おひとよしシーフ(Lv99)による過去改変記

Imaha486

文字の大きさ
133 / 209
エクストラステージ ふぇありーていまーず2

133-エルフ村への帰還

しおりを挟む
 時は少し戻って、カナタ達がヤズマト国へ到着してから数刻後。
 パーティを離脱したサツキたち一同は、フルルの空間転移によって聖王都プラテナへと帰還し、そのままエルフの村へと向かったのだが――

【聖王歴128年 赤の月 30日 昼前】

<聖王都プラテナ南部 エルフの森>

『ちょっ、ちょおおおおおーーーっ!?』

 オイラが悲鳴を上げるのを気にかけることなく、サツキちゃんはダッシュで森を駆け抜けてゆく。
 そして、オイラの眼前には目を回してひっくり返ったエルフ男性の姿。
 確か『ジューダさん』とかいう名前で本職は陶芸家だったはずだけど、いきなり彼が樹の上から『貴様達は何者だ!』と弓を構えてきたところに、フルルがいきなり先制攻撃をくらわせたんだ。

『大丈夫……魔法で眠らせただけ』

「それ、やる気ギンギンで眠れない夜とかに便利そうだね~」

『でもこれ睡眠じゃなくて昏倒っすから。気をつけないとベッドの角とかに頭ぶつけるっすよ』

 彼女達はのんきなコトを言っているけれども、自分達に向けて威嚇してきただけのエルフに対し、いきなり状態異常魔法をぶっ放すだなんて……。

『っていうか、オイラが事情を説明すれば普通に応対してくれたと思うんだけど、なんで攻撃するのさっ!?』

 その問いに対しフルルは首を横に振ると、オイラの頭をぽふぽふと叩きながらニヤリと笑った。

『いきなり威嚇してくる無礼者に……名乗る名などない』

『なんでやねん』

 何故か自慢げに鼻で笑うフルルを見てガクリと肩を落としつつ、オイラはジューダさんを背負ってズルズルと引きずりながら運ぶ。

『それ置いていかないんすね。真面目クンっすか?』

『さすがにね……』

 大の大人を抱えていくのは大変だけど、いつもサツキちゃんの荷物持ちをやって鍛えられていたおかげか、意外と苦では無い。
 それに、口では否定的なことを言っていたはずのハルルも、何故か運ぶのを手伝ってくれたので助かったよ|(身体は小さいのに意外と力があってビックリ!)。
 ……しかし、一年近くも離れていたはずなのに森の木々を見るだけで村までの道のりが分かるというのは、自分でもなんだか不思議だ。
 言葉で表現するのは難しいけれど『なんだか分かる』って感じかな。
 そこからしばらく進み、村まで目と鼻の先のところまで来たところで皆に向かって呼びかけた。

『ちょっとストップ!』

「お?」

 これまで先頭を歩いていたサツキちゃんを手で制しつつ前へ出る。

『このままサツキちゃんが先頭を行くと騒ぎになりそうだから、ここからはオイラが前を歩くよ』

「確かに。宿を襲撃された時みたいに、いきなり矢で攻撃されたら怖いもんね~」

 彼女が言っているのは、初めて皆と出会った日の夜のこと。
 エルフ村から送り込まれた刺客によって、宿へと猛毒の矢を撃ち込まれた時の話だ。
 皆を巻き込まないために逃げていたはずなのに命を狙われたのは、今思い出してもさすがにショックだったなぁ。
 ……と、思いきやフルルが何故やら『くくく』と怪しげに笑う。

『大丈夫……もし攻撃されたその時は……倍返しだ』

『なにが大丈夫か全然わかんないけど、次に会った人とは普通に対話させておくれよぅ』

 切実に懇願するものの、何故かフルルはニヤニヤと笑うばかり。
 このままじゃサツキちゃん達にエルフ村が滅ぼされてしまうんじゃないかと内心ハラハラしつつ、オイラを先頭に険しい森を進んで行くのであった……。


◇◇


<エルフの村>

 それから何事もなくエルフの村に到着したものの――

『む、お前達は何者――って、ユピテルじゃないかっ!? それにどうしてジューダを背負ってるんだ! 誰にやられたっ!!』

『ジューダがやられただとっ!?』

 予想はしていたけれど、村中が大騒ぎになってしまった。
 というか、どちらかというとオイラが戻ったこと以上に、ジューダさんがやられてしまったことの方が騒ぎの原因になってる気がする。
 だけどジューダさんが目を覚ませば真相が明らかになってしまうし、前もって正直に話しておくべきだろう。

