妖精の森の、日常のおはなし。

華衣

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本編

42.魔法部隊研究所

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 研究所に近づくにつれ、ローブを着ている人を見かけることが増えてきた。すれ違うと、ハーヴェイさんに騎士の敬礼をしていたのは、なんか違和感を感じるけど。そんなことを考えていると、一つの扉の前でハーヴェイさんが足を止めた。

「この先が、魔法部隊長のいる研究室だ。魔法に関しては私より詳しいから、なんでも聞くと良い」

 そう言って扉を開ける。扉の先には、広めの室内を埋め尽くすほどの書物と、その真ん中にある高級そうな木の机。そして、そこで本の山に埋もれている一人の人物がいた。

「はあ⋯⋯いつ来てもここは汚いな」

 ハーヴェイさんが、ため息をつきながらその人物へ近づく。僕たちも、それに続いて本の山へ近づいた。

「おい、ガストーネ。お前にお客さんだ」
「⋯⋯⋯⋯んぁ?」

 2拍ぐらいおいて返事をしたその人は、ボサボサの黒髪をそのままに、そろそろと顔を上げてハーヴェイさんの顔を見ると、へらっとした笑みを浮かべた。

「おお! ハーヴェイじゃないか! 久しぶりだなぁ~!」
「久しぶり、ではないだろう。昨日も会ったはずだ」
「お? そうだったか~。⋯⋯ん? お客さんっつったか?」
「はあ⋯⋯そうだ。こっちの、ミントがお前に用があるんだ」

 なんだかふにゃふにゃした喋り方をするその人は、ハーヴェイさんの紹介を聞いてやっと僕に気づいたようだ。みるみるうちにその赤色の目を大きく見開き、興奮したように捲し立ててきた。

「ハハハ、ハーヴェイ! ここ、この子、妖精様!? 嘘、こんな近くで見れるなんて!! ああそうだ、俺はガストーネ、魔法部隊長だ! それで、いろいろ知りたいことがあるから協力してもらえないか!? これとか、こっちとか、この部分がまだ解明されてないから、妖精様の知恵を貸して──」

 バコン、とハーヴェイさんが頭を叩いた(殴った)ことで、ガストーネさんの声が途切れた。⋯⋯ふう。勢いがすごすぎて、オロオロすることしかできなかったから助かった。
 頭をさすりながら顔を上げたガストーネさんは、ハーヴェイさんに文句を言うも、言い負かされて反省していた。少し落ち着いたのち、やっと僕の用事を伝えることができた。



「⋯⋯なるほど。つまり、妖精様の言葉を、俺らの言葉に翻訳したいってことか?」
「そうそう!(コクコク)」

 そう、僕が知りたかったのは、いわゆる翻訳魔法のこと。最近、手帳を使っての筆談が不便に感じるようになって、どうにか僕の言葉をそのまま伝えられないかな、と考えたときに、翻訳魔法のことを思い出したんだ。ファンタジー小説によくある、使うとどんな言葉でも理解することができるようになるやつ。もしかしたら存在しないかな、と思って騎士団を訪ねることにしたのだ。

「そうか~。まあ、結論から言えば、そういう魔法は一応存在するぞ」

 なんと! じゃあ早速それを僕に掛けてもらえば──

「──って妖精様忘れてねぇ? 魔力は妖精様にも毒なんだからな?」
「あ」

 そうじゃん! いくら耐性があるって言っても、勝手に霊力に変えちゃうから魔法として機能しなくなっちゃう。どうしよどうしよ、と慌てる僕に、ガストーネさんはニヤリと笑うと、ある提案をしてきた。

「だから、魔力の代わりに霊力を使って、翻訳魔法を使うんだ」

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