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第4品「俺であって俺でない? ま、なんでもいっす」
ソヨギに還るために……と、絶望の――
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ふたりのソヨギがその想いを口にすると、茶化そうとする者は誰もいなくなり、異空間は沈黙に包まれた。
ソヨギに還りたい。それはつまるところ、ふたつに別たれた魂……マヨギとソヨミスの魂をふたたび結合し、一個のソヨギの魂に戻す方法があるということだろうと思う。
誰もなにも喋らないでいると、豆腐がほよよんとふたりの正面で浮遊した。
「ソヨギさまに還りたい……つまり、なにか方法があるということですね?」
「ソフラ。このふたりは慈愛を求めているのだぞ。慈愛は奇跡に匹敵する、誰も操ることなどできぬなにかだ。要するに方法はあるが、奇跡でも起きない限りどうしようもないんだろう?」
「違ぇねぇな。そもそも魂を粘土細工みてぇに、つけたり離したりできるわけがねぇ……ソヨギが戻るかどうかは奇跡頼みってぇわけだ」
「でもさ、魔導師の輝石を操ることができれば可能なんじゃないの? ガデニデグだって同じことしてるわけでしょ?」
「フィア、言うは易いのよ。そもそも魔導師の輝石をどう扱えばいいのかだって分からないのだから」
シンディラにたしなめられて、フィアはぐぅと呻いた。
「……だが、ソヨミスの言うように魔導師の輝石の奪取とガデニデグの撃破は果たさねばならないわ。ソヨギに戻せるのか、ガデニデグの真の目的がなんなのかは後回しでも構わない」
「俺とソヨミスさんとしては、みんながその気でいてくれるならそれでいいっす。ですよね?」
「そっすね。わたしたちにしても、なんでこんなにソヨギに還りたいのか分からないわけで。でも還りたいんすよね」
なんか言い方が軽いのが気になる。だがフィアは、確実にソヨギに戻す方法を見つけることは重要なことに感じていた。
それはティンダルスたちを救うことにも通じるからだ。忘れがちだがマヨギもソヨミスも、ソヨギだけの魂で成り立っているわけじゃない。ヒキュウ族の体を用い、そのヒキュウたちの魂と結合しているのだから。なので魂を別つ方法と、元に安定させる方法を探さなければ、魔導師の輝石の被害者たるティンダルスを救えない。
このふたりは口に出さないけど、そのティンダルスにされちゃったヒキュウ族の解放も、目的の一部なんじゃないかなと、そうフィアは思った。
「マヨギさま、ソヨミスさま、急ぎガデニデグの元へ行きましょう。ガデニデグの目的に不可欠な『時間』を、これ以上費やすわけにはいきません! わたしが必ずやおふたりをソヨギさまに戻してさしあげます!」
豆腐がふんっ! と鼻息(?)を荒らげた。
「安請け合いはよくないわよ?」
「安請け合いじゃありません! ソヨギさまに戻っていただかないとわたしが困るのです! なので全力でやらなければ!」
「どうして困るんでぇ」
「そ……それは……ソヨギさまに食べていただくために異世界に渡ってきたわけですし……」
「マヨギさまかソヨミスさまじゃダメなの?」
「わたしは純粋な人間用ですから。ティンダルスではチカラが発揮されないと思いますし……」
「偏見すか? あと俺たちはティンダルスですが、ほとんど人間のものと変わらないっすよ」
「そ……それでもソヨギさまでなくてはなりません! ソヨギさまでなくてはチカラが発揮されないのです! そうでしょう!? それに決めた!!」
「強引すね……」
「強引ではありません! それが定めなのです! そうね、そういうこと! 定めを遵守することも護神の定めですからね!」
なんだか豆腐は必死である。フィアはハテナ? となって、シンディラとビデガンに理由を聞いてみた。ふたりはなんでかニヤニヤしていた。返答は次の通りである。
「そうねぇ……ソフラなりのこだわり、かしらね」
「もう少しデカくなりゃ、そのこだわりのことも分かるようにならぁ」
む、まだ十歳のわたしでは分かりませんか。そうですか。なら、そのうち分かるようになるよ?
……とりあえず豆腐の興奮冷めやらぬうちに、異動は開始された。マヨギの魔力の炎がボッとすると、あの入り口が開く。しかし先ほどとは少し違い、みんなでほとんど同時に入り口を通った。マヨギいわく、時間の流れが違うから順番に出ると、あっちで待つことになるとかなんとか。難しいのがキライなフィアは、そうなんだとテキトーに返事した。
ぽんっとデッドプリズン内部に戻る――と、先ほどいた階層ではないようである。
「ここは七階っす。見ての通り」
どこをどう見れば七階だと分かるのか分からないが、やたら広々とした空間だった。車輪のついた鉄の箱たちがパラパラと並び、屋根があるのは彼らが立っている位置周辺で、デッドプリズンの半分くらいしか覆っていない。なんなら屋根が途切れているので、遠くに空も見えている。そこかしこに白線が引かれており、車輪つきの鉄の箱は白線に沿ってきちんと置かれていた。
だけど、フィア的にはそんな場合じゃなかった。
「ふむ、屋上か」
「駐車場って言うんですよ。あれはこっちの世界の乗り物っすね。あっちの屋根がないほうにはイベントのステージがあったりしますが」
「おいおい、異世界観光しに来たわけじゃねぇんだぜ?」
「ね……ねえ、みんな?」
みんな気づいていないのか?
「マヨギさま? ガデニデグがこんな隠れるところもない場所にいるのですか?」
「いえ、研究室に行くには順路をたどらないとダメなんすよ」
「なるほど、ダークフサルクを利用してか。姑息だな」
「しかも簡単じゃないうえに、俺とソヨミスさんにはやることがあります」
「やることだぁ?」
「ちょっとみんな! 気づいてないの!? この魔力に!」
フィアは抑えきれなくなった焦燥を吐き出していた。フィアの異様な顔つきを見て、アニミスメインの豆腐とシンディラとビデガンはポカンとしている。
「どうしたのフィア。魔力ならデッドプリズンについた時からずっとあるじゃない」
「違う! 全然違う! 研究室に行くのは簡単じゃないって言ったよねマヨギさま! これはそういうことなの!?」
「気づきましたかフィアさん。でも、ソヨミスさんと話しはしてあって、作戦はあります」
「おいおい……おめぇたちはいってぇ、なにを話してんだ?」
「気になりますので――シエルネットワークを利用しない、個人的な策敵魔法!」
豆腐がブォン……とアニミスを空間に展開させた。細かいところまでは分からないが、アニミスを放出してその手応えを感じとる……みたいなことだろう。
そして豆腐は驚愕した。
「これは……! まさかそんな!」
「なんなのだソフラ。なにを驚いている。誰か説明しろ」
「デッドプリズン付近一帯を覆っていた魔力は、ベアフロンティアやガデニデグの魔力ではなかったということです……行かなくては!」
「ダメっす。作戦聞いてからにしてください」
「ソヨミスさま! お皿を離してください! このままでは全滅してしまいます!」
「なんだってんだ? いまいちピンと来ねぇんだが。なに焦ってんだ豆腐の女神よぉ」
「まあ、焦りますよねフツー。倒した相手が生きてたなんて、戦場じゃよくある話だ(ワキザ氏)……て言ってもね」
「ウィッグさまが交戦中なのです! デビロイドもです! でも相手が悪すぎる!」
豆腐はソヨミスの手から無理矢理に離れた。その焦りようがただ事ではないと、シンディラもビデガンも表情を険しいものに変えた。その時――
ゴアガアァァァァァァァッ!!
