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第3品「買い物に利用したことないんすよ、ここ」
それぞれの敗北……デッドプリズンの罠
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豆腐はひよーんとデッドプリズン二階を飛行していた。
四階にソヨギを探しにいく予定だったのだが、それよりもシンディラとフィアが気がかりだったのだ。三階にビデガンを待機させて豆腐がおりてきたのは、ビデガンはアニミスのあつかいに慣れていないからである。
「……おかしいですね」
二階では、ある変化が起きていた。ビデガンとともに三階を探索していたのはたいした時間ではなかったはずだが、
「バーダーが消えている……!」
場所はシーツがたくさん配置された区画である。だがそこにいたはずのバーダーが消えていたのだ。
いや……というよりなんだがおかしい気がする。さきほど探索していた二階とはなにかが違うように思える。
豆腐は違和感の正体を探るためにふよよ~んと天井すれすれの飛行を始めた。黒い階段のあたりに戻り、そこから書庫(紀伊○屋書店)のほうを眺めると、気づく。
「光……そうだ。光が見えないのです」
あの書庫には採光用とも言うべき細長い窓があったはずだった。厳密に言えばその窓は存在するのだが、そこから光が見えず、黒い空間が広がっているようだった。
不思議なのは光が見えないにもかかわらず、デッドプリズン内部が、さも光をいれているかのように照らされていることである。その照らされ方はまるで、外からの光を採りいれているかのようだった。つまり、光は見えないのに窓の外から光が射しこんでいる……?
豆腐は細長い窓から外を見てみようとふよーんと移動した。よく分からない品物を眼下にしながら書庫を目指す。
豆腐はそこでまた驚いていた。モンカーがいない。なんとなく――本当になんとなくだが、最初からいなかったような感覚にすら捕らわれている。
誰かがいたような痕跡がないのだ。例えばしたに敷いてある敷物……なにかがいたのなら跡があってもよさそうだ。モンカーたちは重い鎧まで身につけているのだから、体を押しつけていた箇所が乱れていてもよさそうである。鎧が押しつけられていた繊維がその形に倒れているとかだ。
だがじっさいはおろしたての敷物のようにしか見えない。そしてまた豆腐はあることに気づいた――空気である。
「流れていない……ホコリも浮いていない……」
モンスターたちがデッドプリズン内部にいて、行き交っていたのならばホコリがたつはずである。そして空気は絶えず流れるものであり、それは豆腐の世界でもこの異世界でも変わりないはず。なのにそれが存在しないのだ。
豆腐は新たに浮かんだ疑問や違和感に、次第に鼓動(?)が激しくなっていくのを感じていた。とりあえず外を見てみよう。なにかが分かるかもしれない。
「あ……ああ……! これは! この世界は!」
細長い窓からの景色。それは『無』だった。
なにもない。あの異世界の青空もなにも。ヒントにもならない絶望的な景色である。なぜなら豆腐はその世界のことを知っていた。神々たちがささやく、あの終末の景色のようにしか見えない。
「破滅の世界! まさかノヴァカースが復活した!? それとも破滅王がすでに……!」
豆腐はパニックにおちいっていた。勇者たちが倒され、世界が滅びてしまったのか? もしくはノヴァカースが世界を崩壊させたのか? 分からない!
「ソ……ソヨギさまはっ!」
激しい動揺のなか、そのレアーズの姿が浮かんだ。
世界が滅びたのなら豆腐の力を付与することなど意味もない。だがしかし――だけど、ソヨギさまがいなければわたし……わたし……!
「ソヨギさまぁっ!」
豆腐は混乱し、全力で疾走した。残ったアニミスはこちらの世界に来たときの二倍程度である。隊長クラスならば容易に倒せるが、連戦はできないほどのアニミス――それを無視して解放する!
「ソヨギさま! ソヨギさま!」
黒い階段をあがる。三階に着きビデガンに報告――いない!?
「ビデガン! 緊急事態ですビデガン!」
四階に行ったのかもしれない――豆腐は全力疾走で向かった。
さきほど爆発音が聞こえたはずだが、そういった痕跡はなかった。モンスターが倒されているということもなく、内容には変化のないどこか空っぽのデッドプリズンが広がる。
「ビデガン! うぅ……シンディラァ! フィアさまぁ!」
豆腐は不安から絶叫していた。
まさか自分以外はいなくなってしまったのか? あの破滅の世界に巻きこまれ、消滅してしまったのか? そんなはずはない。そんなことは起きてはいけない……!
「うぅ……」
豆腐はうなだれて(?)四階を浮遊した。正面にあるよく分からない区画に向かう――と、そこで人間の世界にある食べ物を見つけた。
「……ケーキ?」
近づいて観察する。しかしそれはよくできたニセモノだった。配置からするとここでなにかをしていたようだ。あたりを見まわす。しかしなにかをしていた誰かを見つけることはできなかった。
「……落ち着いて。落ち着くのよソフラ。よく考えるの。みんなが滅ぼされてしまうわけがないじゃない。だって……」
自分が無事である。そしてデッドプリズンは存在し続けているではないか。破滅がおとずれたのなら『存在』があってはおかしいのだ。なにもかもを無に帰すのが破滅なのだから。
それに戦闘もなくあの三人がやられるとは思えない。
ビデガンは魔神デスケテスに認められるような不屈のデビロイド。
シンディラは産まれたときから飾神すらも超越する力を持った女神。
フィアは善神に使命を託されるほどの勇者。
その彼らを物音ひとつ、魔力解放もせずに消すことなど不可能に近い。だからこれは破滅じゃない。
「……明確な言葉は浮かびません。わたしのこのイメージを、一番近く表現するのは……分断?」
分断。つまり戦力を分ける行為である。
孤立でもいい。とにかくパーティーをバラバラにすることが目的なのではないか? 無援にすることで各個撃破を魔族がもくろんでいたとしたら? その考えが正しければ、こんな状況も納得がいく。豆腐は言いようのない孤独感にさいなまれている。敵の狙いは大成功と言っていい。そしてもうひとつ――
「そんな狙いが魔族にあり、このデッドプリズンが造られたのなら、これは罠! 異世界の人間が捕らえられていると情報を流し、護神をひとつ所に集める罠だったとも考えられる!」
『……神のなかでもなかなかに秀でた種だな。豆腐の女神よ』
「!?」
豆腐は天井を見あげた……なにもいない。
しかし声がした途端になにかの気配を感じていた。なにかは分からないが、生物的な気配である。
『さあ……このガデニデグのために――』
豆腐は声をあげることもできなかった。どこを振り返ったのかも分からなかった。ただ、
(見たこともない……セイブ……ツ?)
ぺとり。次にカランカラン……と渇いた音が響いた。
豆腐が最後に見たのは、ヒョロ長いなにかだった。
※
「遅ぇなぁ。豆腐の女神はなにやってんだぁ?」
三階である。ビデガンはとりあえず装飾品の区画を歩いていた。
向こうの世界でもこういうキラキラしたもんは女の特権だった。ただデビロイドの女は戦闘を生業にする種族という前提があるため、人間のようにチャラチャラしたりはしない。せいぜい邪魔にならない耳や指の装飾品を身につけるくらいである。
(そういや贈りもんなんざしたこともねぇ……)
そう……あの女に贈ったのは――贈れたのは言葉くらいだった。
腰の高さくらいのガラスの箱(ショーケース)をのぞきこむ。どんなんが似合うかねぇ。いや、貧しい女には似合わねぇってつっ返されるか? 見た目は優しさばっかの病弱そうな女だが、肝っ玉だけは十人前だからなぁ。
……やめとくか。どのみちガラでもねぇしな。ビデガンはそっぽを向くようにしてガラスの箱から離れた。聖戦で命が残ってたら、そんときゃあガラでもねぇことしてみるか。
とりあえず黒い階段へ向かう。したに行った豆腐が気がかりだ。あいつは女神のくせに落ち着きがあるようでねぇからなぁ……まぁ、女ってなぁだいたいそうかもしれねぇけど。
勘違いしないでほしいのは、ビデガンは男尊女卑ではない。根っからの硬派なのだ!
