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本編
22.探し人
しおりを挟むバクバクする心臓を抑えながら耳を澄ます。すると、ガチャガチャと甲冑の音が近づいてくるのが聞こえ、僕は逃げる体勢をとった。そこへ、話し声が聞こえた。
「団長? こっちになんかあったんですか?」
「⋯⋯いや、見間違いだ」
「もしかして、妖精ですか? 本当にいるんですかね」
「記録には残っているから、存在していたのは間違いないはずだ」
「まあ、そうですがねー。あ、そういえば、妖精が本当にいたらどうするんですか? 捕まえたりしますか?」
「⋯⋯陛下からは、調査せよとしか命じられていない。もし、膨大な霊力の正体が妖精ならば、捕まえたとして、攻撃される危険がある」
「でも、調査だけってのも違うんじゃないですか」
「ああ。だから、対話を試みることにする。昔の記録によると、妖精や精霊は、知性をもった存在らしいからな」
「上手くいくといいですねー」
「そうだな」
⋯⋯そうして話が途切れると、音が遠ざかっていった。ゆっくり顔を半分だけ出すと、さっき目が合った人はもう広場に戻っていた。
さっきの話を聞く限り、どうやら僕を探しに来てるみたいだ。もしくはフォンターナ。でも、時期的に僕を探しに来てると考えた方が正しそうだ。僕を討伐だとか、無理矢理連れて行くってわけじゃなさそうで、少しホッとした。それに、あの団長って呼ばれていた人は、なんとなく安心できる気がする。
「⋯⋯⋯⋯よし」
思い切って、姿を現してみる。バッと飛び出ると、驚いた人に剣を向けかけられた。それを、いち早く気づいた団長さんが止めてくれたから、皆落ち着いてくれた。⋯⋯急に出たせいで驚かせてしまった。申し訳ない。
「よ、妖精⋯⋯!?」
誰かが放った言葉に、騎士や魔法使いの間でざわめきが広がる。
「妖精だって!?」
「本当にいたのか⋯⋯」
「え、ちっちゃくね?」
ざわざわしている中、団長さんが前に出てきて、僕の目の前で膝を着いた。ギョッとした僕に構わず、澄んだ翠の目を合わせてゆっくりと話し始めた。
「妖精、とお見受けする。私はガルディアン王国の騎士団団長、ハーヴェイ。この森には、消えた魔物の魔力と、感知された膨大な霊力の調査のためやって来た。感知された霊力の正体が妖精か精霊だと考えられ、太古の昔の存在が今も存在しているのか、確かめることを命じられている。君さえよければ、我々と王城に来てくれないだろうか」
「⋯⋯はぇ⋯⋯おうじょう⋯⋯」
「すまない。いきなりで驚いているかもしれないが、君に危害を加えようなどとは考えていない。もちろん、利用しようとも。どうか、着いてきてほしい」
お、おうじょう⋯⋯王城!? いきなりそんなところに行っちゃうの!? ⋯⋯でも、危害を加えたり利用しようとしたりはしないって言ってくれてるし、僕だって、ずっと森の外に行きたかったんだ。
「⋯⋯えっと、僕、森の外に行ってみたいな」
「⋯⋯? すまない、なんと言ったのだろうか?」
え? あれ、もしかして言葉が通じない? えっと、じゃあジェスチャーで腕を丸にして⋯⋯
「! 着いてきてくれるのか?」
「(コクコク)」
「ありがとう。それでは王国に⋯⋯っと、もう日が暮れるな」
太陽が木と木の間に隠れていくのを見て、団長さん、ハーヴェイさんは、団員たちにテントの準備を伝えた。僕も、植物を通じて僕の声をフォンターナやマロンたち届けるように力を使った。⋯⋯しばらく森を離れるけど、絶対戻って来る、と。そう伝えて、分けてもらった夕食のスープを啜り、テントの一部に作ってもらった寝床で眠りについた。
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