対立していたはずの王子様に愛されたようで

永遠

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19日常

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19日常

「弟に手紙の返事をしたい」


馬車の中で馬鹿らしく子供のように泣いてしまったことを悔いた。城に戻ってからというもの恥ずかしさに苛まれる。
晩飯を部屋に持ってきたヴァラドルと共に食べる最中に、そんな話を持ちかけてみた。


「……別に構わないが」


直ぐに了承してくれた。ヴァラドルは続けて「紙とペンを用意しよう」とまで言ってくれた。とりあえず身体に異常はないと伝えるべきか……いや、異常はあったのだが、コイツのせいではない。どちらかと言えばそちらにいる両親のせいである。


この事をユリウスに伝えるべきか迷う。伝えたらユリウスが両親に、父に歯向かうことが予想できる。そして、ユリウスの将来に壁が出来るのは御免だ。


「……なぁ、俺は日中何もせずにここの部屋にいるしかないのか、暇なんだが」


「本は渡しただろう」


確かに暇つぶしにと本は渡されたが……。家にいたときは本すら渡されず1日中部屋にこもり、出される飯を食べていたくらいだった。両親に我儘を言うこともできなかった。


ヴァラドルになら、少しくらい我儘を言っても良いのだろうか。この城から出せとかでなければ、了承してくれるような気がする。


「……家にいた時も、部屋に閉じこもり、何もすることがなかったんだ」


そう言うとヴァラドルの食事をする手が止まる。そして、ふぅと息をつく。


「……何がしたい……」


「! 何でも良い! 外に出たいとも言わん! そうだな…………」


俺は嬉しくなり、声が高くなる。それにヴァラドルは驚き、少しするとふっと笑った。ここまできてしまえば、やりたいことをヴァラドルに提案する方が良い。 父には何か言うことも話すことすらも許されなかった。


その時、ハーヴァの話を思い出す。


『ヴァラドルの飲んでる薬には眠気、疲労の副作用が……』



「……お前の、お前の仕事の手伝いをしたい」


そう言うとヴァラドルは固まった。俺の言った言葉の意味が理解できなかったのか、はたまた聞き間違いかと思ったのか。


「……やはり、言っても対立関係にある家の息子に仕事の手伝いをさせるのは嫌か?」


「……そ、んなことは言っていない。 だが、お前はそれでいいのか」


父は俺に家のことを何もさせてはくれなかったし、教えてもくれなかった。全てユリウスに教え込んでいたようだった。次期主の席から自分はもう外されているのだと実感した。


「……雑用でもなんでも良い、身体を動かしたい」


俺も街へ行きたいとかの願望はあるが、実際今の身体、抑制剤を服用しない状態で外に出歩く気にはならない。そもそもヴァラドルも許さないだろう。出来るだけαとの接触を避けたいが、部屋にこもって何もしないのも苦痛である。



「……お前だって、薬の副作用で眠気や疲労があるのだろう……、それに仕事も山ほどありそうだ。俺にできる簡単なことでも良ければ、やりたい……」



普通であれば、敵に情報を教えるようなものだ。雑用だろうとやらせたくはないだろう。


「……お前が望むなら、明日からはそうしよう」


一瞬で簡単に俺の望みならと、了承してしまうヴァラドルに絆されそうだ。
嫌がってくれれば、やはり敵国の息子だと思っているのだろうと、お前にとって自分がそういう存在であると思うことが出来たのに……、そうも簡単に頷けるのか。


「……クロウス、身体はどうだ。気持ちが悪いとか、熱っぽいとかはないか」


俺は無言を貫く。だって、先程ハーヴァのところで処理したばかりだぞ。気の所為だ、抑制剤を使わないと言っても、発情期ではないぞ。
その無言ですぐに察したように、ヴァラドルは席を立ち俺の座る椅子の横に立つ。
そして、頬に手が触れる。


「……熱いな、どうして言わない」


「……別に熱くない、ただ飯が温かいから顔が熱いだけだ」



何とも苦しい言い訳である。食事を始めてすぐに気づいた。身体に熱っぽさがある。ダルさや吐きそうといったそういった感じではないが、やけに熱いし、心臓がうるさい。


「……クロウス、立て。 そしてベッドに横たわれ」


「っ、な、何ともないって言っているだろう! それに、さっき、そのしたばかりだ……、気の所為だ」


腕を掴み、俺を立たせようとするヴァラドルに嫌だとただを捏ねる子供のように首を振る。
一日にそう何度も発情するわけが無い、普通じゃない。


「……っ今のお前の身体は普通とは違う……」


身体が普通ではないと言われ、少しショックを受けた。俺はヴァラドルを睨みつける。もちろん、ただの八つ当たりに過ぎない。ヴァラドルも失言したと思ったのか、顔を歪めた。


「……すまない、おかしな事を言ったな。 けど、身体が発情状態にあるお前を放って置くことはできない」


辛そうな顔をして謝るヴァラドルに何も返せない。
けれど、ヴァラドルとこういったことをしたくないのは、恥ずかしさや情けなさがあるからだけではない。


「……あいつに聞いた、Ωの発情状態を前にお前が手を出さないのはおかしい、と。それは普通のαですら難しいのに、それよりαの血が濃いお前が耐えれているのはおかしいって! 何で2度もお前は耐えられている……、きっとお前も苦しいだろう」


そう言うと俺の手を引くヴァラドルは、固まった。驚くように目を見開き、俺を見てくる。そして、ふはっと目元を片手で覆うようにして笑った。


「……そうか、クロウス。 お前、俺を心配しているのか」


俺は思考が停止する。ヴァラドルの言っている言葉の意味を1つずつゆっくりと理解しようとする。心配……? 誰が……誰を……………。



「…っ! んな、わけないだろう! 俺はただ、いつ自分が襲われるか分からないから嫌なだけであって、決してお前が我慢することで、身体に何かあるとかを心配したわけでは……っ!」



慌てて訂正するように怒りながらヴァラドルに大声で言う。違う、何度もすればこいつの忍耐も尽きて、俺を…………。………いや、こいつはそんな事しないな。分かってた。



「……いいっと、言っているだろう、自分で処理くらいする!」


「さっきので分かっただろう、欲を何度も吐き出さなければお前のは治まらない。 1人でできるわけないだろう。それに、ハーヴァにも手伝ってやれと言われた」


まだ少しくくっと笑いながらもヴァラドルは俺にそう言ってきた。それでも席から立とうとしない俺に、諦めがついたのか、引くのを辞めて席に座る俺の前に顔を持ってきた。


「…っな、んむぅ……」


唇が触れた。少し慣れてきた、キス如きでもう暴れたりはしないぞと少し強気な俺がいる。


「……っぷはぁ、ヴァラっ……ん、んんん!」


ヴァラドルはキスを繰り返しながら、腕から手を離し、背中と足の下に腕を通す。
一気にグイッと身体を持ち上げられる。驚き、俺は落ちるのが怖くなり、ヴァラドルの首の後ろに手を回す。


「……ベッド、行くぞ……」


発情状態になった俺からのフェロモンか匂いか……ヴァラドルも少し熱っぽく顔が赤くなり、息が荒くなる。


俺はもうダメだと諦め、小さく頷いて首に回した腕をギュッと強く締める。


ヴァラドルはまた、小さく笑い、持ち上げた俺にちゅっと軽くキスをした。
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