超膨大な魔力が天空に放たれた。目に写るものすべてを灰塵に――いや、すべてを破壊し消去するだろう驚異の魔力である。
アニミスをメインとする彼らは、その時になにが起きたか……いまここでなにが起きていたのかを悟った。
開口したのはビデガン。彼はいましがた放たれた、絶対的強者の技を理解していた。
「イレースヴェノムカノン……!」
「ウィッグさまのアニミスが消えた……消えてしまった……」
「イレースヴェノムカノンだと? それはまさか……」
「そうですシンディラ! あの流浪の魔神――」
豆腐はアニミスを全力で開放した。
「デスケテスです!」
☆★☆★☆★☆★☆★☆
これはちょうど、フィアたちがマヨギによって異空間に入ったときのことである。
ウィッグノリの率いるリュニオン・ヴァーチャーズは、デッドプリズン目前で空中停滞していた。豆腐から送られてきたシエル送信と、なぜか出てこない魔空戦隊が気がかりだったからである。つまり勢いこんで飛んできたはいいが、なにをすればいいか迷っていたのだ。救出に来たはずだったが全員生きていて無事。加えて向こうからしかけてくる気配がない。まったく動けないでいた。
<しかしノリよ。アニミスの操作もだいぶ慣れてきたようだな。筋がよい>
<飛んだりなんだりはね。でもあなたがいないとなにもできないわけでしょ? そんなことよりどうしようかなぁ……>
とりあえず、生身で空を飛んだりとかしたことのないノリは、その風の強さに驚いたものだった。地上とは違い、上空では遮蔽物がないので、風の強さが尋常ではないのである。
ノリはノーメイクなことに感謝しながら涙を拭う。もしもアイラインとかしてたら、今ごろはパンダノリさんにでもなっていたことだろう。
地上にはところどころ破壊されたオフィスビルや家屋が並んでいる。人影はない……先の陽動で倒した地上派魔兵たちは魔精気体化しており、もぬけの殻のような町並みは、紛争地域の荒涼じみた景色のように広がっている。
そして目前というか眼下には、デッドプリズンが鎮座している。外壁にかかっている垂れ幕の感じや、魔物に壊されたのだろうバルーンがぶらさがっている感じも、ノリにとってはデパートというイメージの範疇である。
まあしかし、屋上から頭だけ出した大樹の姿は異様であった。なんだか元から生えていた大樹をくるむように、デパートを建造したみたいである。まあ、言い換えればそれ以外はまったくのデパートでしかない。
だが、異世界の者たちには禍々しい魔城にでも映っているようである。デッドプリズンまで飛行してきた際、ウィッグの緊張が増していくのを、統合された精神が如実に伝えてきていた。
<あれほど巨大な建造物が城ではないのか……>
<そうだよ? 大きな市場みたいなものかな。日常的に誰もが立ち寄る場所だよ>
逆にウィッグのほうはノリの無緊張を感じているようだ。そしてお互いにある程度の思考を読み取れるため、そんな会話を脳内で行っていたりする。
そんなことをしていると、待ちきれなくなったリコイルレスが背後から聞いてくる。
「なあノリさんよ。これからどうするか決まったか?」
「悩み中だよ。内部に問題ないなら予定してた強襲まではやることないし――かと言って我らもアニミス開放しながら飛んできたのだ。敵もこちらに気づいておるだろう――だからまあ、行くしかないかなって思うよね」
「いいんじゃないか? 屋上から入っちまおうぜ。そのためのブラゴ……案内役だろう?」
ウィンチェスターの提案である。ブラゴ……あのアニマリーの隊長は、ふたりのデビロイドに両手を持たれて浮遊していた。空が怖いのか、地上を見おろしながら「あわわわわ……」とか漏らしている。
「ん……だね。攻撃されないならこっちから行こう。それじゃ、降下開始~」
ウィッグノリが宣言するとリュニオン・ヴァーチャーズはデッドプリズンの屋上へとおりていった。
ヒュオォォォ……と風の鳴き声が耳元を吹き抜けていき、真下にあった屋上が少しずつ近づいていた。
余談なのだが、飛行するときは自分をクレーンで持ち上げている感覚。降下するときは命綱なして崖をおりる感覚――ノリの感覚ではそんな感じである。その感覚の根っこにあるのは、アニミスの制御である。クレーンで持ち上げている感覚を締めたり緩めたりして『上昇』を調節する。そうすることで落下しないまま降下をするのである。空気を徐々に抜いていく風船の要領と言ってもいいかもしれない。
<この短時間でようセラフらしくなったものだ。おぬしには言葉通りのセンスがあるようだ>
<それって霊級とかいうやつなのかな?>
<霊級は誰もが持ち、そして誰もが意図して発揮できぬものである>
なんだか答えになってないことを言われて、ノリは困惑した。
屋上に立つ。屋根があるスペースのほど近くである。そこはよくある駐車場だった。デッドプリズンの十分に広い敷地を利用した駐車場。
北側はオープンスペースになっていて、アイドルとか芸人が地方営業に使いそうなステージがある。南側は屋根つき駐車場。車の台数が少ないのは当たり前で、破滅王の異世界侵攻が夜中だったからだ。恐らくは客ではなく従業員の車たちだろう。
「このデパート来たことないんだよね。まあだいたいそこらじゅうにエスカレーターとかエレベーターの建物があるんだけど」
「えすかれーたー? えれべーたー?」
「えっとぉ……説明はまた今度ね。エレベーターは動かないだろうから、探すならエスカレーターか非常階段になるかな。では無難に屋根があるほうにレッツラゴー」
ノリの言った無難という言葉の意味は理解されてないようだったが、リュニオン・ヴァーチャーズは歩きだした。だいたいデパートはこんな感じ、という発想のない異世界人には通用しない言い方だったろう。
<しかしなんだ、この強烈な魔力は>
<ガデニデグのじゃないの? どっから漏れてるのか分からないけど……ブラゴちゃんなら分かるかも。聞いてみる?>
<いや、よい。場合によっては魔力の強弱により、感覚のマヒが引き起こされる。大きな魔力の弊害だな。アニミスと違い攻撃的なチカラであるがゆえの弊害だ。隊長クラスの魔力では正確な位置は分かるまい>
