妖精の森の、日常のおはなし。

華衣

文字の大きさ
22 / 51
本編

21.出会い

しおりを挟む

 僕が5日も寝過ごした日から、1週間ほどが経った。衝撃的なことも知ったけど、特に日常が変わるわけでも無く、食って、特訓して、寝て、起きて、食って、動物たちと遊んで、寝る。いやあ~こんな平和でのんびりした生活が送れるなんて、妖精の体って楽でいいな~。そうそう、妖精って、排泄する必要ないから、消化器官とか無いんだよ。お尻の穴も無い! フォンターナから教えられて、ひっくり返るくらい驚いた。長年人間やってた身としては、違和感が半端ない。
 それはさておき、なんとなくルビネだけじゃ味気なくなってきたから、新しい植物を生やした。茶色くて楕円の形をしていて、食べるとチョコのような味がする実を実らせる植物。その名も、『カカココ』! ⋯⋯ネーミングセンスはご愛嬌願おうか。
 ルビネはベリー系の甘い味だったから、ちょっと砂糖のようなこってりした甘さが恋しくなって、カカココを開発した。そのうち、これにも飽きてきたらミントを生やそう。そしてチョコミントを作って布教するのだ。

『ミントさまー、これ、なんだかるびねよりあまい!』
「うん、ルビネは果糖の甘さで、カカココは砂糖の甘さだから、より甘く感じるかもね」
『かとー? さとー?』
「あはは、分かんなくても大丈夫だよ」

 ナッツはカカココも気に入ったのか、両手に一粒ずつ持ちながら、ポリポリと食べている。その様子を微笑ましく見守りながらも、ポリ、とカカココを食べるマロン。マロンも気に入ったようだ。

 そんな変わらない日常は、ある日突然終わりを告げた。
 僕が泉で力の特訓をしていると、フォンターナがふと空を見上げ、怪訝そうな顔をした。

「? どうしたの?」
「⋯⋯何やら、複数の魔力の塊が近づいて来ているわ。これは⋯⋯人間、そして獣人のようね」
「え!?」

 こんな森の奥まで人間が来るなんて初めてだ。それに、ここに来るのはよっぽど大変に違いない。そんな苦労をしてまで、ここまで来たのはどうしてだろう?

「危なそうかな?」
「いいえ、危険な気配はしないわ。少なくとも、森を荒らしに来たわけではなさそうね」
「なら、会ってみてもいいかな!?」
「うーん⋯⋯あなたが外の世界を知りたがっているのはわかるけれど⋯⋯」
「お願い⋯⋯!」
「⋯⋯ふふ、私の負けね。分かったわ。十分に気をつけて会いなさい」
「ありがとう!」

 初めての人間に会える⋯⋯! 考えただけで、ワクワクが止まらない! 早速、フォンターナが感じ取った気配の方へビュンッと羽を羽ばたかせて飛んでった。近づくにつれ、僕の気配察知でも感じ取れるようになり、その距離を詰めていった。

 前方に少しだけ開けた木の無い広場が見えた。速度を落として、ゆっくり近づく。チラッと葉っぱの隙間から覗くと、鈍色の頑丈そうな甲冑に身を包んだ人間や獣人、黒いローブを着た人間たちが、休憩をしているようだった。気配察知では、人間たちから魔力を感じているけど、魔物の魔力のような禍々しさは感じない。嫌な感じもしないし、近づいても大丈夫そう。
 っていうか、バリバリファンタジーな格好してる! うわ~! カッコいい~! それに、あのケモミミ!! もふもふしたいっ!
 気づいたときには、僕はそろ~と身を乗り出してしまっていたみたいだ。正面にいた銀髪が綺麗な騎士とバチッと目が合ってしまい、大慌てで木に隠れた。

(ヤバい⋯⋯!見つかった⋯⋯?)

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

転生ちびっ子の魔物研究所〜ほのぼの家族に溢れんばかりの愛情を受けスローライフを送っていたら規格外の子どもに育っていました〜

幸運寺大大吉丸◎ 書籍発売中
ファンタジー
高校生の涼太は交通事故で死んでしまったところを優しい神様達に助けられて、異世界に転生させて貰える事になった。 辺境伯家の末っ子のアクシアに転生した彼は色々な人に愛されながら、そこに住む色々な魔物や植物に興味を抱き、研究する気ままな生活を送る事になる。

異世界転生したので森の中で静かに暮らしたい

ボナペティ鈴木
ファンタジー
異世界に転生することになったが勇者や賢者、チート能力なんて必要ない。 強靭な肉体さえあれば生きていくことができるはず。 ただただ森の中で静かに暮らしていきたい。

猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める

遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】 猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。 そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。 まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。

現代知識と木魔法で辺境貴族が成り上がる! ~もふもふ相棒と最強開拓スローライフ~

はぶさん
ファンタジー
木造建築の設計士だった主人公は、不慮の事故で異世界のド貧乏男爵家の次男アークに転生する。「自然と共生する持続可能な生活圏を自らの手で築きたい」という前世の夢を胸に、彼は規格外の「木魔法」と現代知識を駆使して、貧しい村の開拓を始める。 病に倒れた最愛の母を救うため、彼は建築・農業の知識で生活環境を改善し、やがて森で出会ったもふもふの相棒ウルと共に、村を、そして辺境を豊かにしていく。 これは、温かい家族と仲間に支えられ、無自覚なチート能力で無理解な世界を見返していく、一人の青年の最強開拓物語である。 別作品も掲載してます!よかったら応援してください。 おっさん転生、相棒はもふもふ白熊。100均キャンプでスローライフはじめました。

『異世界ごはん、はじめました!』 ~料理研究家は転生先でも胃袋から世界を救う~

チャチャ
ファンタジー
味のない異世界に転生したのは、料理研究家の 私!? 魔法効果つきの“ごはん”で人を癒やし、王子を 虜に、ついには王宮キッチンまで! 心と身体を温める“スキル付き料理が、世界を 変えていく-- 美味しい笑顔があふれる、異世界グルメファン タジー!

社畜サラリーマン、異世界でパンと魔法の経営革命

yukataka
ファンタジー
過労死寸前の30代サラリーマン・佐藤健は、気づけば中世ヨーロッパ風の異世界に転生していた。与えられたのは「発酵魔法」という謎のスキルと、前世の経営知識。転生先は辺境の寒村ベルガルド――飢えと貧困にあえぐ、希望のない場所。「この世界にパンがない…だと?」健は決意する。美味しいパンで、人々を笑顔にしよう。ブラック企業で培った根性と、発酵魔法の可能性。そして何より、人を幸せにしたいという純粋な想い。小さなパン屋から始まった"食の革命"は、やがて王国を、大陸を、世界を変えていく――。笑いあり、涙あり、そして温かい人間ドラマ。仲間たちとの絆、恋の芽生え、強大な敵との戦い。パン一つで世界を救う、心温まる異世界経営ファンタジー。

社畜の異世界再出発

U65
ファンタジー
社畜、気づけば異世界の赤ちゃんでした――!? ブラック企業に心身を削られ、人生リタイアした社畜が目覚めたのは、剣と魔法のファンタジー世界。 前世では死ぬほど働いた。今度は、笑って生きたい。 けれどこの世界、穏やかに生きるには……ちょっと強くなる必要があるらしい。

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

処理中です...