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今日だけはこのままで
フィロンが服を脱いだ。日焼けを知らない真っ白な肌は一切の無駄がない引き締まった身体をしていて、直視出来ないメリルは更に顔を真っ赤にして強く目を閉じた。
すると上から舌打ちが降ってきた。何かフィロンの機嫌を損ねる真似をしてしまったらしい。が、メリルに確認する勇気はない。微かに震えていると両脚を大きく広げられ、中心にとても熱いものを宛がわれた。
ハッと目を開けるとフィロンがメリルに覆い被さっていて。
――フィロンのものが一気に挿入された。
「くう……!!」
言葉にならない衝撃。
指とは比べ物にならない質量と熱を持ったソレで貫かれ、衝撃のあまり一瞬呼吸の仕方を忘れた。
「……」
息が出来ない。
息を吸おうとすると痛みが襲ってくる。
「メリル」
涼しい表情でフィロンに見下ろされるメリルは、口を固く閉じて瞳も閉ざした。
「ちっ……」
フィロンはまた苛立たしげに舌打ちをした。
「んっ」
固く一の字で結ばれているメリルの唇に暖かい体温が触れた。瞼を上げたメリルの青紫の瞳とフィロンの紺碧の瞳が重なった。フィロンに口付けられている。冷たい紺碧の奥に、消えない情火が揺れていた。
「口を開けろ」
言われた通り口内を開くと素早く舌が差し込まれた。左手で髪を撫でられ、右手は胸の突起を優しく愛撫し始めた。
フィロンとのキスはメリルにとって至福の時間。どう口付ければ、メリルが感じるか知り尽くしているフィロンの口付けによって、痛みが和らぐ。
メリルが手をフィロンの背に回したのを皮切りにゆっくりと律動をし始めた。
乱暴に挿入されたのに動きはメリルを気遣うようにゆっくりだ。
痛みはまだある。キスに夢中になって痛みを端へ追いやりたい。
「あっ……あっ……」
キスの合間に漏れるメリルの声。苦痛に染まっているが動いている内に中は段々と愛液を増やし、滑りを良くしていく。フィロンの背に回った手に力が入った。
「ん……やあ……」
恐怖と痛みがごちゃ混ぜになって襲い掛かるから、メリルはフィロンの温もりを感じずにはいられない。
ゆっくりと動くフィロンが胸の突起を弄る右手をメリルの頬に移した。左手で後頭部を、右手で左頬を撫でられ、メリルの恐怖を少しでも取り除こうとしているようだ。
「あ……ああ……」
「メリル……」
濡れた視界でフィロンを見上げるが、ぼやけてよく見えない。瞬きを1度して雫を流すとフィロンに口付けられた。激しさはないが快楽を引き出そうとする厭らしい口付け。
「ん……んんっ……んあ……殿下……」
メリルにとってフィロンとのキスは至福の時間。態度と言動とは程遠い優しいキスが大好きだった。
――だからこそ、怖い
「ん……まだ、痛いか?」
正直に言うととても痛い。けど、痛みを越えた先にある快楽を身体が段々と拾い始めているのも事実。
「だい……じょうぶ……です」
「なら少し……強く動くぞ……」
「ああ……!」
ちゅっと唇に触れられた後、宣言通り動きが早く強くなった。
肌と肌がぶつかる音が響き始めた。
ゆっくり、ゆっくり動いていた時と全然違う。
見上げるとフィロンは少し表情を歪ませて自分を見下ろしている。受け止めるのに精一杯なメリルの額に口付けを落とし、頬を撫でていた右手をまた胸に持っていった。指で愛撫し、もう片方の胸はフィロンの舌が弄り出した。
「あ……あん……っ」
中で抽送を繰り返すソレがメリルのある場所に触れた。「きゃあっ!」と悲鳴を上げたメリルに「ここか」と呟いたフィロンがそこだけを突き始めた。
いやいやと首を振るメリルはフィロンの背に回している手の力を更に強めた。
痛みの感覚はもう麻痺してしまって、気持ちいい感覚しかない。
互いが繋がる場所からは厭らしい水音が響く。その証拠に、フィロンを咥えるそこからは沢山の雫が零れ、メリルのお尻を伝ってポタポタとシーツに落ちていた。
「ああっ……あ、ああ……殿下……っ」
「メリル……まだ、これ以上に気持ち良くなりたいだろう……?」
フィロンの言葉は今のメリルには怖く、魅力的な提案だった。
「おれの、名を呼べ」
「……!」
そう言われ、途端に理性が戻ったメリルは顔を真っ赤に染めて、フィロンのものを強く締め付けてしまった。不意打ちの締め付けにフィロンは顔を歪めた。
「う……く……」
律動を止めて呻いた後強くフィロンに睨まれた。
メリルにしてみれば、名前を呼ぶだけで恥ずかしがっているのに抱かれている最中に名前を呼べる自信は皆無。
殿下と呼ぶのも最初はとても恥ずかしかった。何が恥ずかしいと問われれば上手な回答はきっと無理だ。ただ、呼んだらフィロンは意識をメリルに向ける。自分を見つめるフィロンが綺麗で直視出来なかっただけ。
