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第百十四話 人を呪わば穴二つ
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「それよりも大丈夫なんですか? かなり重症にみえますが……」
精神的に追い詰められていてロクに眠れていないのか、完全に開き切っていない目の下に深々と出来たクマは健康的とは言えず、巻かれた包帯に滲む血がその痛々しさを更に増していた。
俺の問いかけなどはまるで耳に入っていない様子でジルの方を真っすぐに見据えており、ジルもそのただならぬ視線に少し恐怖を覚え、俺の後ろへ移動しローブをそっと摘まんだ
手枷の鎖をジャラジャラ鳴らし鉄格子を掴む手にも力はなく、ジルを映したその瞳には光が差していない
やはり女性という事もありただ拷問されるだけではなく、体を弄ばれたりしたのだろうか……
俺はかつてダルシエルの教皇だったガスパビオを斬り伏せてから覗きこんだ彼の記憶の中にある家族の陵辱シーンは今でも脳裏に焼き付いていて、かなりのトラウマだ
さっき出会ったばかりだというのにこの女性がそんな事をされたと考えるだで怒りがこみ上げてくる
「いやはや、君、もしかして勘違いしてないか? それは昼に食したオムレツにかけられていたケチャップ、そして不健康そうなクマは元々、包帯も……ただのファッションなので勝手に変な想像をしないでくれたまえ」
何をどうやって食べたらそんな所にケチャップ付くし?! ファッション?! どういうセンス?! 俺の込み上げて来た怒は何処にぶつけりゃいいの?!
呆れた様な口調で割って入って来たのは、糸目に眼鏡が特徴的な男だった
そして俺はそっとジルの肩に手を置いて優しい口調で話しかける
「やるならこれぐらいやらないとダメだぞ? ジルは圧倒的にやり切ってる感が足りないのだよ! 見てみろあの人を、何の迷いもなくあんな恥ずかしい格好しといてのドヤ顔だぞ? それに比べてジルと来たら……なんだそのミニスカにニーソは!! 最高じゃないか!! 絶対領域万歳!」
「最高なの?! ダメ出しされてるのか褒められてるのかどっち?! それに私だっていくらなんでもあそこまで恥ずかしいのは無理!! 女の子で居たいもん!! ちょっと言動を変える程度が限界だよ!」
俺達の悪意ない攻撃を受け包帯の女はグルグル目を回し、膝をつく
「……そんなに余は痛々しいのか…… 村のファッションリーダーと崇められて来た余のプライドは…… わざわざ何日も寝ないで作ったこのクマの美しさは大陸一と名高い余が恥ずかしいなどとは…… 余はスミノロワーレへと帰還する。後は其方達だけで語らうが良い」
フラフラと倒れそうな足取りで部屋の隅へ向かい、瞳孔の開き切った目で膝を抱えてブツブツ意味のない言葉の羅列を吐き出し始めた
部屋の隅にそんな名前があったなんて初めて知ったぞ……
「勘弁してあげてよお兄さん、ミントの生まれ育った村は村人全員が呪術師で、村独自のファッションスタイルが確立されてるんだ。全員大体あんな感じだよ? そんな事よりも……ここにロイが来たって事は……いよいよだね?」
すっと目を細めてロイさんを見たのは、捕まっている最後の一人で、先程の包帯巻きの女性とは対照的に浅黒く活発そうな健康優良児だ
「給料の出ない仕事だがこれだけはやらねーとな。あ、お前ら派手にやって大丈夫だぞー。そこの少年が就職先は斡旋してくれるらしいからよ」
元々ここから出す計画だったのか、ロイさんの懐に仕舞われたカギで牢を開け全員の手枷を外した。
何かに使えるかもしれないので手枷は亜空間に入れておく
「ふぅ……やっとか。全くロイ、君は一体何をしていたのだ?この私に手枷をはめ研究の邪魔をするとは我々人類の進歩が何年遅れたと思っているんだ全く。私は錬金術師のマホーン、贅沢は言わん、立派な研究施設を用意してくれたまえ。 私を雇える事を感謝したまえよ新たな雇い主、はーはっはっはっ」
この人も結構変な人だな……
糸目の眼鏡は錬金術師か、とんでもない自信家だけど、レデリと一緒に研究すればエクランの発展に繋がるんじゃないだろうか?
