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第九章 東の国の白竜スノウ
130-フルルの選択
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「なんだこれ」
俺に続いてシディア王子まで同じ言葉を漏らした。
辺りは微妙な空気に包まれ、皆はただただ困惑している。
「ってことはなんだ……この騒ぎって、フルルが召喚スキルを失敗したのが発端ってこと?」
俺が訝しげにフルルに問いかけると、無表情ながら少し不満げに首を横に振った。
『僕が失敗なんて……するわけない。ぜんぶ……計画通り』
「なおさら悪いわっ!!」
だが、一番の被害者であるはずのスノウとノワイル両名はあっけらかんとしていて、騒いでいる俺だけが浮いている感がひどい。
「妙に落ち着いてるけど、スノウは何とも思わないのか?」
『うーん、召喚ってのはそういうモノだからねぇ』
『ガウガウ』
スノウがそう答えると、ノワイルまでウンウンと頷いた。
確かに俺がイフリートの「所有者」となって以降は術の発動を拒否されたことはないし、エレナも俺の言うことに必ず従ってしまうと言っていた。
召喚スキルには主に対し反抗しない仕組みが備わっている……と言われれば納得なのだけども、こうやって目の当たりにするとなんとも言えない気分だ。
「となると、さっきからノワイルがおとなしいのは……?」
『もう暴れなくて良し……と命令した』
ははは、こやつめ。
そもそも今回の騒ぎは、最初からずっと一緒に行動していれば何の問題もなく一発で終わっていただろう。
つまりは、フルルの暴挙に加えてサツキの思いつきやノワイルの封印などなど、あらゆるトラブルが重なった相乗効果によって、今回の状況に陥ってしまったわけだ。
「そういえばノワイルは一度スノウに倒されたはずなのに、どうしてまた現れたんだ???」
その質問に対しては、当のノワイルも首を傾げるばかり。
すると、フルルに代わってハルルが『ここは私が説明するっす!』と挙手した。
『私ら妖精は命が尽きるとマナの海に還っちゃうっすけど、召喚獣は眠りにつくだけというか、次に復帰するまではお休みっす』
『何度でも……蘇るさ』
「はぁ」
どうやらハルルが言うには、ノワイルだけでなくスノウも同じように、倒されても復活できるらしい。
しかし、ハルルの説明を聞いてもエレナは難しそうな顔をしたまま。
『だとしても神の意図が分かりませんね。どうしてそれを二年後の、しかもフロスト王国から遙か遠く離れたヤズマト国に蘇らせようとしたのでしょう……?』
『言われてみればそうっすね。ノワイルに暴れさせるのが目的なら、別にココである必要は無いと思うっす』
『しかも召喚者が……僕のまま。所有権が修正されてないのは……おかしい』
これまでも神が色々とやらかしてきたのを見てきたけれど、ホントその意図が全然読めない。
「神の考えを俺らが知ろうとするなんざおこがましい~……って話なのかもしれないけど、なんだか釈然としねえなぁ」
そんなわけで、結局のところ神の真意は分からないまま、今回の事件は幕を閉じた。
――と、思った矢先に思わぬところから声が響いた。
「おっ、おいっ! あそこに居る子、セシリィじゃないかっ!?」
声を上げたのは、女王の連れてきた騎士の一人。
それとともに皆の視線が彼女に集中し、皆がざわめき始めた。
「確か北の山のドラゴンに生贄に捧げられたって……」
「だけどそのドラゴンに王子様が乗ってたぞ!?」
「それじゃ、他の連中はどうなっちまったんだ???」
神託によって生贄として捧げられたはずのセシリィが生きていた!