<人間も大きなケガをすると感覚がマヒして痛みを感じなくなったりするけど、それと似たようなことかな? まあでも、ボスはどうせなかにいるでしょ>
ソヨギのような思考をするノリである。屋根つき駐車場に入り、内部と直結する建物部分を目指す。道中、ブラゴに入り口を聞いてはみるが、そもそも彼らは六階以上には立ち入り禁止らしい。知らないと返されてしまう。
それなら一階から侵入したほうがよかったかな? と、ノリとウィッグが口論を始めかけたときだった。先頭を歩くノリの肩を、センティニアルが掴んだ。
「センちゃん? どうしたの?」
「……クラッグの奴がいねぇ」
「クラちゃんがいない……?」
ノリはなにをバカなと歩みを停めて、八人編成プラス一匹を眺めた。
「七人になってる……!」
「俺をいれたら八だぞ?」
「おめえはデビロイドじゃねえだろ。まさかクラッグの奴……はぐれたのか?」
この死角になるものがない駐車場で、それありえない。ノリがそう言うと、リュニオン・ヴァーチャーズに不穏な空気が漂い始めた。さらにノリはくぐもった声で言った。
「……探そう」
「いいのか?」
「あなたたちにはやらなきゃいけないことがあるでしょ。そのためには欠けちゃダメだよ。とりあえず降下地点に戻ろう」
……とは言え、降下地点は目と鼻の先であり、なんならここからでもよく見えた。クラッグが車の影に隠れているようなことはあるまい。そもそもオチャメなイタズラをしている場合じゃないのだ。
降下地点に戻りながら、そう言えばと旧友たちの体験した不思議なループ現象を思い出す。デッドプリズンまでの道程で、ウィッグから『迷いの森効果』なる特殊な呪いについて聞いていた。クラッグが消えたのはその罠にかかった可能性があった。
「おいクラッグ! どこにいるんだ!」
「冗談やってる場合じゃねえぞ!」
声をかけても返事はなく、見渡しても姿はない。クラッグは完全にいなくなってしまっていた。
<ノリよ。これは迷いの森効果ではない。それぞれが呪いにかかっているのだとしたら、先頭を歩いていた我々がまず対象になるのだ>
<迷いの森効果の仕業だったとしたら、消えるのはひとりじゃないってことだね。それならどういうこと?>
<間違いなく攻撃である!>
「ヴァーチャーズよ! アニミスを高揚させるのだ!」
すでにただならぬなにかを察知していたリュニオン・ヴァーチャーズはアニミスを高揚させ、臨戦体制を整えた。
それに応えるように強大な魔力が膨れ上がった。もともと周囲を包み込んでいた魔力は、膨れ上がることで圧縮されたような空気にすらなる。その息苦しさに耐えながら、ウィッグノリは上空を見上げた。魔力が膨大したことで、その存在が認識できた。
「何者だ……貴様!」
ウィッグノリの視線のさきに、男が浮いていた。
ふたりである。ひとりはこちらを見おろしている。巨躯と評していい限界まで鍛えられた上半身を包んでいるのは、金に輝く体毛だった。肩から腕、そして脇腹で輝く金の毛並みは獅子を思わせる。体毛はVの字に、胸から腹までは生えていなかった。そのおかげで殴っても跳ね返されそうな印象を覚えさせる分厚い筋肉が見てとれる。
髪は鮮やかな鬣のようだった。顔つきは人間のそれと大差ないが、屈強で引き締まり、瞳に宿る意志は絶対的な強者であることを、自ずから雄弁に語っていた。
下半身に身につけているのは士官以上の階級の証である、動きを邪魔しない膨らみのある麻のズボンである。主に戦闘時の体さばきを考慮し、破滅軍の誰かが考案したものだ。そのしたには頑強なブーツ。それにはこれといった意味はない。ズボンを留めているのは麻の紐だが、頭上の男は金に近い色で染め上げていた。
もうひとりは金の男に片腕で持たれ、だらりと全身を垂らしていた。恐らく意識はない。先刻まで被っていたテンガロンハットはない。彼はその体を重力に預け、抵抗なく吹く風にさらされている。
金の男は動かなくなったクラッグを放り捨てた。慌ててデビロイドが受け止める。
「てめえなにすんだ!」
「クラッグ! おいクラッグ!」
「護神の一派と見るが……たいした力も持たぬようだな……」
金の男はあからさまに嘆息した。期待を裏切られたと、まるでそう言っているように感じる。
「去るがいい。力なき有象無象に興味はない……ガデニデグめ、つまらぬ役目を与えてくれたものだ」
金の男は屋上におりてきた。ウィッグノリは身構えたが、金の男は着地すると背を向けた。そのまま立ち去るそぶりを見せる。
「クラッグ……クラッグ! くそ! 目を開けろてめえ!」
「なんだこれ……なんでクラッグは光ってんだ……? おいウィッグ、なんだよこれはぁ!」
ウィッグノリはクラッグを囲んでいるデビロイドたちに視線を変えた。確かに、クラッグの体が淡い輝きを放っていた。
「ブラゴよ。おぬしは逃げるのだ。できることならば破滅軍から抜け、正しき道を進め。敵ならば倒さねばならぬ……」
場のようすを呆然と眺めていたブラゴは、へっと笑った。
「俺はただベアフロンティアさまに反目してるガデニデグさまを許せないだけだ。だからあんたらに協力しただけだ。シンディラさまの命令だったしな……だからこれが終われば地上派魔兵の隊長に戻るぜ」
「ふむ……まあよい。我はおぬしのことが嫌いではないゆえ、戦場で会わぬことを祈ろう」
「……変わり者だな、あんた」
「人間と関わればおぬしにも分かる。特にソヨギという変わり者にな――行け」
ブラゴはあばよと言いながら屋根つき駐車場のほうに走っていった。
ウィッグノリはそれを見送ると、デビロイドたちの元に向かった。クラッグの光は全身にまで行き渡り、回帰が目前であることを示していた。
「ウィッグこれはなんなんだ!?」
「聖性回帰だ。魔性回帰と同様の現象だ……クラッグはデビロイドでありながら、善神さまにお還りになるのだ……」
「それはつまり死ぬってことか!」
「安直な説明をするならば――そうだ」
――ギリッ……!
それがなんの音だったのか、冷静に分析したのはウィッグノリだけだったろう。クラッグの死に対する悔やみ、怒り、無念――それらが拳を作らせ、同時に奥歯を噛ませた。その音は想いを明確にしただけではなく、それぞれの想いの統合を意味する!
