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本編
7.名付け
しおりを挟む──なんだか、意識がふわふわする。ここは⋯⋯どこだっけ。
「あなたはもう、名をもつ存在。魂と肉体が繋がり、本当の生を受けました。これからも、健やかに生きるのですよ」
──だれかが話しかけてくる。なんとなく、安心する声だ。返事をしようと喉に力を込めるが、何も出ない。そのまま、意識が遠くなり──
「⋯⋯ふぁっ?」
パチリ、と急激に意識が覚醒して目を覚ました。なんだか久々に夢を見た気がする。覚えてはいないけど、優しくてあったかい感覚は残っている。
「キュキュキュー!」
⋯⋯外から大きな鳴き声が聞こえる。そういえば、昨日リスの親子が近くに引っ越ししたんだった。うーんっと一つ伸びをして、僕は葉っぱの布団から起きた。
下に降りる前に、朝ごはんを食べよう。カボチャモドキの中身は、大木にあったうろに詰め込んでいる。雑だけど、今は場所も道具も無いししょうがない。両手に乗るくらいの量を食べて、大木のふもとへ降りた。リスの親子がすぐに気づいて、子リスはトテトテ走って、親リスはゆったりと歩いて側にやって来た。
『ミント様、おはようございます』
『みんとさま! おはよーございます!』
「ふたりとも、おはよう!」
子リスの、舌足らずな感じがかわいい。朝から可愛さに悶えていると、親リスがおずおずと話しかけてきた。
『昨晩の木の実はありがとうございました』
「ううん! 困ったひとは助けないと」
『⋯⋯ひとつ、尋ねたい事があるのですが⋯⋯』
「どうしたの?」
『木の実が採れる木をご存じありませんか? 私たちで食料を集めようにも、この辺はあまり来たことがなく⋯⋯』
「それなら、昨日あげた木の実が採れる木に案内するよ。今日行ってみる?」
『本当ですか! 何度もありがとうございます』
『ありがとーございます!』
というわけで、今日はリス親子に木の実の木まで案内することになった。
「じゃあ早速⋯⋯ってその前に、泉で水を飲もうか。一緒に来る?」
『ぜひ、行かせていただきたいです』
『おみず!』
いつもの習慣で、泉まで水を飲みに行く。泉に到着して、水を掬って飲む。うん、美味しい。
『ここの水は霊力が多くて、いつもより力が湧きますね』
『あっちのおみずより、おいしー!』
「霊力? ってなに?」
僕の問に、親リスは答えてくれた。霊力とは、大気に満ちている不思議な力で、生物のエネルギーになるものだという。あれかな、魔力みたいなものかな? 霊力が無くても死にはしないけど、あると段違いに力が出せるらしい。
「へぇ~。ここの水に霊力がたくさんあって、だから飲むと体が軽くなるのかな?」
『ええ。霊力の多い泉は、精霊の泉とも呼ばれることがありますよ』
おお、精霊! 妖精とは別物なのかな? いつか会えたら嬉しいな。
泉で水分補給を終え、僕が見つけた木の実の木へ向かう。その道中、僕は昨日の夜考えていた事を親子に話した。
「そうだ、君たちに名前はある? なかったら、名前を考えても良いかな」
『名前はありません。ミント様から名前をもらえるなど、嬉しい限りです』
『おなまえくれるの?』
「そうだよ。昨日考えてたんだ。名前があった方が呼びやすいかと思って」
昨日、親子と別れて家に帰ったあと、寝る前に考えていたのだ。いい名前が思いついて、ワクワクしながら寝たから、気に入ってくれたら嬉しいな。
「じゃあ、早速、おかあさんの君は『マロン』子どもの君は『ナッツ』でどうかな⋯⋯?」
『マロン⋯⋯不思議な響きですね。素敵な名前をありがとうございます』
『なっつ! ぼく、なっつだよ!』
どっちも、木の実を意味する英語だ。リスといえば木の実というちょっと安直な理由かもしれないが、呼びやすい方が良いかなと思ってこの名前にした。気に入ってくれて良かった。
「よし、マロン、ナッツ、改めてこれからよろしくね!」
『はい、こちらこそ』
『よろしくー!』
手を出して、ふたりと握手する。なんだか、より親密になれたようで、とても嬉しくなった。
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