ビデガンは黒い階段につくとしたを見つめた。闇にも満たない暗い影が、霧のように浮いている。陰気くさいのは好きではない。まあ魔物の棲みかがカラッとしてんのも気色悪いがねぇ。
「……なんかおかしくねぇか?」
ビデガンはその黒い階段に奇妙な印象を覚えていた。なにかがさきほどとは――あがってきたときとはなにかが違っている気がしていたのだ。
なんと言えばいいのかは分からない。だがその目に映る空間が、どことなく歪んでいるように見えている。しかし凝視をやめるとなにもない。
なんだかトリックを見ている気がした。見ずとも見るの状態ではなにもないが、見れば見るほど姿を変える。
デビロイドの魔装技能種――つまりトリックの種類は千ほど存在するが、そのなかには視界を騙す技もある。
それから派生したのが魔装滑駆だ。空間に自身を描き魂などの存在を定義するすべてを摸写し、元となった自分の定義を消失させることで空間を移動する。もちろんインカースの墨属性と魔力ありきの技である。アニミスで試してはいないが、同様のことができるだろう。
なんにせよトリックとこの歪んだ空間は似ていた。それはつまるところ、なにかがトリックられているという意味である。
「空間トリック……あれだ。奇矯界面みてぇだ」
エキセントリックは見るものを騙す、空間トリックに属する大技である。その場の明るさ、見ている角度、被技者の視力などに働きかけ、視覚に関するすべてを騙す。その結果として被技者は自分が別次元にいるような錯覚を起こす。もっともポピュラーな言い方では、『幻覚』に近いものである。
まあとにかく黒い階段の空間のようすが、そのエキセントリックを使用したものによく似ていた。視覚が異常なものになり、見ている景色が歪んでしまうのである。その影響は被技者のみならず、通りすがりの誰かにも違和感を覚えさせる。『視界』に影響するトリックだからである。
そして「なにか変だな」と目を凝らすと、エキセントリックの場はどこか異質な空間に見えたりする。それは瞳がフォーカスを調整するためで、視界に働いたエキセントリックの片鱗を見ることになるだからだ。
ビデガンは小難しいエキセントリックの解釈を思いだしながら、その空間を見おろす。
「まったく同じモンてぇわけじゃねぇが、デッドプリズンにはなにかトリックがある」
それはこのデッドプリズンが、ただの魔空戦隊の基地でもないし、人間の収容所でもないことを示している。
確かにエキセントリックは防護術として使うこともできるが、ただ侵入者を混乱させるだけには使用しない……それをやるためにはかなり範囲を限定しなければならない。
トリックは諸刃の剣になりうる。このデッドプリズンにはモンスターもいるのだ。空間ごとトリックの影響下に置かれてしまうのだから、その技は味方ごと混乱させてしまう。そうすればモンスターを徘徊させている意味がなくなる。
しかしエキセントリックに似たなにかはじっさいに仕掛けられている。
「ここが基地じゃねぇ、収容所でもねぇとなると……?」
エキセントリックに似た現象が起きているのなら、答えはほぼ決まっていた。エキセントリックは相手を誘いこんで術中にはめるトリックである。つまり、
「罠か。なんのためかは知らねぇがな」
『……なるほどな。ただの数あわせではないと見える。デビロイドのビデガン――いや、いまや風雷の護神ビデガンか』
ビデガンは突然の声に天井を見あげた。聞き覚えはないが禍々しいなにかを感じさせる不吉な声だった。
「どこのどいつかは知らねぇが、ずいぶん暇なことしてんじゃねぇか。ああ?」
『ほう……動じるどころか挑発すらしてみせるか。さすがはデスケテスの認めた男よ』
「けっ。どいつもこいつも同じセリフを吐きやがってよぉ。他に褒め言葉ってぇもんを知らねぇのかよ。その帽子イカしてますね、とかよぉ」
かなり本気のクレームである。デスケテスにはうんざりである。まあそれを誇らしく思ったこともあったが、護神になると魔族をネタに褒められても嬉しくなくなっていた。
「んで? なんか用があるんだろ? 暇潰しに声だけかけたってなら、とっとと失せなぁ。すぐに行ってやるからよぉ」
『面白い……このガデニデグに挑戦すると言うのか! クハハハハッ! 己の愚かさを嘆くがいい!』
「けっ。姿も現さねぇでなに言って――!?」
気配! ビデガンは考えるよりも早く横に跳んでいた。背後を取られたような感覚に、体が動いたのである。
神装銃を意識しつつ背後を振り返る。視界に一瞬だけ映ったヒョロ長いなにかは、すぐに消えた。
(フェイクスター!)
ビデガンは高速で天井付近に飛びあがる。魔力がアニミスに変わっても、あまり違和感はなかった。
いましがた立っていた場所を見おろす。そこにはビデガンの背後に立っていたヒョロ長いなにかが立っていた――が、また消える。
(なんだアイツは! 見たこともねぇモンスターだ!)
と、また背後に気配を感じる。徹底して後ろからかぃ! ビデガンはフェイクスターで移動する。目指したのは壁である。壁を背につければ嫌でも真っ向勝負にもちこめる!
ヒュンッ! と着地して背中を壁に押しつける。どこにいやがる……神装銃を構えながら視線を這わせ、ヒョロ長いモンスターを探す。しかし姿は見えない。
『クハハハハッ! さきほどまでの威勢はどうしたのだビデガンよ! たかだかモンスターに手も足もでぬではないか!』
「うるせぇなぁ……」
ビデガンは舌打ちし、周囲に意識を集中させた。
とりあえず分かったのは存在感の薄いモンスターだということ。こちらに攻撃をしかけてくるまでは存在すら悟られないモンスター。まるで暗殺技能に長けたアサシンのようなモンスターだ。
(姿が見えねぇなら手当たり次第にぶっ放すのもありだが……味方に被害が及んだらシャレにならねぇしなぁ……)
冷静さを失ったら負けである。命狙われんのは日常茶飯事だがなぁ……こいつはやりにくい相手だぜ。
力の勝負ならばこちらに分があるのは間違いない。しかし姿が見えない相手を倒すことは不可能に近い。こうしてにらめっこして、仲間が来るのを待つかぃ?
「へっ……! 悪くはねぇが、それは誇りが許さねぇなぁ! 神銃貫光弾!」
キュアッ! と右手の神装銃から光線が疾った。ほぼ通路と同様に光が直進すると、黒い階段を通りすぎて向こうにあった区画の棚を破壊する。そしてそれは同時に照明となる。ライトニングヴォルトはデブリスヴォルトとフラッシュセッターの複合技であり、着弾した区画から照明弾のような光があふれ、三階を強い光で照らしだす。
(さぁでてきなぁ。てめぇみてぇなモンスターの特徴は、たいがい光に弱ぇのさぁ)
ヒントは姿を見せないこととデッドプリズンの暗さである。アニマリーのなかには暗闇では視界が利かなくなる奴もいる。にも関わらずロウソクひとつ点けていないところを見ると、あのヒョロ長いモンスターは光に弱いと考えていい。
ビデガンはさらにデッドプリズンがなんのためにあるのか理解し始めていた。基地でも収容所でもないことに加え、どうやらヒョロ長いモンスター寄りの造りにしている――それは明るさがないからだ。つまりここはヒョロ長いモンスターの巣であり、こいつらは罠だ。このモンスターが罠そのものだ!
ビデガンは周囲をうかがう。ヒョロ長いモンスターを光であぶり出す作戦だったが、敵は姿を見せていない。まだフロアをすべてを照らすには光が足りねぇか――と、ビデガンは左肩に痛みを感じて、
「――がっ! な……なんだと……」
(……後ろからだぁ!?)
そう、後ろからである。ビデガンは背後を見た。するとヒョロ長いモンスターが壁を透過して姿を現していた。そしてどうやら肩を噛まれたらしい。
「この……!!」
ビデガンはその不気味な顔に神装銃を突きつけた――が、しかし、ビデガンの体はそのまま床に叩きつけられていた。どうやらこいつの牙には毒があるみてぇだ……それも強烈な。
(く……くっそ……)
意識が朦朧とする視界のなかで、ヒョロ長いモンスターが壁からでてきた。固そうな壁だが損傷はなにひとつなかった。このモンスターは物体をすり抜けるってぇ――
――ビデガンは意識を失った。
※
「ちょっと待ってるのよ。わたしがうえを見に行くからね」
「はいだよー」
デッドプリズン三階。シンディラは黒い階段にフィアを置いて四階に向かおうとしていた。置き去りみたいな形ではなく目の届く範囲にだ。だって階段の近くに子供を置き去りにして遊びだしたら危ないじゃない!
えーと……はい、そんなこんなでシンディラは四階にあがりました。偶然にもファンシーショッブの正面。そこでシンディラはまたもや倒れているモンスターを発見した――いや、正確にはモンスターたちである。
「戦闘があったのか、もしくはイギギの仕業なのか……」
まず目についたのはネズミのモンスター、そしてアニマリーたちだった。合計八体。その鼠人は二階にいたバーダーとおなじ感じで倒れている。ほかのモンスターも同様のようだった。
シンディラはフィアを呼ぶかを悩み、しかしとりあえず状況を確認してからでもいいだろうと歩きだした。正直なところ、あまり遺体などは見せたくはないのだ。今後の精神的な成長に悪影響になっちゃったら困るわ! いや、勇者だからさんざん見てますよきっと。
シンディラはとにかく歩いた。歩いて向かい、モンスターたちのお寝んねを眺めた。
で、ケーキを見つける。
「なんだ? 人間が誰かパーティーでもやっていたのか?」
「ぐ……ぐぐ……」
シンディラがケーキとその周囲を観察していると、なにかの苦しんでいる声が聞こえた。マウサーにはとりあえず外傷がなく、かと言ってイギギの毒針は見つけられない(毛深いから)。
なのでシンディラは、さきに声の主を確かめることにした。声がするのはどこか薬品を思わせる匂いのする区画のほうである。今いる区画から通路にでると、黒山羊がいた。
ただ鎧の装飾を見たところ、どうやら隊長クラスのようだった。
(ふむ……雑魚よりかは遥かに話ができる)
シンディラは四つん這いでどこかに行こうとしている黒山羊に、トテトテッと小走りで近づいて――
「ぐぎゃっぎゃぎゃっ!」
――足のほうから頭のほうへと踏んでいき、通り越してからくるっとまわれ右をした。すると黒山羊はうつぶせ状態になり、背中や後頭部に足跡をつけたりしながらピクピクしている。
「名を聞こうか。モンスター隊長」
「い……いきなり踏みつけ……! ぎゃっ!」
「名を、聞こうか」
今度は後頭部を踏んでやる。シンディラはただのモンスターには容赦しないのだ。黒山羊はモガモガしながら答えた。
「もがっがもーご……」
「なるほど……ブラックゴートか。あのモンスターたちは誰に殺られたんだ?」
「もんぐぇん……もんぐぇんごぁ!」
「人間?」
まあとりあえずよく分かりますねという感じだが、シンディラは人間と聞いてすぐにソヨギを思い浮かべた。
(……ソヨギはうえを目指していた。そして四階で派手に暴れたわけだが、そうなると二階のバーダーもソヨギが倒したのか?)
そういうことだろう。まあソヨギがこっそりあがってきたのかもしれないが、そうなると四階でわざわざ暴れた理由が分からない。こっそりするなら必要以上にこっそりするだろう。そんな男だと思う。
でもそうするとつじつまが合わなくなる。
(イギギが補食するためにバーダーを倒したわけじゃないことになる。補食するためだけならばソヨギが倒した時点で事は足りている……にもかかわらずイギギが毒針をバーダーに使用したのは意味が分からない。どういうことなのか……)
踏みつけているブラックゴートがジタバタするのが邪魔くさいが考えてみる。
――――――考えた。
答えはなんとも奇妙なものだった。ソヨギがバーダーを倒すと同時にイギギも毒針を放っていた。
ふむ……意味が分からない――
――いや待て! シンディラは閃いた。あまりよろしくないことをである。
……毒針はソヨギを狙ったものだとしたらどうだ。そもそもソヨギがデッドプリズンにはいったのと、わたしがはいったのとでは時間に差がある。なのにバーダーは倒れていたままで、イギギはわたしと接触してからバーダーに手をつけた。その時間をイギギはなにをしていたんだ?
この仮説のまま行けば、答えはすぐだった。豆腐とビデガンである。イギギは彼らが二階にあがってきたので息を潜めていた。そのときイギギにあったのは警戒心であり、しかも豆腐とデビロイドは口に合わないから放っておいた。豆腐とビデガンが三階にあがったが、今度はシンディラとフィアが二階に来る。イギギはまた姿を隠す……?
(ではなぜわたしとフィアには姿を見せたんだ? ソフラとビデガンにあって、わたしとフィアになかったものは……逆でもいいが、なにか違いがあってイギギは姿を見せた。なにが違った?)
ブラックゴートを踏み潰しながらシンディラはずっと考える。ブラックゴートにしても慣れてしまったのか、メェメェと鼻歌まじりである。暇なんだろう。
(そもそもイギギに近づいたわたしにではなく、イギギはなぜ遠くにいたフィアを狙ったんだ。迫ってくる敵をまず倒しそうなものだろう……あ……! そうか!)
違いはフィアだ。フィアは二階にあがったときに食事をしていた。一階で豆腐とビデガンを見送ったときには食料など持っていなかった。そもそも護神はアニミスがあれば食事など必要としない。
つまりは、イギギはフィアがモグモグしながらバーダー(獲物)に近づいていったので、このままじゃ食べられちゃう、と思ったからでてきたのだ。なんとも馬鹿馬鹿しいが、あのイギギが赤子同然だとすればまったく見当違いではないだろう……ふむ。
(イギギがバーダーを獲物に決めたのと、ソヨギがバーダーを倒したのが同時だった。もしくは人間のソヨギを餌にしようとして攻撃は外れ、バーダーに直撃してしまった。しかしイギギにとってはどちらにしても餌にありつけるのだから、問題も支障もない)
そうだとして、問題なのは最初にソヨギが狙われた可能性である。そしてデッドプリズンがイギギの実験場ではないかという懸念。
「質問に答えてもらうぞブラックゴート。このデッドプリズンはなんのためにある」
「もぉごぐぁ……ぶはぁ! こ……ここはデッドプリズンだ!」
足を離してやると、ブラックゴートは汗だらけの顔をあげて答えた。うん、知ってる。シンディラはその答えには納得せずに、ブラックゴートの喉をつかんだ。
「わたしが誰かは知ってるな? 貴様など一瞬で殺せる。ここはなんだ」
「お……俺たちはデッドプリズンの守護を命じられただけだ! ベアフロンティアさまの命令で!」
「ベアフロンティアがここにいるのか?」
「ベアフロンティアさまはいない! このデッドプリズンの主はガデニデグさまだ!」
「ガデニデグだと!」
シンディラは聞き覚えのある名前に驚いた。
ガデニデグは魔族のなかではマッドドグミスト――魔物を造りだす役を担う組織のボスである。ベアフロンティアの側近であり、魔導師の輝石を悪用することを思いついた張本人でもあった。
(やはりイギギは魔法生物! あの変態魔学者がいかにも好みそうだしな)
シンディラさんはそれを可愛いと言いました。
まあとにかく、これでデッドプリズンが研究所であることが濃厚になった。
いや、確定と言っていい。魔学者ガデニデグの本城――つまり、
(罠……か。ガデニデグならシエルネットワークを悪用できるだろうしな。情報を盗み、偽の情報を流しておいたんだ。人間が捕らえられているとは限らなくなってきたというわけか。イギギの実験場だとすれば、新たな戦力を産みだすための場所ということだ。イギギは対護神用のモンスターに違いない! くそ! ウィッグたちが次の行動に移ったら全滅してしまうかもしれない!)
じつはこの潜入ミッション、攻城戦の前段階なのである。シンディラたちはこっそりデッドプリズンの内部を調査し、人間たちを救い、ほかの仲間が連絡を受けて突入するという作戦だった。
その作戦の通りにすべてが運んでしまうのはよくない。仲間たちはこちらの連絡待ちではあるが、陽が夕刻へと傾けばこちらの連絡なしに突入……そういう作戦でもあるのだ。
「……ガデニデグはどこにいる」
「知らない! 俺たちはデッドプリズンを守護しろと言われて集まっただけで……」
「あまりふざけられては困るわ。主が奴ならおまえたちの指揮をしているのだろう? 顔もあわせずどうやって指揮をするというんだ」
「声だ。デッドプリズンに声を響かせて! だ、だが……デッドプリズン最上階の一部が誰もはいれなくなっているんだ。いるとしたら多分そこだろう……頼む! 殺さないでくれ……」
「……もうひとつ。こちらの世界の人間はここにいるのか。ガデニデグが偽の情報を流していたのか」
「偽の情報? そ……それはよく分からない。だがこちらの世界の人間は何匹も捕らえてある。六階だ。あう……頼む殺さないでく――!」
シンディラは手を離した。ブラックゴートはつかまれていた喉をさすりながら苦しそうに咳こむ。
「ブラックゴートよ。おまえはヒョロ長いモンスターを見たことがあるか」
「ヒョロ長いモンスター? 知らない……ほ、本当だ!」
(知らされているわけないか。まあ自分たちを補食するやつと一緒に仕事などできないわよね)
――『おまえ、デッドプリズンの警護してよ。たまに食べられちゃうけどさ☆ ええ~、マジっすか~。まあ……たまにならいいっすけど』――とはさすがにならないだろう。
「ブラックゴートよ。殺さないでやる代わりに言うことを聞け」
「な、なんでしょう……」
「おまえたちを食事にするモンスターがいる。二階に行けば分かるだろう。いまのありがたい情報と引き換えに、おまえはここからでて北にずっと進むんだ。そしてわたしの知り合いにデッドプリズンは罠だと伝えろ」
「俺たちを食べる? そんなモンスターがいるわけない」
「いるんだよ。それともいますぐここで死にたいか。おまえの仲間にも伝えてやるといい。やることをやったら本隊に戻れ。いいな……!」
かなり凄んでみると、ブラックゴートは冷や汗を流しながら目を見開いた。かなりビビったみたいで直立しながら敬礼もする。
「はいぃ! 灰の妖女シンディラさまぁ!」
……と、いうわけです。シンディラがまさか護神になっているとはモンスターたちも知らないのです。それがなぜかと言えば、その情報をシエルネットワークに流したりはしていないからである。
じつはシンディラ。潜入ミッションでかなりのキーマンだったりするのだ。
(まあそれもガデニデグにわたしの立場がバレなかった場合だがな。姿を見せずに声を響かせるのなら、どこかに『眼』を置いて監視しているはずだ)
対象の位置が分からなければ、どこに声を響かせればいいのか分からない。そうなるといまこうしているのを見られているかもしれない。
ブラックゴートはドタバタと黒い階段に走っていった。頼りがいはないが、なにもしないよりはマシだろう。シンディラは護神になったことをガデニデグにバレるまでは、アニミスを使わないほうがいいと判断した。なのでシエル送信は使えない(アニミスに慣れてないから)。
しかしそうなるとフィアと合流するわけにもいかなくなってしまった。勇者と一緒にいたら変である。まあすでに見られていたら意味はないのだが、とりあえず別行動しておいたほうがいい。
シンディラは黒い階段へ行き、大きな声で独り言を口にした。
「さあ、わたしはひとりでうえにでも行こう! 護神が侵入したことを、ガデニデグに伝えなくてはならないのだからぁ!」
……よし。なにがよしかは分からないが、これでフィアもなにかを悟るはずだ。
シンディラはそのまま五階に向かうために黒い階段をあがる――途中で、四階のどこからかカランカランという音がした。しかしシンディラは特に魔力を感じなかったので、無視して黒い階段をあがった。
イギギの餌になってしまったのか、デッドプリズンからはモンスターの気配は微塵も感じなくなっていた。黒い階段をあがりきり、五階に着いても気配はない。
五階に棚は少なく、右のほうにテーブルが並んだ区画があった。左はかなりの広さが確保されたなにかの店がある。だがとりあえず誰もいないようだった。
シンディラは一応の見まわりを始めた。ところどころに仕切りのような壁があるが、それが邪魔にもならないくらいに広々したフロアである。
とりあえずテーブルがあるほうに向かう……誰もいないし、なにもない。スタスタと進んでいき、ちょうど半分くらいを歩いた。と――
――どごぐぁっ! といった感じで仕切りの壁のひとつが崩れた。シンディラは瞬時に身構える。
しかし警戒をしてみても、誰もいないしそれ以上のことは起きない。
「……いまのはなんだ?」
もろくなっていたのだろうか。堅固な城のような造りのデッドプリズンが? シンディラは狐につままれたような気分で崩れた壁に向かった。
「これは……断面が切断されたようにキレイだ。しかしアニミスや魔力は感じなかったぞ……キレイ? そういえばなぜだ? 粉塵が舞っていない……」
埃のひとつも舞っていそうなものだが、そんなこともなくただ崩れた壁である。ちっ……ちょっとつまみ食いしようと思ったのに。シンディラは異世界の粉塵がいまやお気に入りである。灰ではないが粉塵すべてが体になじむのだ。魔力がアニミスに変わった影響はそんな風に現れていました。理由は不明。
「ガデニデグめ……いったいなにを考えているんだ?」
シンディラは崩れた壁を調べ始めた。いきなり破壊されたのには、なにか意味があるはずだった――と、今度はどこかでなにかが落ちる音がした。店側のほうからのようだ。
行ってみる。これまた切断された植物があり、ソファが置いてある。そこの通路になにか落ちていた。数字の書かれたカードのようだ。シンディラは天井を見あげてみたが、特筆すべきところはない。
「どこから落ちてきたんだ。この階層でなにが起きている……」
『灰の妖女がデッドプリズンにいる説明もつかぬ……そうだろうシンディラ』
「ガデニデグ? あちらの世界で会った以来だな。この建物はなんなのだ。貴様はここでなにをやっている?」
シンディラはいきなり話しかけられても驚かなかった。基本的にそれくらいじゃ驚かない。ただガデニデグの真意を聞きだせるのかという緊張めいたものは感じていた。
『おぬしはベアフロンティアさま配下だろう。このガデニデグの魔学研究に口をだせる者はおらぬ。あの破滅王さまでもな』
「貴様の特別な権利になど興味はない。ただ目的を知りたいのよ。ここがなんなのかを――」
『ではこちらの質問にも答えてもらおうか。ベアフロンティアさまの地上派魔軍にいるはずのおまえが、なぜ我がデッドプリズンにいるのか』
「……さきほどこのデッドプリズンとやらが襲撃されたな? その様子を報告するようベアフロンティアに命じられた。派魔兵たちを借りている立場だろう、ガデニデグよ。施設の目的を聞こうか」
『まだだ。なぜ姿を変えた』
「人間の子供に似せたほうが有益だからだ。こちらの世界の人間も騙せる。護神たちに非力だと思わせることもできる。まあ人間と密につながる食神や飾神くらいなら騙せるのさ。で、目的は?」
『最後の質問だ。なぜおまえがデッドプリズンにいるのだ?』
「それは答えたはずだ。ベアフロンティアに言われて――」
そこでガデニデグは哄笑を響かせた。クックックッ……ハァッハッハッハ! 的なやつである。なにか面白いことを言ったかなと待っていると、
『では教えてやろう! このデッドプリズンは異世界の人間や護神を捕らえて研究するための我が城だ! 当初は護神を魔性化させるためだったが、ソヨギとか言うレアーズの存在を知り、魔族にとっての利用価値を見いだし、人間の収容を開始したのだ! そしてこの城にはあらゆる機能を施している! それがガデニデグの秘術、次元層術なのだ!』
「秘術だと?」
秘術は誰もが持つ、なんと言うか隠し技である。切り札とも言える。誰にもその存在を教えず、ここぞの場面で使うために秘術と言う。そしてシンディラは秘術と聞いて、ガデニデグの狙いを理解していた。
「貴様、ベアフロンティアにすら報告せずになにか企んでいるな? そうでなければ秘術など使わないだろう。あのイギギ――奇妙な魔法生物を造り、護神にすら対抗しようとしている。魔族を裏切るつもりなんじゃないかしら?」
『ふん……おまえには分かるはずもない。ガデニデグの辛苦が! 度重なる徒労が! すべてはだらしのない破滅王配下のものどもがいるからだ! 裏切りだと? それはおまえにも言えることだろう……女神シンディラ!』
(バレていた……か)
シンディラはなにが起きてもいいように、アニミスを解放する。
『無駄だ! おまえもすでにデッドプリズンに迷いこんだネズミよ! やれぃティンダルス!』
「ティンダルス?」
これまた聞いたことのない名前である。ガデニデグの命令に応えたのか、フロアにシャンシャンという音色が響き始める。それと同時に、強力な魔力が背後から発せられていた。
振り返ってみる。テーブルのある区画から、浮遊しながらそれは近づいてきた。
水色のストレートの髪。背中に蝶の羽を生やしているのは、小柄な少女に見える。ピンクの布的なものを口のあたりに巻き、複雑な色彩の上衣(迷彩柄のTシャツ)を着て、したは同じ柄でブーツインである。とりあえずピンクは格好に合っていない。
「ティンダルスとはなんだ」
『このガデニデグの産みだした新造魔族だ。素体に種族の王をブレンドした傑作――いくらおまえだとて敵うものではない!』
「ふん……なるほど。あれは蝶ではなく妖精族か」
「ごきげんよう、女神シンディラ。わたしは翅王ティンダルス……以後お見知りおきを……」
「覚えておく必要があるか? どうせどちらかが倒れるんだ……おまえだろうがな」
シンディラは言い終わるが早いか、左手を薙いだ。大きな布が広がるように、灰が中空に放たれる。灰はティンダルスにぶわぁ! と覆い被さる。
「屑と焔の燎原……」
――カッ! ギュアボバババババ……! シンディラが冷徹な視線を送ると、布のように拡散した灰が周囲を巻きこみ連続爆発する。ティンダルスは逃げ場もなく、灰になっているだろう。
「これで終わりかティンダルス。また徒労だな……ガデニデグよ」
シンディラは両手を前方にだして広げた。すると燃えカスとなった塵芥がシンディラへと戻っていく。シンディラは技のあともアニミス回収が可能なのだ! 全部ではないが使用した半分以上のアニミスが取り戻せる。ちょっとヒキョーである。
フロア中央はほとんどが燃えていた。シンディラはパチパチという心地よい音を聴いていたが、それを邪魔するようなガデニデグの挑発的な声が響いた。
『これで終わり? クックックッ……そんなわけがないだろう』
「ええ。そういうことですわ、灰の女神」
「よけたのか……」
耳元で囁かれる不快な声音を耳にして、シンディラは左を向いた。ニッコリとした笑みをたたえながら、ティンダルスが立っていた。近い。
「よけただけではありませんわ。あなたはわたくしの術中におりますのよ? 倒れるのはあなたのほうですわね」
「ほう……このわたしを倒すか。いったいどんな方法で?」
「膝まづけ――ふふふっ……」
「なん……だ?」
ガクンッ! シンディラはティンダルスの命令に従っていた。その場で膝を曲げて床に手をついてしまう。意思はあらがっているものの、体が言うことを聞かない状態である。
(催眠か? 精神攻撃ならばこのわたしにも、確かに効果がある!)
反属性をのぞき、シンディラに攻撃は通用しない。だが魂がある限り精神は存在し続けるものだ。それを利用されればさすがのシンディラもお手上げである。
(くっ……灰化もできない! ガデニデグめ! 対護神ではなく対わたしのモンスターを造りあげたのか!)
『ガデニデグのデッドプリズンは千差万別! いまはアニミスに反応するように設定してあるのだよ。さらにおまえにアニミスがあることは分かっていた……いや、すこし違うな。おまえの利用を思いついた時点で、おまえが裏切った場合を想定していたのだ。敵にまわればやっかいな相手だからな。妹が女神であったことで、半神半魔のおまえがいつか善神サイドにつくだろうことは、可能性として考えていたのだ……まあ、魔力を持った灰の妖女でいればそれもよし、という考えもあったわけだがな』
「なるほど……十重二十重というわけだ。だがいいのか? たかが催眠ごときでは、いつわたしが回復するかも分からないぞ」
「それは杞憂ですわ。わたくしの翹誅挫蛾は、精神攻撃ではございませんのよ? 貴女は粉塵のようなものを吸収しますでしょう? なのでそれにわたくしの燐粉を混ぜたのですわ。まあ、くわしい説明はのちほど、ということで」
「……く……くく! あまり舐めるなよ! わたしを!」
『灰の女神。動けぬ体でどう戦うのだ? ほれ、手も足も水の縛鎖のただなかにあるではないか』
いつのまにか、シンディラの手足は水に浸かっていた。どういうことかは分からないが、まるで床から水があふれているようにも見える。両手に加えて膝から脛のあたりまでが、二センチほどの水に触れていて動かせない。灰の沈殿ではなく、これは表面張力による吸着に思えた。
(水の呪縛まで……わたしが来ることを予測していなければこんなことはしない! わたしの行動が読まれていたのなら、ガデニデグは想定していたんだ! わたしが魔導師の輝石を狙うことを! ここにあるんだ、このデッドプリズンに魔導師の輝石が!)
「さあ、眠りなさい。ふふふ……」
――シンディラは意識を失った。
これで全滅……?
いえ、違います。まだいますよ!
『希望』そのものであるあの子がね!
続く
四階にソヨギを探しにいく予定だったのだが、それよりもシンディラとフィアが気がかりだったのだ。三階にビデガンを待機させて豆腐がおりてきたのは、ビデガンはアニミスのあつかいに慣れていないからである。
「……おかしいですね」
二階では、ある変化が起きていた。ビデガンとともに三階を探索していたのはたいした時間ではなかったはずだが、
「バーダーが消えている……!」
場所はシーツがたくさん配置された区画である。だがそこにいたはずのバーダーが消えていたのだ。
いや……というよりなんだがおかしい気がする。さきほど探索していた二階とはなにかが違うように思える。
豆腐は違和感の正体を探るためにふよよ~んと天井すれすれの飛行を始めた。黒い階段のあたりに戻り、そこから書庫(紀伊○屋書店)のほうを眺めると、気づく。
「光……そうだ。光が見えないのです」
あの書庫には採光用とも言うべき細長い窓があったはずだった。厳密に言えばその窓は存在するのだが、そこから光が見えず、黒い空間が広がっているようだった。
不思議なのは光が見えないにもかかわらず、デッドプリズン内部が、さも光をいれているかのように照らされていることである。その照らされ方はまるで、外からの光を採りいれているかのようだった。つまり、光は見えないのに窓の外から光が射しこんでいる……?
豆腐は細長い窓から外を見てみようとふよーんと移動した。よく分からない品物を眼下にしながら書庫を目指す。
豆腐はそこでまた驚いていた。モンカーがいない。なんとなく――本当になんとなくだが、最初からいなかったような感覚にすら捕らわれている。
誰かがいたような痕跡がないのだ。例えばしたに敷いてある敷物……なにかがいたのなら跡があってもよさそうだ。モンカーたちは重い鎧まで身につけているのだから、体を押しつけていた箇所が乱れていてもよさそうである。鎧が押しつけられていた繊維がその形に倒れているとかだ。
だがじっさいはおろしたての敷物のようにしか見えない。そしてまた豆腐はあることに気づいた――空気である。
「流れていない……ホコリも浮いていない……」
モンスターたちがデッドプリズン内部にいて、行き交っていたのならばホコリがたつはずである。そして空気は絶えず流れるものであり、それは豆腐の世界でもこの異世界でも変わりないはず。なのにそれが存在しないのだ。
豆腐は新たに浮かんだ疑問や違和感に、次第に鼓動(?)が激しくなっていくのを感じていた。とりあえず外を見てみよう。なにかが分かるかもしれない。
「あ……ああ……! これは! この世界は!」
細長い窓からの景色。それは『無』だった。
なにもない。あの異世界の青空もなにも。ヒントにもならない絶望的な景色である。なぜなら豆腐はその世界のことを知っていた。神々たちがささやく、あの終末の景色のようにしか見えない。
「破滅の世界! まさかノヴァカースが復活した!? それとも破滅王がすでに……!」
豆腐はパニックにおちいっていた。勇者たちが倒され、世界が滅びてしまったのか? もしくはノヴァカースが世界を崩壊させたのか? 分からない!
「ソ……ソヨギさまはっ!」
激しい動揺のなか、そのレアーズの姿が浮かんだ。
世界が滅びたのなら豆腐の力を付与することなど意味もない。だがしかし――だけど、ソヨギさまがいなければわたし……わたし……!
「ソヨギさまぁっ!」
豆腐は混乱し、全力で疾走した。残ったアニミスはこちらの世界に来たときの二倍程度である。隊長クラスならば容易に倒せるが、連戦はできないほどのアニミス――それを無視して解放する!
「ソヨギさま! ソヨギさま!」
黒い階段をあがる。三階に着きビデガンに報告――いない!?
「ビデガン! 緊急事態ですビデガン!」
四階に行ったのかもしれない――豆腐は全力疾走で向かった。
さきほど爆発音が聞こえたはずだが、そういった痕跡はなかった。モンスターが倒されているということもなく、内容には変化のないどこか空っぽのデッドプリズンが広がる。
「ビデガン! うぅ……シンディラァ! フィアさまぁ!」
豆腐は不安から絶叫していた。
まさか自分以外はいなくなってしまったのか? あの破滅の世界に巻きこまれ、消滅してしまったのか? そんなはずはない。そんなことは起きてはいけない……!
「うぅ……」
豆腐はうなだれて(?)四階を浮遊した。正面にあるよく分からない区画に向かう――と、そこで人間の世界にある食べ物を見つけた。
「……ケーキ?」
近づいて観察する。しかしそれはよくできたニセモノだった。配置からするとここでなにかをしていたようだ。あたりを見まわす。しかしなにかをしていた誰かを見つけることはできなかった。
「……落ち着いて。落ち着くのよソフラ。よく考えるの。みんなが滅ぼされてしまうわけがないじゃない。だって……」
自分が無事である。そしてデッドプリズンは存在し続けているではないか。破滅がおとずれたのなら『存在』があってはおかしいのだ。なにもかもを無に帰すのが破滅なのだから。
それに戦闘もなくあの三人がやられるとは思えない。
ビデガンは魔神デスケテスに認められるような不屈のデビロイド。
シンディラは産まれたときから飾神すらも超越する力を持った女神。
フィアは善神に使命を託されるほどの勇者。
その彼らを物音ひとつ、魔力解放もせずに消すことなど不可能に近い。だからこれは破滅じゃない。
「……明確な言葉は浮かびません。わたしのこのイメージを、一番近く表現するのは……分断?」
分断。つまり戦力を分ける行為である。
孤立でもいい。とにかくパーティーをバラバラにすることが目的なのではないか? 無援にすることで各個撃破を魔族がもくろんでいたとしたら? その考えが正しければ、こんな状況も納得がいく。豆腐は言いようのない孤独感にさいなまれている。敵の狙いは大成功と言っていい。そしてもうひとつ――
「そんな狙いが魔族にあり、このデッドプリズンが造られたのなら、これは罠! 異世界の人間が捕らえられていると情報を流し、護神をひとつ所に集める罠だったとも考えられる!」
『……神のなかでもなかなかに秀でた種だな。豆腐の女神よ』
「!?」
豆腐は天井を見あげた……なにもいない。
しかし声がした途端になにかの気配を感じていた。なにかは分からないが、生物的な気配である。
『さあ……このガデニデグのために――』
豆腐は声をあげることもできなかった。どこを振り返ったのかも分からなかった。ただ、
(見たこともない……セイブ……ツ?)
ぺとり。次にカランカラン……と渇いた音が響いた。
豆腐が最後に見たのは、ヒョロ長いなにかだった。
※
「遅ぇなぁ。豆腐の女神はなにやってんだぁ?」
三階である。ビデガンはとりあえず装飾品の区画を歩いていた。
向こうの世界でもこういうキラキラしたもんは女の特権だった。ただデビロイドの女は戦闘を生業にする種族という前提があるため、人間のようにチャラチャラしたりはしない。せいぜい邪魔にならない耳や指の装飾品を身につけるくらいである。
(そういや贈りもんなんざしたこともねぇ……)
そう……あの女に贈ったのは――贈れたのは言葉くらいだった。
腰の高さくらいのガラスの箱(ショーケース)をのぞきこむ。どんなんが似合うかねぇ。いや、貧しい女には似合わねぇってつっ返されるか? 見た目は優しさばっかの病弱そうな女だが、肝っ玉だけは十人前だからなぁ。
……やめとくか。どのみちガラでもねぇしな。ビデガンはそっぽを向くようにしてガラスの箱から離れた。聖戦で命が残ってたら、そんときゃあガラでもねぇことしてみるか。
とりあえず黒い階段へ向かう。したに行った豆腐が気がかりだ。あいつは女神のくせに落ち着きがあるようでねぇからなぁ……まぁ、女ってなぁだいたいそうかもしれねぇけど。
勘違いしないでほしいのは、ビデガンは男尊女卑ではない。根っからの硬派なのだ!
ビデガンは黒い階段につくとしたを見つめた。闇にも満たない暗い影が、霧のように浮いている。陰気くさいのは好きではない。まあ魔物の棲みかがカラッとしてんのも気色悪いがねぇ。
「……なんかおかしくねぇか?」
ビデガンはその黒い階段に奇妙な印象を覚えていた。なにかがさきほどとは――あがってきたときとはなにかが違っている気がしていたのだ。
なんと言えばいいのかは分からない。だがその目に映る空間が、どことなく歪んでいるように見えている。しかし凝視をやめるとなにもない。
なんだかトリックを見ている気がした。見ずとも見るの状態ではなにもないが、見れば見るほど姿を変える。
デビロイドの魔装技能種――つまりトリックの種類は千ほど存在するが、そのなかには視界を騙す技もある。
それから派生したのが魔装滑駆だ。空間に自身を描き魂などの存在を定義するすべてを摸写し、元となった自分の定義を消失させることで空間を移動する。もちろんインカースの墨属性と魔力ありきの技である。アニミスで試してはいないが、同様のことができるだろう。
なんにせよトリックとこの歪んだ空間は似ていた。それはつまるところ、なにかがトリックられているという意味である。
「空間トリック……あれだ。奇矯界面みてぇだ」
エキセントリックは見るものを騙す、空間トリックに属する大技である。その場の明るさ、見ている角度、被技者の視力などに働きかけ、視覚に関するすべてを騙す。その結果として被技者は自分が別次元にいるような錯覚を起こす。もっともポピュラーな言い方では、『幻覚』に近いものである。
まあとにかく黒い階段の空間のようすが、そのエキセントリックを使用したものによく似ていた。視覚が異常なものになり、見ている景色が歪んでしまうのである。その影響は被技者のみならず、通りすがりの誰かにも違和感を覚えさせる。『視界』に影響するトリックだからである。
そして「なにか変だな」と目を凝らすと、エキセントリックの場はどこか異質な空間に見えたりする。それは瞳がフォーカスを調整するためで、視界に働いたエキセントリックの片鱗を見ることになるだからだ。
ビデガンは小難しいエキセントリックの解釈を思いだしながら、その空間を見おろす。
「まったく同じモンてぇわけじゃねぇが、デッドプリズンにはなにかトリックがある」
それはこのデッドプリズンが、ただの魔空戦隊の基地でもないし、人間の収容所でもないことを示している。
確かにエキセントリックは防護術として使うこともできるが、ただ侵入者を混乱させるだけには使用しない……それをやるためにはかなり範囲を限定しなければならない。
トリックは諸刃の剣になりうる。このデッドプリズンにはモンスターもいるのだ。空間ごとトリックの影響下に置かれてしまうのだから、その技は味方ごと混乱させてしまう。そうすればモンスターを徘徊させている意味がなくなる。
しかしエキセントリックに似たなにかはじっさいに仕掛けられている。
「ここが基地じゃねぇ、収容所でもねぇとなると……?」
エキセントリックに似た現象が起きているのなら、答えはほぼ決まっていた。エキセントリックは相手を誘いこんで術中にはめるトリックである。つまり、
「罠か。なんのためかは知らねぇがな」
『……なるほどな。ただの数あわせではないと見える。デビロイドのビデガン――いや、いまや風雷の護神ビデガンか』
ビデガンは突然の声に天井を見あげた。聞き覚えはないが禍々しいなにかを感じさせる不吉な声だった。
「どこのどいつかは知らねぇが、ずいぶん暇なことしてんじゃねぇか。ああ?」
『ほう……動じるどころか挑発すらしてみせるか。さすがはデスケテスの認めた男よ』
「けっ。どいつもこいつも同じセリフを吐きやがってよぉ。他に褒め言葉ってぇもんを知らねぇのかよ。その帽子イカしてますね、とかよぉ」
かなり本気のクレームである。デスケテスにはうんざりである。まあそれを誇らしく思ったこともあったが、護神になると魔族をネタに褒められても嬉しくなくなっていた。
「んで? なんか用があるんだろ? 暇潰しに声だけかけたってなら、とっとと失せなぁ。すぐに行ってやるからよぉ」
『面白い……このガデニデグに挑戦すると言うのか! クハハハハッ! 己の愚かさを嘆くがいい!』
「けっ。姿も現さねぇでなに言って――!?」
気配! ビデガンは考えるよりも早く横に跳んでいた。背後を取られたような感覚に、体が動いたのである。
神装銃を意識しつつ背後を振り返る。視界に一瞬だけ映ったヒョロ長いなにかは、すぐに消えた。
(フェイクスター!)
ビデガンは高速で天井付近に飛びあがる。魔力がアニミスに変わっても、あまり違和感はなかった。
いましがた立っていた場所を見おろす。そこにはビデガンの背後に立っていたヒョロ長いなにかが立っていた――が、また消える。
(なんだアイツは! 見たこともねぇモンスターだ!)
と、また背後に気配を感じる。徹底して後ろからかぃ! ビデガンはフェイクスターで移動する。目指したのは壁である。壁を背につければ嫌でも真っ向勝負にもちこめる!
ヒュンッ! と着地して背中を壁に押しつける。どこにいやがる……神装銃を構えながら視線を這わせ、ヒョロ長いモンスターを探す。しかし姿は見えない。
『クハハハハッ! さきほどまでの威勢はどうしたのだビデガンよ! たかだかモンスターに手も足もでぬではないか!』
「うるせぇなぁ……」
ビデガンは舌打ちし、周囲に意識を集中させた。
とりあえず分かったのは存在感の薄いモンスターだということ。こちらに攻撃をしかけてくるまでは存在すら悟られないモンスター。まるで暗殺技能に長けたアサシンのようなモンスターだ。
(姿が見えねぇなら手当たり次第にぶっ放すのもありだが……味方に被害が及んだらシャレにならねぇしなぁ……)
冷静さを失ったら負けである。命狙われんのは日常茶飯事だがなぁ……こいつはやりにくい相手だぜ。
力の勝負ならばこちらに分があるのは間違いない。しかし姿が見えない相手を倒すことは不可能に近い。こうしてにらめっこして、仲間が来るのを待つかぃ?
「へっ……! 悪くはねぇが、それは誇りが許さねぇなぁ! 神銃貫光弾!」
キュアッ! と右手の神装銃から光線が疾った。ほぼ通路と同様に光が直進すると、黒い階段を通りすぎて向こうにあった区画の棚を破壊する。そしてそれは同時に照明となる。ライトニングヴォルトはデブリスヴォルトとフラッシュセッターの複合技であり、着弾した区画から照明弾のような光があふれ、三階を強い光で照らしだす。
(さぁでてきなぁ。てめぇみてぇなモンスターの特徴は、たいがい光に弱ぇのさぁ)
ヒントは姿を見せないこととデッドプリズンの暗さである。アニマリーのなかには暗闇では視界が利かなくなる奴もいる。にも関わらずロウソクひとつ点けていないところを見ると、あのヒョロ長いモンスターは光に弱いと考えていい。
ビデガンはさらにデッドプリズンがなんのためにあるのか理解し始めていた。基地でも収容所でもないことに加え、どうやらヒョロ長いモンスター寄りの造りにしている――それは明るさがないからだ。つまりここはヒョロ長いモンスターの巣であり、こいつらは罠だ。このモンスターが罠そのものだ!
ビデガンは周囲をうかがう。ヒョロ長いモンスターを光であぶり出す作戦だったが、敵は姿を見せていない。まだフロアをすべてを照らすには光が足りねぇか――と、ビデガンは左肩に痛みを感じて、
「――がっ! な……なんだと……」
(……後ろからだぁ!?)
そう、後ろからである。ビデガンは背後を見た。するとヒョロ長いモンスターが壁を透過して姿を現していた。そしてどうやら肩を噛まれたらしい。
「この……!!」
ビデガンはその不気味な顔に神装銃を突きつけた――が、しかし、ビデガンの体はそのまま床に叩きつけられていた。どうやらこいつの牙には毒があるみてぇだ……それも強烈な。
(く……くっそ……)
意識が朦朧とする視界のなかで、ヒョロ長いモンスターが壁からでてきた。固そうな壁だが損傷はなにひとつなかった。このモンスターは物体をすり抜けるってぇ――
――ビデガンは意識を失った。
※
「ちょっと待ってるのよ。わたしがうえを見に行くからね」
「はいだよー」
デッドプリズン三階。シンディラは黒い階段にフィアを置いて四階に向かおうとしていた。置き去りみたいな形ではなく目の届く範囲にだ。だって階段の近くに子供を置き去りにして遊びだしたら危ないじゃない!
えーと……はい、そんなこんなでシンディラは四階にあがりました。偶然にもファンシーショッブの正面。そこでシンディラはまたもや倒れているモンスターを発見した――いや、正確にはモンスターたちである。
「戦闘があったのか、もしくはイギギの仕業なのか……」
まず目についたのはネズミのモンスター、そしてアニマリーたちだった。合計八体。その鼠人は二階にいたバーダーとおなじ感じで倒れている。ほかのモンスターも同様のようだった。
シンディラはフィアを呼ぶかを悩み、しかしとりあえず状況を確認してからでもいいだろうと歩きだした。正直なところ、あまり遺体などは見せたくはないのだ。今後の精神的な成長に悪影響になっちゃったら困るわ! いや、勇者だからさんざん見てますよきっと。
シンディラはとにかく歩いた。歩いて向かい、モンスターたちのお寝んねを眺めた。
で、ケーキを見つける。
「なんだ? 人間が誰かパーティーでもやっていたのか?」
「ぐ……ぐぐ……」
シンディラがケーキとその周囲を観察していると、なにかの苦しんでいる声が聞こえた。マウサーにはとりあえず外傷がなく、かと言ってイギギの毒針は見つけられない(毛深いから)。
なのでシンディラは、さきに声の主を確かめることにした。声がするのはどこか薬品を思わせる匂いのする区画のほうである。今いる区画から通路にでると、黒山羊がいた。
ただ鎧の装飾を見たところ、どうやら隊長クラスのようだった。
(ふむ……雑魚よりかは遥かに話ができる)
シンディラは四つん這いでどこかに行こうとしている黒山羊に、トテトテッと小走りで近づいて――
「ぐぎゃっぎゃぎゃっ!」
――足のほうから頭のほうへと踏んでいき、通り越してからくるっとまわれ右をした。すると黒山羊はうつぶせ状態になり、背中や後頭部に足跡をつけたりしながらピクピクしている。
「名を聞こうか。モンスター隊長」
「い……いきなり踏みつけ……! ぎゃっ!」
「名を、聞こうか」
今度は後頭部を踏んでやる。シンディラはただのモンスターには容赦しないのだ。黒山羊はモガモガしながら答えた。
「もがっがもーご……」
「なるほど……ブラックゴートか。あのモンスターたちは誰に殺られたんだ?」
「もんぐぇん……もんぐぇんごぁ!」
「人間?」
まあとりあえずよく分かりますねという感じだが、シンディラは人間と聞いてすぐにソヨギを思い浮かべた。
(……ソヨギはうえを目指していた。そして四階で派手に暴れたわけだが、そうなると二階のバーダーもソヨギが倒したのか?)
