強い祝福が原因だった

文字の大きさ
40 / 50

ガブリエルは諦めない①




 ロナウドの根本にあるのは、自分は駄目で他人は相手にしてもらえるという劣等感。膨大な魔力と桁違いの魔法の才を持つダグラスを実の母親が憎み、自分と似て魔法が使えないロナウドから遠ざけた。
 もしも、と抱いた。
 もしも、ロナウドも魔法が得意な人だったら祖母はどうしていただろうか。自分に似ず魔法が得意なダグラスを憎んでいたなら、見目が自分に似ながら魔法が得意なロナウドは更に憎まれていた気がする。

 私は無理だったのにどうして! と。

 思った感情をそのまま伝えてみるとロナウドは項垂れた。きっとロナウドも同じ考えに至ったのだ。


「……母は……私には優しかった。お前はダグラスのような人間になるな、あれは魔法に憑りつかれた化け物だ、と」
「ああ、直接言われたな」
「え!?」
「その化け物を産んだのはお前だろうと言えば、発狂されて父が止めに入ったな、確か」


 人より感情の起伏が薄いと言えど、実の母親から化け物扱いをされても変わらない。相手が自分に嫌悪を持つなら、無理に好意的に接する必要はない。


「ロナウド。お前に魔法を使う才能がないのは、今更覆らない。けれど別の形で魔法に携われた」
「別の形?」
「お前は人より記憶力に優れている。数字にも強い。魔法研究は魔法の才能より、膨大な術式、数式を記憶し、それらに隠された暗号を読み解く能力が重要視される。魔力が多いと解読の時間が長くなる。お前のように魔法が使えなくとも魔法研究に携わる研究者は多い」
「……」


 浮かびもしなかった可能性と自分に興味がないと決め付けていたダグラスが自分を知っていた事にロナウドは言葉を失った。顔を俯け、肩を震わせ涙を流していた。

 こうして見るとロナウドはずっとダグラスに……兄に構ってほしかった弟にしか見えず。祖母が自分勝手な気持ちを優先せず、2人を普通と変わらない兄弟として育てていれば拗れなかった。祖父は無理に婚約を頼んだ手前、あまり祖母に強く出られなかった。公爵家を継ぐロナウドと大魔法使いになるダグラスがいればいいと最後決めたのだとか。

 欲に濡れた姿は醜い。公爵夫人という座にしか目がない令嬢達から逃れたい一心で昔馴染みの祖母に婚約を求め続けた祖父にも原因はあった。魔法が得意じゃない令嬢が優秀な魔法使いを数多く輩出した名家に嫁げばどの様な目に晒されるか知らぬ事はない。祖父なりに守ってはいたらしいがダメだったとダグラスは言う。稀代の魔法使いを産んだら、己の劣等感を大いに刺激され、次に生まれた自分に似た我が子には敵対心を植え付けた。どうしようもないとはこのこと。


「後はお前自身で考えろ。1つ言えるなら、何かを始めるのに早いも遅いもない。要は本人の意思と努力次第だ」
「……」


 幸いなのは祖母がロナウドを愛していたのは確かなのだ。祖父も然り。

 俯きながらもロナウドは重く頷いた。
 これ以上は何も言わないとダグラスに呼ばれたエイレーネーは転移魔法でダグラスの屋敷に移った。


「これで良かったのですか? お父さん」
「ロナウドの事か? 後はあいつの問題だ。俺がどうこう言えた義理じゃない」
「お祖母様やお祖父様は……」
「さあ。文句があれば、ロナウド自身が領地に行くさ。母は発狂するだろうがな」


 祖母の発狂姿……会った回数が祖父より極端に少なく、顔を合わせても挨拶くらいしか交わさないエイレーネーでは想像がつかない。
 屋敷に入るとイヴがこんな事を言う。


「王様が件の医師に白状させたら私を呼んでって伝えておいてよ」
「何をする気だ?」
「王子が悪魔憑きだと偽った天使の成れの果てでも見せてあげようと思って。君達人間が崇拝する天使も、嘘を吐けばどうなるかを見せればちょっとは神への信頼を回復させられるでしょう?」
「エレンに伝えておこう。それで人間がお前達を信頼するかは人間次第だ」
「いいよ。ちゃんとお詫びの祝福を神から授けさせる」
 

