蒼炎の魔法使い

山野

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第百二十九話 キャンプファイヤーは人生最初の試練

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 班決めから三日後、俺達のクラス40人と引率教員1人はとある村に向かっていた。
 校外授業とは簡単に言えば冒険者活動の様な物だ。

 D~Cランク位の依頼をクラス全員で解決して協調性や連携を学ぶのが目的らしいが、どうやら遠足みたいな気楽な物らしい。

「ショウ君、この校外学習の目的ってスライム退治なんだっけ?」
 俺と馬に二人乗りしているジルが問いかけた。勿論俺は乗馬なんて出来ないので後ろだ。

 馬に乗れない事を大いに笑われたが、うちの領土ではグリフォンに乗るのが普通だったから馬なんて必要なかったとうざい感じでイキってみたら、皆が顎が外れそうな位口を開けて驚いたのでなんとかメンツは保てたらしい。

 まぁ無印グリフォンでもAランクの魔物だし手名付けるだけでも大変だからそりゃ驚くか。
 実際エクランではグリフォン隊とウルフ隊を新設して訓練している所なので嘘ではない。

「らしいよ、なんか最近異常発生してるらしくてね」
 スライムと聞いて俺の心は踊っていた。
 だってスライムだぞ? 異世界スライムと言えば女性の服だけを溶かすとか意味の分からない特技を持ってる視聴者サービス魔物じゃん! 鼻の穴が広がらずにはいられない。

「この辺りの村々を回るので早くても四日はかかるそうです」
 アンジェも問題なく馬は扱える。というか実際走った方が早いから馬とかいらないんだよなぁ……
 使った事ある馬だってフララの眷属の馬だしあれは自動操縦機能ついてるし……

 ウルの方を見てみると、脂ぎったチビデブハゲの三拍子揃った教員と二人乗りしていた。
 馬の数が足りなかったと聞いて居るが、馬が余っていたのを俺は知っている。

 ウルの体に後ろから固くなったアレを押し付けていると思うと吐き気がしてくるが、そんな事を言っていても仕方がない。

 そうして暫くするとスライムの被害に遭っているという100人程が暮らす小さい村に着いた。
 村長曰く、どこからともなくスライムが現れ、今では近くの洞窟を占拠し、度々村を襲うそうだ。

 ちょくちょく襲って来る魔物を警戒して、長い事緊張していた生徒達は疲弊していたし、馬も休ませなければならなかったので、今日はこの村で一夜を明かす事となった。

 村の広場に集められた生徒達に食事を振る舞うために多くの村人が集まって食事の用意をしてくれて、やっと食事が行き渡り、さぁ食べようと言う時に大臣の息子のイクセがウルに嫌な笑いを投げかけて口を開く。

「こんな所何にも面白いもんなんて無いんだから、お前なんか面白い事やれよ」

「何をしたらいいですか……」
 ウルは突然面白い事と言われて困惑した様子で視線を泳がせた。
 当たり前だ、無茶振りも良い所過ぎる。じゃあお前がやれよぉ! とニンジンを投げつける所だ。

「だから面白い事っていってるだろ、早くしろよ!  こいつ今から面白い事するからみんなちゅうもーく!」
 別の男がウルの腕を掴んで全員の前に引きずり出す。
 村人も多くいるアウェイで、色々な人間の注目を一斉に浴びる事となった。

 人によってはそれだけで逃げ出したくなる状況だが、そんな状況でもウルは力なく笑って手足を使い、コミカルな動きをしているつもりなのだろうけど、元々の幼げな容姿と相まってなんだか可愛い感じになってしまっていた。

 村人達も同じように感じたらしく、嘲笑うのではなく、優しい笑みを浮かべている。

 そんな状況に不満気なのは大商人の娘フォーセルだ、舌打ちしながら視線を落としてペンを走らせいた。

「食事のお礼に、あんた自己紹介しなよ」
 踊りを中断させ、そんな言葉と共に先程の何かを書いていた紙を手渡し隠れて読むよう闇に促す。

 少ししてウルが震えた声で自己紹介を始めた。
「私はウルリース。16歳。淫乱雌豚の肉便器です……」
 その言葉に村人はざわつき、生徒達はクスクス笑う。
 そして全てを諦めた表情で視線を落とし、下着を脱いで正面から被り、スカートをたくし上げ両脚を開いた。

