陰陽ノ花〜現代陰陽師奇譚〜

第一集 壱ノ巻

＊芦屋の末裔

紫苑「...癒良?」

   
   その場に蹲り、動こうとしない癒良を不審に思った紫苑が、癒良に駆け寄った。
紫苑は結界があるかと思ったが、もう結界は無くなっており、容易に癒良に近付くことが出来た。



紫苑「....え?!」



   さらに癒良に近付き、癒良を抱き起こした紫苑は、癒良の状態を見て、驚きの声を上げた。


 
   ーーまず目に入ったのは、癒良の白い狩衣の肩を染める、赤い、赤い液体。


言わずがもな、それは癒良の血だった。



よく見ると、癒良の肩には、刀で斬られた痕があり、そこから血が流れていた。


  
  癒良「紫苑....」



紫苑「癒良、今すぐ傷を治すから。待ってて。」


   紫苑にもたれ掛かる自分に気が付いた癒良は、自分自身が情けなくなり、思わず俯いた。


紫苑は、癒良に治癒術をかける事と結界を張る事に集中しており、そんな癒良の様子には気付いていなかった。



結界を張り終えた紫苑が、負傷した癒良の右肩に治癒術用の符をあてて何かを呟いた。すると。


紫苑が符をあてた位置が、淡い光を放ち出した。



     癒良「っ、あぁあぁ！」


それと同時に、癒良が再び悲痛な叫びを上げた。だが、1分もしないうちにそれもなくなり、血も完全に止まっていた。



    紫苑「ごめんね。癒良。私、癒良みたいに治癒術上手くないから、短時間で傷を治そうと思ったら、どうしても痛みを伴うみたい。」



紫苑は本当に申し訳なさそうな表情を浮かべ、そう言った。



   癒良「これくらい、大丈夫や!ありがとうな。」