いやでも男と二人っきりにさせるのはちょっとなぁ……
「俺はウィオ、アーチャーだよ! どうせもうこの国には居られなくなるんだ、兄さんの所で働かせてもらうよ。よろしくね!」
アーチャーは助かるな、エクランには弓を扱える者が殆どいなくて困っていた所だ
この世界の弓はかなり強力な武器で、魔術と組み合わせればとんでもない兵器となる
ちゃんとした弓兵を育成できれば更に守りは強固となるはず
「2人ともよろしくお願います。余り多くの給金は払えないと思いますが、衣食住には困る事はないので安心して下さい。それで……あの……ミントさんなんですが……」
未だスミノロワーレで復活の呪文の様な言葉を呟きながら復活できないでいる彼女の方に視線を送る
「ミントは……いいや……暫く立ち直れないと思うから……」
「その通り。 いつもの事だ、気にしないでくれたまえ」
あんな恰好してりゃそれ言われるわな…… それでもあれを貫き通すってメンタル弱いのか強のかどっちだよ……
「それじゃあ作戦なんですが……」
◇ ◇ ◇ ◇
城の辺りから爆発音が聞こえると、塔の辺りも騒々しくなり、塔に裂いていた警備の人員の殆どが城へと急いで駆けて行く。
爆発音はロイとメイサが陽動の為に引き起こした物だ
俺達は物陰に隠れながら塔の入り口を見ている所である
「始まったみたいですね、それじゃあミントさん行きましょう」
「なぜ余が其方達と一緒なのだ……大体余は余を愚弄した其方をまだ許してはおらんというのに」
ミントという名前とは相反して爽やかさの欠片もない彼女の手には天秤があり、それが彼女の呪術用の道具らしい
塔の攻略は俺とアンジェさん、それに呪術師のミントさんのグループ、錬金術師のマホーン、アーチャーのウィオ、ジルのグループの二手に分かれて当たる事にした
「仕方がありませんミント様。 魔術の性質上これがベストだと聞き及んでおります。恐らくこの塔には現在オートマタしかおりません。入り口のオートマタは一掃しました。先を急ぎましょう」
物陰から魔工銃でオートマタの頭をぶち抜き、頭を木っ端みじんに吹き飛ばしたアンジェが2人を促す。
爆散した頭部の血肉がべっとりついた扉を開から無事に塔へと侵入することに成功した
アンジェさんは道順を知っている様なので先導してもらう。
途中何度もオートマタに襲われるがその度にアンジェんさが確実に破壊して行く。
アンジェさんって人間だった時何してた人なんだろう? 動きが軽やかさがとても普通の人とは思えない、冒険者か何かだったのだろうか?
にしてもミントさんはアンジェさんが爆散させたオートマタ達の頭部を拾っていくけど一体どういうつもりなのだろうか?
とてもいい趣味とは言えないのだが……
そして俺達は目的の場所へと着き扉を開けるとそこに待っていたのは……
「サイクロプス……」
「其方よく知っておるな。だがあれは普通のサイクロプスではない。魔物に人工ルドスガイトを埋め込んで作られてた元魔物のオートマタ。物理攻撃が効きにくい輩だ。ここは給金を弾んでもらう為、余が相手をしよう。其方達は下がってみていると良い」
実際どの程度戦えるのか知らないのでいい機会だと思い、ミントさんの指示に従って後ろへと下がった
ミントさんが前に進んで行くと侵入者を感知したサイクロプスが四メールはあるであろう巨体からは想像も出来ない速さで体を動かし、ミントさんの方へと歩を進め、丸太の様に太い腕を振り下ろす
ミントが余裕の表情で巻かれた包帯を解くと、包帯は地に着くでもなく彼女の周りにフワフワと浮きながら停滞した
「図体の割には動きが早い。【呪縛帯・斬殺】」
ミントの周りを停滞している包帯が鋭く硬化し、振り下ろされたサイクロプスの腕が切り落とされるが、再生能力がある様ですぐに傷口が塞がって行き、回復し始めている
包帯に魔素を流して性質を変化させてるのか、具合が悪くもないのに包帯を巻いているのは魔素がなじみやすくする為だったんだろうな
「再生は少々厄介ではあるが所詮はCランクの魔物を少し強化しただけの雑魚か【呪縛帯・締殺】」
