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herf year ago3
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まさか芦屋は昔テレビアニメでやっていた月夜からの使者『ネイビームーン』だったのでは……月にかわって大テロル! の決まり文句で有名なあれだ。あれの必殺技スゴかったなぁ……なんせ主力艦を肩にかついで一斉掃射してたもんなぁ……月の力ってスゲェよって騒いだよ。あと、どこからともなくあらわれるオフィサー仮面様が良かったよな。
それはともかく、影が飛んでいったのは例のいかがわしい噂のある公園のほうだった。その公園はけっこう広めで、森になっている丘をチョチョイといじって造られている。そのせいで死角が多いし、それが隠れて犯罪が起きている原因のようになっているのだ。まあ噂だけど。
ある意味その公園は別世界への入り口だった。なにせ都市のスパイクヒルズにいきなり自然の丘が配置されているんだ。なかにはいればうっそうとした森。電線も引いてあるが、遊具なんかがある中央広場にしか電灯がないからかなり暗い。なんでそこに行くまで電灯がないのか意味が分からない。予算を渋りやがったのかもしれない。
とにかく俺は公園に着くと石段を登り始めた。なんて言うのかその雰囲気は神社っぽい。心霊関係が苦手な俺はそういうことを考えると進めなくなる――いつもはな。しかし俺は飛んでいった影が芦屋かどうかを確認しないことには、どうにも落ち着かなくなっていた。
暗い森に俺の足音が反響している。すげえ恐い。鳥も虫も鳴いていない。そして寒い。石段を一つ登るたびに冷気が増していく気がした。森のなかは闇に埋もれていてなにも見えなかった。なにかがいるんじゃないかという恐怖……ひとりで来るんじゃなかったか? と長い石段を登っていく。
そもそも確信があるってわけじゃない。現実的に考えて人間が空を飛ぶってアホかって感じだが、芦屋の姿を見た直後だったし、空海高校の制服っぽい切れはしだって持ってる。しかも血に見える染み……いや、そこまでそろってても馬鹿げてるんだが……。
結局はまあ、好きな女子を見かけちまって、その相手がなんでこんな夜に出歩いてんだ? ていう疑心暗鬼だった。なんかやじゃん。想いを寄せてる女の子に実は彼氏いました、みたいな展開は嫌じゃん。
しかも相手が大学生とかでさ。車とか金銭面で負けててさ。アイツのどこがいいんだよって聞くと、『大人だしカッコいい』とか言われてさ。それはムリだわ、うん、敵わないよね。だって君と僕は同い年だもんねっ。いきなり年齢三つ増しとか出来ないしね。そんなラーメンのトッピングみたいにマシマシでっ! とかいきなりムリだし。
え? 嘘……そうなのか芦屋? 大学生とお付き合いしてんのか? うわぁどうしよう俺。勝てる見込みないんですけど。だって気持ち以外に武器ないもの。ただのしがないエロ高校生以外の取り柄ないもの!
俺はどこか重い足どりで石段を登っていった。石段を登りきると固くした土の地面が真っ直ぐの道になり、周囲は相変わらずの暗い森だ。だが俺にはもはや芦屋と大学生がどこまでの関係なのか、それを考えるほうが恐ろしくなっていて、真っ暗で不気味な自然など眼中にない。
ざっざっと歩きながら、芦屋の初めてはどこまで初めてじゃなくなっているのかを考える。どのくらいまで初めてを終えたのか――いや違うぜ斗真! まだ芦屋は清いはずだ! まだ勇気がないとか言って断ってるよ色んな初めてをね!
夜空のお星様を見上げてガッツポーズし、理想と可能性を追い求めて俺は広場になっている場所へと向かった。そこは夏とか正月くらいになると、祭りをやるようなスペースだった。学校の校庭くらいの広さがあり、櫓を建てたりキャンプファイヤーのような篝火を焚いたり、女の体目当ての男が色々とタテたりする場所だ。あと三十メートルほどすればたどり着く――という場所でそれは聞こえた。ドスンッ……!
「……えーとぉ?」
芦屋への想いよりも心霊系への恐怖が勝った。今しがた背後から聞こえた物音は? 妖怪とかか? 上から妖怪ラッカサンか? どんな妖怪か聞かれても思いつきだから説明は出来ない。あう……でもポルターガイスト現象とか、そんなんだったらもう死にたいぞ……?
説明すると恐いから言いたくなかったが、ドスンッ! のあとから、ずっとさっきからはぁはぁ言ってるんだよね。あっちのはぁはぁならともかく、このはぁはぁは俺は嫌いだなっ。あームリ、マジムリ! 色んなの思い出しちゃうから! 毎晩押し入れから這い出てくる髪の長い女とか、うーうー唸って歩き回る髪の長い女とか、天井からだらんと逆さまに出てくる髪の長い女とか……なんで髪型のバリエーション統一なんだよ! 季節ごとに髪型くらい変えろよ! 色気ねーなー!
それはともかく、影が飛んでいったのは例のいかがわしい噂のある公園のほうだった。その公園はけっこう広めで、森になっている丘をチョチョイといじって造られている。そのせいで死角が多いし、それが隠れて犯罪が起きている原因のようになっているのだ。まあ噂だけど。
ある意味その公園は別世界への入り口だった。なにせ都市のスパイクヒルズにいきなり自然の丘が配置されているんだ。なかにはいればうっそうとした森。電線も引いてあるが、遊具なんかがある中央広場にしか電灯がないからかなり暗い。なんでそこに行くまで電灯がないのか意味が分からない。予算を渋りやがったのかもしれない。
とにかく俺は公園に着くと石段を登り始めた。なんて言うのかその雰囲気は神社っぽい。心霊関係が苦手な俺はそういうことを考えると進めなくなる――いつもはな。しかし俺は飛んでいった影が芦屋かどうかを確認しないことには、どうにも落ち着かなくなっていた。
暗い森に俺の足音が反響している。すげえ恐い。鳥も虫も鳴いていない。そして寒い。石段を一つ登るたびに冷気が増していく気がした。森のなかは闇に埋もれていてなにも見えなかった。なにかがいるんじゃないかという恐怖……ひとりで来るんじゃなかったか? と長い石段を登っていく。
そもそも確信があるってわけじゃない。現実的に考えて人間が空を飛ぶってアホかって感じだが、芦屋の姿を見た直後だったし、空海高校の制服っぽい切れはしだって持ってる。しかも血に見える染み……いや、そこまでそろってても馬鹿げてるんだが……。
結局はまあ、好きな女子を見かけちまって、その相手がなんでこんな夜に出歩いてんだ? ていう疑心暗鬼だった。なんかやじゃん。想いを寄せてる女の子に実は彼氏いました、みたいな展開は嫌じゃん。
しかも相手が大学生とかでさ。車とか金銭面で負けててさ。アイツのどこがいいんだよって聞くと、『大人だしカッコいい』とか言われてさ。それはムリだわ、うん、敵わないよね。だって君と僕は同い年だもんねっ。いきなり年齢三つ増しとか出来ないしね。そんなラーメンのトッピングみたいにマシマシでっ! とかいきなりムリだし。
え? 嘘……そうなのか芦屋? 大学生とお付き合いしてんのか? うわぁどうしよう俺。勝てる見込みないんですけど。だって気持ち以外に武器ないもの。ただのしがないエロ高校生以外の取り柄ないもの!
俺はどこか重い足どりで石段を登っていった。石段を登りきると固くした土の地面が真っ直ぐの道になり、周囲は相変わらずの暗い森だ。だが俺にはもはや芦屋と大学生がどこまでの関係なのか、それを考えるほうが恐ろしくなっていて、真っ暗で不気味な自然など眼中にない。
ざっざっと歩きながら、芦屋の初めてはどこまで初めてじゃなくなっているのかを考える。どのくらいまで初めてを終えたのか――いや違うぜ斗真! まだ芦屋は清いはずだ! まだ勇気がないとか言って断ってるよ色んな初めてをね!
夜空のお星様を見上げてガッツポーズし、理想と可能性を追い求めて俺は広場になっている場所へと向かった。そこは夏とか正月くらいになると、祭りをやるようなスペースだった。学校の校庭くらいの広さがあり、櫓を建てたりキャンプファイヤーのような篝火を焚いたり、女の体目当ての男が色々とタテたりする場所だ。あと三十メートルほどすればたどり着く――という場所でそれは聞こえた。ドスンッ……!
「……えーとぉ?」
芦屋への想いよりも心霊系への恐怖が勝った。今しがた背後から聞こえた物音は? 妖怪とかか? 上から妖怪ラッカサンか? どんな妖怪か聞かれても思いつきだから説明は出来ない。あう……でもポルターガイスト現象とか、そんなんだったらもう死にたいぞ……?
説明すると恐いから言いたくなかったが、ドスンッ! のあとから、ずっとさっきからはぁはぁ言ってるんだよね。あっちのはぁはぁならともかく、このはぁはぁは俺は嫌いだなっ。あームリ、マジムリ! 色んなの思い出しちゃうから! 毎晩押し入れから這い出てくる髪の長い女とか、うーうー唸って歩き回る髪の長い女とか、天井からだらんと逆さまに出てくる髪の長い女とか……なんで髪型のバリエーション統一なんだよ! 季節ごとに髪型くらい変えろよ! 色気ねーなー!
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