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〜第一章〜其の参…愁視点
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何十年ぶりなのだろうか、人の子に話しかけられたことは。
初めは聞き間違えかと思った。でも俺が尋ねると、向こうは言った…名を、來夢と。
何故俺の姿が見えたかは知れないが、一緒に過ごすのはとても楽しかった。
御役目の為に夕日が沈む頃には帰らなければならない。が、彼女とずっと過ごしたいと何時からか思っていた。
彼女の話はとても興味深い。彼女が持ってくる甘味はとても美味い。毎日見た事ないものばかりで、とても楽しかった。
…急に彼女に僕の姿が見えなくなった。どうやら俺の声さえも聞こえていないらしい。
寂しい…また俺の方を見て笑って欲しい…。
いつしか彼女は良く独り言を言った。
俺に会いたいと、俺を…愛していた、と。
俺には見えているのに、聴こえているのに。
彼女はため息をつくばかり…
…彼女がもう一度俺を見えるようになれば、この想いも願いも叶うのに…
最近彼女の様子が少しおかしい。
原因は明らかだった。…俺が昨日彼女が‘見えるようになれば’なんて願ったせいだ。
遠近感が掴めないのだろうか、歩みも少々覚束無い。
…悪いことをしてしまった。でもこれで俺の事が見えるかもしれない…
その日から毎日俺は彼女に声をかけ続けた。
「來夢…?聞こえるか…俺の声?」
…返事が帰ってくることは決してなかった。
俺は諦めきれず、毎日毎日同じ言葉をかけ続けた。
雪が解け、桜の蕾が膨らんできた。
白い杖を持った彼女は今日も神社の境内に1人で座り込んでいた。
今日こそ声が届きますように…姿を見てもらえますように…
「來夢…?……聞こえるか?」
「…その声…愁君!?本当に愁君なの!?」
はっとした表情で応えた彼女。ようやく聞こえた彼女の返事は、驚いきながらどこか嬉しそうだった。
…ようやく俺の想いが届いた…願いが叶ったのだ。
しかしその瞬間彼女の身に降り注いだ悲劇はとても残酷なものだった。
俺の姿が、声が届いた代わりに彼女は…
…彼女の身体は二度と太陽の光を見ることも、小鳥の囀りを聴くことさえも出来なくなってしまったのだった。
彼女の瞳は俺の姿だけ、彼女の耳は俺の声だけしか届かなくなってしまった。
初めは聞き間違えかと思った。でも俺が尋ねると、向こうは言った…名を、來夢と。
何故俺の姿が見えたかは知れないが、一緒に過ごすのはとても楽しかった。
御役目の為に夕日が沈む頃には帰らなければならない。が、彼女とずっと過ごしたいと何時からか思っていた。
彼女の話はとても興味深い。彼女が持ってくる甘味はとても美味い。毎日見た事ないものばかりで、とても楽しかった。
…急に彼女に僕の姿が見えなくなった。どうやら俺の声さえも聞こえていないらしい。
寂しい…また俺の方を見て笑って欲しい…。
いつしか彼女は良く独り言を言った。
俺に会いたいと、俺を…愛していた、と。
俺には見えているのに、聴こえているのに。
彼女はため息をつくばかり…
…彼女がもう一度俺を見えるようになれば、この想いも願いも叶うのに…
最近彼女の様子が少しおかしい。
原因は明らかだった。…俺が昨日彼女が‘見えるようになれば’なんて願ったせいだ。
遠近感が掴めないのだろうか、歩みも少々覚束無い。
…悪いことをしてしまった。でもこれで俺の事が見えるかもしれない…
その日から毎日俺は彼女に声をかけ続けた。
「來夢…?聞こえるか…俺の声?」
…返事が帰ってくることは決してなかった。
俺は諦めきれず、毎日毎日同じ言葉をかけ続けた。
雪が解け、桜の蕾が膨らんできた。
白い杖を持った彼女は今日も神社の境内に1人で座り込んでいた。
今日こそ声が届きますように…姿を見てもらえますように…
「來夢…?……聞こえるか?」
「…その声…愁君!?本当に愁君なの!?」
はっとした表情で応えた彼女。ようやく聞こえた彼女の返事は、驚いきながらどこか嬉しそうだった。
…ようやく俺の想いが届いた…願いが叶ったのだ。
しかしその瞬間彼女の身に降り注いだ悲劇はとても残酷なものだった。
俺の姿が、声が届いた代わりに彼女は…
…彼女の身体は二度と太陽の光を見ることも、小鳥の囀りを聴くことさえも出来なくなってしまったのだった。
彼女の瞳は俺の姿だけ、彼女の耳は俺の声だけしか届かなくなってしまった。
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