妖精の森の、日常のおはなし。

華衣

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本編

33.実践

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 いよいよ魔法の実践だ。僕は魔力が無いから魔法は使えないけど、見るだけでも楽しみだ。

「まず、魔法の属性を測りましょう。属性によって、教える内容が少し変わりますので。こちらの魔導具に手を当てて、魔力を少し流して下さい」
「分かりました」

 教師の人⋯⋯先生でいいや。先生がかばんから石板のような魔導具を出し、机の上にドンと置いた。真ん中に小さな水晶が嵌め込まれていて、その周りを囲むように色とりどりの宝石が並んでいる。ヴィンデくんが、真ん中の水晶に触れると、水晶が光を放つ。その後、水晶の光が小さくなっていくと、周りにある宝石のうち、3つの宝石が輝き出した。

「おお、これはすごい! 王子には、水、風、闇の適性があるようです。三属性に適性がある人はかなり珍しいですよ!」
「わあ⋯⋯! 僕、たくさん魔法が使えるの!? やった! すごい!」

 おおー! 三属性! すごい。いいな~。⋯⋯ってそういえば、この世界って闇だけなんか冷遇されるとかはないのかな? まあ、先生の反応的に無さそうだから安心だ。

「では次に、魔法を教えたいのですが、私の適性が火と風で、水と闇の魔法は教えることができません。今日は風の魔法を教えましょうか」
「はい!」

 魔法の実践は広い場所じゃ無いと危ないから、外に出るそうだ。二人に付いて、僕も部屋を出ていく。後ろから足音が聞こえて振り向くと、ヴィンデくんの侍従のグィドさんだった。そういえばこの人、ずっと一緒だった。部屋の中に一緒にいたはずなのに気配を感じさせないとは⋯⋯! さすが王族のお付きだ。


▷◇◁


 外の訓練場のような場所までやって来た。訓練場というと、騎士とかが訓練しているイメージだけど、誰もいなかった。王族専用なのかな?

「それでは、これから魔法の実践を始めます。魔法には属性ごとに初級、中級、上級とあります。最初は初級から学んでいきましょう」
「よろしくお願いします」
「風の初級魔法にもいくつか種類がありますが、まずは、簡単なつむじ風を起こす魔法『ウィンド』をやってみましょう。魔力を手のひらに集めるようにイメージして下さい。そして、集まったと感じたら『ウィンド』と唱えて下さい」
「分かりました。⋯⋯うむむ、難しいな」

 ヴィンデくんは、両手を前に出しながら、難しい顔をしている。⋯⋯よく見ると、手のひらにモヤがかかってきている。あれ、なんだろう? 魔力が目に見えてるのかもしれない。

「あまり集めすぎると逆に危ないので、少しだけ集めてみましょう」
「⋯⋯よし、集まった」
「ではそのまま、『ウィンド』と唱えてみましょう」
「はい。⋯⋯『ウィンド』!」

 ヴィンデくんが唱えると、僕たちから少し離れた場所で、小さなつむじ風が巻き起こった。わあ~!! これが魔法⋯⋯! 夢にまで見たファンタジーが目の前に!

「わ⋯⋯やった! できました!」

 ヴィンデくんが喜んだその瞬間、あっという間につむじ風が小さくなり、掻き消えてしまった。

「あ、あれ?」
「魔法が消えてしまいましたね。魔法は、発動するのは簡単ですが、それを持続させるためには集中力が必要です。大丈夫です。これから練習していきましょう」
「はい⋯⋯」

 まだまだ技術が足りなくて、少ししょんぼりとしているヴィンデくん。でも、顔には嬉しさがにじみ出て、口元が笑顔になっていた。


 その後、何回か魔法を発動して練習をして、今日の授業は終わりとなった。ヴィンデくんには宿題が出されていた。意外にも嫌がらずに受け取って、僕たちはヴィンデくんの部屋へ向かった。

「午後からは自由ですので、妖精様と遊ばれてはいかがですか」
「うん、そうする。妖精さん、いっしょに遊ぼう?」

 子供らしい上目遣いでお願いされて、断れるわけないじゃん! 小動物みたいに可愛いからついつい撫でたくなる。もちろん、いいよと頷いておいた。後、ヴィンデくんの部屋に着いてから、紙とペンと貸してもらって僕の名前を書いた。これからはミントって呼んで! と言う(書く)と、ヴィンデくんはとても嬉しそうに「ミントくん!」って呼んでくれた。お友達が増えて僕もうれしかった。

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