ無事みたいだしねぇ、あの子相当成長したわよ。 それに女の子にもモテモテで、ノリちゃんの悪い癖がしっかり遺伝してるみたいね?」
「さ、さぁ何の事だかわらかないねぇ?」
「あら知らないとでも思ってるの?」
ショウの母親の魔力がどんどん高まっていく
「お、おい止めろよ! 家を壊す気か! まだローンが30年残ってるんだぞ!」
「まぁ昔の事だからいいわ」
ショウの母親の魔力が収まって行った
「順調みたいだね」
「えぇあの子が自分で言った事だもん」
「翔もしっかり男になってるな」
ショウの父は成長する息子を思うと自然と笑みが零れる
「ずっと部屋にこもってた時とは違って随分たくましくなったわね」
「そうだな、危ない時もあったけどまぁ俺達はただ観測するだけ」
「そうね、それじゃあ頑張るのよ私の息子」
「「…これはないわープハハハハハ!」」
息子が行方不明な事など全く気にした様子もなく二人はお笑い番組を見ながら腹がよじれる程笑い転げていた
二人は息子が無事な事を知っているのだ、何故なら二人は…
彼と彼女は両親を殺した俺の事を特に恨んでいる様子はなく、むしろ感謝すらしているようだった。 彼、彼女の特殊な環境下で色々と辛かったのだろう
そうして家に帰るとみんなが暖かく迎えてくれ、俺の大好物なベーコンエッグが用意されており、それを食べてると心がじんわりと温まった気がして泣きそうになるが、何とか堪えイレスティに心からの感謝を告げるとイレスティは泣き出してしまい俺は大いに慌てた。
みな俺の話をしっかり聞き優しく俺を労ってくれたのだが、俺の心には罪悪感や罪の意識で出来た楔が深く打ち付けられたままだ…
心を静める為に俺は王都を見下ろせる場所に一人で来た。 ここは人も来ないし一人で過ごすのにはいい場所なのだが、この日は予想もしていなかった男が現れた
「ショウ伯爵ですね?」
振り返るとそこには耳に四つのピアスを付けた旅人の様な恰好をした男が立っていた。 こいつも記憶の中に居た男だ、薬を売りさばいていた幹部の一人。
俺は刀を取り出し向き合う
「大丈夫です、戦う気はありません私は貴方にお礼を言いたくてここまできたのです」
「お礼?」
「はい。 貴方はピンゲラの民を救いました。 そして仲間たちを苦痛から解放してくれた」
彼の顔はとても晴れやかだ
「私はピンゲラがどうなったかを見届ける為の最後の一人。 これでやっと同胞達が喜ぶ土産話を持って会いに行けますよ」
彼は心から嬉しそうな顔をしていた、もう思い残すこともなく死ぬのだろう。
「貴方も死ぬつもりなんですか?」
「死んで罪が消えるわけではありませんが、生きていてはいけないでしょう。 何も救えなかった私には生きている意味はありません…」
「…どうしてみんな…」
「もっと早く貴方に会えればよかったんですけどね、それでは失礼します」
そういって彼はニコっと笑って颯爽と消え、少し離れた場所で起こった爆発音が風に乗って俺の耳まで届いた
「はぁ…」
深く打ち付けられた楔が彼の死によって更に深くめり込み言葉に出来ない感情がため息となり出ていくが、それは心を軽くすることもなく風と共に消えた
そして俺はリンデの両親の遺体を届ける為にダルシエルへと転移
「おーいリンデ」
俺は【チェイサー】を使いリンデをすぐに見つける
「…あんた大丈夫? 寝てないでしょ? 冴えない顔が更に冴えなくなってるわよ?」
俺の顔を見るや否やいじって来た
「まぁ色々あってね、復興の方は?」
「本当に調子悪いみたいね」
いつもの俺なら言い返す所なので少し心配そうな顔をしていた
「倒れた場所がよくてあんまり被害がなかったの。 だから私のやる事もほぼないわね。 まぁいい機会だからこのままダルシエルに戻るわ」
「そっか…」
俺はリンデが居ない生活を考えてしまい少し暗い気分になった
