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第三章 動き出す歯車
第十九話
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『…し…こ…わ…こ…に…』
(だれ?誰かの呼ぶ声がする…)
シェリは訓練を終えた後、そのまま中庭で休憩をしていた。体を動かし疲れたせいか少しウトウトとしていた、そんな矢先の事であった
『い…こ…れ…に…』
微かににし聞こえないその声は弱々しく聞きとるのが困難であった
(…僕を呼んでるの?…君は誰…?)
『いと…こ…れは…こに…る』
苦しそうなその声にシェリはとても哀しくなってしまう。呼ぶ声の苦しみに感化し、シェリは自分の胸を強く掴む
「…はぁ…はぁ…」
目を閉じ苦しみに耐える
『シェリ…落ち着くのだ。感化されすぎてはならなぬ…』
ヴァルはシェリを落ち着かせるためにゆっくりと言葉を繋いだ
『ゆっくりと…聞こえる声に…耳を傾けるのだ』
ヴァルが言う通りに、一度深呼吸した後、聞こえてくる声に耳を澄ませる
『愛し子…我はここにいる…』
「…これは…これはいったいどういう事?」
はっきりと聞き取る事が出来た声は『自分はここにいる』という。
シェリは困惑したようにヴァルをみた
『声の主は見つけて欲しいのだな…そしてここに居る』
「僕は…どうすればいいの?」
今だ哀しそうな表情のシェリをヴァルは穏やかに見つめた
『シェリが思ったままに…感じたままに動くのがいいだろう』
シェリは一瞬考えた…そして声の主の事を思う。とても苦しそうに、そしてシェリには伝わって来たのだ
『誰か気づいて』…そう言っている事に
シェリには、この思いの辛さ…そして途方もなく長く感じる時間…
シェリはこの時間を耐える苦しさを知っている。だからこそ、もし自分に可能ならば『助けたい』そう思った
シェリはヴァルを見て真剣な表情で言った
「……僕に出来るなら…助けたい。手伝ってくれる…?」
「もちろんだ」
ーーーーー
「いったいどうすればいいんだ!精霊を解放する事が可能な方法は何かないのか!?」
「ジェラルド、あなたの気持ちは痛い程分かります。私だって同じ気持ちです。…ですが、方法が無いのです!少なくとも我々が出来る事は無いのです…!」
悔しそうな表情のユアン。『どうにかして精霊を助けたい』『精霊を縛った者が許せない』この気持ちが入り混ぜになる。そして思うのだ『何も出来ない自分が情けない』と
二人の悔しそうな顔にラシードは思った。自分は王族であるのにもかかわらず、何も出来ない…その力がない
自分の存在意義とはいったい何なのだと。考えるだけでは何も解決などしないのは分かっているが、行動に移せる考えすら浮かばない。
それはセオドールも同じだった。古の昔、初めてこの世界に『精霊の愛し子』が現れた…愛し子は強大な力を有し、精霊に愛されているからと傲慢になる事はなく、その力をもって多くの人々を救っていた。
そんな愛し子を愛するばかりに精霊が暴走し愛し子は『魔具』を作った。初代の愛し子が亡くなった後も愛し子は生まれたが初代の愛し子程強大な力を持った者はいなかったのだ
精霊王でも『魔具』を壊す事、無効にすることは出来ないだろう…神はこの世界に干渉しないだろう
唯一『解放』出来るとしたら『死』のみだ。
……セオドールは願わずにはいられなかった
『どうか救いの手を』と……
(だれ?誰かの呼ぶ声がする…)
シェリは訓練を終えた後、そのまま中庭で休憩をしていた。体を動かし疲れたせいか少しウトウトとしていた、そんな矢先の事であった
『い…こ…れ…に…』
微かににし聞こえないその声は弱々しく聞きとるのが困難であった
(…僕を呼んでるの?…君は誰…?)
『いと…こ…れは…こに…る』
苦しそうなその声にシェリはとても哀しくなってしまう。呼ぶ声の苦しみに感化し、シェリは自分の胸を強く掴む
「…はぁ…はぁ…」
目を閉じ苦しみに耐える
『シェリ…落ち着くのだ。感化されすぎてはならなぬ…』
ヴァルはシェリを落ち着かせるためにゆっくりと言葉を繋いだ
『ゆっくりと…聞こえる声に…耳を傾けるのだ』
ヴァルが言う通りに、一度深呼吸した後、聞こえてくる声に耳を澄ませる
『愛し子…我はここにいる…』
「…これは…これはいったいどういう事?」
はっきりと聞き取る事が出来た声は『自分はここにいる』という。
シェリは困惑したようにヴァルをみた
『声の主は見つけて欲しいのだな…そしてここに居る』
「僕は…どうすればいいの?」
今だ哀しそうな表情のシェリをヴァルは穏やかに見つめた
『シェリが思ったままに…感じたままに動くのがいいだろう』
シェリは一瞬考えた…そして声の主の事を思う。とても苦しそうに、そしてシェリには伝わって来たのだ
『誰か気づいて』…そう言っている事に
シェリには、この思いの辛さ…そして途方もなく長く感じる時間…
シェリはこの時間を耐える苦しさを知っている。だからこそ、もし自分に可能ならば『助けたい』そう思った
シェリはヴァルを見て真剣な表情で言った
「……僕に出来るなら…助けたい。手伝ってくれる…?」
「もちろんだ」
ーーーーー
「いったいどうすればいいんだ!精霊を解放する事が可能な方法は何かないのか!?」
「ジェラルド、あなたの気持ちは痛い程分かります。私だって同じ気持ちです。…ですが、方法が無いのです!少なくとも我々が出来る事は無いのです…!」
悔しそうな表情のユアン。『どうにかして精霊を助けたい』『精霊を縛った者が許せない』この気持ちが入り混ぜになる。そして思うのだ『何も出来ない自分が情けない』と
二人の悔しそうな顔にラシードは思った。自分は王族であるのにもかかわらず、何も出来ない…その力がない
自分の存在意義とはいったい何なのだと。考えるだけでは何も解決などしないのは分かっているが、行動に移せる考えすら浮かばない。
それはセオドールも同じだった。古の昔、初めてこの世界に『精霊の愛し子』が現れた…愛し子は強大な力を有し、精霊に愛されているからと傲慢になる事はなく、その力をもって多くの人々を救っていた。
そんな愛し子を愛するばかりに精霊が暴走し愛し子は『魔具』を作った。初代の愛し子が亡くなった後も愛し子は生まれたが初代の愛し子程強大な力を持った者はいなかったのだ
精霊王でも『魔具』を壊す事、無効にすることは出来ないだろう…神はこの世界に干渉しないだろう
唯一『解放』出来るとしたら『死』のみだ。
……セオドールは願わずにはいられなかった
『どうか救いの手を』と……
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