包帯がサイクロプスを縛り上げ手足の自由を奪う
サイクロプスも包帯から逃れようともがくが魔素が流された包帯は簡単には千切れない
「【呪術天秤】」
もがいているサイクロプスを尻目に、切り落としたサイクロプス腕を天秤の左側の皿の上に差し出すと腕が皿に吸収され一気に左側に傾く、そして道中拾って来たオートマタ達の頭部を右側の皿差し出すと同じ様に吸収され、今度は右側に一気に傾いた
「【呪殺返り・愚者】」
天秤の右側の皿から無数の黒い手が出て来てサイクロプスの肉を掴んで引きちぎって行く。
人工ルドスガイトを破壊してサイクロプスの息の根が止まっているにも関わらず、黒い手は止まる事なく骨だけになるまで肉片をひたすら引きちぎった
辺りにはサイクロプスの千切られた肉片や内臓が散乱しており見るに無残な状況である。
「結構エグイですねそれ……」
「この呪術天秤は、左側には呪う者の一部を、右側には呪われる側の一部を乗せる事で呪術が完成するんだが、呪う者の代償が小さいと呪いが自分に返って来る。本来なら自分の身体の一部を使うんだが今回は新鮮な死体が沢山あったのでな、それを使わせてもらった。死体の場合は、鮮度の良い物しか受け付けない故、使い勝手がいい代物ではないがな。どうだ、余は役に立っただろう? 給金をしっかり弾むが良い」
顔色悪く肩を揺らして笑うその様は非常に不気味だ……
死体をストックしといて毎度呪い返しに遭わせるっていうのは不可能なのか、確かに使い勝手は良くないな……
戦闘も終わった所でジルから丁度連絡が来たのた
『ショウ君聞こえる?』
『ちゃんと聞こえるよ、成功だね!』
考えていた方法とは【魔糸】を持たせ、ジルの音魔法で振動を作り出して音を伝えるという物だ
ジルの音魔法なら誤差が殆どなく音を伝えれるはず……
そして奥の扉の側にある輝核の前に来て深呼吸をする。
失敗したら爆発してみんな死亡だ、流石に緊張するな……
『よし、じゃあ早速壊そう! 3秒カウントダウンしたらにしよう』
『了解、それじゃあ行くよ!3……2……1……0!』
ジルの掛け声と共に輝核を壊すと扉の前に掛かっていた封印魔術が解けた様で扉の先には上へと階段が続いており、道なりに進んで行くと女性らしい可愛い部屋に出た
その部屋の机の上にアンジェリカの日記という物を発見しアンジェの方を見ると、彼女はいつもの様に全くの無表情で抑揚なく口を開く
「ここは私のマスターであるアンジェリカ様の部屋を移した場所でございます」
「アンジェリカって自分の事でしょ?」
「いいえ、ソレとアンジェリカ様は全くの別物でございます。興味がお有りでしたらその日記を読んでみて下さいませ」
アンジェさんにそう言われ俺はアンジェリカの日記を読んで行くのだが……
精神的に追い詰められていてロクに眠れていないのか、完全に開き切っていない目の下に深々と出来たクマは健康的とは言えず、巻かれた包帯に滲む血がその痛々しさを更に増していた。
俺の問いかけなどはまるで耳に入っていない様子でジルの方を真っすぐに見据えており、ジルもそのただならぬ視線に少し恐怖を覚え、俺の後ろへ移動しローブをそっと摘まんだ
手枷の鎖をジャラジャラ鳴らし鉄格子を掴む手にも力はなく、ジルを映したその瞳には光が差していない
やはり女性という事もありただ拷問されるだけではなく、体を弄ばれたりしたのだろうか……
俺はかつてダルシエルの教皇だったガスパビオを斬り伏せてから覗きこんだ彼の記憶の中にある家族の陵辱シーンは今でも脳裏に焼き付いていて、かなりのトラウマだ
さっき出会ったばかりだというのにこの女性がそんな事をされたと考えるだで怒りがこみ上げてくる
「いやはや、君、もしかして勘違いしてないか? それは昼に食したオムレツにかけられていたケチャップ、そして不健康そうなクマは元々、包帯も……ただのファッションなので勝手に変な想像をしないでくれたまえ」
何をどうやって食べたらそんな所にケチャップ付くし?! ファッション?! どういうセンス?! 俺の込み上げて来た怒は何処にぶつけりゃいいの?!