「それじゃあ埋めに行きましょう。 その為に来てくれたんでしょ?」
彼女はいつもの様に笑った。 悲壮感はない
「うん、でも葬儀とか上げないの?」
「死体が見つかってないからね、暫くは生きてる事にすると思うわよ。 教皇と大司祭が同時に居なくなったなんて言えないでしょう?」
「それもそうだね、じゃあ行こうか」
そして俺達は日の光がよく当たる静かでどこか落ち着く丘に着いた
「ここはお母様とお父様が初めて会った場所なんだって、今日はね二人の結婚記念日だからここがいいなって思ったのよ」
両手を広げて丘に立って風を感じる彼女はとても綺麗だ
「そうなんだ…」
「ちょっと暗くならないでよ、もう整理はついてるわ」
リンデは俺なんかと違ってとても強い
「ごめん」
そう言って俺は遺体を取り出し二人で穴を掘りリンデの両親を埋めた
「ありがとうね手伝ってくれて」
彼女は二人を埋めた場所に花を置き俺にお礼を言った
「気にすんなよ」
「それで何があったの? あんた様子が変よ? ただ疲れてるってだけじゃない。 ほらほら言ってみなさい!」
リンデは錫杖の様な物をグリグリと俺に押し付けた
「実は…」
俺は事細かくピンゲラでやった事をリンデに話す
彼女は途中で口をはさむでもなく黙って聞いていた
彼女はこんな俺はどう思うんだろう? 気持ち悪い? 怖い? 狂人? 罪人? 俺は話し終わるのが怖くなっていた。 嫌われたらもう前みたいに一緒にじゃれ合う事も出来なくなってしまうんだろうか…
そう思いながら俺が話終わるとリンデは目を瞑った
そしてそよ風が吹き髪が揺れる
刹那
錫杖の鋭い金属音が鼓膜を揺らす
「ぐはぁ!」
俺はリンデの錫杖で強打され後方へと吹き飛ばされた!
「何すんだよ!」
内臓も破裂したらしく口から血を流しながらリンデの吠えた
「あんたのやったことは許される事じゃない」
彼女の顔は…怒っていた
彼女がこちらへ距離を詰め錫杖を振り下ろすが俺はそれを躱す
振り下ろされた所には小さいクレーターが出来ていた
「本気でやらないとあんた死ぬわよ?」
クソ何だっていうんだよ…
「何でお前と戦わないといけない…」
「うるさい ※※※※ ※※※※ ※※※※ 神聖魔術【セイントアローレイン】 」
彼女がそう唱え終わると空から蒼白い光の矢がショウを襲う
「ちっ、結晶魔法【輝結界】」
俺の出した結界が空から落ちてくる無数の矢を弾くが
「 ※※※※ ※※※※ ※※※※ 神聖棒術【セイントキャノン】」
彼女が走りながら詠唱を終えると錫杖の様な物が青白く輝きだした!
「でぇぇぇええやぁぁああ!」
リンデがその錫杖で結界を突くと結界にヒビが入り錫杖の先から凝縮された聖なる力が砲撃となって飛び出す!
「ぐっ!」
俺はその聖なる力に貫かれ膝をついた
何でだよリンデ… 俺はお前の事なんだかんだ結構好きで信じてたのに… お前は違うのか?
俺は【リカバリー】をかけ体を回復させ刀を出しリンデへと切りかかる
「やっとやる気になったわね、腑抜けたかと思ったわよ」
「誰が腑抜けだよ!脳筋ゴリラ!」
刀と棒がぶつかり火花を散らす
何度もぶつかっては離れを繰り返しお互いに勝機をうかがっていた
そして俺が距離を詰めた時彼女にスキが出来る、ここだ!
俺は彼女を切るべく刀を振るうが彼女と過ごした日々を思い出してしまい一瞬躊躇ってしまった
「甘い!」
そのスキを彼女が見逃すはずもなく激しい打撃が俺の鳩尾に入り後方へ吹き飛び俺は呼吸すらままならない状態となる
クソ魔力も呼吸が乱れてうまく練れない…
彼女が錫杖を鳴らしながら近づいて来るのを感じる。 こんなことになるなら話さなきゃよかった… まさかこんなゴリラにここまでされるなんて…
今までの優しさは映画版特有の一時的な物だったのか? やはり普段はただのゴリラ、お前の物は俺の物精神の奴なんだこいつは!