『止めるなよ――ウィッグ!』
クラッグの肉体が、ピンクがかった霞へと変わると、デビロイドたちはアニミスを爆発させた。
「待つのだ!」
ドンッ――! ウィッグの制止もむなしく、完全に頭に血の昇ったデビロイドたちは止まらなかった。
デビロイドたちは金の男にフェイクスターで詰め寄った。肉迫する者が三人、頭上に展開したのが三人。それは三十メートルほど向こうで起こっていた。
<無茶をしおって! 相手がなんなのかも分からぬうちに!>
<みんなの行動を批難するまえに動きなよ!>
ノリもデビロイドたち同様の状態に陥ろうとしていた――キレかけている。
そのため精神バランスが崩れかけた。戦闘時にはウィッグが表層意識を支配するために、ノリの意識は脳の奥底に追いやられる。その場合肉体操作はウィッグに一任されているはずだが、勝手に走り出している。
デビロイドたちは一斉射撃の体勢である。六人で包囲し、金の男を捉えていた。魔装銃の銃口に青く白い光が集束していく。舌を巻くほどのアニミスではないものの、並の魔族ならばまず倒せる威力である。
金の男は足を止めていたが、リアクションは薄い。正面に立ちはだかったウィンチェスターとリコイルレスが邪魔だから止まった。そんな感じである。
「あばよクソ魔族……!」
誰かの声で光撃が放たれた。一瞬、目が眩むほどの光があふれた。
――一瞬、ウィッグの精神すら支配する不吉な感情が胸中を満たした。このとき、ウィッグはつぶさに理解した。ノリの内にある感情が、護神を凌駕しようとしていることを。
――一瞬、金の男が周囲を一瞥した。ただ気になった横道を見ただけ……そんな感じで。
――一瞬、デビロイドたちは我を忘れていたのだろう。仲間を殺された怒りに身を任せた。クラッグがなぜ死んだのかも考えなかった。自分たちが気づきもしなかった出来事を、金の男がどうやって実現させたのかを。
――そして一瞬で、すべてが終わった。金の男は両手の拳で空気を叩いた。それだけだった。
発せられたのは例えようのない轟音と衝撃である。それだけでデビロイドたちは堕ちた――耳孔や鼻孔から出血し、意識が昏倒したことは白眼を剥いたことで分かった。彼らが魔装銃を持つ右腕がひしゃげ、同時に彼らの体も歪んだ。一撃で肉体破壊が起きたことが分かった。その破壊力は凄まじく、近距離にいたデビロイドたちは弾け飛んだ。空中にいた三人はなす術なく空へと放り出された。抵抗なく投げ出され、そして彼らは、回帰した……。
ウィッグを支配したのは絶望だった――だがノリを支配したのは、悔やみや怒りや無念でも絶望でもなく、無駄にはしないという想いだった。その脚は躊躇を無視し、絶望を跳ねのけ、デビロイドたちの想いを果たすべく躍動した。
「ホーリーチェイン!」
ノリが腕を払うと、悪を祓う聖鎖が走った。ホーリーチェインの効果はふたつ。直線的に刺さるものと、巻きつくことで対象を裂くものだ。神技の性質上、どのような形でも魔力を削るが、通用するものでなければならない。効果の発揮まで時間のかかる『拘縛』よりも単純に『刺突』を選択したノリの判断は正しかった。
金の男が攻撃直後だったことをノリは見逃さなかったのだ。確実に当たるタイミングでの神技の使用だった。
しかしそれよりもノリが神技を放ったことに、ウィッグは驚いていた。自分の意識が支配しているのならいざ知らず、いまは完全にノリが支配している状態だ。本来ならばあり得ない。神技は神の技である。いくら精神統合された存在であるノリであっても、アニミスを操ることが可能になったとしても、絶対にあり得ない定めだった。
ホーリーチェインは金の男の背中に刺さる。しかし金の男はダメージを受けていない。追撃が必要だった。
「……なかなかよい選択だ。いくら儂でも攻撃した瞬間直後ならば、多少の隙も見せるというもの」
「破魔七罰鉱織神技!!」
(そこまで可能にするのか!?)
ふたたびウィッグは驚く。その技はホーリーチェインの二段階先の派生技だった。刺突や拘縛が成功した後での追撃で、より浄化を具体的に現すのである。ホーリーチェインを紡ぐ聖鎖は鉄属性に変化し、もっともポピュラーな形状へと変化する――それは刃である。
「あんたなんか切り裂かれちゃって!」
ガキィンッ! と鎚が鉄を打つ音がすると、聖鎖の環は刃に変化した。ノリが狙ったのは刺突により金の男の体内に入った環を刃化することだった。つまり内部からの浄化破壊!
「その意気やよし」
普通なら絶対に間に合わないタイミングで金の男は動いた。しかもその動きは、肩に払ったホコリを払うような簡単な動作だった。
それだけで、刃化した聖鎖はバリィンッ! と砕け散っていた。ウィッグは瞬間的に立ち止まろうとしたが、ノリはなおも金の男に詰め寄る。
<力量の違い、格の違いに気づかぬかノリよ!>
<そんなの二の次だよ!>
それは意志の強さだったのだろう。ノリは止まらない――ウィッグの、神の意志すらも凌駕した強い意志で、足を止めない。
「破魔滉飾神技!!」
「近接か」
金の男は向き直るだけで構えもしない。それだけ力量の差を分かっているからだ。
ノリの右手に現れたのは聖鎖の籠手。どちらかと言えば三段階目の追撃技。セブンリングスで倒しきれなかった相手を直接浄化させるためのものだ。その説明したことのない連撃を、ノリは把握している。
ノリは金の男に接近して殴りかかった。不思議と正式な体術の型のようにも感じる。金の男は拳を作り、突き出す。と、
「バカヤロウ!」
瞬間的に視界が変わった。なぜかウィッグノリは中空にいる。そして金の男はデビロイドを殲滅した突きを放ち、空気を爆発させる。空振りだったのは確かだが、どうして難を逃れたのかを考えるまえに、ウィッグノリは抱えられていることが分かった。顔をあげると満身創痍のデビロイドがいた。
「嘘……ウィンチェスター?」
「ああ、魔装偽死って技だ。だが遅かったみてえだな……至近距離にいた三人は間に合わなかった」
見渡すとあとふたりのデビロイドがいた。リコイルレスとカルカノ。右腕は折れている。その突き出していた腕の距離のぶん、反応が遅れたのだろう。
ウィッグノリはよかったと微笑みを浮かべかけて中断した。上空に飛ばされそうなほどの強大な魔力が金の男から発せられたからだった。見る。
「儂の一撃から生き永らえたことは賞賛に値しよう。だが、意志と意志がぶつかりあう崇高な闘いの横槍となる行為は許さん」
「なんつう魔力だ……」
「逃げるぜウィッグ――ノリ!」
「逃さん……!」
金の男が初めて構えをとった。だらりとした右手をこちらに向ける。そして人差し指だけを伸ばし、告げる。
「イレースヴェノムカノン」
「――!」
――ウィンチェスターたちはフェイクスターを使おうとしたんだと思う。しかし金の男が技を放ったときにはすでに、暗黒の烈破が眼前にあった。驚異的な速さと脅威的な威力……すべてを消し去る尋常ならざる魔技。
ウィッグは決断した。消えるべきは消え、残るべきは残る、それが聖戦なのだから。ウィッグはノリから脱した。できるかどうかの成否の問題ではなかった。そうしたかった。そしてその想いは叶えると、自身の心に誓った。
ウィッグはノリとイレースヴェノムカノンのあいだに飛んだ。驚異的な速さに追いつけるはずはなかったし、脅威的な威力からノリを守れるとは思わなかったが……それでもやらなければならないと信じた。ウィッグは障壁を展開した。
「ウィッグーーーッ!」
ノリの視界を暗黒が埋めた。それに神の放つ白が混ざった。瞬時に理解した。ウィッグの捨て身を理解した。
ウィッグが離れるまえに遺した言葉が反響する。
