対立していたはずの王子様に愛されたようで

永遠

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10愛らしい

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10愛らしい

ヴァラドルが部屋は本を数冊持ってきて、部屋を出た後は1度も部屋へは戻ってきていない。
父……マルシャール家の王の仕事が全てヴァラドルに回ってきているのだ。
兄弟もおらず、たった1人の子息として全てをこなしているようだ。
よく昨日、今日と俺の相手をできたものだ、と思いつつもヴァラドルの持ってきた本に視線を落とす。



分野が全く異なっている本たち、ヴァラドルがどれだけのことを学んでいるのかがよく分かる。全てに対応できるほどの力をを身につけるため、若くしてこれらを全て読破したのだろう。
結果もちゃんとついてきている。マルシャール家の歴代にないほど、王家としての地位を保っている。勢力も拡大し、隣国に劣らずにいる。


俺も文字は読めても、1冊ですら丸々理解することは出来なかった。
努力、才能……そんな差が壁に感じる。


ヴァラドルが、「また、薬の効果が切れたらこれを飲め」とベッド横の机に薬を置いていった。1回、1錠だと何故か強く言われた。
今まで、ここまで発情するのはヒート以外では有り得なかった。αの……おそらくヴァラドルは普通のαよりも濃いフェロモンを持っている。それが近くにあるから、発情状態になるのだ、と言い聞かせる。






ーーーーーーーーーーーー


「……あぁ、そうだ。俺の番になる予定のΩだ。 お前に貰った抑制剤がほとんど効果をなしていない」


ヴァラドルは自室で大きめの黒い椅子に座り、深く腰をかけている。右手には紙束と、ペンを1本、左手に金色の受話器を持ち、話している。



「……水色の小さめの錠剤だ、ああ、複数飲んでいたそうだ。 過剰摂取の可能性が高い」


数枚の紙束の中には、様々な薬剤の詳細が事細かに書き連ねてある。その中に水色の小さな錠剤の写真や情報はなかった。


「隣の……ジェイラード家の息子だ。 そちらの方にしか出回っていない可能性もある、頼めるか」


そう言うと、相手の言葉に、フッと笑う。そして「期待しているぞ、ハーヴァ」と言った。

受話器を机の上にある本体に戻し、背中を椅子の背もたれに預け、全体重をかける。


「……やっと見つけたんだ、離すものか」


開いた左手で空を掴むように、握り締める。
そして、長く垂れている自分の髪の毛を両手でグッと持ち上げ、後ろへと回し、机に置いてあった黒ゴムで結っていく。
パサと置かれた紙束を1枚ずつペラペラと捲っていく、何度見返そうともクロウスの言う薬に当てはまるものはない。


「……ちっ、もう少し早く迎えるべきだったか」


ヴァラドルの考えは、至って単純だった。対談……いや交渉の際に、クロウスの父、母と対面しクロウスについての話をした時から薄々勘づいてはいた。
金の話を出せばすぐに食いついた。息子が隣国のαのもとへ行くのに、二つ返事で了承した。


そんな条件をつけた自分も自分だ、とは思ってはいたもののΩであれば、実の息子ですら簡単に手放せる両親に反吐が出そうだった。
努めて条件を互いに飲み込み、握手を交わした。恐らく、向こうはマルシャール家がジェイラード家を喰おうとしているのだと思っていたようだったが、そうではないことにホッとしているようだった。


実の父が身体が弱く、自分は恵まれてはいないと思っていたが、あんなにも簡単に息子を切り捨てる親よりはよっぽどマシだった。

国の様々な会社、資源、その他諸々の承諾書が自分の机に溜まっている。
一つ一つに目を通し、了承するか否か……全て自分の勝手でやっていた。現状、それでマルシャール家が立て直し、過去にないほどの財産、力を手に入れているのだから誰も口出しはしなかった。


カリカリとペンを走らせる。「ヴァラドル=マルシャール」、その名前を聞けば多くの者が、謙るか媚びるばかりだった。名前だけでなく、容姿も人並み以上に良いという自覚は少なからずあった。