そして彼女がショウの前迄来ると突然屈んだ
「いててて!」
彼女は笑いながら俺の頬を引っ張った
「少しはましになったじゃない」
「え?」
「あんたの顔よ、罰を与えて欲しかったんでしょ?」
「何で…」
「わかるわよ、私はそういう人達を沢山見てるからね」
「…いつの間にゴリラから聖女にクラスチェンジしたんだよ」
「元々聖女だって言ってるでしょ!」
彼女は引っ張っている頬を更に引っ張った
「イタっ! や、やめろよ!」
「ふふ、元気じゃない。 あんたの周りはあんたを叱ったり罰を与えてくれる人がいないんでしょ?」
その通りだ、みんな俺のすることを否定したりなんかしない
「ここに来た理由も私に罰を与えて欲しかったんでしょ? 一人で来たのがその証拠よ」
言われてみればそうだ、俺は彼女に知らず知らずのうちに救いを求めてしまっている
「さっきのがあんたへの罰よ、もう十分自分で自分を痛めつけたんでしょ?」
彼女は膝で立ち俺の頭を優しく抱いた
「あんたのやった事は人としての道を外れてるわ。 でもねそれで助かる人も大勢いる。 何が正義で何が悪かはわからないし、そんな安い言葉で片付けれる物でもない。 誰も出来なかった事をやったあんたはきっと称えられるでしょう、でも称えられれば称えられる程あんたの心には棘が刺さっていく事になるわ」
彼女の暖かさはとても心地よく安心させてくれて、綺麗な声で紡がれる言葉は心を震わせる
「皆があんたを許しても、私はあんたを許さない。 ちゃんと叱ってあげる。 ちゃんと罰を与えてあげる。 間違った方向に行ったのなら私が引き戻してあげる。 懺悔だって禊にだって付き合ってあげる。」
この人は本物の聖女だ。 間違った時にしっかりと叱ってくれる存在がどれだけ大事か… ガスパヴィオさん達もそういう人が身近にいればまた違っていたのだろう
「だから困ったらいつでも私に頼りなさい」
そう言って優しく笑う彼女の顔から眼が離せなかった、胸の高鳴りが抑えられない
「でもリンデはもう…」
そう彼女はダルシエルに戻ってしまうのだ
するとリンデは立ち上がり手を出した
「………帰るわよ我が家へ」
「え?」
「あんたみたいな危なっかしい人をほっといたら聖女失格じゃない、あんたの道は私が照らしてあげるって言ったでしょ?」
震える位嬉しかった。
「いつからお前の家になったんだよ」
「似たようなもんじゃない」
「凄い精神力ですね」
流石お前の物は俺の物精神
「聖女ですから」
リンデは腰に手を当てドヤ顔だ
「褒めてねぇーんだよ!」
こんなやり取りをずっとしていたい
「え? そうなの?」
彼女のキョトンとした顔がとても可愛い
「俺のお前に対する聖女のイメージがまた壊されたよ」
最初は聖女じゃなくただの脳筋ゴリラだと思わされた、でも彼女は聖女の皮をかぶって、ゴリラの皮をかぶった聖女だったのだ、これからはゴリラ聖女じゃなくマトリョーシカ聖女の方がいいのではないだろうか?
「何よそれ、まぁいいわ早く帰りましょう」
「おう!」
彼女の手を取り立ち上がって屋敷へと転移する頃には、俺の心に深く打ち付けられた楔はリンデの優しさによって取り除かれ、重かった心がとても軽くなっていた
◇ ◇ ◇ ◇
戦いばかりだった日々に疲れダラダラと過ごすとあっという間に時間が一週間流れ俺はルーとフララを連れて城に向かっていた
「これってピンゲラの事の事情説明だよね?」
「…間違いなくそうだと思う」
「でも何で俺ってバレたのかな?」
「黒髪で黒目、それに蒼い炎を使うなんて貴方しかいないんだからすぐにバレるわよ」
「はぁ… また変な事にならないといいけど…」
俺が溜息をつくと二人とも顔を見合わせ笑っていた
そうして歩いていると城に着き、三人で王しかない部屋に入る
「それで…お前がピンゲラに神罰の蒼炎をもたらしたという事でいいのだな?」
国王が開口一番単刀直入に聞いて来たのだが…
何ですかその神罰の蒼炎って?! ちょっと中二心が擽られるんですが?!
「神罰の蒼炎っていうのはよくわかりませんが、僕がやったのは間違いないです」
「何故そんな事を?」
「…ムシャクシャしてやりました… うっ!」
両脇から肘内が飛んでくる
「…真面目に」
「はい… まぁ個人的な理由ですよ」
「だろうな」
え?
