逃がす気は更々ない

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 さて、と呟いて黄金に開花した“祈りの花”をどうするか思案する。このまま戻っても聖女の能力に目覚めた異母妹がラシュエルの病を治して婚約者の座を勝ち取った後。のこのこ戻ったリナリアは冷酷非道人間扱い。


「――このまま、此処にいるかい?」
「ん?」


 温和で色気が含まれた青年の声が頭上から振り、後ろから花の優しい香りがふわりと舞った。上を見ると肩まで伸ばされた癖のあるプラチナブロンドの男性がリナリアの顔を覗いていた。きらきらと光る水色の瞳は前世でしか見ていない海を彷彿とさせた。

 リナリアの隣に座った青年を「ユナン」と呼んだ。


「人の独り言を聞いてたわね」
「はは。声が聞こえたから気になって来たんだ。リアは帝都に戻らないの?」
「うん」
「あっさりと言うんだ」


 彼は聖域に足を踏み入れたと同時にリナリアの前に姿を現した。

 大教会に属する神官で聖域の管理を任されており、年中聖域で過ごしていると最初話された。聖域に入れる者は滅多にいないので、久しぶりの客人だとユナンはリナリアを歓迎した。

 目的を包み隠さず話すと“祈りの花”が生息する場所を案内された。聖域に入ってしまえば花自体を見つけるのは難しくないとの事。

問題は開花させられるか、させられないか、である。開花させられないのなら花を求めても意味がない。
生半可な祈りでは“祈りの花”は開花しないと告げてもそれしかないから、と決して諦めなかったリナリアの面倒を見てくれた。

 開花した“祈りの花”を見たユナンは「黄金の花か」と感嘆した声を漏らした。

祈る者によって花の色は様々だと言い、黄金の花を見たのは初めてだと話された。
過去の文献でも黄金の花は滅多に咲かない色で、その効果は凡ゆる傷病を癒すと記されてあり、リナリアの願いはこの花によって叶う。とユナンに話されるがリナリアとしては帝都に戻るつもりは更々ない。


「私の独り言を聞いていたのなら分かってるでしょう」
「疑問なんだが何故そう思うんだ? 大体、聖女の能力に覚醒したって何故思う?」
「……」


 前世の知識があるから……と口には出せない。
自分の素を出しても良い子ぶるよりマシだと受け入れてくれたユナンに不信感を抱かれたくない。

が、根拠もなしに断言しても別の疑惑を抱かれる。何か良案はないかと探っていると「話したくないなら無理に聞かない。
誰にだって言いたくない事はあるから」とユナンはあっさりと引いた。


「ありがとう。これからどうしようかしら」
「俺と聖域にずっといる? 此処に人は殆ど来ない。来ても聖域の入口に貼られている結界が来訪者を報せてくれる。まあ、他に人はいないし、大した娯楽もないところだから都会育ちのお嬢様には退屈になるだろうがな」
「あら、私好きよ田舎。静かだし、一人でいたい時は持って来いの場所だと思ってる。私が此処にいてユナンに迷惑は掛からない?」
「全然? 一人でいるよりは良い。リナリアは嫌な令嬢って感じがしないから」


 嫌な令嬢か。



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