それに刃向かうようにクロウスは、自分に怒りをぶつけてくる。仕方なしに連れてこられたと言わんばかりの顔で。


そのくせして、弱い自分が嫌いだという。本能に負け、嫌いな相手に欲を吐いたことを悔いていた。
先程の認めた口付けも快楽、欲情もあったが、強気で「お前がすると聞かないから、仕方なくしてやるだけだ」みたいな顔で「キスは許可する」なんて言う。


何処の美女を見ても、特に欲情しない自分がクロウスを相手に口付けをしただけで堪らなくなった。今朝のことも、ギリギリで止められた自分を褒めたいとすら思った。


本当はぐちゃぐちゃに泣かせて、よがらせて、種を腹の中に注ぎ、項を強く強く噛んでしまいたかった。
しかし、それではクロウスとの契りを破ることになる。自分が欲しいのは、Ωの身体や快楽ではない。クロウス=ジェイラード本人だ。

身も心も自分にしか委ねられないくらいに思ってくれなければ、納得できない。



最初は隣国のジェイラード家という王家の弱味を握れば、何かあった時に役立つと思っていただけだった。
だから、クロウスの存在を知った時に幸運だと思った。王家にしてΩの子を持つことはかなりの負担であり、代償がでかい。


時々、自分で隣国へと足を向いた。もちろん、マルシャール家の人物だとはバレないようにしていた。
ジェイラード家の参加する祭典へと何度も足を運んだ。
……しかし、クロウス=ジェイラードの姿を見ることは1度もなかった。いたのは、ユリウス=ジェイラードと両親のみでの参加だった。


その時、クロウスをΩの息子を弱味だと思った自分にどれだけ腹が立ったか。差別は好まない、強制も無理やりも吐き気がする。
そんな自分がクロウスのことを王家に生まれたΩを差別していたのだ。


城から1歩も外に出ずにいた。ごく稀にカーテンを自室と思われるところから開いていたが、使用人のような人が気づき、すぐに閉めた。
存在をバレないように、と隠すのに必死だったようだ。


実に愛らしい顔をしている男だと思った。しかし、女性のような顔立ちではなく、しっかりと男の顔だ。


異様に触れたくなった、欲しくなった。クロウス=ジェイラードは触られたらどんな顔をするか、愛らしい顔がどう変わるのか。確かめてみたかった。




……結果、愛らしさが増し、頭のてっぺんからつま先まで全てを赤く染めて子供のように泣きじゃくる始末だ。
子供のような泣き方なのに、その泣き顔にも自分の理性が切れそうになった。


匂いやフェロモンの影響もあったであろうが、そうじゃなくクロウスの声、息遣い、顔、身体……色気様々なものが本能を呼び起こした。
何とか自我を保ったが、クロウスの意見を聞けずに強行突破で性器に触った。


全てをお預けを喰らうつもりは毛頭なかったが、あの時は自分の欲に、本能に負けた気がしてならなかった。
それもあり、意識を戻したクロウスに何度か謝罪の言葉を言った。


「っ……はぁ……」


どうしようもなく大きく溜め息が出る。
理性を持つ自分は、クロウスが心を開くまでは手を出したくない、だが、身体が言うことを聞かない。


ギッと椅子が重いというように音をあげる。肘掛けに腕を置き、目を瞑って上を向く。


「……苦しいものだな」


ポツリとそう言っても返す者もいない。
しかし、そこでコンコンとノック音が聞こえる。使用人の声がした。

「ヴァラドル様、ジェイラード家より手紙が……」


「……ジェイラード家……?」


ジェイラードが今更、クロウスを返せとでも文を送ってきたか、と思い使用人からそれを受け取る。封を切ると、紙が1枚入っている。



手紙の封筒の名前部分に目をやる。送り主の名が記載されていた。



ーーーユリウス=ジェイラード


少し乾いた笑いが出る。親は軽々と受け入れたくせに、その親が愛してやまないだろうαの息子の方から文が届くとは……。


中の紙に細工がしてある様子もないため、カサリと折りたたんである紙を開いた。


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