<おぬしに我のすべてを託す。おぬしには『知』が残る。つまりはセンスだ。アニミスを操り、できることならば逃げろ……おぬしとの時間は楽しかった――>
「イヤだあぁぁぁぁぁぁ!」
障壁と魔技がぶつかり、暗黒と光明が混ざり、視界が消えた。衝撃波のようなものにノリは弾き飛ばされた。
近くでアニミスの消失を感じた。デビロイドは助からなかった。ウィッグが消えていくのが分かった。
ノリの意識も、同時に消えた――
続く
ソヨギに還りたい。それはつまるところ、ふたつに別たれた魂……マヨギとソヨミスの魂をふたたび結合し、一個のソヨギの魂に戻す方法があるということだろうと思う。
誰もなにも喋らないでいると、豆腐がほよよんとふたりの正面で浮遊した。
「ソヨギさまに還りたい……つまり、なにか方法があるということですね?」
「ソフラ。このふたりは慈愛を求めているのだぞ。慈愛は奇跡に匹敵する、誰も操ることなどできぬなにかだ。要するに方法はあるが、奇跡でも起きない限りどうしようもないんだろう?」
「違ぇねぇな。そもそも魂を粘土細工みてぇに、つけたり離したりできるわけがねぇ……ソヨギが戻るかどうかは奇跡頼みってぇわけだ」
「でもさ、魔導師の輝石を操ることができれば可能なんじゃないの? ガデニデグだって同じことしてるわけでしょ?」
「フィア、言うは易いのよ。そもそも魔導師の輝石をどう扱えばいいのかだって分からないのだから」
シンディラにたしなめられて、フィアはぐぅと呻いた。
「……だが、ソヨミスの言うように魔導師の輝石の奪取とガデニデグの撃破は果たさねばならないわ。ソヨギに戻せるのか、ガデニデグの真の目的がなんなのかは後回しでも構わない」
「俺とソヨミスさんとしては、みんながその気でいてくれるならそれでいいっす。ですよね?」
「そっすね。わたしたちにしても、なんでこんなにソヨギに還りたいのか分からないわけで。でも還りたいんすよね」
なんか言い方が軽いのが気になる。だがフィアは、確実にソヨギに戻す方法を見つけることは重要なことに感じていた。
それはティンダルスたちを救うことにも通じるからだ。忘れがちだがマヨギもソヨミスも、ソヨギだけの魂で成り立っているわけじゃない。ヒキュウ族の体を用い、そのヒキュウたちの魂と結合しているのだから。なので魂を別つ方法と、元に安定させる方法を探さなければ、魔導師の輝石の被害者たるティンダルスを救えない。
このふたりは口に出さないけど、そのティンダルスにされちゃったヒキュウ族の解放も、目的の一部なんじゃないかなと、そうフィアは思った。
「マヨギさま、ソヨミスさま、急ぎガデニデグの元へ行きましょう。ガデニデグの目的に不可欠な『時間』を、これ以上費やすわけにはいきません! わたしが必ずやおふたりをソヨギさまに戻してさしあげます!」
豆腐がふんっ! と鼻息(?)を荒らげた。
「安請け合いはよくないわよ?」
「安請け合いじゃありません! ソヨギさまに戻っていただかないとわたしが困るのです! なので全力でやらなければ!」
「どうして困るんでぇ」
「そ……それは……ソヨギさまに食べていただくために異世界に渡ってきたわけですし……」
「マヨギさまかソヨミスさまじゃダメなの?」
「わたしは純粋な人間用ですから。ティンダルスではチカラが発揮されないと思いますし……」
「偏見すか? あと俺たちはティンダルスですが、ほとんど人間のものと変わらないっすよ」
「そ……それでもソヨギさまでなくてはなりません! ソヨギさまでなくてはチカラが発揮されないのです! そうでしょう!? それに決めた!!」
「強引すね……」
「強引ではありません! それが定めなのです! そうね、そういうこと! 定めを遵守することも護神の定めですからね!」
なんだか豆腐は必死である。フィアはハテナ? となって、シンディラとビデガンに理由を聞いてみた。ふたりはなんでかニヤニヤしていた。返答は次の通りである。
「そうねぇ……ソフラなりのこだわり、かしらね」
「もう少しデカくなりゃ、そのこだわりのことも分かるようにならぁ」
む、まだ十歳のわたしでは分かりませんか。そうですか。なら、そのうち分かるようになるよ?
……とりあえず豆腐の興奮冷めやらぬうちに、異動は開始された。マヨギの魔力の炎がボッとすると、あの入り口が開く。しかし先ほどとは少し違い、みんなでほとんど同時に入り口を通った。マヨギいわく、時間の流れが違うから順番に出ると、あっちで待つことになるとかなんとか。難しいのがキライなフィアは、そうなんだとテキトーに返事した。
ぽんっとデッドプリズン内部に戻る――と、先ほどいた階層ではないようである。
「ここは七階っす。見ての通り」
どこをどう見れば七階だと分かるのか分からないが、やたら広々とした空間だった。車輪のついた鉄の箱たちがパラパラと並び、屋根があるのは彼らが立っている位置周辺で、デッドプリズンの半分くらいしか覆っていない。なんなら屋根が途切れているので、遠くに空も見えている。そこかしこに白線が引かれており、車輪つきの鉄の箱は白線に沿ってきちんと置かれていた。
だけど、フィア的にはそんな場合じゃなかった。
「ふむ、屋上か」
「駐車場って言うんですよ。あれはこっちの世界の乗り物っすね。あっちの屋根がないほうにはイベントのステージがあったりしますが」
「おいおい、異世界観光しに来たわけじゃねぇんだぜ?」
「ね……ねえ、みんな?」
みんな気づいていないのか?
「マヨギさま? ガデニデグがこんな隠れるところもない場所にいるのですか?」
「いえ、研究室に行くには順路をたどらないとダメなんすよ」
「なるほど、ダークフサルクを利用してか。姑息だな」
「しかも簡単じゃないうえに、俺とソヨミスさんにはやることがあります」
「やることだぁ?」
「ちょっとみんな! 気づいてないの!? この魔力に!」
フィアは抑えきれなくなった焦燥を吐き出していた。フィアの異様な顔つきを見て、アニミスメインの豆腐とシンディラとビデガンはポカンとしている。
「どうしたのフィア。魔力ならデッドプリズンについた時からずっとあるじゃない」
「違う! 全然違う! 研究室に行くのは簡単じゃないって言ったよねマヨギさま! これはそういうことなの!?」
「気づきましたかフィアさん。でも、ソヨミスさんと話しはしてあって、作戦はあります」
「おいおい……おめぇたちはいってぇ、なにを話してんだ?」
「気になりますので――シエルネットワークを利用しない、個人的な策敵魔法!」
豆腐がブォン……とアニミスを空間に展開させた。細かいところまでは分からないが、アニミスを放出してその手応えを感じとる……みたいなことだろう。
そして豆腐は驚愕した。
「これは……! まさかそんな!」
「なんなのだソフラ。なにを驚いている。誰か説明しろ」
「デッドプリズン付近一帯を覆っていた魔力は、ベアフロンティアやガデニデグの魔力ではなかったということです……行かなくては!」
「ダメっす。作戦聞いてからにしてください」
「ソヨミスさま! お皿を離してください! このままでは全滅してしまいます!」
「なんだってんだ? いまいちピンと来ねぇんだが。なに焦ってんだ豆腐の女神よぉ」
「まあ、焦りますよねフツー。倒した相手が生きてたなんて、戦場じゃよくある話だ(ワキザ氏)……て言ってもね」
「ウィッグさまが交戦中なのです! デビロイドもです! でも相手が悪すぎる!」
豆腐はソヨミスの手から無理矢理に離れた。その焦りようがただ事ではないと、シンディラもビデガンも表情を険しいものに変えた。その時――
ゴアガアァァァァァァァッ!!
