対立していたはずの王子様に愛されたようで

永遠

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18好きになる理由

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18好きになる理由

「……ま、君も薄々気づいてるだろうけど、ヴァラドルはそんな奴だよ、発情したΩ相手を喰うような奴じゃない。 αだから、とかっていう理由では嫌いにならないでやってよ」


ハーヴァの話を聞いて、俺だけじゃない。 アイツは誰に対しても無理強いをする気はないんだ。


「……そんな、出来たやつに俺が好かれる理由が分からない……。 きっと、すぐに飽きられる、物珍しい王家のΩの息子に興味があるだけだ……」


「そんな奴ではないと思うけどね、出会ったときに言ってたある奴以外と番う気はないって言うの、多分クロウス君のことだと思うし、出会ったのは2年くらい前だったし、そんな興味本位で2年なんて思い続けないだろう」


暗い方向へ考える俺にハーヴァは、呑気にそんなことを言う。それでも、俺にはアイツにこれから先、ずっと好かれる自信がない。


ギュッと自分の手を握り締める。ハーヴァは少しため息を漏らし、俺の方を見ている。
その時、ガチャと部屋のドアが開き、ヴァラドルが立っていた。


「! 起きたのか、身体は平気か、辛いならもう少しここに居るが、そろそろ出れそうか」


本当に嫁を相手にするような気の使い様だな、まるで女になった気分だ。


「……大丈夫だ、もう出れる」


金で買ったのに、縛りつけようとはしない、命令もしない、本心が分からない。


しかし、俺は好きでは無いと答えたところで、こいつは俺を手放す気もないのだろう。
ここまで来たら、俺がヴァラドルを好きになるか、ヴァラドルが俺に飽きるかのどちらが先に来るか、だな。


飽きられたとして、俺には良い未来なんて残っていない。家に戻されるのか? あの家に……こんなふうに外にすら出られない、違法の薬まで使って俺の発情を止めていた両親のもとへ帰らなければならないのか……?


馬車がハーヴァの病院の前に止まっていた。ヴァラドルと共に来た時同様、2人で乗り込む。
ハーヴァは、「発情期の少し前には、クロウス君を預けてくれて構わないよ。 番うなら別だけどね」と少し笑いながら俺たちに言った。
ヴァラドルはそれに「分かった」とだけ答えた。

そのまま馬車はヴァラドルの城の方へと向かう。揺れ動く馬車の中で、俺はヴァラドルに話を持ちかけた。


「……お前は俺を手放す気はないんだよな」


「もちろんだ」


即答に、グッと息を飲む。自分の意思は曲げない、こいつの性格らしい。


「……もし、俺に飽きたら、元の家に戻すのか」


「お前に飽きることは無い」


質問の答えになってないぞ、もし、とつけたはずだ……、なんでその未来はまるでないみたいに言うんだ。


「…………分からないだろ、そうなったらどうするか聞いているんだ」


「そうなることはないから考えていない」


大人っぽいように落ち着いているくせに、言うことはまるで子供のようだな。


「……っ、きっと、俺に飽きるんだよ、容姿も普通で中身なんて劣等なΩだぞ、好かれ続ける要素なんてないだろ」


「……クロウス、ハーヴァに何か言われたのか」


少し怒り気味にヴァラドルが俺に聞いてくる。


「……昔話を聞いただけだ、顔の良いΩを助けた、と。それなのにソイツには手を出さなかった、と。……ソイツと俺の何が違う? 言ってしまえば、そちらの方が良かったんじゃないか? 俺は王家の人間だ、でも王家の主を継ぐわけじゃない! っ……、死ぬかもしれない薬まで飲まされていたんだっ……、俺は……、もう、誰も……っ信じたくない……」


ハーヴァのもとで違法ドラッグが投与、しかも過剰摂取していたことを知った時から堪えていた。邪魔にしかならない自分に自信もない、親は自分を殺そうとしていた、こいつを信じていいのか分からない。


信じれる男なんだ、ハーヴァの言う様に2年ほど前から俺を好いていてくれるなら、尚更一途で信頼し、受け入れるべきなのに……。



俺が俺を嫌いだから、ヴァラドルに好かれて良い男ではないから、こいつを跳ね除けたい。


「クロウス、俺は容姿やバースなんかでお前を好きになったわけでは……」


「……っ何で、俺はお前とは面識がないはずだ、祭典や式典に出席なんてしたことは1度だってない! お前なんて先日まで知らなかったっ!!」


何でコイツが俺を知っていて、好きになったのか、知らない。何処が気に入る?こちらに来ても悪態しかついてない俺が……




「……何度か、ジェイラード家の庭で弟と話しているお前を見かけた。 かなり前だ、父も身体が起きていた時の話だ。 王家同士、対立関係にあるとは言え、他国との論争の際には手を組むこともあった。 父に連れられ、ジェイラード家に訪れたこともある。俺は一人っ子だったからな、兄弟が羨ましく、兄であるお前が次の主であり、俺の対立関係になると疑わなかった。……それでも、敵とは思えない程に弟に接するお前が愛らしく思えた。その時以降、ジェイラード家に行く度お前ら兄弟を見ていた。 父が身体を休めてから、お前が次期主では無い可能性を知った。 確かに祭典でも見かけることがなく、おかしくは思っていたが、こういった場が苦手なのだろうと思っていた。しかし、対立関係にある家であることに変わりはなかったし、何度か偵察させに行くこともあった。その時仕入れた情報に、お前がΩであるということを知った」


そんな昔から俺たちのことを知っていたのか。 確かに庭にだけは出ることを許されていたし、父が他国の王家と対談する時位しかユリウスと遊ぶ時間がなかったから、ほとんどは庭で一緒にいた。


「……クロウスには悪いが、その時嬉しく思ってしまった。 Ωの息子がいることを理由にして、お前を手に入れようとした。 それでも、俺もジェイラード家に足を運んだ、その時にお前の家での扱いを知り、自分が嫌になった。 けれど、お前を手に入れたいという意思は曲がらなかった。 結果、金なんてものを使うことになってしまったが、それでもお前をあの家から早く連れ去りたかった。弟との仲を引き裂いてでも……」


ヴァラドルは凄く顰めた顔をし、辛そうに語る。俺をあの家に居させるのが、扱いを受けさせるのが嫌だったから……? 


「……悪いことをしたとは思っている、もっといい策があったのかもしれない、だがジェイラード家の当主がお前の父である以上、お前……Ωに対する扱いは変わることがないと思った、だからこうしてお前を…………」


「………………なん、で……、こんな俺を……」


俺はボタッと大粒の涙が1滴、目から落ちた。

身体目的に違いない、家の地位を安泰のために俺を使う気だ、それしか考えてこなかった。ヴァラドルが俺をそうまでして助けたいのは何故だ。


それを好きだからの一言で完結させてしまえば、もう言う言葉がない。
俺は急いで袖で目元を拭う。何度拭っても水滴がポタポタと落ちてくる。


「……っん、ぐ……俺は、お前と番になる気はサラサラないっ……! それは今も同じだっ……、だって、俺は……お前を……」


「…ああ……、今は好きでなくて良い。 何度も言っている。お前の気が許せるまで俺は我慢する、首筋を噛む気もない、襲う気もない」


今は番になる気はない、それは本心だ。俺はヴァラドルが好きでは無いから、そう言った行為をしたいとも思えないから。




けど、今はこいつの傍にいたいと少しは思ってしまった。
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