 惜しげも無く披露された生脚は、やや肉付きがよく、ハリのある太ももには、この状況じゃなければ情欲が掻き立てられただろう。だが今はただただ胸が痛い。

 何よりも酷いのは今日が女の子日だったという事だ。
 開かれた股から流れ出てくる血に村人達は顔をしかめ、見ていられない状況に顔を背ける者も多い。

「私は肉便器でーす、私のアソコを自由に使ってください、汚いけど気持ちいいでーす」
 下着で表情がよく見えなくても、繊維を通して放たれる言葉が少し篭ってるせいで声色が掴みにいけど、漂う悲愴感は隠せないし、出来るだけ面白おかしく言う様にしてるのが、余計に痛々しくて見てて気持ちのいい物な訳がない。

「私は肉便器でーす。私は淫乱雌豚でーす。私は娼婦の娘で売女で……私は……私は…」
 書いてあった内容を忘れてしまったのかスカートをたくし上げながら言葉に詰まったウル見て生徒達の大半は腹を抱えた笑い転げ、村人達の大半は俯いた。

 慌てて受け取ったメモを広げて内容を確認しようとしたウルの手からメモがするりと飛んで行き、それを拾いに向かおうとしたら誰かに足を引っかけられ、顔から地面に激突、顔に被った下着に鼻血が滲む。

 四つん這いに倒れた勢いでスカートがまくれ上がり、血が流れ出る割れ目まで丸見えだ。

「何? お前、顔も生理なの?」
 そんなつまらな過ぎる冗談に今日一番の笑いが起こった。

「いやー笑ったわー、ほらご褒美だ」
 イクセはウルの顔の前にパンを二つ落とし、スープをかけてやりと笑う。

「雌豚らしくそのまま四つん這いで食えよ」
 ウルは言われたそのままの恰好で、顔に被った下着をズラしながら土で汚れたパンを頬張っていく。鼻血も止まってないし、スープのせいでぐちょぐちょになった土も一緒に飲み込んでいるので何度も嘔吐くが、それは彼らを笑わせる材料でしかない。

 尊厳なんてあったもんじゃない。
 趣味の悪い遊びに興じるこいつらに、怒りが込み上げてくる。どうやったらこいつらを最大限苦しめる事が出来るか、そんな事ばかり最近考えていた。

「ほらみてよ、面白いでしょ?  食事を作ってくれたお礼にやってるんだからもっとみんな笑ってくれないと!」
 その言葉に村人達が笑い出した。老人も大人も、子供達でさえ、口元を土で汚す少女を指差して笑う。笑えと言われれば笑うしかないのだ。平民は彼らの言う事に逆らう事ができないのだから。

 以前やんわりと母と一緒にエクランに来るかと聞いた事があるが、やんわり断られたので無暗に手を出せない。俺達が居なくなった後、今よりももっと酷い事になる事は想像に難くないからだ。

 そんな事がもどかしく、目の前の光景から目を逸らそうとした時、ジルが俺の手にそっと自分の手を重ねた。
「絶対に目を逸らさないで。見てて苦しいなら尚更目を逸らしちゃちゃダメ。ウーちゃんが逃げないなら私達も逃げない。友達ならちゃんと最後まで見よう」
 ジルのもう一方の手は強く握られていて、僅かに血が滴っている。
 俺の周りには素敵な女性ばかりだ、本当に。耐えよう今は、一緒に。

「ありがとう、危うく友達じゃなくなっちゃう所だった」
 ウルは目を逸らしたからって気にしないと思う、あくまでも自分の心構えの問題だ。

 アンジェをみるといつも通りの無表情だったのだが、誰よりもその光景を真剣に見ているように思う。

 楽しそうな笑い声と、無理やり絞り出した笑い声で満たされた場所での食事は、全く喉を通らなかった。

 翌朝、情報を聞いた俺達一行はスライムが蔓延っているとされる洞窟へと馬を走らせ、スライム退治を始める。
 そこで俺は驚愕した……

「あれがスライムなのか?」

「はい、ショウ様がどんなのを想像していたのかは理解しかねますが、スライムとは少なくともDランク以上の能力を有する魔物でございます」
 俺が想像していたのは、所謂、僕は悪いスライムじゃないとか言うタイプの、目がクリっとした可愛いスライムだったり、衣類だけを溶かすエロスライムだ。

 でも現実は違う。

 この世界のスライムは2メートル程の大きさで、大体が赤いらしい、生き物の血液が大体赤いからだ。
 プルンと弾力がありそうな艶っぽい体ではなく、目や口といった器官もなくて、ドロドロとした粘り気のある液体が土や草も巻き込んで核を中心に纏まっているだけ。見た目としてはかなり汚らしい。

 水の中で声を出しているかのような、赤子の泣き声が聞こえる。
 声の発生源はスライムの体内だ……

 赤い半透明なスライムの体の中に、まだ生後間もない赤子が若干溶けた状態で泣き喚いていた。
 その他にも皮膚が全て溶けてしまい、真っ赤な肉が露出している者や、臓器と骨だけになった者、魔物等の先住人の方々がスライムの中でゆっくりと溶かされている所だ。

 絶え間なく与え続けられる焼かれる様な熱さに、赤子の泣き声だけではなく、発声器官がまだ残っている者の呻き声も聞こえるし、視神経が生きている者の眼球はギョロリと俺の方を向く。

 俺が慌てて助けようとするとジルガそれを手で制した。
「どんなスライムを想像してたかは大体わかるけど、思ってるのと違うから。もうあの子は死んでるんだよ……取り込まれて五分以上経つともう体内から取り出しても助からないの。死んでも意識を失わせず感覚もそのままでゆっくりと溶かして行くのがあいつらのやり方なんだよ」
 やっぱり俺の思ってる異世界とこの世界は違いすぎる……こいつ、悪いスライムだ。

 子供の泣きじゃくる声が虚しくスライムの体内から響く。
 女の子の衣類だけ溶けてラッキースケベが見れるとか淡い期待を抱いていたのが馬鹿みたいだ。

「蒼炎魔法【蒼炎弾】」
 手の平から放たれた蒼い炎がスライムと体内に囚われていた赤子を燃やして行く。

 もう助からないし、死んでいるとは聞いていても実際に動いてるのを目の当たりにしているので、蒼白い炎に焼かれている赤子を見るとやはりかなり気が重くなった。

「はぁそれにしてもこの指輪凄いな」
考えてても仕方がないので、自分を誤魔化す為に別のスライムと交戦中のアンジェに話を振ってみる。

「力を大幅に抑える指輪でございますね? 1/8程度の力しか出ないとお伺いしましたがいかがでしたか?」

「実際その位かな、かなり体も重いし魔力を練るのも一苦労だ」
 俺は今、力を制限する指輪を付けていた。セレナとスピナが付けている手枷と同じ材質と封印魔術が込められた代物だ。

 手枷を付けた状態でかなり強いのだからセレナとスピナには驚きである。
 オニキスと柘榴曰く、新月から半月の夜では勝てるが、半月から満月の少し前迄は互角、満月の少し前から満月にかけての夜になると、どうやっても敵わないそうだ。

 あの二人が敵わないとなると正直どのぐらい強いのかさっぱりわからない。

 とはいってもセレナとスピナの力は月の満ち欠けに多大に影響される上に、昼は力が半分も出せないのでかなり制限付きの強さという事になるが、最大値で言えばかなり高いらしい。
 夜だけに使える能力もあるらしいのでかなり強さの振り幅が大きいみたいだ。