 最近神の座に就いた甥っ子にとったら、大きな仕事だと愉し気なイヴ。甥っ子に後を継がせると出奔した長兄。甥っ子に長兄を連れ戻してと頼まれ人間界へ探しに来たイヴとイヴの3番目の兄。この2人に探す気が一切ないのを甥っ子は知らないのだとか。長兄が巧妙に姿を消しているから、見つけるのが困難なのだといつも報告しているとか。自由気儘な叔父さんを持った甥っ子を少々気の毒に思う。


「この国にはいるんでしょう?」とエイレーネー。
「うん」
「見つけてあげましょう」
「とっても楽しいから来ないでって言われたんだ。そうまで言われたら、私も無理に会いに行く気が起きない」
「もう……」
 

 心の底から、彼の甥っ子に同情した……。

 

感想 110

あなたにおすすめの小説

絶望?いえいえ、余裕です! 10年にも及ぶ婚約を解消されても化物令嬢はモフモフに夢中ですので

ハートリオ
恋愛
伯爵令嬢ステラは6才の時に隣国の公爵令息ディングに見初められて婚約し、10才から婚約者ディングの公爵邸の別邸で暮らしていた。 しかし、ステラを呼び寄せてすぐにディングは婚約を後悔し、ステラを放置する事となる。 異様な姿で異臭を放つ『化物令嬢』となったステラを嫌った為だ。 異国の公爵邸の別邸で一人放置される事となった10才の少女ステラだが。 公爵邸別邸は森の中にあり、その森には白いモフモフがいたので。 『ツン』だけど優しい白クマさんがいたので耐えられた。 更にある事件をきっかけに自分を取り戻した後は、ディングの執事カロンと共に公爵家の仕事をこなすなどして暮らして来た。 だがステラが16才、王立高等学校卒業一ヶ月前にとうとう婚約解消され、ステラは公爵邸を出て行く。 ステラを厄介払い出来たはずの公爵令息ディングはなぜかモヤモヤする。 モヤモヤの理由が分からないまま、ステラが出て行った後の公爵邸では次々と不具合が起こり始めて―― 奇跡的に出会い、優しい時を過ごして愛を育んだ一人と一頭(?)の愛の物語です。 異世界、魔法のある世界です。 色々ゆるゆるです。

私の手からこぼれ落ちるもの

アズやっこ
恋愛
5歳の時、お父様が亡くなった。 優しくて私やお母様を愛してくれたお父様。私達は仲の良い家族だった。 でもそれは偽りだった。 お父様の書斎にあった手記を見た時、お父様の優しさも愛も、それはただの罪滅ぼしだった。 お父様が亡くなり侯爵家は叔父様に奪われた。侯爵家を追い出されたお母様は心を病んだ。 心を病んだお母様を助けたのは私ではなかった。 私の手からこぼれていくもの、そして最後は私もこぼれていく。 こぼれた私を救ってくれる人はいるのかしら… ❈ 作者独自の世界観です。 ❈ 作者独自の設定です。 ❈ ざまぁはありません。

妃殿下、私の婚約者から手を引いてくれませんか?

