2 / 51
本編
1.妖精
しおりを挟む深い深い森の奥。木漏れ日が照らす切り株の広場に、ひとりの少年がいました。少年の背丈は普通の人間よりはるかに小さく、何より背中から透き通った蝶のような一対の翅が生えていました。
少年が切り株で休んでいると、周りから様々な動物が集まって来ました。りす、うさぎ、きつね、たぬき、しか、くま、おおかみ。さらには小鳥から大きな鷹まで、少年のそばにやってきました。
「みんな、おはよ! 今日は何して遊ぶ?」
今日も、森にはあたたかな風が通り抜けています。これから始まるのは、妖精の少年と、森の動物たちの、ただの穏やかな日常の物語でございます。
▷◇◁
とある世界での僕は、特に突出したところのない平凡な人間だった。容姿は少し幼く見られたかもしれないが、頭脳はまったくもって平凡だった。身体も特に悪い所はなく、いたって健康。成人して就職した会社も、ごくごく普通の企業。そんな感じで、世間にとっての「普通」の人生を歩んで来た。
ただ、人生の終わりは普通じゃ無かった。たまたま買い物に出かけたデパートで、大規模な火事が起こった。アナウンスでは、調理場から火が起こった、と言っていたが、本当は放火事件だったのかもしれない。まあ、真実は分からないが、僕は不幸にも火災現場の近くに来ており、逃げ惑う人波に押されて、階段から落ちてしまった。踊り場でうずくまっていたものの、助けてくれるような人は来ず、炎が迫ってきた。そこで、記憶が途切れている。
今、僕はどこかの森っぽいところで佇んでいる。あれ? 僕、火事で死んだはずじゃ⋯⋯? どうにか、ここに来るまでの事を思い出そうとするが、何も浮かばない。というか、前世の記憶にも曖昧なところがあり、自分の名前や、家族の顔なども思い出せない。仕方ない。とりあえず、周りを見てみよう。
と思って目を向けてみると、なんかやたらとデカい。何かって? 全部だよ。草も木も、石もデカい。もしかして、巨人の国にでもいるのかな? なんて思ったりするが、全く現実的じゃ無い。じゃあ、自分の方が縮んでたりするのかな? そう思って身体を見てみると、なんかファンタジーな服を着てた。妖精とか精霊とかが着てそうな、透明感のあるひらひらした服だ。こんな服、僕の趣味じゃないし、着た記憶も無い。おかしい。
とにかく、ここがどこなのか把握しないことには何もできないから、そこの石(大岩サイズ)に登って、草で見えない遠くでも確認してみよう。岩肌が丁度よくゴツゴツしてるから、問題なく登れそう。そうして手を掛けて足を踏み出したとこで、突然体が勢いよく空に持ち上がった。
「うわわわわ!? 何!? ヒェッ⋯⋯こ、こわ⋯⋯!」
はずみで下を見てしまい、地面が遠くて恐怖を感じた。手足をジタバタさせるが、宙に浮いたままで動かない。⋯⋯そのうち落ち着いてきて、周りを見る余裕ができた。
「うーん、どう見ても森、だよな⋯⋯」
どこ見ても、木、木、木ばっかり。木漏れ日がきれいだな~って感じ。これじゃ、人と会うのは絶望的かもしれない。そもそも、人と会っても、この体の小ささを説明できる気がしないが。そうやって周りをぐるぐるして、自分の後ろを見たとき、あり得ない物が目に入ってきた。
「⋯⋯⋯⋯え、はぁ? なにこれ⋯⋯羽?」
透き通って、キラキラ輝いた蝶のような羽。それが、僕の背中から生えているように見える。意識すると動かすことができて、すぃ~っと地面に降りることができた。
⋯⋯いやまて。これってまさか、もしかして⋯⋯
「よよよ、妖精になってる!?」
⋯⋯どうやら、妖精になってしまった⋯⋯みたい?