「一先ず何があったのか説明してくれ」
「ええ実は…」
そうして俺はダルシエルの事やピンゲラであった事を話した
「なるほどまさかダルシエルの教皇があの組織のトップだとは…」
国王は心底驚いたような顔をした後真面目を作り思い口を開いた
「にしてもあの三国の民は本当に惨い扱いを受けていたのだ。 私も何とかしたかったのだが何分他国なのでな手を出す事も出来ず指をくわえてみている事しかできなかったんだ。 私が言う事じゃないかもしれないがありがとう」
この王様は本当に人格者だ、スラムはあるがあの手この手でどうにかしようとしているし、民思いだ。 完全に光属性の王様! 現代でいうなら超絶ホワイト企業の社長だな、イレスティの天敵だ
「お前は誰も出来ない事をやってのけた。 本当に素晴らしい事だ、まさに君こそ正義だな」
正義か、勝てば正義なのか? こんな言葉で片付けられるのは少し不快だ… 俺は思わず拳を強く握りしめてしまう
両隣に居るルーとフララがそっと優しく俺の手を握る
「ショ、ショウ伯爵! 何を怒っている? 私の国も君の国づくりに協力するからそんなに怒るな!」
………え?! 国作りって何?! 何のこと言ってんですか?!
「な、何の事でしょう?」
「今更何を言っているのだ? 全てお前の思い描いていたシナリオ通りなのだろう? ダルシエルの教皇の思惑通りに動いたというがそれは嘘だ。 今後のダルシエルに混乱を起こさない為に教皇の進言でピンゲラを落としたとするつもりなのだろう?」
嘘じゃねぇーよ! マジだよ! 心の脆さを利用されたんだよ! 深読みしすぎだろあんた! 読みふかぁ~
「ダルシエルの教皇が仮に魔物や狂信者をコマの様に使って取り戻したとしても統治はうまくいかない、味方を自爆させるようなヤツを民は信じれないからな。 だがお前は兵士や貴族を倒し、しっかりと火葬して慈悲深く弔っている」
違うの! あれはただ邪魔だっただけ! ムシャクシャしてやっただけ! 一歩間違えばただの放火魔!
「そして何よりピンゲラの民が君に統治されるのを望んでいる! 切った相手の事を思い涙を流せるお前に心を打たれたのだろう」
いやマジでゴミとしか思ってなかったよあの時は?!
「そして究めつけはあの二人だ」
ん? 殺さなかった王族か?
「あの二人は国は違うがどちらも国王が平民に手を出し孕ませた子なのだよ。 普段からそのあたりにいる女性を捕まえては行為に及んでいた二人の国王だが避妊魔術を掛け忘れる事も多々あったと聞く。 産まれてしまったからには腐っても国王の血が入っているという事で引き取ることになったらしいのだが母親は王妃達逆恨みされ無慈悲に殺されてな…」
国王は悲しそうな顔をした
だからあの二人はあんなに怯えていたのか… ずっと一人で戦ってたんだな…
「国民も虐げられていた二人の事を知っておるのだ。 お前もそれを知り政治に組み込めばオウマとトプロットもたやすく統治できると考えたのだろう? もう両国で二人を救った英雄と称えられておるぞ、瞬時に民を味方に付けるなど一体どこまで知恵が回るのだお前は」
国王は楽しそうに太ももの叩いた
とりあえず目が回りそうなこの場をうまく切り抜けられない位には知恵は回らないよ!
ダメだ! このパターンは非常にまずい! 何か勘違いしている!
「俺は国なんて作りませんよ!」
ここではっきりしておかないと間違いなく拗れる! ハッキリとした否定が必要だ! ここまで否定すれば大丈夫だろう
「ん? 何故だ? …そうかなるほどな」
何を納得したんだよ?!
「安心しろお前が今考えている通り、あそこは一時的にリールモルト王国の土地としショウ伯爵が納める領地という事にしようと思っている。 私も復興もあるのにいきなり国を作るなどバカバカしい事お前がするなんて思ってないさ、孤児院の子供達もまだまだ伸びるみたいだしな」
んな事考えてねぇーよ! おかしい勘違いが訂正されない! そういう事じゃないんだよ! 着実に外堀が埋まって行ってる!
「ちょ、ちょっと待ってください他の国は認めるんですか?」
「リールモルトは勿論の事、イスブロンからは正式にお前の国作り協力するという声明文が届いておる」
お父さん何してんですかー?! 止めて下さいよ! それにあのエロイ女ボスの一口乗ったっていうのはこういう事か! どいつもこいつも何で肝心な事を教えてくれない?!