そういうことだろう。まあソヨギがこっそりあがってきたのかもしれないが、そうなると四階でわざわざ暴れた理由が分からない。こっそりするなら必要以上にこっそりするだろう。そんな男だと思う。
でもそうするとつじつまが合わなくなる。
(イギギが補食するためにバーダーを倒したわけじゃないことになる。補食するためだけならばソヨギが倒した時点で事は足りている……にもかかわらずイギギが毒針をバーダーに使用したのは意味が分からない。どういうことなのか……)
踏みつけているブラックゴートがジタバタするのが邪魔くさいが考えてみる。
――――――考えた。
答えはなんとも奇妙なものだった。ソヨギがバーダーを倒すと同時にイギギも毒針を放っていた。
ふむ……意味が分からない――
――いや待て! シンディラは閃いた。あまりよろしくないことをである。
……毒針はソヨギを狙ったものだとしたらどうだ。そもそもソヨギがデッドプリズンにはいったのと、わたしがはいったのとでは時間に差がある。なのにバーダーは倒れていたままで、イギギはわたしと接触してからバーダーに手をつけた。その時間をイギギはなにをしていたんだ?
この仮説のまま行けば、答えはすぐだった。豆腐とビデガンである。イギギは彼らが二階にあがってきたので息を潜めていた。そのときイギギにあったのは警戒心であり、しかも豆腐とデビロイドは口に合わないから放っておいた。豆腐とビデガンが三階にあがったが、今度はシンディラとフィアが二階に来る。イギギはまた姿を隠す……?
(ではなぜわたしとフィアには姿を見せたんだ? ソフラとビデガンにあって、わたしとフィアになかったものは……逆でもいいが、なにか違いがあってイギギは姿を見せた。なにが違った?)
ブラックゴートを踏み潰しながらシンディラはずっと考える。ブラックゴートにしても慣れてしまったのか、メェメェと鼻歌まじりである。暇なんだろう。
(そもそもイギギに近づいたわたしにではなく、イギギはなぜ遠くにいたフィアを狙ったんだ。迫ってくる敵をまず倒しそうなものだろう……あ……! そうか!)
違いはフィアだ。フィアは二階にあがったときに食事をしていた。一階で豆腐とビデガンを見送ったときには食料など持っていなかった。そもそも護神はアニミスがあれば食事など必要としない。
つまりは、イギギはフィアがモグモグしながらバーダー(獲物)に近づいていったので、このままじゃ食べられちゃう、と思ったからでてきたのだ。なんとも馬鹿馬鹿しいが、あのイギギが赤子同然だとすればまったく見当違いではないだろう……ふむ。
(イギギがバーダーを獲物に決めたのと、ソヨギがバーダーを倒したのが同時だった。もしくは人間のソヨギを餌にしようとして攻撃は外れ、バーダーに直撃してしまった。しかしイギギにとってはどちらにしても餌にありつけるのだから、問題も支障もない)
そうだとして、問題なのは最初にソヨギが狙われた可能性である。そしてデッドプリズンがイギギの実験場ではないかという懸念。
「質問に答えてもらうぞブラックゴート。このデッドプリズンはなんのためにある」
「もぉごぐぁ……ぶはぁ! こ……ここはデッドプリズンだ!」
足を離してやると、ブラックゴートは汗だらけの顔をあげて答えた。うん、知ってる。シンディラはその答えには納得せずに、ブラックゴートの喉をつかんだ。
「わたしが誰かは知ってるな? 貴様など一瞬で殺せる。ここはなんだ」
「お……俺たちはデッドプリズンの守護を命じられただけだ! ベアフロンティアさまの命令で!」
「ベアフロンティアがここにいるのか?」
「ベアフロンティアさまはいない! このデッドプリズンの主はガデニデグさまだ!」
「ガデニデグだと!」
シンディラは聞き覚えのある名前に驚いた。
ガデニデグは魔族のなかではマッドドグミスト――魔物を造りだす役を担う組織のボスである。ベアフロンティアの側近であり、魔導師の輝石を悪用することを思いついた張本人でもあった。
(やはりイギギは魔法生物! あの変態魔学者がいかにも好みそうだしな)
シンディラさんはそれを可愛いと言いました。
まあとにかく、これでデッドプリズンが研究所であることが濃厚になった。
いや、確定と言っていい。魔学者ガデニデグの本城――つまり、
(罠……か。ガデニデグならシエルネットワークを悪用できるだろうしな。情報を盗み、偽の情報を流しておいたんだ。人間が捕らえられているとは限らなくなってきたというわけか。イギギの実験場だとすれば、新たな戦力を産みだすための場所ということだ。イギギは対護神用のモンスターに違いない! くそ! ウィッグたちが次の行動に移ったら全滅してしまうかもしれない!)
じつはこの潜入ミッション、攻城戦の前段階なのである。シンディラたちはこっそりデッドプリズンの内部を調査し、人間たちを救い、ほかの仲間が連絡を受けて突入するという作戦だった。
その作戦の通りにすべてが運んでしまうのはよくない。仲間たちはこちらの連絡待ちではあるが、陽が夕刻へと傾けばこちらの連絡なしに突入……そういう作戦でもあるのだ。
「……ガデニデグはどこにいる」
「知らない! 俺たちはデッドプリズンを守護しろと言われて集まっただけで……」
「あまりふざけられては困るわ。主が奴ならおまえたちの指揮をしているのだろう? 顔もあわせずどうやって指揮をするというんだ」
「声だ。デッドプリズンに声を響かせて! だ、だが……デッドプリズン最上階の一部が誰もはいれなくなっているんだ。いるとしたら多分そこだろう……頼む! 殺さないでくれ……」
「……もうひとつ。こちらの世界の人間はここにいるのか。ガデニデグが偽の情報を流していたのか」
「偽の情報? そ……それはよく分からない。だがこちらの世界の人間は何匹も捕らえてある。六階だ。あう……頼む殺さないでく――!」
シンディラは手を離した。ブラックゴートはつかまれていた喉をさすりながら苦しそうに咳こむ。
「ブラックゴートよ。おまえはヒョロ長いモンスターを見たことがあるか」
「ヒョロ長いモンスター? 知らない……ほ、本当だ!」
(知らされているわけないか。まあ自分たちを補食するやつと一緒に仕事などできないわよね)
――『おまえ、デッドプリズンの警護してよ。たまに食べられちゃうけどさ☆ ええ~、マジっすか~。まあ……たまにならいいっすけど』――とはさすがにならないだろう。
「ブラックゴートよ。殺さないでやる代わりに言うことを聞け」
「な、なんでしょう……」
「おまえたちを食事にするモンスターがいる。二階に行けば分かるだろう。いまのありがたい情報と引き換えに、おまえはここからでて北にずっと進むんだ。そしてわたしの知り合いにデッドプリズンは罠だと伝えろ」
「俺たちを食べる? そんなモンスターがいるわけない」
「いるんだよ。それともいますぐここで死にたいか。おまえの仲間にも伝えてやるといい。やることをやったら本隊に戻れ。いいな……!」
かなり凄んでみると、ブラックゴートは冷や汗を流しながら目を見開いた。かなりビビったみたいで直立しながら敬礼もする。
「はいぃ! 灰の妖女シンディラさまぁ!」
……と、いうわけです。シンディラがまさか護神になっているとはモンスターたちも知らないのです。それがなぜかと言えば、その情報をシエルネットワークに流したりはしていないからである。
じつはシンディラ。潜入ミッションでかなりのキーマンだったりするのだ。
(まあそれもガデニデグにわたしの立場がバレなかった場合だがな。姿を見せずに声を響かせるのなら、どこかに『眼』を置いて監視しているはずだ)
対象の位置が分からなければ、どこに声を響かせればいいのか分からない。そうなるといまこうしているのを見られているかもしれない。
ブラックゴートはドタバタと黒い階段に走っていった。頼りがいはないが、なにもしないよりはマシだろう。シンディラは護神になったことをガデニデグにバレるまでは、アニミスを使わないほうがいいと判断した。なのでシエル送信は使えない(アニミスに慣れてないから)。
しかしそうなるとフィアと合流するわけにもいかなくなってしまった。勇者と一緒にいたら変である。まあすでに見られていたら意味はないのだが、とりあえず別行動しておいたほうがいい。
シンディラは黒い階段へ行き、大きな声で独り言を口にした。
「さあ、わたしはひとりでうえにでも行こう! 護神が侵入したことを、ガデニデグに伝えなくてはならないのだからぁ!」
……よし。なにがよしかは分からないが、これでフィアもなにかを悟るはずだ。
シンディラはそのまま五階に向かうために黒い階段をあがる――途中で、四階のどこからかカランカランという音がした。しかしシンディラは特に魔力を感じなかったので、無視して黒い階段をあがった。
イギギの餌になってしまったのか、デッドプリズンからはモンスターの気配は微塵も感じなくなっていた。黒い階段をあがりきり、五階に着いても気配はない。
五階に棚は少なく、右のほうにテーブルが並んだ区画があった。左はかなりの広さが確保されたなにかの店がある。だがとりあえず誰もいないようだった。
シンディラは一応の見まわりを始めた。ところどころに仕切りのような壁があるが、それが邪魔にもならないくらいに広々したフロアである。
とりあえずテーブルがあるほうに向かう……誰もいないし、なにもない。スタスタと進んでいき、ちょうど半分くらいを歩いた。と――