44
あなたにおすすめの小説
転生ちびっ子の魔物研究所〜ほのぼの家族に溢れんばかりの愛情を受けスローライフを送っていたら規格外の子どもに育っていました〜
幸運寺大大吉丸◎ 書籍発売中
ファンタジー
高校生の涼太は交通事故で死んでしまったところを優しい神様達に助けられて、異世界に転生させて貰える事になった。
辺境伯家の末っ子のアクシアに転生した彼は色々な人に愛されながら、そこに住む色々な魔物や植物に興味を抱き、研究する気ままな生活を送る事になる。
異世界転生したので森の中で静かに暮らしたい
ボナペティ鈴木
ファンタジー
異世界に転生することになったが勇者や賢者、チート能力なんて必要ない。
強靭な肉体さえあれば生きていくことができるはず。
ただただ森の中で静かに暮らしていきたい。
猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める
遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】
猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。
そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。
まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。
現代知識と木魔法で辺境貴族が成り上がる! ~もふもふ相棒と最強開拓スローライフ~
はぶさん
ファンタジー
木造建築の設計士だった主人公は、不慮の事故で異世界のド貧乏男爵家の次男アークに転生する。「自然と共生する持続可能な生活圏を自らの手で築きたい」という前世の夢を胸に、彼は規格外の「木魔法」と現代知識を駆使して、貧しい村の開拓を始める。
病に倒れた最愛の母を救うため、彼は建築・農業の知識で生活環境を改善し、やがて森で出会ったもふもふの相棒ウルと共に、村を、そして辺境を豊かにしていく。
これは、温かい家族と仲間に支えられ、無自覚なチート能力で無理解な世界を見返していく、一人の青年の最強開拓物語である。
別作品も掲載してます!よかったら応援してください。
おっさん転生、相棒はもふもふ白熊。100均キャンプでスローライフはじめました。
『異世界ごはん、はじめました!』 ~料理研究家は転生先でも胃袋から世界を救う~
チャチャ
ファンタジー
味のない異世界に転生したのは、料理研究家の 私!?
魔法効果つきの“ごはん”で人を癒やし、王子を 虜に、ついには王宮キッチンまで!
心と身体を温める“スキル付き料理が、世界を 変えていく--
美味しい笑顔があふれる、異世界グルメファン タジー!
社畜サラリーマン、異世界でパンと魔法の経営革命
yukataka
ファンタジー
過労死寸前の30代サラリーマン・佐藤健は、気づけば中世ヨーロッパ風の異世界に転生していた。与えられたのは「発酵魔法」という謎のスキルと、前世の経営知識。転生先は辺境の寒村ベルガルド――飢えと貧困にあえぐ、希望のない場所。「この世界にパンがない…だと?」健は決意する。美味しいパンで、人々を笑顔にしよう。ブラック企業で培った根性と、発酵魔法の可能性。そして何より、人を幸せにしたいという純粋な想い。小さなパン屋から始まった"食の革命"は、やがて王国を、大陸を、世界を変えていく――。笑いあり、涙あり、そして温かい人間ドラマ。仲間たちとの絆、恋の芽生え、強大な敵との戦い。パン一つで世界を救う、心温まる異世界経営ファンタジー。
社畜の異世界再出発
U65
ファンタジー
社畜、気づけば異世界の赤ちゃんでした――!?
ブラック企業に心身を削られ、人生リタイアした社畜が目覚めたのは、剣と魔法のファンタジー世界。
前世では死ぬほど働いた。今度は、笑って生きたい。
けれどこの世界、穏やかに生きるには……ちょっと強くなる必要があるらしい。
異世界転生~チート魔法でスローライフ
玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。
43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。
その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」
大型連休を利用して、
穴場スポットへやってきた!
テントを建て、BBQコンロに
テーブル等用意して……。
近くの川まで散歩しに来たら、
何やら動物か?の気配が……
木の影からこっそり覗くとそこには……
キラキラと光注ぐように発光した
「え!オオカミ!」
3メートルはありそうな巨大なオオカミが!!
急いでテントまで戻ってくると
「え!ここどこだ??」
都会の生活に疲れた主人公が、
異世界へ転生して 冒険者になって
魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。
恋愛は多分ありません。
基本スローライフを目指してます(笑)
※挿絵有りますが、自作です。
無断転載はしてません。
イラストは、あくまで私のイメージです
※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが
少し趣向を変えて、
若干ですが恋愛有りになります。
※カクヨム、なろうでも公開しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる