妖精の森の、日常のおはなし。

華衣

文字の大きさ
8 / 51
本編

7.名付け

しおりを挟む

 ──なんだか、意識がふわふわする。ここは⋯⋯どこだっけ。

「あなたはもう、名をもつ存在。魂と肉体が繋がり、本当の生を受けました。これからも、健やかに生きるのですよ」

 ──だれかが話しかけてくる。なんとなく、安心する声だ。返事をしようと喉に力を込めるが、何も出ない。そのまま、意識が遠くなり──


「⋯⋯ふぁっ?」

 パチリ、と急激に意識が覚醒して目を覚ました。なんだか久々に夢を見た気がする。覚えてはいないけど、優しくてあったかい感覚は残っている。

「キュキュキュー!」

 ⋯⋯外から大きな鳴き声が聞こえる。そういえば、昨日リスの親子が近くに引っ越ししたんだった。うーんっと一つ伸びをして、僕は葉っぱの布団から起きた。
 下に降りる前に、朝ごはんを食べよう。カボチャモドキの中身は、大木にあったうろに詰め込んでいる。雑だけど、今は場所も道具も無いししょうがない。両手に乗るくらいの量を食べて、大木のふもとへ降りた。リスの親子がすぐに気づいて、子リスはトテトテ走って、親リスはゆったりと歩いて側にやって来た。

『ミント様、おはようございます』
『みんとさま! おはよーございます!』
「ふたりとも、おはよう!」

 子リスの、舌足らずな感じがかわいい。朝から可愛さに悶えていると、親リスがおずおずと話しかけてきた。

『昨晩の木の実はありがとうございました』
「ううん! 困ったひとは助けないと」
『⋯⋯ひとつ、尋ねたい事があるのですが⋯⋯』
「どうしたの?」
『木の実が採れる木をご存じありませんか? 私たちで食料を集めようにも、この辺はあまり来たことがなく⋯⋯』
「それなら、昨日あげた木の実が採れる木に案内するよ。今日行ってみる?」
『本当ですか! 何度もありがとうございます』
『ありがとーございます!』

 というわけで、今日はリス親子に木の実の木まで案内することになった。

「じゃあ早速⋯⋯ってその前に、泉で水を飲もうか。一緒に来る?」
『ぜひ、行かせていただきたいです』
『おみず!』

 いつもの習慣で、泉まで水を飲みに行く。泉に到着して、水を掬って飲む。うん、美味しい。

『ここの水は霊力が多くて、いつもより力が湧きますね』
『あっちのおみずより、おいしー!』
「霊力? ってなに?」

 僕の問に、親リスは答えてくれた。霊力とは、大気に満ちている不思議な力で、生物のエネルギーになるものだという。あれかな、魔力みたいなものかな? 霊力が無くても死にはしないけど、あると段違いに力が出せるらしい。

「へぇ~。ここの水に霊力がたくさんあって、だから飲むと体が軽くなるのかな?」
『ええ。霊力の多い泉は、精霊の泉とも呼ばれることがありますよ』

 おお、精霊! 妖精とは別物なのかな? いつか会えたら嬉しいな。

 泉で水分補給を終え、僕が見つけた木の実の木へ向かう。その道中、僕は昨日の夜考えていた事を親子に話した。

「そうだ、君たちに名前はある? なかったら、名前を考えても良いかな」
『名前はありません。ミント様から名前をもらえるなど、嬉しい限りです』
『おなまえくれるの?』
「そうだよ。昨日考えてたんだ。名前があった方が呼びやすいかと思って」

 昨日、親子と別れて家に帰ったあと、寝る前に考えていたのだ。いい名前が思いついて、ワクワクしながら寝たから、気に入ってくれたら嬉しいな。

「じゃあ、早速、おかあさんの君は『マロン』子どもの君は『ナッツ』でどうかな⋯⋯?」
『マロン⋯⋯不思議な響きですね。素敵な名前をありがとうございます』
『なっつ! ぼく、なっつだよ!』

 どっちも、木の実を意味する英語だ。リスといえば木の実というちょっと安直な理由かもしれないが、呼びやすい方が良いかなと思ってこの名前にした。気に入ってくれて良かった。

「よし、マロン、ナッツ、改めてこれからよろしくね!」
『はい、こちらこそ』
『よろしくー!』

 手を出して、ふたりと握手する。なんだか、より親密になれたようで、とても嬉しくなった。

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

転生ちびっ子の魔物研究所〜ほのぼの家族に溢れんばかりの愛情を受けスローライフを送っていたら規格外の子どもに育っていました〜

幸運寺大大吉丸◎ 書籍発売中
ファンタジー
高校生の涼太は交通事故で死んでしまったところを優しい神様達に助けられて、異世界に転生させて貰える事になった。 辺境伯家の末っ子のアクシアに転生した彼は色々な人に愛されながら、そこに住む色々な魔物や植物に興味を抱き、研究する気ままな生活を送る事になる。

異世界転生したので森の中で静かに暮らしたい

ボナペティ鈴木
ファンタジー
異世界に転生することになったが勇者や賢者、チート能力なんて必要ない。 強靭な肉体さえあれば生きていくことができるはず。 ただただ森の中で静かに暮らしていきたい。

猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める

遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】 猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。 そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。 まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。

現代知識と木魔法で辺境貴族が成り上がる! ~もふもふ相棒と最強開拓スローライフ~

はぶさん
ファンタジー
木造建築の設計士だった主人公は、不慮の事故で異世界のド貧乏男爵家の次男アークに転生する。「自然と共生する持続可能な生活圏を自らの手で築きたい」という前世の夢を胸に、彼は規格外の「木魔法」と現代知識を駆使して、貧しい村の開拓を始める。 病に倒れた最愛の母を救うため、彼は建築・農業の知識で生活環境を改善し、やがて森で出会ったもふもふの相棒ウルと共に、村を、そして辺境を豊かにしていく。 これは、温かい家族と仲間に支えられ、無自覚なチート能力で無理解な世界を見返していく、一人の青年の最強開拓物語である。 別作品も掲載してます!よかったら応援してください。 おっさん転生、相棒はもふもふ白熊。100均キャンプでスローライフはじめました。

『異世界ごはん、はじめました!』 ~料理研究家は転生先でも胃袋から世界を救う~

チャチャ
ファンタジー
味のない異世界に転生したのは、料理研究家の 私!? 魔法効果つきの“ごはん”で人を癒やし、王子を 虜に、ついには王宮キッチンまで! 心と身体を温める“スキル付き料理が、世界を 変えていく-- 美味しい笑顔があふれる、異世界グルメファン タジー!

社畜サラリーマン、異世界でパンと魔法の経営革命

yukataka
ファンタジー
過労死寸前の30代サラリーマン・佐藤健は、気づけば中世ヨーロッパ風の異世界に転生していた。与えられたのは「発酵魔法」という謎のスキルと、前世の経営知識。転生先は辺境の寒村ベルガルド――飢えと貧困にあえぐ、希望のない場所。「この世界にパンがない…だと?」健は決意する。美味しいパンで、人々を笑顔にしよう。ブラック企業で培った根性と、発酵魔法の可能性。そして何より、人を幸せにしたいという純粋な想い。小さなパン屋から始まった"食の革命"は、やがて王国を、大陸を、世界を変えていく――。笑いあり、涙あり、そして温かい人間ドラマ。仲間たちとの絆、恋の芽生え、強大な敵との戦い。パン一つで世界を救う、心温まる異世界経営ファンタジー。

社畜の異世界再出発

U65
ファンタジー
社畜、気づけば異世界の赤ちゃんでした――!? ブラック企業に心身を削られ、人生リタイアした社畜が目覚めたのは、剣と魔法のファンタジー世界。 前世では死ぬほど働いた。今度は、笑って生きたい。 けれどこの世界、穏やかに生きるには……ちょっと強くなる必要があるらしい。

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

処理中です...