 流石に俺の力だと学生の力量からは逸脱しすぎているので、変に怪しまれないようにとハミルドから貰った物で、欺くにはかなりいい代物であると同時にこういうものが存在している以上、アンジェの鑑定でも見抜けない強さの者が潜んでいるという事は常に頭に入れておかなければならない。

「これで最後でございます、戻りましょう」
 放たれた魔素弾がスライムの内部で破裂、体内に囚われていた者達も一緒に爆散した。

 スライムの体液と共に、人の四肢、脳髄や未だ痙動する臓物が洞窟の壁面にべとりと張り付き、血液は土に染み込んで行く。

 アンジェの装備は魔工銃一丁とガンブレード。
 ガンブレードはロイの恋人の形見だ。

 他にも装備があるのだがここでは割愛する。

 割り振られた仕事を完遂して集合場所に戻ると俺達が最後だった。

 実戦経験が乏しい学生達は、自分達の勝利に未だ興奮覚めやらぬ様子だ。

「楽勝だったな、これならドラゴンが出てきたった余裕なんじゃないか?」

「ホントだよねー、私達の連携なら余裕でしょー! あーもっと戦いたい!」
 フォーセルとイクセ、クラスの癌2人が特に五月蝿い。
 こういう浮かれポンチには、イオレース先輩を召喚してビビらせてやりたいわ。主の俺ですらあまりの禍々しさに一瞬たじろぐからな。

 どうやら他の班は、いくつかの班と組んで事に当たっていた様だ。異世界でも順調にハブられてる俺って一体……
 ちょっとヤバイ奴って感じの一目置かれたバブられ方なので元の世界とはちょっと毛色が違うんだけど。

 まぁ2人が調子に乗るのも仕方がない。彼、彼女の班はこのクラスでもトップクラスの実力者揃いだ、過信するのも無理はないのかもしれない。

 精霊化こそ出来ないものの、精霊魔術を使いこなせるのは、普通の魔術師よりも遥かにアドバンテージがあるしな。

「今日はここで野営する、各自協力して、勝手な行動は慎む様に」
 それだけ言い残して教員は何処かへと消えていく。

 少し開けてはいるけど、林の中なので見渡しも余り良くないので警戒が必要な場所だ。
 こういう場所で野営するのも教育の一環なのだろうか? でも緩々の雰囲気だとまるでキャンプファイヤーだ。

 というか何故キャンプファイアーとフォークダンスはセットなのか……
 女子と手を取って踊るあれはかなりの精神的ダメージを被る。

 人との関りが少ない陰の物にとって、強制的に女子の体に触れるというあのイベントは、男としての人生最初の試練と言ってもいいだろう。いや一番最初はリコーダーを舐める時か? それとも女子の使用済み体操着の匂いを嗅ぐ時か? まぁいいや…

 手を取る度に、緊張で汗ばむ手に嫌な顔をされるし、曲が終わって俺と踊らなくて良くなった次の女の子が安堵のため息を漏らした事は一生忘れない。いいや恨んですらいるね!

 キャンプファイヤーの木々がパチパチと燃え、若い男女が意中の相手に恋焦がれて、好きな子を取り合ってバチバチな恋愛に燃える中、俺は初めて触る女子に萌え、イケメンに掻っ攫われるのを見て嫉妬に炎に身を焦がし、右手で一人燃え尽きるのだ。

 俺が嫌な過去を思い出している中、リア充共が騒ぎ出した。

「なぁやっぱりこれだけじゃ足りなくね?  お前らなんか取ってこいよ」

「あ、いいねー!  あんた達も一緒行きなよー」

 配給された食事は、一日分の栄養が取れるゼリーだけだったのだが、実はこれ、一般の冒険者なんかでは手の届かない高級品なのだ。
 金持ちのこいつらにはその有り難みがよくわかってない。