呆れた様な口調で割って入って来たのは、糸目に眼鏡が特徴的な男だった
そして俺はそっとジルの肩に手を置いて優しい口調で話しかける
「やるならこれぐらいやらないとダメだぞ? ジルは圧倒的にやり切ってる感が足りないのだよ! 見てみろあの人を、何の迷いもなくあんな恥ずかしい格好しといてのドヤ顔だぞ? それに比べてジルと来たら……なんだそのミニスカにニーソは!! 最高じゃないか!! 絶対領域万歳!」
「最高なの?! ダメ出しされてるのか褒められてるのかどっち?! それに私だっていくらなんでもあそこまで恥ずかしいのは無理!! 女の子で居たいもん!! ちょっと言動を変える程度が限界だよ!」
俺達の悪意ない攻撃を受け包帯の女はグルグル目を回し、膝をつく
「……そんなに余は痛々しいのか…… 村のファッションリーダーと崇められて来た余のプライドは…… わざわざ何日も寝ないで作ったこのクマの美しさは大陸一と名高い余が恥ずかしいなどとは…… 余はスミノロワーレへと帰還する。後は其方達だけで語らうが良い」
フラフラと倒れそうな足取りで部屋の隅へ向かい、瞳孔の開き切った目で膝を抱えてブツブツ意味のない言葉の羅列を吐き出し始めた
部屋の隅にそんな名前があったなんて初めて知ったぞ……
「勘弁してあげてよお兄さん、ミントの生まれ育った村は村人全員が呪術師で、村独自のファッションスタイルが確立されてるんだ。全員大体あんな感じだよ? そんな事よりも……ここにロイが来たって事は……いよいよだね?」
すっと目を細めてロイさんを見たのは、捕まっている最後の一人で、先程の包帯巻きの女性とは対照的に浅黒く活発そうな健康優良児だ
「給料の出ない仕事だがこれだけはやらねーとな。あ、お前ら派手にやって大丈夫だぞー。そこの少年が就職先は斡旋してくれるらしいからよ」
元々ここから出す計画だったのか、ロイさんの懐に仕舞われたカギで牢を開け全員の手枷を外した。
何かに使えるかもしれないので手枷は亜空間に入れておく
「ふぅ……やっとか。全くロイ、君は一体何をしていたのだ?この私に手枷をはめ研究の邪魔をするとは我々人類の進歩が何年遅れたと思っているんだ全く。私は錬金術師のマホーン、贅沢は言わん、立派な研究施設を用意してくれたまえ。 私を雇える事を感謝したまえよ新たな雇い主、はーはっはっはっ」
この人も結構変な人だな……
糸目の眼鏡は錬金術師か、とんでもない自信家だけど、レデリと一緒に研究すればエクランの発展に繋がるんじゃないだろうか?
いやでも男と二人っきりにさせるのはちょっとなぁ……
「俺はウィオ、アーチャーだよ! どうせもうこの国には居られなくなるんだ、兄さんの所で働かせてもらうよ。よろしくね!」
アーチャーは助かるな、エクランには弓を扱える者が殆どいなくて困っていた所だ
この世界の弓はかなり強力な武器で、魔術と組み合わせればとんでもない兵器となる
ちゃんとした弓兵を育成できれば更に守りは強固となるはず
「2人ともよろしくお願います。余り多くの給金は払えないと思いますが、衣食住には困る事はないので安心して下さい。それで……あの……ミントさんなんですが……」
未だスミノロワーレで復活の呪文の様な言葉を呟きながら復活できないでいる彼女の方に視線を送る
「ミントは……いいや……暫く立ち直れないと思うから……」
「その通り。 いつもの事だ、気にしないでくれたまえ」
あんな恰好してりゃそれ言われるわな…… それでもあれを貫き通すってメンタル弱いのか強のかどっちだよ……
「それじゃあ作戦なんですが……」
◇ ◇ ◇ ◇
城の辺りから爆発音が聞こえると、塔の辺りも騒々しくなり、塔に裂いていた警備の人員の殆どが城へと急いで駆けて行く。
爆発音はロイとメイサが陽動の為に引き起こした物だ
俺達は物陰に隠れながら塔の入り口を見ている所である
「始まったみたいですね、それじゃあミントさん行きましょう」
「なぜ余が其方達と一緒なのだ……大体余は余を愚弄した其方をまだ許してはおらんというのに」
ミントという名前とは相反して爽やかさの欠片もない彼女の手には天秤があり、それが彼女の呪術用の道具らしい
塔の攻略は俺とアンジェさん、それに呪術師のミントさんのグループ、錬金術師のマホーン、アーチャーのウィオ、ジルのグループの二手に分かれて当たる事にした
「仕方がありませんミント様。 魔術の性質上これがベストだと聞き及んでおります。恐らくこの塔には現在オートマタしかおりません。入り口のオートマタは一掃しました。先を急ぎましょう」
物陰から魔工銃でオートマタの頭をぶち抜き、頭を木っ端みじんに吹き飛ばしたアンジェが2人を促す。
爆散した頭部の血肉がべっとりついた扉を開から無事に塔へと侵入することに成功した
アンジェさんは道順を知っている様なので先導してもらう。
途中何度もオートマタに襲われるがその度にアンジェんさが確実に破壊して行く。
アンジェさんって人間だった時何してた人なんだろう? 動きが軽やかさがとても普通の人とは思えない、冒険者か何かだったのだろうか?