超膨大な魔力が天空に放たれた。目に写るものすべてを灰塵に――いや、すべてを破壊し消去するだろう驚異の魔力である。
アニミスをメインとする彼らは、その時になにが起きたか……いまここでなにが起きていたのかを悟った。
開口したのはビデガン。彼はいましがた放たれた、絶対的強者の技を理解していた。
「イレースヴェノムカノン……!」
「ウィッグさまのアニミスが消えた……消えてしまった……」
「イレースヴェノムカノンだと? それはまさか……」
「そうですシンディラ! あの流浪の魔神――」
豆腐はアニミスを全力で開放した。
「デスケテスです!」
☆★☆★☆★☆★☆★☆
これはちょうど、フィアたちがマヨギによって異空間に入ったときのことである。
ウィッグノリの率いるリュニオン・ヴァーチャーズは、デッドプリズン目前で空中停滞していた。豆腐から送られてきたシエル送信と、なぜか出てこない魔空戦隊が気がかりだったからである。つまり勢いこんで飛んできたはいいが、なにをすればいいか迷っていたのだ。救出に来たはずだったが全員生きていて無事。加えて向こうからしかけてくる気配がない。まったく動けないでいた。
<しかしノリよ。アニミスの操作もだいぶ慣れてきたようだな。筋がよい>
<飛んだりなんだりはね。でもあなたがいないとなにもできないわけでしょ? そんなことよりどうしようかなぁ……>
とりあえず、生身で空を飛んだりとかしたことのないノリは、その風の強さに驚いたものだった。地上とは違い、上空では遮蔽物がないので、風の強さが尋常ではないのである。
ノリはノーメイクなことに感謝しながら涙を拭う。もしもアイラインとかしてたら、今ごろはパンダノリさんにでもなっていたことだろう。
地上にはところどころ破壊されたオフィスビルや家屋が並んでいる。人影はない……先の陽動で倒した地上派魔兵たちは魔精気体化しており、もぬけの殻のような町並みは、紛争地域の荒涼じみた景色のように広がっている。
そして目前というか眼下には、デッドプリズンが鎮座している。外壁にかかっている垂れ幕の感じや、魔物に壊されたのだろうバルーンがぶらさがっている感じも、ノリにとってはデパートというイメージの範疇である。
まあしかし、屋上から頭だけ出した大樹の姿は異様であった。なんだか元から生えていた大樹をくるむように、デパートを建造したみたいである。まあ、言い換えればそれ以外はまったくのデパートでしかない。
だが、異世界の者たちには禍々しい魔城にでも映っているようである。デッドプリズンまで飛行してきた際、ウィッグの緊張が増していくのを、統合された精神が如実に伝えてきていた。
<あれほど巨大な建造物が城ではないのか……>
<そうだよ? 大きな市場みたいなものかな。日常的に誰もが立ち寄る場所だよ>
逆にウィッグのほうはノリの無緊張を感じているようだ。そしてお互いにある程度の思考を読み取れるため、そんな会話を脳内で行っていたりする。
そんなことをしていると、待ちきれなくなったリコイルレスが背後から聞いてくる。
「なあノリさんよ。これからどうするか決まったか?」
「悩み中だよ。内部に問題ないなら予定してた強襲まではやることないし――かと言って我らもアニミス開放しながら飛んできたのだ。敵もこちらに気づいておるだろう――だからまあ、行くしかないかなって思うよね」
「いいんじゃないか? 屋上から入っちまおうぜ。そのためのブラゴ……案内役だろう?」
ウィンチェスターの提案である。ブラゴ……あのアニマリーの隊長は、ふたりのデビロイドに両手を持たれて浮遊していた。空が怖いのか、地上を見おろしながら「あわわわわ……」とか漏らしている。
「ん……だね。攻撃されないならこっちから行こう。それじゃ、降下開始~」
ウィッグノリが宣言するとリュニオン・ヴァーチャーズはデッドプリズンの屋上へとおりていった。
ヒュオォォォ……と風の鳴き声が耳元を吹き抜けていき、真下にあった屋上が少しずつ近づいていた。
余談なのだが、飛行するときは自分をクレーンで持ち上げている感覚。降下するときは命綱なして崖をおりる感覚――ノリの感覚ではそんな感じである。その感覚の根っこにあるのは、アニミスの制御である。クレーンで持ち上げている感覚を締めたり緩めたりして『上昇』を調節する。そうすることで落下しないまま降下をするのである。空気を徐々に抜いていく風船の要領と言ってもいいかもしれない。
<この短時間でようセラフらしくなったものだ。おぬしには言葉通りのセンスがあるようだ>
<それって霊級とかいうやつなのかな?>
<霊級は誰もが持ち、そして誰もが意図して発揮できぬものである>
なんだか答えになってないことを言われて、ノリは困惑した。
屋上に立つ。屋根があるスペースのほど近くである。そこはよくある駐車場だった。デッドプリズンの十分に広い敷地を利用した駐車場。
北側はオープンスペースになっていて、アイドルとか芸人が地方営業に使いそうなステージがある。南側は屋根つき駐車場。車の台数が少ないのは当たり前で、破滅王の異世界侵攻が夜中だったからだ。恐らくは客ではなく従業員の車たちだろう。
「このデパート来たことないんだよね。まあだいたいそこらじゅうにエスカレーターとかエレベーターの建物があるんだけど」
「えすかれーたー? えれべーたー?」
「えっとぉ……説明はまた今度ね。エレベーターは動かないだろうから、探すならエスカレーターか非常階段になるかな。では無難に屋根があるほうにレッツラゴー」
ノリの言った無難という言葉の意味は理解されてないようだったが、リュニオン・ヴァーチャーズは歩きだした。だいたいデパートはこんな感じ、という発想のない異世界人には通用しない言い方だったろう。
<しかしなんだ、この強烈な魔力は>
<ガデニデグのじゃないの? どっから漏れてるのか分からないけど……ブラゴちゃんなら分かるかも。聞いてみる?>
<いや、よい。場合によっては魔力の強弱により、感覚のマヒが引き起こされる。大きな魔力の弊害だな。アニミスと違い攻撃的なチカラであるがゆえの弊害だ。隊長クラスの魔力では正確な位置は分かるまい>
