おひとよしシーフ(Lv99)による過去改変記

Imaha486

文字の大きさ
134 / 209
エクストラステージ ふぇありーていまーず2

134-ユピテルの許嫁

しおりを挟む
 名前を呼ばれ慌てて顔を上げると、息を切らせながら一人の女の子が駆け寄ってきた。
 彼女の名前はマール。
 オイラが物心つく前からずっと一緒だった女の子だ。

『……帰ってきたんだね』

『う、うん、ちょっとね』

『ちょっと……なの?』

 悲しそうに呟くマールの姿を見て、とても酷いことを言ってしまったような気がして、なんだか胸が苦しくなる。
 そんなオイラの心中を察してくれたのか、マールもハッとした顔になった。

『ご、ごめんねっ。なんだか困らせるコト言っちゃって』

『い、いや、オイラも黙って出て行っちゃったからさ……』

 ぎこちなく互いに謝りあって、それから向かい合うと――

『あはは、なんだかヘンだね~』

『だよねえ』

 どちらからともなく笑って、それから不思議と懐かしい気分になる。
 一年ほど前まではいつも一緒だったのに、今となっては何故かすごく昔のことのように思えるんだ。
 それからマールははてと首を傾げ、オイラの後ろへと目を向けた。

『そちらの方々は?』

 不思議そうに問いかけてきたマールの視線の先には、サツキちゃんの姿。
 どう説明したものか悩ましいけど、とりあえず紹介だけはしておこうか。

『えっと、この人はオイラを助けてくれたカナタに――』


「スゴいっ! これぞ幼なじみヒロインって感じっ!!」


 紹介しようとした矢先にいきなり割り込まれた。
 どうにか気を取り直し、改めて紹介しようと~~

『これぞ正妻オーラってヤツっす!!』

『リア充……死すべし』

 さらにフードから出てきたハルルとフルルに割り込まれた。
 というか、いったい何を言っているんだこの人達は?
 オイラが呆れ顔でツッコミを入れようかと思った瞬間、サツキちゃんがマールに駆け寄り両手を握る!

『わわっ?』

「あたしはサツキ! で、あなたがユピテルの許嫁いいなずけのマールちゃんだよねっ!」

『へ? あっ、はいっ。で、でもでも、それは小さい頃に大人達が勝手に言ってただけでっ……!』

 アワアワと答えるマールに対しサツキちゃんはキョトンと首を傾げると、自分よりも頭いっこ分ほど低い彼女の頭に手のひらをペシペシと乗せた。

「じゃあ何さ。まったくこれっぽっちもそういう感情・・・・・・は無いの?」

『えっ、いや、その、えーっと、これっぽっちもって言われると、それも違うような。で、でも……あのっ』

 じりじり迫るサツキちゃんの圧を受けて、マールは涙目でオロオロするばかり。
 オイラは脱力しつつもサツキちゃんを引き離し、マールをかばうように前に出た。

『あのさあ、この子は真面目だからそういう質問されると困っちゃうんだって。前も言ったけど、昔からずっと妹同然に思ってたんだからさ』

『!』

 そう何度も言ってるのにサツキちゃんったら、オイラが何度言っても聞いてくれなくて「エルフ村に行く!」の一点張り。
 実際に村に来てマールに会えば納得してくれるだろうと思ったけど、全然そんなこと無いんだから困っちゃうよ!
 オイラの心中を全く察していないであろうサツキちゃんは、なにやら「ブッブー」とかよくわからない声を発しながら指差してきた。

「ユピテル減点」

『なんでさっ!』

 減点というなら、ちゃんと自己紹介してない自分の方だろうに!
 しかし、ハルルとフルルも妙に冷めた顔でヤレヤレと手を振っていて意味がわからない。

『ごめんねマール。この人達は――』

『……』

『マール?』

『えっ! あっ、ごめんなさい。私、妖精さんを見たのは初めてで……ちょっと驚いちゃった、から……』

『そ、そうだよねっ。えーっと、この妖精達は双子の姉妹でハルルとフルルって言って、雪の~~』

 と、改めて彼女達を紹介しようと思ったその時――


『マール!!』


 村の向こうからマールを呼ぶ声が聞こえた。
 ……あまり聞きたくなかった声だけどさ。

『おじいちゃん……』

『村の連中が騒がしいと思ったが、なるほどそういうことか』

 そう言いながらマールの祖父……エルフ村の村長は、こちらを品定めするようにジロリと眺める。

姉弟きょうだい揃って村を出たかと思いきや、一年足らずでどちらも戻ってくるとはな』

『おじいちゃんっ!』

 挑発的な物言いに対しマールが抗議の声を上げるものの、孫娘に目を向けることなく村長は言葉を続ける。

『お前達の暮らしていた家は既に別の者が暮らしておる。村に滞在するならば、あそこの小屋を使うがいい』

 そう言って指差した先にあったのは、入り口近くの掘っ建て小屋。
 マールはそれも不服なのか続けて文句を言おうとしたけれど、それより先にサツキちゃんが何やら納得した様子でポンと手を打った。