にしてもミントさんはアンジェさんが爆散させたオートマタ達の頭部を拾っていくけど一体どういうつもりなのだろうか?
とてもいい趣味とは言えないのだが……
そして俺達は目的の場所へと着き扉を開けるとそこに待っていたのは……
「サイクロプス……」
「其方よく知っておるな。だがあれは普通のサイクロプスではない。魔物に人工ルドスガイトを埋め込んで作られてた元魔物のオートマタ。物理攻撃が効きにくい輩だ。ここは給金を弾んでもらう為、余が相手をしよう。其方達は下がってみていると良い」
実際どの程度戦えるのか知らないのでいい機会だと思い、ミントさんの指示に従って後ろへと下がった
ミントさんが前に進んで行くと侵入者を感知したサイクロプスが四メールはあるであろう巨体からは想像も出来ない速さで体を動かし、ミントさんの方へと歩を進め、丸太の様に太い腕を振り下ろす
ミントが余裕の表情で巻かれた包帯を解くと、包帯は地に着くでもなく彼女の周りにフワフワと浮きながら停滞した
「図体の割には動きが早い。【呪縛帯・斬殺】」
ミントの周りを停滞している包帯が鋭く硬化し、振り下ろされたサイクロプスの腕が切り落とされるが、再生能力がある様ですぐに傷口が塞がって行き、回復し始めている
包帯に魔素を流して性質を変化させてるのか、具合が悪くもないのに包帯を巻いているのは魔素がなじみやすくする為だったんだろうな
「再生は少々厄介ではあるが所詮はCランクの魔物を少し強化しただけの雑魚か【呪縛帯・締殺】」
包帯がサイクロプスを縛り上げ手足の自由を奪う
サイクロプスも包帯から逃れようともがくが魔素が流された包帯は簡単には千切れない
「【呪術天秤】」
もがいているサイクロプスを尻目に、切り落としたサイクロプス腕を天秤の左側の皿の上に差し出すと腕が皿に吸収され一気に左側に傾く、そして道中拾って来たオートマタ達の頭部を右側の皿差し出すと同じ様に吸収され、今度は右側に一気に傾いた
「【呪殺返り・愚者】」
天秤の右側の皿から無数の黒い手が出て来てサイクロプスの肉を掴んで引きちぎって行く。
人工ルドスガイトを破壊してサイクロプスの息の根が止まっているにも関わらず、黒い手は止まる事なく骨だけになるまで肉片をひたすら引きちぎった
辺りにはサイクロプスの千切られた肉片や内臓が散乱しており見るに無残な状況である。
「結構エグイですねそれ……」
「この呪術天秤は、左側には呪う者の一部を、右側には呪われる側の一部を乗せる事で呪術が完成するんだが、呪う者の代償が小さいと呪いが自分に返って来る。本来なら自分の身体の一部を使うんだが今回は新鮮な死体が沢山あったのでな、それを使わせてもらった。死体の場合は、鮮度の良い物しか受け付けない故、使い勝手がいい代物ではないがな。どうだ、余は役に立っただろう? 給金をしっかり弾むが良い」
顔色悪く肩を揺らして笑うその様は非常に不気味だ……
死体をストックしといて毎度呪い返しに遭わせるっていうのは不可能なのか、確かに使い勝手は良くないな……
戦闘も終わった所でジルから丁度連絡が来たのた
『ショウ君聞こえる?』
『ちゃんと聞こえるよ、成功だね!』
考えていた方法とは【魔糸】を持たせ、ジルの音魔法で振動を作り出して音を伝えるという物だ
ジルの音魔法なら誤差が殆どなく音を伝えれるはず……
そして奥の扉の側にある輝核の前に来て深呼吸をする。
失敗したら爆発してみんな死亡だ、流石に緊張するな……
『よし、じゃあ早速壊そう! 3秒カウントダウンしたらにしよう』
『了解、それじゃあ行くよ!3……2……1……0!』
ジルの掛け声と共に輝核を壊すと扉の前に掛かっていた封印魔術が解けた様で扉の先には上へと階段が続いており、道なりに進んで行くと女性らしい可愛い部屋に出た
その部屋の机の上にアンジェリカの日記という物を発見しアンジェの方を見ると、彼女はいつもの様に全くの無表情で抑揚なく口を開く
「ここは私のマスターであるアンジェリカ様の部屋を移した場所でございます」
「アンジェリカって自分の事でしょ?」
「いいえ、ソレとアンジェリカ様は全くの別物でございます。興味がお有りでしたらその日記を読んでみて下さいませ」
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