<人間も大きなケガをすると感覚がマヒして痛みを感じなくなったりするけど、それと似たようなことかな? まあでも、ボスはどうせなかにいるでしょ>
ソヨギのような思考をするノリである。屋根つき駐車場に入り、内部と直結する建物部分を目指す。道中、ブラゴに入り口を聞いてはみるが、そもそも彼らは六階以上には立ち入り禁止らしい。知らないと返されてしまう。
それなら一階から侵入したほうがよかったかな? と、ノリとウィッグが口論を始めかけたときだった。先頭を歩くノリの肩を、センティニアルが掴んだ。
「センちゃん? どうしたの?」
「……クラッグの奴がいねぇ」
「クラちゃんがいない……?」
ノリはなにをバカなと歩みを停めて、八人編成プラス一匹を眺めた。
「七人になってる……!」
「俺をいれたら八だぞ?」
「おめえはデビロイドじゃねえだろ。まさかクラッグの奴……はぐれたのか?」
この死角になるものがない駐車場で、それありえない。ノリがそう言うと、リュニオン・ヴァーチャーズに不穏な空気が漂い始めた。さらにノリはくぐもった声で言った。
「……探そう」
「いいのか?」
「あなたたちにはやらなきゃいけないことがあるでしょ。そのためには欠けちゃダメだよ。とりあえず降下地点に戻ろう」
……とは言え、降下地点は目と鼻の先であり、なんならここからでもよく見えた。クラッグが車の影に隠れているようなことはあるまい。そもそもオチャメなイタズラをしている場合じゃないのだ。
降下地点に戻りながら、そう言えばと旧友たちの体験した不思議なループ現象を思い出す。デッドプリズンまでの道程で、ウィッグから『迷いの森効果』なる特殊な呪いについて聞いていた。クラッグが消えたのはその罠にかかった可能性があった。
「おいクラッグ! どこにいるんだ!」
「冗談やってる場合じゃねえぞ!」
声をかけても返事はなく、見渡しても姿はない。クラッグは完全にいなくなってしまっていた。
<ノリよ。これは迷いの森効果ではない。それぞれが呪いにかかっているのだとしたら、先頭を歩いていた我々がまず対象になるのだ>
<迷いの森効果の仕業だったとしたら、消えるのはひとりじゃないってことだね。それならどういうこと?>
<間違いなく攻撃である!>
「ヴァーチャーズよ! アニミスを高揚させるのだ!」
すでにただならぬなにかを察知していたリュニオン・ヴァーチャーズはアニミスを高揚させ、臨戦体制を整えた。
それに応えるように強大な魔力が膨れ上がった。もともと周囲を包み込んでいた魔力は、膨れ上がることで圧縮されたような空気にすらなる。その息苦しさに耐えながら、ウィッグノリは上空を見上げた。魔力が膨大したことで、その存在が認識できた。
「何者だ……貴様!」
ウィッグノリの視線のさきに、男が浮いていた。
ふたりである。ひとりはこちらを見おろしている。巨躯と評していい限界まで鍛えられた上半身を包んでいるのは、金に輝く体毛だった。肩から腕、そして脇腹で輝く金の毛並みは獅子を思わせる。体毛はVの字に、胸から腹までは生えていなかった。そのおかげで殴っても跳ね返されそうな印象を覚えさせる分厚い筋肉が見てとれる。
髪は鮮やかな鬣のようだった。顔つきは人間のそれと大差ないが、屈強で引き締まり、瞳に宿る意志は絶対的な強者であることを、自ずから雄弁に語っていた。
下半身に身につけているのは士官以上の階級の証である、動きを邪魔しない膨らみのある麻のズボンである。主に戦闘時の体さばきを考慮し、破滅軍の誰かが考案したものだ。そのしたには頑強なブーツ。それにはこれといった意味はない。ズボンを留めているのは麻の紐だが、頭上の男は金に近い色で染め上げていた。
もうひとりは金の男に片腕で持たれ、だらりと全身を垂らしていた。恐らく意識はない。先刻まで被っていたテンガロンハットはない。彼はその体を重力に預け、抵抗なく吹く風にさらされている。
金の男は動かなくなったクラッグを放り捨てた。慌ててデビロイドが受け止める。
「てめえなにすんだ!」
「クラッグ! おいクラッグ!」
「護神の一派と見るが……たいした力も持たぬようだな……」
金の男はあからさまに嘆息した。期待を裏切られたと、まるでそう言っているように感じる。
「去るがいい。力なき有象無象に興味はない……ガデニデグめ、つまらぬ役目を与えてくれたものだ」
金の男は屋上におりてきた。ウィッグノリは身構えたが、金の男は着地すると背を向けた。そのまま立ち去るそぶりを見せる。
「クラッグ……クラッグ! くそ! 目を開けろてめえ!」
「なんだこれ……なんでクラッグは光ってんだ……? おいウィッグ、なんだよこれはぁ!」
ウィッグノリはクラッグを囲んでいるデビロイドたちに視線を変えた。確かに、クラッグの体が淡い輝きを放っていた。
「ブラゴよ。おぬしは逃げるのだ。できることならば破滅軍から抜け、正しき道を進め。敵ならば倒さねばならぬ……」
場のようすを呆然と眺めていたブラゴは、へっと笑った。
「俺はただベアフロンティアさまに反目してるガデニデグさまを許せないだけだ。だからあんたらに協力しただけだ。シンディラさまの命令だったしな……だからこれが終われば地上派魔兵の隊長に戻るぜ」
「ふむ……まあよい。我はおぬしのことが嫌いではないゆえ、戦場で会わぬことを祈ろう」
「……変わり者だな、あんた」
「人間と関わればおぬしにも分かる。特にソヨギという変わり者にな――行け」
ブラゴはあばよと言いながら屋根つき駐車場のほうに走っていった。
ウィッグノリはそれを見送ると、デビロイドたちの元に向かった。クラッグの光は全身にまで行き渡り、回帰が目前であることを示していた。
「ウィッグこれはなんなんだ!?」
「聖性回帰だ。魔性回帰と同様の現象だ……クラッグはデビロイドでありながら、善神さまにお還りになるのだ……」
「それはつまり死ぬってことか!」
「安直な説明をするならば――そうだ」
――ギリッ……!
それがなんの音だったのか、冷静に分析したのはウィッグノリだけだったろう。クラッグの死に対する悔やみ、怒り、無念――それらが拳を作らせ、同時に奥歯を噛ませた。その音は想いを明確にしただけではなく、それぞれの想いの統合を意味する!
