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11愛しいから
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11愛しいから
ユリウス=ジェイラードから届いた手紙は、クロウスへ向けた手紙だった。たったの2日も経たないうちに手紙を寄越すとは……?
手紙を持ってきた使用人が「ジェイラード家の使用人より、直接渡されました」とわざわざ人を寄越してまで、何か言うべきことがあったのか。
さすがにそのままクロウスに渡すわけもなく、俺、ヴァラドル=マルシャールのもとに1回は渡ると考えているだろう。だから、変な内容ではないと思う。
黙読し、内容はほとんど、兄への心配の言葉だった。酷く扱われていないか、身体は平気かと達筆で、頭の良い言葉を並べてそんな内容がツラツラと書いてある。
……両親については一切書かれていなかった。両親も心配していると嘘でも書いているのか、と思ったがユリウス=ジェイラードはそんな、「どうでも良い」ことを書く人間ではないのだろう。
連れ戻したいとは書いていないが、こんな手紙を寄越すのだ。早く会いたい、帰ってきて欲しいという思いが込められているのだろう。
パタリと紙を閉じ、封筒の中に戻す。クロウスに見せるべきか迷った。見ても特に俺が困ることはないが、こんな心配する溺愛している弟の言葉にきっと心を痛めるだろう。
それに、俺も読んだ後にクロウスが帰りたいと懇願しても、帰してやる気はない。
机の上に手紙をそっと置き、昨日から今日にかけて溜まった資料、承諾書に手をつける。
……晩飯時に、本人に聞いてみるしかない。
「は?」
クロウスは飯を食べ終わり、手を合わせて「ご馳走様」と言った後に、俺が「お前の弟から手紙がきた」と言うと目を丸くした。
「……読みたいか」
「っ!俺宛てだろう? 読みたい!」
素直な返答にやはり、「読みたい」というか……と頭を悩ませる。手をこちらに差し出し、手紙をくれと無言の圧をかけてくる。
自分が金と交換で連れてこられたということを忘れているのか、俺が何を言っても怒らないと思っているのか……。
手紙を懐から取り出す。パァと少し顔が明るくなる。しかし、渡さずに上に腕をあげ、クロウスから手紙を遠ざけると、ムッとした顔をする。
「……なんだ、寄越せよ」
「それが人に頼む態度か……、クロウス。一つ言っておく、読んだとしてお前が弟のところへ帰りたいと言っても俺はそれを聞き入れることはしない。 それを承知で読むというなら、手紙を渡そう」
クロウスはそう言われて、手紙を取ろうと伸ばした手を引っ込める。俯き、何かを考えている。……良い内容では無さそうだな。
「……俺は、もうここから出れないのか……、弟、ユリウスには会うことはできないのか……」
顔を歪め、俺にそう問う。
クロウスにとって唯一、優しく兄として慕ってくれた弟に二度と会えないというのは酷なことだろう。
「……二度と……とは、言えないが、今は会わせることができない」
クロウスは黙り込む。出来るだけこいつの願いは叶えてやりたいとは思っている。
逃げても連れ戻す、これは本音でありながら少し強がりなのかもしれない。
「……いい、ユリウスの……弟の現状を知りたい。見せてくれ」
力任せに取ろうとするのではなく、俺の前に手を差し出す。俺は、ふぅと息をつき、手紙をクロウスの手の上に置く。ギュッと握りしめ、封を開け紙を取り出す。
食事前よりもあからさまに元気を失うクロウスを見て心を痛める。
好意を寄せて、寄せる思いが強くなる度にクロウスの嫌な方へと、望んでいない方へと話が進んでいく。もっと世界が、こんなαだΩだと声をあげる世界でなければ、クロウスの俺を見る目は変わっていたのかもしれない。
クロウスは愛しそうに弟の書く文字列眺め、薄ら笑う。
そんな手紙1枚で笑顔に出来る弟に嫉妬すらする自分が醜くて仕方ない。20を超えた男が、王家の王子だと言われる男が情けない。不甲斐ない。
何度も何度も文字列を読んでは、戻り、読んでは戻るの繰り返しをするクロウスの瞳。綺麗だ、青いキラキラと輝く瞳が揺れる。
「……皿を片付ける。手紙を読んでいるなり、風呂に入るなりしていろ。……また、就寝する時にはこちらに来る。抑制剤、飲むのを忘れるなよ」