「勿論ダルシエルからもだ」
「ダルシエルも?!」
「あぁそうだ、私はダルシエルの代表に手紙を送ったのだ。 」
ゴクリ、俺は唾を飲み込み額から冷や汗がスーっと流れた。 心当たりがあるのだ…
「ちなみに内容は?」
「簡単に言うと、ショウ伯爵が国を作るとしたらダルシエルは協力してくれるかどうかという内容だ。 極秘内容だったので手紙を読まないと私からという事はわからなくしてあるがな」
教皇は塔が倒壊した事故で死んだことになっており、現在のダルシエルのトップは大司祭という事になっている。 が大司祭も死んで今大司祭宛に来る郵便物は全て俺の家のゴリラ聖女へと届くことになっていた…
そして俺はこの前ゴリラ聖女がリビングのテーブルでブツブツ言っていたことを思い出す
『あーミルクティーこぼしちゃったわ… 前半はなんて書いてあるか殆どわからないわね… 協力してるくれるかどうか? 何のことかわからないけど私は聖女、困っているのなら助けるまでよ』
彼女はそう言いながら、ダルシエルは協力しますと書いて返信用封筒に入れ手紙を出した。 その王室用とは違う普通の返信用封筒がアステルニアの国王へ届くものとも知らずに…
あのゴリラ聖女ーーーーーーー!!!!
一瞬でもゴリラを見直した俺を殴りたい!! 一瞬でも好きかもと思った俺を殺したい!!
「この大陸全ての国が協力すると言っているんだ、まったくお前の手腕には驚かされるばかりだよ」
俺が一番驚いてんだよ! どんだけ手回しいいんだよ構ってもらえない人妻を手際よく落とすホストかよ!
俺の両隣に居る二人はクスクスと笑っていた。
おいこれ…何度目だ! 見た事あるぞ! お前らこれも知ってたな?!
「いやでも俺は…」
「ははは、まさかここまでやっておいてやらないなんてことはないだろう、お前は孤児院を作る代わりに私に大きな利益を約束したしな?」
国王の目がすっと鋭くなった
そんな事俺は言って…
『そうですね、僕の息がかかっているかどうかともかく、投資した分はすぐに回収できると思いますよ』
『ほう、すごい自信だな』
『えぇ、難しい事ではないので、この国にも大きな見返りを約束しましょう。』
『わかった良いだろう! 孤児院を作ろう! そして簡易的だが教育施設も用意しよう、そしてその時が来たら私は手を貸すと約束する。 リールモルト国王も喜んで手を貸してくれるだろう』
言ってる!! 言っちゃってる!! 意図は違うけど言ってしまってる!!
「もう後戻りは出来んぞ?」
国王がぐっと顔を近づけニヤリと笑う
「…私は第一王妃」
「私の街も貴方の領地にしていいわよ、国王様? うふふふ」
俺は鼻水を垂らしながら頬を引きつらせた…
俺氏終了のお知らせ…
母さん、父さんお元気ですか? 私は元気ですが何故か偉い人に勘違いされがちです。 どういう教育したらこうなるのか親の顔が見てみたいのでそのうち帰りますね…
◇ ◇ ◇ ◇
ここは地球の日本のとあるマンション
除夜の鐘を聞きながら二人の男女が大晦日恒例のお笑い番組を見て大爆笑していた
「にしてもノリちゃん息子が行方不明だっていうのに笑いすぎじゃない? あの子今頃……あははははは!」
「お前だって笑ってるじゃないか! 明美こそ全く心配してないよね?! プッこれは堪えられないわ!」
ショウの両親だ、地球で想像上の物として扱われている魔法が実際に使える数少ない本物の魔法使い
「まぁ無事みたいだしねぇ、あの子相当成長したわよ。 それに女の子にもモテモテで、ノリちゃんの悪い癖がしっかり遺伝してるみたいね?」
「さ、さぁ何の事だかわらかないねぇ?」
「あら知らないとでも思ってるの?」
ショウの母親の魔力がどんどん高まっていく
「お、おい止めろよ! 家を壊す気か! まだローンが30年残ってるんだぞ!」
「まぁ昔の事だからいいわ」
ショウの母親の魔力が収まって行った
「順調みたいだね」
「えぇあの子が自分で言った事だもん」
「翔もしっかり男になってるな」
ショウの父は成長する息子を思うと自然と笑みが零れる
「ずっと部屋にこもってた時とは違って随分たくましくなったわね」
「そうだな、危ない時もあったけどまぁ俺達はただ観測するだけ」
「そうね、それじゃあ頑張るのよ私の息子」
「「…これはないわープハハハハハ!」」
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二人は息子が無事な事を知っているのだ、何故なら二人は…
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本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。
へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/
---------------
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