 味気ない食事が不満だったらしく、フォーセルとイクセのグループから数人パシリを出し合って何か取りに行かせる気らしい。

 この辺りはF~Eランクの魔物しか居ないし大丈夫だとは思うが、夜だしやめておく方が無難だし止めるか? 等と迷っていると不機嫌そうな声がリア充達の浮かれた声に混ざって聞こえて来た。

「ねぇちょっと、さっき勝手な行動は慎めって言ってたばかりじゃない。貴方達の勝手な行動で咎められるのは迷惑なんだけど」
 眉をキリっと吊り上げて抗議していたのは普段何事にも無関心を貫いている貴族の娘べラルアだ。

「はぁ?  あんたには関係ないと思うんですけどー?  それともなにー?  溺愛されてるパパにガッカリされるのがそんなに怖いのかなー?  いい歳してあの汗臭い親父にベッタリとか気持ちわりぃんだよ!」
 フォーセルの挑発する言葉にベラルアは、普段の落ち着き払った雰囲気から想像も出来ない程荒々しく掴みかかって、感情的に詰め寄る。

 その様子にイクセ達男子も若干引いていた。

「お前みたいな頭の緩い女に何が分かる!  あんな奴父親なんかじゃない!」
 今にも殴りそうだったベラルアの冷静さを取り戻させたのは「先程の言葉は御報告させて頂きます」という従者の2人の言葉だった。

「何マジになってんの?  対して強くもないくせに。あんたが孤高気取ってられんのもあのクソ親父に守られるからってわかってる?  じゃなきゃあの売女より酷い目に遭わせてるってのー」
 乱れた服を直しながら吐き捨てられた言葉にベラルアは拳を強く握って唇を噛んで、焚火に使う木を蹴り飛ばす。

 どうやら中々複雑な事情があるらしい。
 お互い未だ睨み合って一触即発だ。

 パチパチと焚火の燃える音しか聞こえない位静まり返ったその場に、美少女と言われれば納得してしまう程の美男子がニコリと笑って颯爽と現れた。

「じゃあ万が一見つかった場合は、ベラルアはちゃんと止めたけどそれ振り切って行きましたって伝えるっていうのはどう?  フォーセルやイクセ達が悪いってのがより強調されちゃうかもだけど、お腹空いたの我慢できないんだよね?」
 仲裁に入ったのはベンノ、やはりイケメンは違う。
 俺なんて女同士の争いなんて怖くて割って入れない……

「まぁ、ベンノがそう言うなら、それでいいよ」
 あのクッソ態度悪いフォーセルがベンノの方を見て萎らしく顔を真っ赤にしてそう言った。誰だお前……
 まさか殴られる女を見て興奮するような男に恋してるとでもいうのか?!

「ベンノが言うなら私もそれでいい。貴方は信用できるから」
 はいはいイケメン無双乙。結局最後はイケメンだよ……
 俺が金を払ってでも買いたい信用を、君は笑顔一つで手に入れてしまうんだね……

 両者納得した所で、パシリ6人の男女が狩りへと出て間もなく、不穏な気配を感じ取ったのでジルとアンジェを見ると、彼女達も気付いていた。

「ジルとアンジェはウルの所へ」
 2人は頷いて一人でポツンと座っているウルの近くへ向かう。

 その間に素早く念話で指示を飛ばす。
『セレナ、スピナ、何かあればジルとアンジェとウルの安全が最優先、その次にベラルア、フォーセル、イクセ、ベンノだけど、今回はフォーセルとイクセは守らなくていい』

『わかりましたのよう、お父様』『パパの役に立てるように頑張るのよう!』
【ステルス】で姿を隠しているシトリンの頬を指で撫でて、眠っている所を起こす。

「ごめんね、シトリン、アレ頼むわ」
 眠い目を両手で擦って、軽く俺の指に頬ずりすると、立ち上がって胸をトンと叩いく。
 額の角が光り準備完了。

 全ての準備が整ったと同時に焚き火が消え、闇夜に悲鳴が響き渡り、俺達の校外授業は不穏な物へと変わっていく。
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