ハートリオ
恋愛
茶髪茶目のポッチャリ令嬢ロサ。 イケメン達を翻弄するも無自覚。 ロサには人に言えない、言いたくない秘密があってイケメンどころではないのだ。 そんなロサ、長年の婚約者が婚約を解消しようとしているらしいと聞かされ… 剣、馬車、ドレスのヨーロッパ風異世界です。 御脱字、申し訳ございません。 1話が長めだと思われるかもしれませんが会話が多いので読みやすいのではないかと思います。 楽しんでいただけたら嬉しいです。 よろしくお願いいたします。

全てを捨てて、わたしらしく生きていきます。

彩華(あやはな)
恋愛
3年前にリゼッタお姉様が風邪で死んだ後、お姉様の婚約者であるバルト様と結婚したわたし、サリーナ。バルト様はお姉様の事を愛していたため、わたしに愛情を向けることはなかった。じっと耐えた3年間。でも、人との出会いはわたしを変えていく。自由になるために全てを捨てる覚悟を決め、わたしはわたしらしく生きる事を決意する。

魔法のせいだから許して?

ましろ
恋愛
リーゼロッテの婚約者であるジークハルト王子の突然の心変わり。嫌悪を顕にした眼差し、口を開けば暴言、身に覚えの無い出来事までリーゼのせいにされる。リーゼは学園で孤立し、ジークハルトは美しい女性の手を取り愛おしそうに見つめながら愛を囁く。 どうしてこんなことに?それでもきっと今だけ……そう、自分に言い聞かせて耐えた。でも、そろそろ一年。もう終わらせたい、そう思っていたある日、リーゼは殿下に罵倒され頬を張られ怪我をした。 ──もう無理。王妃様に頼み、なんとか婚約解消することができた。 しかしその後、彼の心変わりは魅了魔法のせいだと分かり…… 魔法のせいなら許せる? 基本ご都合主義。ゆるゆる設定です。

姉に代わって立派に息子を育てます! 前日譚

mio
恋愛
ウェルカ・ティー・バーセリクは侯爵家の二女であるが、母亡き後に侯爵家に嫁いできた義母、転がり込んできた義妹に姉と共に邪魔者扱いされていた。 王家へと嫁ぐ姉について王都に移住したウェルカは侯爵家から離れて、実母の実家へと身を寄せることになった。姉が嫁ぐ中、学園に通いながらウェルカは自分の才能を伸ばしていく。 数年後、多少の問題を抱えつつ姉は懐妊。しかし、出産と同時にその命は尽きてしまう。そして残された息子をウェルカは姉に代わって育てる決意をした。そのためにはなんとしても王宮での地位を確立しなければ! 自分でも考えていたよりだいぶ話数が伸びてしまったため、こちらを姉が子を産むまでの前日譚として本編は別に作っていきたいと思います。申し訳ございません。

侯爵家の婚約者

やまだごんた
恋愛
侯爵家の嫡男カインは、自分を見向きもしない母に、なんとか認められようと努力を続ける。 7歳の誕生日を王宮で祝ってもらっていたが、自分以外の子供を可愛がる母の姿をみて、魔力を暴走させる。 その場の全員が死を覚悟したその時、1人の少女ジルダがカインの魔力を吸収して救ってくれた。 カインが魔力を暴走させないよう、王はカインとジルダを婚約させ、定期的な魔力吸収を命じる。 家族から冷たくされていたジルダに、カインは母から愛されない自分の寂しさを重ね、よき婚約者になろうと努力する。 だが、母が死に際に枕元にジルダを呼んだのを知り、ジルダもまた自分を裏切ったのだと絶望する。 17歳になった2人は、翌年の結婚を控えていたが、関係は歪なままだった。 そんな中、カインは仕事中に魔獣に攻撃され、死にかけていたところを救ってくれたイレリアという美しい少女と出会い、心を通わせていく。 全86話+番外編の予定

【完結】名無しの物語

ジュレヌク
恋愛
『やはり、こちらを貰おう』 父が借金の方に娘を売る。 地味で無表情な姉は、21歳 美人で華やかな異母妹は、16歳。     45歳の男は、姉ではなく妹を選んだ。 侯爵家令嬢として生まれた姉は、家族を捨てる計画を立てていた。 甘い汁を吸い付くし、次の宿主を求め、異母妹と義母は、姉の婚約者を奪った。 男は、すべてを知った上で、妹を選んだ。 登場人物に、名前はない。 それでも、彼らは、物語を奏でる。