妖精の森の、日常のおはなし。

華衣

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本編

47.不穏

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 強い日差しのつくる、濃い影。祭りの喧騒も掻き消える路地裏に、フードを被った明らかに怪しい集団が、表を伺っていた。

「⋯⋯妖精はいたか」
「はっ。祭りのため外に出ているようです」
「そうか。ならば今が好機だ。計画通りに散らばれ」
「はっ!」

 リーダーと思われる者の命令を聞いた一人のフードを被った者は、部下と思われるこれまたフードを被った者たちを連れて、王都中の影へ潜んだ⋯⋯。


 ▷◇◁


 エフィさんがゲットしてくれた籠入りの兎たち。ちょうど籠の大きさが僕にピッタリで、兎たちと一緒に入る事ができる。周りがもふもふしていて、気を抜けばぐっすりと眠ってしまいそうだ。しばらく籠をエフィさんに持ってもらって、僕はその籠の中に入って祭りの喧騒を楽しんでいた。

「あ、そういえば。ねぇねぇエフィさん? お城の皆のお土産、選ばなきゃ!」
「お土産ですか? 何人くらいにでしょうか?」
「えーと、んーと」

 まずは王族の4人でしょ。それからグィドさん、あとエフィさんにも! それと、騎士団のハーヴェイさんとガストーネさん、あとはウルリックさんにもかな。

「全部で、9個かな?」
「はい、分かりました! では、お土産はどんな物にしましょうか?」
「んー⋯⋯」

 何にしようかなー? 食べ物もいいけど、やっぱり残る物をあげたいな。手を顎にあててうんうん考えていたその時。

「わっ、なんだ!?」
「キャー!!」
「誰か!」

 なにやら、広場の方が騒がしい。何かトラブルかな? 僕たちは気になって広場に向かおうとした。だから、後ろから近づいていた影に気づかなかった。

「うわっ!!」
「はっ! 妖精様!!」

 一瞬の内に、僕の入っていた籠がエフィさんの手から離れ、黒いフードの奴がさらっていった。しまった! 最近、気配察知をしていなかったのが仇になった。驚いて咄嗟に動くことができず、ぐんぐんエフィさんとの距離を離されていく。気づいたときには、ソイツは他の黒フードのやつらと共に建物の影に隠れ、僕の周りを囲んでいた。

「おい。そいつを袋に入れろ」
「はい」

 妖精になってから、出会った人たちは皆いい人だった。初めて悪意を持った人間に出会って、体が動かなくなった。それをいいことに、一人が僕をわしづかみ、布の袋へ放り入れた。袋の中は暗くて狭い。口を閉じられたため、僕の力では逃げ出せそうにない。

「引き上げるぞ!」
「はっ!」

 初めて感じる恐怖。頭が真っ白になって、僕はただ黙って助けを待つしか無かった。



Side.エフィ

 油断した。一瞬の隙を突かれ、妖精様が拐われてしまった。こういう事態のため、戦闘訓練もしていたというのに。妖精様に、なんと謝罪すればいいか⋯⋯。いえ、今は妖精様を助け出すことが先決。一刻も早く、あの小さなお方を安心させなければ。

「そのためにも、まずは騎士団へ⋯⋯!」

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