愛、愛……ここに来てから1番幼い笑顔を見せる。それも、弟の手紙で。
クロウスをこの城で、部屋で縛り付け閉じ込めたとしてもこの顔が俺に向けられることはない。だから、一生をかけて愛する、お前がこちらを向いてくれるのなら、してやることはしてやりたい。
欲しいものは自分で手に入れてきた。学を身につけ、力を身につけ、父の代わりだと分かりながらも、努力をすれば結果は帰ってくる。
しかし、人の感情を動かすにはどうすれば良い……? クロウスを手に入れるのには、物理的にではなく、彼の全部が欲しい。
男の顔でありながら、何度か頬を撫でて気づいた。サラサラと肌触りが良く、心地良い。
また、クロウスの頬に腕が伸びる。触りたいのだと勝手に身体が動くのだ。それでも近づいてきた俺の腕に気づくと、クロウスはビクリと肩を震わせる。
「……っ、な、なんだ……」
「……………いや、なんでもない」
迎え入れる前から覚悟はしていた。家での居場所もほとんど与えられず、Ωだというだけで虐げられてきたのだ、αを恨もうと怖がろうと不思議は無い。
しかし、実際これまで触ることを何度も拒絶されてきた。分かっていながら傷ついている自分もいた。
腕を宙にあげ、クロウスの顔から手を遠ざける。愛らしいと口にしても、クロウスが俺を受け入れる訳では無い。良い生活環境を与えても俺に好意を向ける訳では無い。
「…………俺が、嫌か」
「……え」
手紙を折り畳んでいたクロウスは、とぼけた声で俺の小言に返事をする。
俺=αと捉えているクロウスが俺を嫌っていても不思議は無い。
朝も嫌がるこいつにしたことも忘れた訳じゃない。「キスは許す」なんて言っても、嫌っているのは変わりない。
「ヴァラ………」
「今日は仕事で寝るのが遅くなる、先に寝ていろ」
名前を呼び終わる前にそう言って部屋を出た。クロウスは「ああ……」とだけ返事をした。
最初から偉そうなことを言い、連れてきた。嫌がる行為を押さえつけてしてきた。約束は違えていない、それでもクロウスにすれば最悪としか思えない行為。
愛しいから、欲しいから、触りたいから……そんな理由でクロウスを傷つけ、心を遠ざける自分が嫌になり、部屋の前で自分に舌打ちをしてから自室へと戻る廊下を歩いた。
ユリウス=ジェイラードから届いた手紙は、クロウスへ向けた手紙だった。たったの2日も経たないうちに手紙を寄越すとは……?
手紙を持ってきた使用人が「ジェイラード家の使用人より、直接渡されました」とわざわざ人を寄越してまで、何か言うべきことがあったのか。
さすがにそのままクロウスに渡すわけもなく、俺、ヴァラドル=マルシャールのもとに1回は渡ると考えているだろう。だから、変な内容ではないと思う。
黙読し、内容はほとんど、兄への心配の言葉だった。酷く扱われていないか、身体は平気かと達筆で、頭の良い言葉を並べてそんな内容がツラツラと書いてある。
……両親については一切書かれていなかった。両親も心配していると嘘でも書いているのか、と思ったがユリウス=ジェイラードはそんな、「どうでも良い」ことを書く人間ではないのだろう。
連れ戻したいとは書いていないが、こんな手紙を寄越すのだ。早く会いたい、帰ってきて欲しいという思いが込められているのだろう。
パタリと紙を閉じ、封筒の中に戻す。クロウスに見せるべきか迷った。見ても特に俺が困ることはないが、こんな心配する溺愛している弟の言葉にきっと心を痛めるだろう。
それに、俺も読んだ後にクロウスが帰りたいと懇願しても、帰してやる気はない。
机の上に手紙をそっと置き、昨日から今日にかけて溜まった資料、承諾書に手をつける。
……晩飯時に、本人に聞いてみるしかない。
「は?」
クロウスは飯を食べ終わり、手を合わせて「ご馳走様」と言った後に、俺が「お前の弟から手紙がきた」と言うと目を丸くした。
「……読みたいか」
「っ!俺宛てだろう? 読みたい!」
素直な返答にやはり、「読みたい」というか……と頭を悩ませる。手をこちらに差し出し、手紙をくれと無言の圧をかけてくる。
自分が金と交換で連れてこられたということを忘れているのか、俺が何を言っても怒らないと思っているのか……。