「なるほど、意外と根は良いひと……いんや、良いエルフっぽいね!」

『なっ!?』

 唐突過ぎるサツキちゃんの言葉に、マールだけでなく村長も仰天。
 毎度のことだけど突拍子がなさすぎて訳が分からないよ。

『いや、サツキちゃん。今の流れで何がどうしてそうなるわけ?』

「だって、ユピテルに居て欲しくなかったら、今すぐ村から出て行けっ! とか言えば良いじゃん?」

『まあ確かにそうなんだけど……』

「この手のジジイってのは素直になれないんだって。どうせユピテルを生贄にしたのをメチャクチャ気にしてて、さっきのもその裏返しってパターンじゃないの?」

『ぐぬうっ!!』

 なんか村長が変なうめき声を上げた。
 突然の状況に、マールも目が点になっている。

『お、おじいちゃん……?』

『しっ、知らん知らんっ! 別に追放したわけでもなく、村から旅立っていった者が帰ってきただけで、それに対し出て行けなんぞ言えるわけなかろうがっ! 勝手にせいっ!!』

 なにやら捨て台詞らしき言葉を吐き捨てると、マールを連れて帰って行ってしまった。
 ……なにこれ???

「ツンデレジジイだ」

『ツンデレジジイっすね』

『ツンとデレの配分も……申し分ない』

『なんだかなぁ』

 そんなわけで、オイラの帰省一日目はなんだかよく分からないまま始まったのであった。
しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

通販で買った妖刀がガチだった ~試し斬りしたら空間が裂けて異世界に飛ばされた挙句、伝説の勇者だと勘違いされて困っています~

日之影ソラ
ファンタジー
ゲームや漫画が好きな大学生、宮本総司は、なんとなくネットサーフィンをしていると、アムゾンの購入サイトで妖刀が1000円で売っているのを見つけた。デザインは格好よく、どことなく惹かれるものを感じたから購入し、家に届いて試し切りをしたら……空間が斬れた!  斬れた空間に吸い込まれ、気がつけばそこは見たことがない異世界。勇者召喚の儀式最中だった王城に現れたことで、伝説の勇者が現れたと勘違いされてしまう。好待遇や周りの人の期待に流され、人違いだとは言えずにいたら、王女様に偽者だとバレてしまった。  偽物だったと世に知られたら死刑と脅され、死刑を免れるためには本当に魔王を倒して、勇者としての責任を果たすしかないと宣言される。 「偽者として死ぬか。本物の英雄になるか――どちらか選びなさい」  選択肢は一つしかない。死にたくない総司は嘘を本当にするため、伝説の勇者の名を騙る。

帰って来た勇者、現代の世界を引っ掻きまわす

黄昏人
ファンタジー
ハヤトは15歳、中学3年生の時に異世界に召喚され、7年の苦労の後、22歳にて魔族と魔王を滅ぼして日本に帰還した。帰還の際には、莫大な財宝を持たされ、さらに身につけた魔法を始めとする能力も保持できたが、マナの濃度の低い地球における能力は限定的なものであった。しかし、それでも圧倒的な体力と戦闘能力、限定的とは言え魔法能力は現代日本を、いや世界を大きく動かすのであった。 4年前に書いたものをリライトして載せてみます。

『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる

仙道
ファンタジー
 気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。  この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。  俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。  オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。  腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。  俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。  こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。 12/23 HOT男性向け1位

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

『ミッドナイトマート 〜異世界コンビニ、ただいま営業中〜』

KAORUwithAI
ファンタジー
深夜0時——街角の小さなコンビニ「ミッドナイトマート」は、異世界と繋がる扉を開く。 日中は普通の客でにぎわう店も、深夜を回ると鎧を着た騎士、魔族の姫、ドラゴンの化身、空飛ぶ商人など、“この世界の住人ではない者たち”が静かにレジへと並び始める。 アルバイト店員・斉藤レンは、バイト先が異世界と繋がっていることに戸惑いながらも、今日もレジに立つ。 「袋いりますか?」「ポイントカードお持ちですか?」——そう、それは異世界相手でも変わらない日常業務。 貯まるのは「ミッドナイトポイントカード(通称ナイポ)」。 集まるのは、どこか訳ありで、ちょっと不器用な異世界の住人たち。 そして、商品一つひとつに込められる、ささやかで温かな物語。 これは、世界の境界を越えて心を繋ぐ、コンビニ接客ファンタジー。 今夜は、どんなお客様が来店されるのでしょう? ※異世界食堂や異世界居酒屋「のぶ」とは 似て非なる物として見て下さい

処理中です...