しかも、当人が捧げる理由だと考えられていたホワイトドラゴンのスノウと共に現れたのだから、彼らが動揺するのは当然であろう。
いきなり注目されてしまい、シディア王子とセシリィが困惑していると……
「シディアッ!!」
それまで沈黙を守っていたリティス女王が、二人のもとへと駆け寄ってきた。
少しだけ安堵の表情を浮かべつつも、申し訳なさそうにセシリィの手を取ると「セシリィ……」と小さく彼女の名を呼んだ。
「お久しぶりです、リティス様」
「元気……だった?」
「……はい」
その姿はまるで久々に再会した親子のよう。
シディア王子が生贄となったセシリィを命がけで助けに行くほどの関係だったと考えると、女王とも親しい間柄だったのだろう。
事実、セシリィを目の当たりにした女王の目元には薄らと涙が浮かんでいる。
「……」
「……」
しばらく沈黙が続き、夜の平原には静かな風の音だけが響いている。
すると、ハルルとフルルがふよふよと飛んで俺の近くに寄ってきた。
『ねえねえカナタっち、今どういう状況か教えてくれるっすか?』
『興味……ある』
「えーっと……」
念のため周りに聞こえないよう小声で、セシリィをはじめ教会で暮らしていた孤児達が生贄として捧げられたことや、その人達が今も遠く離れた森で静かに暮らしていることを伝えた。
ふたりとも終始無言で、じっとセシリィと女王を見つめていたけれど、ちょうど一通り事情を伝え終わったタイミングで女王が再び口を開いた。
「他の者達は……?」
「……生きて、います。神父様も、お元気です」
セシリィがそう答えると、騎士達からワッと歓声が上がった。
北の山へと送られた者達が生還していたという事実に、女王も安堵した様子で目元の涙を拭う。
……だが、シディア王子とセシリィの顔に笑みは無い。
「それで、皆はどこに……?」
「……」
女王が問うものの、王子とセシリィは共に無言のまま。
生存者達は新たな集落で平穏に暮らしていて、ヤズマト国の介入を拒んでいる……。
無論、その事実を二人の口から告げることなんて出来るはずもない。
そこから再び沈黙が続くかと思われたその時、フルルが無表情のまま暗黒竜ノワイルに向かって語りかけた。
『ノワイル……命令変更。騎士達を……追い払え』
俺に続いてシディア王子まで同じ言葉を漏らした。
辺りは微妙な空気に包まれ、皆はただただ困惑している。
「ってことはなんだ……この騒ぎって、フルルが召喚スキルを失敗したのが発端ってこと?」
俺が訝しげにフルルに問いかけると、無表情ながら少し不満げに首を横に振った。
『僕が失敗なんて……するわけない。ぜんぶ……計画通り』
「なおさら悪いわっ!!」
だが、一番の被害者であるはずのスノウとノワイル両名はあっけらかんとしていて、騒いでいる俺だけが浮いている感がひどい。
「妙に落ち着いてるけど、スノウは何とも思わないのか?」
『うーん、召喚ってのはそういうモノだからねぇ』
『ガウガウ』
スノウがそう答えると、ノワイルまでウンウンと頷いた。
確かに俺がイフリートの「所有者」となって以降は術の発動を拒否されたことはないし、エレナも俺の言うことに必ず従ってしまうと言っていた。
召喚スキルには主に対し反抗しない仕組みが備わっている……と言われれば納得なのだけども、こうやって目の当たりにするとなんとも言えない気分だ。
「となると、さっきからノワイルがおとなしいのは……?」
『もう暴れなくて良し……と命令した』
ははは、こやつめ。
そもそも今回の騒ぎは、最初からずっと一緒に行動していれば何の問題もなく一発で終わっていただろう。
つまりは、フルルの暴挙に加えてサツキの思いつきやノワイルの封印などなど、あらゆるトラブルが重なった相乗効果によって、今回の状況に陥ってしまったわけだ。
「そういえばノワイルは一度スノウに倒されたはずなのに、どうしてまた現れたんだ???」
その質問に対しては、当のノワイルも首を傾げるばかり。
すると、フルルに代わってハルルが『ここは私が説明するっす!』と挙手した。