手紙を懐から取り出す。パァと少し顔が明るくなる。しかし、渡さずに上に腕をあげ、クロウスから手紙を遠ざけると、ムッとした顔をする。
「……なんだ、寄越せよ」
「それが人に頼む態度か……、クロウス。一つ言っておく、読んだとしてお前が弟のところへ帰りたいと言っても俺はそれを聞き入れることはしない。 それを承知で読むというなら、手紙を渡そう」
クロウスはそう言われて、手紙を取ろうと伸ばした手を引っ込める。俯き、何かを考えている。……良い内容では無さそうだな。
「……俺は、もうここから出れないのか……、弟、ユリウスには会うことはできないのか……」
顔を歪め、俺にそう問う。
クロウスにとって唯一、優しく兄として慕ってくれた弟に二度と会えないというのは酷なことだろう。
「……二度と……とは、言えないが、今は会わせることができない」
クロウスは黙り込む。出来るだけこいつの願いは叶えてやりたいとは思っている。
逃げても連れ戻す、これは本音でありながら少し強がりなのかもしれない。
「……いい、ユリウスの……弟の現状を知りたい。見せてくれ」
力任せに取ろうとするのではなく、俺の前に手を差し出す。俺は、ふぅと息をつき、手紙をクロウスの手の上に置く。ギュッと握りしめ、封を開け紙を取り出す。
食事前よりもあからさまに元気を失うクロウスを見て心を痛める。
好意を寄せて、寄せる思いが強くなる度にクロウスの嫌な方へと、望んでいない方へと話が進んでいく。もっと世界が、こんなαだΩだと声をあげる世界でなければ、クロウスの俺を見る目は変わっていたのかもしれない。
クロウスは愛しそうに弟の書く文字列眺め、薄ら笑う。
そんな手紙1枚で笑顔に出来る弟に嫉妬すらする自分が醜くて仕方ない。20を超えた男が、王家の王子だと言われる男が情けない。不甲斐ない。
何度も何度も文字列を読んでは、戻り、読んでは戻るの繰り返しをするクロウスの瞳。綺麗だ、青いキラキラと輝く瞳が揺れる。
「……皿を片付ける。手紙を読んでいるなり、風呂に入るなりしていろ。……また、就寝する時にはこちらに来る。抑制剤、飲むのを忘れるなよ」
愛、愛……ここに来てから1番幼い笑顔を見せる。それも、弟の手紙で。
クロウスをこの城で、部屋で縛り付け閉じ込めたとしてもこの顔が俺に向けられることはない。だから、一生をかけて愛する、お前がこちらを向いてくれるのなら、してやることはしてやりたい。
欲しいものは自分で手に入れてきた。学を身につけ、力を身につけ、父の代わりだと分かりながらも、努力をすれば結果は帰ってくる。
しかし、人の感情を動かすにはどうすれば良い……? クロウスを手に入れるのには、物理的にではなく、彼の全部が欲しい。
男の顔でありながら、何度か頬を撫でて気づいた。サラサラと肌触りが良く、心地良い。
また、クロウスの頬に腕が伸びる。触りたいのだと勝手に身体が動くのだ。それでも近づいてきた俺の腕に気づくと、クロウスはビクリと肩を震わせる。
「……っ、な、なんだ……」
「……………いや、なんでもない」
迎え入れる前から覚悟はしていた。家での居場所もほとんど与えられず、Ωだというだけで虐げられてきたのだ、αを恨もうと怖がろうと不思議は無い。
しかし、実際これまで触ることを何度も拒絶されてきた。分かっていながら傷ついている自分もいた。
腕を宙にあげ、クロウスの顔から手を遠ざける。愛らしいと口にしても、クロウスが俺を受け入れる訳では無い。良い生活環境を与えても俺に好意を向ける訳では無い。
「…………俺が、嫌か」
「……え」
手紙を折り畳んでいたクロウスは、とぼけた声で俺の小言に返事をする。
俺=αと捉えているクロウスが俺を嫌っていても不思議は無い。
朝も嫌がるこいつにしたことも忘れた訳じゃない。「キスは許す」なんて言っても、嫌っているのは変わりない。
「ヴァラ………」
「今日は仕事で寝るのが遅くなる、先に寝ていろ」
名前を呼び終わる前にそう言って部屋を出た。クロウスは「ああ……」とだけ返事をした。
最初から偉そうなことを言い、連れてきた。嫌がる行為を押さえつけてしてきた。約束は違えていない、それでもクロウスにすれば最悪としか思えない行為。
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