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本編
8.たぬきつね
しおりを挟むマロンとナッツ、ふたりを木まで案内していると、なにやら争っているような鳴き声が聞こえた。
⋯⋯ヴヴヴ⋯⋯ウギューーーッ⋯⋯
⋯⋯ウニャーーーッ⋯⋯
どちらも聞き馴染みの無い鳴き声だ。なんとなく、後者は猫っぽい? 気になったので向かおうと思ったが、進行方向から聞こえている。もしかして、今から行こうとしてる木の辺りにいるのかも。早く行こう。
木の実がなった木につくと、二匹の動物がいた。焦げ茶っぽい体に、黒いアイマスクのような模様のある、タヌキ。オレンジの体に、ピンと立った耳と長い尻尾、キツネだ。二匹は唸りながら睨み合い、同時に駆け出して、もつれあった。
「わ、わ、どうしよう!」
『喧嘩の原因はあの木の実ではないでしょうか』
「ああ、なるほど⋯⋯ふたりで分けるとかできないかなぁ」
『今一時的に分けても、次はまた喧嘩になるかもしれません』
「うーん、話しあいでどうにかできないかな? 今、二匹とも興奮してるけど⋯⋯」
『ミント様のお力でなんとかできないでしょうか?』
「僕の力? ⋯⋯もしかしてあれのことかな」
あの、魔法みたいな便利な力か。それを使うとしても、どうしよう。木とか生やせたりしないかな? ちょっと花とかで試してみよう。
「んっと、ここにひとつたんぽぽを咲かせたい」
地面に手をかざしながら言うと、ポンッと一輪たんぽぽが咲いた。⋯⋯本当になんでもありだな、この力。
「よし、これならできそう。⋯⋯おーい! そこのキツネさんとタヌキさーん! ちょっと話を聞いてくれるー!」
声をかけると、二匹はピタッと止まり、こちらを見た。そして、興奮したまま話しかけてきた。
『妖精? ジャマすんなよ! 今あの木の実がどっちのモンか勝負してんだ! ジャマすんならオマエにも噛みつくぞ!』
と、キツネさん。
『あの木の実はアタシのものよ! 妖精でも邪魔しないで欲しいわ!』
と、タヌキさん。
一斉に怒鳴られてちょっとびっくりしたけど、僕は頑張って訴えた。
「あのね、僕が新しく木の実が採れる木を生やすから、喧嘩は止めてほしいな⋯⋯」
僕が言うと、二匹は少し落ち着いたのか、お互いを見合って、また僕を見て話した。
『⋯⋯まあ、オレは自分が食う分があれば、喧嘩はする必要はないからな』
『アタシも、自分の物だっていう木があるなら取り合いはしないわ』
「!! ありがとう!」
よかった。意外にも理知的なひとたちだったようだ。なら、早く木を生やさないとね。ちょっと広くなってる場所の真ん中まで飛んで、地面に手を付けた。そして木を生やすんだけど⋯⋯これ、僕が考えた木を生やせないかな? 木の実は甘くて美味しい、採ってもすぐに実る、木の実は手のひら位の大きさ、木は低め⋯⋯こんな感じが良さそうだな。
手のひらに力を込めると、光が溢れ、ひとつの芽が生えた。芽は勢いよく成長し、わさっと葉っぱを茂らせたかと思えば、ぽつぽつと赤い実を実らせた。⋯⋯もっとあったら、もっと色んな動物たちが喜ぶんじゃないかな? ⋯⋯もっと生やしちゃえ!
「えーい!」
────数分後、辺り一帯に赤色が広がっていた。
や、やり過ぎた? いや、沢山あるに越したことはない! キツネさんとタヌキさんも喜んでるから、大丈夫! 僕は満足した。
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