――どごぐぁっ! といった感じで仕切りの壁のひとつが崩れた。シンディラは瞬時に身構える。
しかし警戒をしてみても、誰もいないしそれ以上のことは起きない。
「……いまのはなんだ?」
もろくなっていたのだろうか。堅固な城のような造りのデッドプリズンが? シンディラは狐につままれたような気分で崩れた壁に向かった。
「これは……断面が切断されたようにキレイだ。しかしアニミスや魔力は感じなかったぞ……キレイ? そういえばなぜだ? 粉塵が舞っていない……」
埃のひとつも舞っていそうなものだが、そんなこともなくただ崩れた壁である。ちっ……ちょっとつまみ食いしようと思ったのに。シンディラは異世界の粉塵がいまやお気に入りである。灰ではないが粉塵すべてが体になじむのだ。魔力がアニミスに変わった影響はそんな風に現れていました。理由は不明。
「ガデニデグめ……いったいなにを考えているんだ?」
シンディラは崩れた壁を調べ始めた。いきなり破壊されたのには、なにか意味があるはずだった――と、今度はどこかでなにかが落ちる音がした。店側のほうからのようだ。
行ってみる。これまた切断された植物があり、ソファが置いてある。そこの通路になにか落ちていた。数字の書かれたカードのようだ。シンディラは天井を見あげてみたが、特筆すべきところはない。
「どこから落ちてきたんだ。この階層でなにが起きている……」
『灰の妖女がデッドプリズンにいる説明もつかぬ……そうだろうシンディラ』
「ガデニデグ? あちらの世界で会った以来だな。この建物はなんなのだ。貴様はここでなにをやっている?」
シンディラはいきなり話しかけられても驚かなかった。基本的にそれくらいじゃ驚かない。ただガデニデグの真意を聞きだせるのかという緊張めいたものは感じていた。
『おぬしはベアフロンティアさま配下だろう。このガデニデグの魔学研究に口をだせる者はおらぬ。あの破滅王さまでもな』
「貴様の特別な権利になど興味はない。ただ目的を知りたいのよ。ここがなんなのかを――」
『ではこちらの質問にも答えてもらおうか。ベアフロンティアさまの地上派魔軍にいるはずのおまえが、なぜ我がデッドプリズンにいるのか』
「……さきほどこのデッドプリズンとやらが襲撃されたな? その様子を報告するようベアフロンティアに命じられた。派魔兵たちを借りている立場だろう、ガデニデグよ。施設の目的を聞こうか」
『まだだ。なぜ姿を変えた』
「人間の子供に似せたほうが有益だからだ。こちらの世界の人間も騙せる。護神たちに非力だと思わせることもできる。まあ人間と密につながる食神や飾神くらいなら騙せるのさ。で、目的は?」
『最後の質問だ。なぜおまえがデッドプリズンにいるのだ?』
「それは答えたはずだ。ベアフロンティアに言われて――」
そこでガデニデグは哄笑を響かせた。クックックッ……ハァッハッハッハ! 的なやつである。なにか面白いことを言ったかなと待っていると、
『では教えてやろう! このデッドプリズンは異世界の人間や護神を捕らえて研究するための我が城だ! 当初は護神を魔性化させるためだったが、ソヨギとか言うレアーズの存在を知り、魔族にとっての利用価値を見いだし、人間の収容を開始したのだ! そしてこの城にはあらゆる機能を施している! それがガデニデグの秘術、次元層術なのだ!』
「秘術だと?」
秘術は誰もが持つ、なんと言うか隠し技である。切り札とも言える。誰にもその存在を教えず、ここぞの場面で使うために秘術と言う。そしてシンディラは秘術と聞いて、ガデニデグの狙いを理解していた。
「貴様、ベアフロンティアにすら報告せずになにか企んでいるな? そうでなければ秘術など使わないだろう。あのイギギ――奇妙な魔法生物を造り、護神にすら対抗しようとしている。魔族を裏切るつもりなんじゃないかしら?」
『ふん……おまえには分かるはずもない。ガデニデグの辛苦が! 度重なる徒労が! すべてはだらしのない破滅王配下のものどもがいるからだ! 裏切りだと? それはおまえにも言えることだろう……女神シンディラ!』
(バレていた……か)
シンディラはなにが起きてもいいように、アニミスを解放する。
『無駄だ! おまえもすでにデッドプリズンに迷いこんだネズミよ! やれぃティンダルス!』
「ティンダルス?」
これまた聞いたことのない名前である。ガデニデグの命令に応えたのか、フロアにシャンシャンという音色が響き始める。それと同時に、強力な魔力が背後から発せられていた。
振り返ってみる。テーブルのある区画から、浮遊しながらそれは近づいてきた。
水色のストレートの髪。背中に蝶の羽を生やしているのは、小柄な少女に見える。ピンクの布的なものを口のあたりに巻き、複雑な色彩の上衣(迷彩柄のTシャツ)を着て、したは同じ柄でブーツインである。とりあえずピンクは格好に合っていない。
「ティンダルスとはなんだ」
『このガデニデグの産みだした新造魔族だ。素体に種族の王をブレンドした傑作――いくらおまえだとて敵うものではない!』
「ふん……なるほど。あれは蝶ではなく妖精族か」
「ごきげんよう、女神シンディラ。わたしは翅王ティンダルス……以後お見知りおきを……」
「覚えておく必要があるか? どうせどちらかが倒れるんだ……おまえだろうがな」
シンディラは言い終わるが早いか、左手を薙いだ。大きな布が広がるように、灰が中空に放たれる。灰はティンダルスにぶわぁ! と覆い被さる。
「屑と焔の燎原……」
――カッ! ギュアボバババババ……! シンディラが冷徹な視線を送ると、布のように拡散した灰が周囲を巻きこみ連続爆発する。ティンダルスは逃げ場もなく、灰になっているだろう。
「これで終わりかティンダルス。また徒労だな……ガデニデグよ」
シンディラは両手を前方にだして広げた。すると燃えカスとなった塵芥がシンディラへと戻っていく。シンディラは技のあともアニミス回収が可能なのだ! 全部ではないが使用した半分以上のアニミスが取り戻せる。ちょっとヒキョーである。
フロア中央はほとんどが燃えていた。シンディラはパチパチという心地よい音を聴いていたが、それを邪魔するようなガデニデグの挑発的な声が響いた。
『これで終わり? クックックッ……そんなわけがないだろう』
「ええ。そういうことですわ、灰の女神」
「よけたのか……」
耳元で囁かれる不快な声音を耳にして、シンディラは左を向いた。ニッコリとした笑みをたたえながら、ティンダルスが立っていた。近い。
「よけただけではありませんわ。あなたはわたくしの術中におりますのよ? 倒れるのはあなたのほうですわね」
「ほう……このわたしを倒すか。いったいどんな方法で?」
「膝まづけ――ふふふっ……」
「なん……だ?」
ガクンッ! シンディラはティンダルスの命令に従っていた。その場で膝を曲げて床に手をついてしまう。意思はあらがっているものの、体が言うことを聞かない状態である。
(催眠か? 精神攻撃ならばこのわたしにも、確かに効果がある!)
反属性をのぞき、シンディラに攻撃は通用しない。だが魂がある限り精神は存在し続けるものだ。それを利用されればさすがのシンディラもお手上げである。
(くっ……灰化もできない! ガデニデグめ! 対護神ではなく対わたしのモンスターを造りあげたのか!)
『ガデニデグのデッドプリズンは千差万別! いまはアニミスに反応するように設定してあるのだよ。さらにおまえにアニミスがあることは分かっていた……いや、すこし違うな。おまえの利用を思いついた時点で、おまえが裏切った場合を想定していたのだ。敵にまわればやっかいな相手だからな。妹が女神であったことで、半神半魔のおまえがいつか善神サイドにつくだろうことは、可能性として考えていたのだ……まあ、魔力を持った灰の妖女でいればそれもよし、という考えもあったわけだがな』
「なるほど……十重二十重というわけだ。だがいいのか? たかが催眠ごときでは、いつわたしが回復するかも分からないぞ」
「それは杞憂ですわ。わたくしの翹誅挫蛾は、精神攻撃ではございませんのよ? 貴女は粉塵のようなものを吸収しますでしょう? なのでそれにわたくしの燐粉を混ぜたのですわ。まあ、くわしい説明はのちほど、ということで」
「……く……くく! あまり舐めるなよ! わたしを!」
『灰の女神。動けぬ体でどう戦うのだ? ほれ、手も足も水の縛鎖のただなかにあるではないか』
いつのまにか、シンディラの手足は水に浸かっていた。どういうことかは分からないが、まるで床から水があふれているようにも見える。両手に加えて膝から脛のあたりまでが、二センチほどの水に触れていて動かせない。灰の沈殿ではなく、これは表面張力による吸着に思えた。
(水の呪縛まで……わたしが来ることを予測していなければこんなことはしない! わたしの行動が読まれていたのなら、ガデニデグは想定していたんだ! わたしが魔導師の輝石を狙うことを! ここにあるんだ、このデッドプリズンに魔導師の輝石が!)
「さあ、眠りなさい。ふふふ……」
――シンディラは意識を失った。
これで全滅……?
いえ、違います。まだいますよ!
『希望』そのものであるあの子がね!
続く
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