『止めるなよ――ウィッグ!』
クラッグの肉体が、ピンクがかった霞へと変わると、デビロイドたちはアニミスを爆発させた。
「待つのだ!」
ドンッ――! ウィッグの制止もむなしく、完全に頭に血の昇ったデビロイドたちは止まらなかった。
デビロイドたちは金の男にフェイクスターで詰め寄った。肉迫する者が三人、頭上に展開したのが三人。それは三十メートルほど向こうで起こっていた。
<無茶をしおって! 相手がなんなのかも分からぬうちに!>
<みんなの行動を批難するまえに動きなよ!>
ノリもデビロイドたち同様の状態に陥ろうとしていた――キレかけている。
そのため精神バランスが崩れかけた。戦闘時にはウィッグが表層意識を支配するために、ノリの意識は脳の奥底に追いやられる。その場合肉体操作はウィッグに一任されているはずだが、勝手に走り出している。
デビロイドたちは一斉射撃の体勢である。六人で包囲し、金の男を捉えていた。魔装銃の銃口に青く白い光が集束していく。舌を巻くほどのアニミスではないものの、並の魔族ならばまず倒せる威力である。
金の男は足を止めていたが、リアクションは薄い。正面に立ちはだかったウィンチェスターとリコイルレスが邪魔だから止まった。そんな感じである。
「あばよクソ魔族……!」
誰かの声で光撃が放たれた。一瞬、目が眩むほどの光があふれた。
――一瞬、ウィッグの精神すら支配する不吉な感情が胸中を満たした。このとき、ウィッグはつぶさに理解した。ノリの内にある感情が、護神を凌駕しようとしていることを。
――一瞬、金の男が周囲を一瞥した。ただ気になった横道を見ただけ……そんな感じで。
――一瞬、デビロイドたちは我を忘れていたのだろう。仲間を殺された怒りに身を任せた。クラッグがなぜ死んだのかも考えなかった。自分たちが気づきもしなかった出来事を、金の男がどうやって実現させたのかを。
――そして一瞬で、すべてが終わった。金の男は両手の拳で空気を叩いた。それだけだった。
発せられたのは例えようのない轟音と衝撃である。それだけでデビロイドたちは堕ちた――耳孔や鼻孔から出血し、意識が昏倒したことは白眼を剥いたことで分かった。彼らが魔装銃を持つ右腕がひしゃげ、同時に彼らの体も歪んだ。一撃で肉体破壊が起きたことが分かった。その破壊力は凄まじく、近距離にいたデビロイドたちは弾け飛んだ。空中にいた三人はなす術なく空へと放り出された。抵抗なく投げ出され、そして彼らは、回帰した……。
ウィッグを支配したのは絶望だった――だがノリを支配したのは、悔やみや怒りや無念でも絶望でもなく、無駄にはしないという想いだった。その脚は躊躇を無視し、絶望を跳ねのけ、デビロイドたちの想いを果たすべく躍動した。
「ホーリーチェイン!」
ノリが腕を払うと、悪を祓う聖鎖が走った。ホーリーチェインの効果はふたつ。直線的に刺さるものと、巻きつくことで対象を裂くものだ。神技の性質上、どのような形でも魔力を削るが、通用するものでなければならない。効果の発揮まで時間のかかる『拘縛』よりも単純に『刺突』を選択したノリの判断は正しかった。
金の男が攻撃直後だったことをノリは見逃さなかったのだ。確実に当たるタイミングでの神技の使用だった。
しかしそれよりもノリが神技を放ったことに、ウィッグは驚いていた。自分の意識が支配しているのならいざ知らず、いまは完全にノリが支配している状態だ。本来ならばあり得ない。神技は神の技である。いくら精神統合された存在であるノリであっても、アニミスを操ることが可能になったとしても、絶対にあり得ない定めだった。
ホーリーチェインは金の男の背中に刺さる。しかし金の男はダメージを受けていない。追撃が必要だった。
「……なかなかよい選択だ。いくら儂でも攻撃した瞬間直後ならば、多少の隙も見せるというもの」
「破魔七罰鉱織神技!!」
(そこまで可能にするのか!?)
ふたたびウィッグは驚く。その技はホーリーチェインの二段階先の派生技だった。刺突や拘縛が成功した後での追撃で、より浄化を具体的に現すのである。ホーリーチェインを紡ぐ聖鎖は鉄属性に変化し、もっともポピュラーな形状へと変化する――それは刃である。
「あんたなんか切り裂かれちゃって!」
ガキィンッ! と鎚が鉄を打つ音がすると、聖鎖の環は刃に変化した。ノリが狙ったのは刺突により金の男の体内に入った環を刃化することだった。つまり内部からの浄化破壊!
「その意気やよし」
普通なら絶対に間に合わないタイミングで金の男は動いた。しかもその動きは、肩に払ったホコリを払うような簡単な動作だった。
それだけで、刃化した聖鎖はバリィンッ! と砕け散っていた。ウィッグは瞬間的に立ち止まろうとしたが、ノリはなおも金の男に詰め寄る。
<力量の違い、格の違いに気づかぬかノリよ!>
<そんなの二の次だよ!>
それは意志の強さだったのだろう。ノリは止まらない――ウィッグの、神の意志すらも凌駕した強い意志で、足を止めない。
「破魔滉飾神技!!」
「近接か」
金の男は向き直るだけで構えもしない。それだけ力量の差を分かっているからだ。
ノリの右手に現れたのは聖鎖の籠手。どちらかと言えば三段階目の追撃技。セブンリングスで倒しきれなかった相手を直接浄化させるためのものだ。その説明したことのない連撃を、ノリは把握している。
ノリは金の男に接近して殴りかかった。不思議と正式な体術の型のようにも感じる。金の男は拳を作り、突き出す。と、
「バカヤロウ!」
瞬間的に視界が変わった。なぜかウィッグノリは中空にいる。そして金の男はデビロイドを殲滅した突きを放ち、空気を爆発させる。空振りだったのは確かだが、どうして難を逃れたのかを考えるまえに、ウィッグノリは抱えられていることが分かった。顔をあげると満身創痍のデビロイドがいた。
「嘘……ウィンチェスター?」
「ああ、魔装偽死って技だ。だが遅かったみてえだな……至近距離にいた三人は間に合わなかった」
見渡すとあとふたりのデビロイドがいた。リコイルレスとカルカノ。右腕は折れている。その突き出していた腕の距離のぶん、反応が遅れたのだろう。
ウィッグノリはよかったと微笑みを浮かべかけて中断した。上空に飛ばされそうなほどの強大な魔力が金の男から発せられたからだった。見る。
「儂の一撃から生き永らえたことは賞賛に値しよう。だが、意志と意志がぶつかりあう崇高な闘いの横槍となる行為は許さん」
「なんつう魔力だ……」
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「逃さん……!」
金の男が初めて構えをとった。だらりとした右手をこちらに向ける。そして人差し指だけを伸ばし、告げる。
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「――!」
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ウィッグはノリとイレースヴェノムカノンのあいだに飛んだ。驚異的な速さに追いつけるはずはなかったし、脅威的な威力からノリを守れるとは思わなかったが……それでもやらなければならないと信じた。ウィッグは障壁を展開した。
「ウィッグーーーッ!」
ノリの視界を暗黒が埋めた。それに神の放つ白が混ざった。瞬時に理解した。ウィッグの捨て身を理解した。
ウィッグが離れるまえに遺した言葉が反響する。
<おぬしに我のすべてを託す。おぬしには『知』が残る。つまりはセンスだ。アニミスを操り、できることならば逃げろ……おぬしとの時間は楽しかった――>
「イヤだあぁぁぁぁぁぁ!」
障壁と魔技がぶつかり、暗黒と光明が混ざり、視界が消えた。衝撃波のようなものにノリは弾き飛ばされた。
近くでアニミスの消失を感じた。デビロイドは助からなかった。ウィッグが消えていくのが分かった。
ノリの意識も、同時に消えた――
続く
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