何かに堪えるようにシーツを握り締め、唇を噛み締めていたフィロン。軈て、涙目で見上げるメリルの耳元に唇を寄せて――
「おれの言うことを聞いたら、更に気持ち良くしてやる」
色気と甘さが多分に含んだ声を耳元で囁かれれば、戻った理性はあっという間に霧散した。きゅんっとまた締め付けて、ダイレクトに感じるフィロンのものの形や大きさに喘ぎながら……
「……ロン……様、……フィロン……様……っ」
快楽に染まったメリルはずっと想いを寄せるフィロンの名前を紡いだ。
********
「あ……ああっ! んあ、いああ……!」
純粋に育てられたと言えど、やはり悪魔。性に溺れれば貪欲に快楽を貪るのは皆同じ。
違うのは、メリルは快楽に溺れても綺麗なまま。
片足をフィロンの肩に乗せられて、深くなった挿入に怖がったのも一瞬。激しさを増した律動によって、フィロンが強く腰をぶつける度にメリルの身体も同じように揺れた。
結合部から白濁の精が零れる。名前を呼ばれたフィロンは宣言通り、メリルに更に気持ちの良い快楽を与えた。
喘ぐしかないメリルの中でフィロンは1度果てた。熱くてドロドロとした大量の精を放たれて感じてしまったメリルの中がフィロンのものを締め付けた。
精を放出して萎えたソレはすぐに、否、さっき以上に大きく固くなって再びメリルを求めた。
その間、メリルはもう何度も達している。
「フィロン様……フィロン様ぁ……!」
「メリル……っ、お前は……おれのものだ……お前が言ったんだ、おれのものだと……」
「あ……ああっ……はい……、わた、しは……フィロン様の……もの……です……っ」
態度も言動も冷たい、勇気を振り絞って話し掛けても冷たい紺碧の瞳をもらうだけ。更に勇気を振り絞って、いつも会う度にキスをする理由を訊ねた。その時フィロンが自分の所有物だからと答えた。メリルは嬉しかった。フィロンに婚約者として意識してもらえていると感じて。
「ん……はあ……」
フィロンの息が荒い。胎内を行き来するフィロンのものが大きくなっている。また限界が近付いている証拠だ。フィロンの熱い吐息が顔に掛かるだけで敏感に反応してしまう。メリルの身体は、何処に触れても熱く敏感になっていた。
この行為が終わった後どうなるのだろう、とぼんやりと思う。繋がるそこだけに意識が集中するのに、思考は別のことを考えてしまう。フィロンは幼少期に起きたトラウマのせいで他人が大嫌いだ。婚約が破棄される元婚約者を憐れに思って抱いているのだろうか。
次の婚約者はイレーネで決定だ。魔王が別室でイレーネが待っていると告げていた。待っても来ないフィロンに焦がれているイレーネに申し訳なさを抱きながらもメリルは感じずにはいられない。
(今だけ、今だけフィロン様を独占させてください……)
魔力が失われた自分を欲しがる物好きはいない。ラウネル公爵家という、後ろ楯欲しさに求婚してくる相手はいそうだが、ずっと大事に育ててくれた父が許可を出さない。
領地に行って、誰にも迷惑を掛けず、ひっそりと暮らそう。
王都にいたら、何れ嫌でもフィロンとイレーネの話が耳に届く。
自分が傷付きたくないだけ。
(フィロン様……好きです……ずっと……あなただけを……)
魔力が失われていなければ、例え嫌われていても、フィロンの隣に居続けられたのに。
「……何を考えている?」
「ああっ!? あ、きゃあ、あああ!」
互いが繋がる場所の上にある突起をフィロンの指がそっと擦る。ぎゅっとフィロンのものを締め付けても動きは止まるどころか激しさを増した。同じ問いを繰り返されるも、思考がドロドロに溶けて喘ぐことしか出来ない。
「余計なことは考えるな。お前はおれだけを見て、おれのことだけを考えろ」
閉じ掛けた瞳でフィロンだけを見つめた。
何時だって考えるのはフィロンのことだけ。
何度か強く腰を打ち付けられ、メリルが達したと同時にフィロンも果てた。2度目の精の放出は全身に熱く甘い快楽を走らせた。ドロドロとした感覚がやっぱり気持ち良くてこれ以上味わうと癖になってしまう。
フィロンの背に回していた手を力なくベッドにやった。フィロンの荒い息遣いが上から降る。フィロンも疲れている。これ以上はないだろうと、重たい瞼をメリルが閉じた時。
「誰が寝ていいと言った」
「やああ……!」
ほぼ同じ質量に戻ったフィロンのものが精に濡れて滑りが良いメリルの中に再び挿入された。
痛みはなくても、初めてで2度も抱かれてメリルの疲労は限界。休ませてほしいと口にしたくても、最初から激しい動きのフィロンに喘ぐしか出来なかった。
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