『私ら妖精は命が尽きるとマナの海に還っちゃうっすけど、召喚獣は眠りにつくだけというか、次に復帰するまではお休みっす』
『何度でも……蘇るさ』
「はぁ」
どうやらハルルが言うには、ノワイルだけでなくスノウも同じように、倒されても復活できるらしい。
しかし、ハルルの説明を聞いてもエレナは難しそうな顔をしたまま。
『だとしても神の意図が分かりませんね。どうしてそれを二年後の、しかもフロスト王国から遙か遠く離れたヤズマト国に蘇らせようとしたのでしょう……?』
『言われてみればそうっすね。ノワイルに暴れさせるのが目的なら、別にココである必要は無いと思うっす』
『しかも召喚者が……僕のまま。所有権が修正されてないのは……おかしい』
これまでも神が色々とやらかしてきたのを見てきたけれど、ホントその意図が全然読めない。
「神の考えを俺らが知ろうとするなんざおこがましい~……って話なのかもしれないけど、なんだか釈然としねえなぁ」
そんなわけで、結局のところ神の真意は分からないまま、今回の事件は幕を閉じた。
――と、思った矢先に思わぬところから声が響いた。
「おっ、おいっ! あそこに居る子、セシリィじゃないかっ!?」
声を上げたのは、女王の連れてきた騎士の一人。
それとともに皆の視線が彼女に集中し、皆がざわめき始めた。
「確か北の山のドラゴンに生贄に捧げられたって……」
「だけどそのドラゴンに王子様が乗ってたぞ!?」
「それじゃ、他の連中はどうなっちまったんだ???」
神託によって生贄として捧げられたはずのセシリィが生きていた!
しかも、当人が捧げる理由だと考えられていたホワイトドラゴンのスノウと共に現れたのだから、彼らが動揺するのは当然であろう。
いきなり注目されてしまい、シディア王子とセシリィが困惑していると……
「シディアッ!!」
それまで沈黙を守っていたリティス女王が、二人のもとへと駆け寄ってきた。
少しだけ安堵の表情を浮かべつつも、申し訳なさそうにセシリィの手を取ると「セシリィ……」と小さく彼女の名を呼んだ。
「お久しぶりです、リティス様」
「元気……だった?」
「……はい」
その姿はまるで久々に再会した親子のよう。
シディア王子が生贄となったセシリィを命がけで助けに行くほどの関係だったと考えると、女王とも親しい間柄だったのだろう。
事実、セシリィを目の当たりにした女王の目元には薄らと涙が浮かんでいる。
「……」
「……」
しばらく沈黙が続き、夜の平原には静かな風の音だけが響いている。
すると、ハルルとフルルがふよふよと飛んで俺の近くに寄ってきた。
『ねえねえカナタっち、今どういう状況か教えてくれるっすか?』
『興味……ある』
「えーっと……」
念のため周りに聞こえないよう小声で、セシリィをはじめ教会で暮らしていた孤児達が生贄として捧げられたことや、その人達が今も遠く離れた森で静かに暮らしていることを伝えた。
ふたりとも終始無言で、じっとセシリィと女王を見つめていたけれど、ちょうど一通り事情を伝え終わったタイミングで女王が再び口を開いた。
「他の者達は……?」
「……生きて、います。神父様も、お元気です」
セシリィがそう答えると、騎士達からワッと歓声が上がった。
北の山へと送られた者達が生還していたという事実に、女王も安堵した様子で目元の涙を拭う。
……だが、シディア王子とセシリィの顔に笑みは無い。
「それで、皆はどこに……?」
「……」
女王が問うものの、王子とセシリィは共に無言のまま。
生存者達は新たな集落で平穏に暮らしていて、ヤズマト国の介入を拒んでいる……。
無論、その事実を二人の口から告げることなんて出来るはずもない。
そこから再び沈黙が続くかと思われたその時、フルルが無表情のまま暗黒竜ノワイルに向かって語りかけた。
『ノワイル……命令変更。騎士達を……追い払え』
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