『ゴメンよ、いきなり威嚇されたオイラの仲間がビックリして、やっつけちゃったんだ』

『なんだって!?』

 そして皆の視線はオイラの仲間……つまりサツキちゃんに向いた。

「へ? あたし???」

 皆に注目されて、サツキちゃんはキョトンとした様子。
 ハルルとフルルは……フードの中に隠れたまま黙っているけど、微妙に振動しているのので、どうやら笑いをこらえているっぽい。

『なんてこった……ジューダの奴、こんなちっちゃい女の子にやられちまったのか!』

『コイツ、前から運動は苦手って言ってたし、やっぱ、警備を当番制でやるのは無理なんじゃねーか。次は花屋のローナだろ?』

『ちゃんと賃金を出して、腕自慢の奴にやらせたほうが……』

 大人達が赤裸々な内部事情を語り始めちゃって、なんだか申し訳ないやら情けないやら。
 だけど前までロクに見張りなんて置かなかったのに、エルフ村も一年でずいぶんと様変わりしてしまったなぁ。
 その後も続々と村人が集まってきたものの『人間の女の子にやられたジューダさん』という一大事件のインパクトがあまりにも強すぎたためか、途中からオイラは完全スルー状態。
 ねえ、これ泣いていい? 泣いていいよね???
 と、内心さっさと帰りたい気持ちになっていたそのとき――


『ユピテルくんっ!』


 村の向こうから、オイラの名を呼ぶ優しい声が聞こえた。
しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~

シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。 主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。 追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。 さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。 疫病? これ飲めば治りますよ? これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

帰って来た勇者、現代の世界を引っ掻きまわす

黄昏人
ファンタジー
ハヤトは15歳、中学3年生の時に異世界に召喚され、7年の苦労の後、22歳にて魔族と魔王を滅ぼして日本に帰還した。帰還の際には、莫大な財宝を持たされ、さらに身につけた魔法を始めとする能力も保持できたが、マナの濃度の低い地球における能力は限定的なものであった。しかし、それでも圧倒的な体力と戦闘能力、限定的とは言え魔法能力は現代日本を、いや世界を大きく動かすのであった。 4年前に書いたものをリライトして載せてみます。

クラス転移したからクラスの奴に復讐します

wrath
ファンタジー
俺こと灞熾蘑 煌羈はクラスでいじめられていた。 ある日、突然クラスが光輝き俺のいる3年1組は異世界へと召喚されることになった。 だが、俺はそこへ転移する前に神様にお呼ばれし……。 クラスの奴らよりも強くなった俺はクラスの奴らに復讐します。 まだまだ未熟者なので誤字脱字が多いと思いますが長〜い目で見守ってください。 閑話の時系列がおかしいんじゃない?やこの漢字間違ってるよね?など、ところどころにおかしい点がありましたら気軽にコメントで教えてください。 追伸、 雫ストーリーを別で作りました。雫が亡くなる瞬間の心情や死んだ後の天国でのお話を書いてます。 気になった方は是非読んでみてください。

『ミッドナイトマート 〜異世界コンビニ、ただいま営業中〜』

KAORUwithAI
ファンタジー
深夜0時——街角の小さなコンビニ「ミッドナイトマート」は、異世界と繋がる扉を開く。 日中は普通の客でにぎわう店も、深夜を回ると鎧を着た騎士、魔族の姫、ドラゴンの化身、空飛ぶ商人など、“この世界の住人ではない者たち”が静かにレジへと並び始める。 アルバイト店員・斉藤レンは、バイト先が異世界と繋がっていることに戸惑いながらも、今日もレジに立つ。 「袋いりますか?」「ポイントカードお持ちですか?」——そう、それは異世界相手でも変わらない日常業務。 貯まるのは「ミッドナイトポイントカード(通称ナイポ)」。 集まるのは、どこか訳ありで、ちょっと不器用な異世界の住人たち。 そして、商品一つひとつに込められる、ささやかで温かな物語。 これは、世界の境界を越えて心を繋ぐ、コンビニ接客ファンタジー。 今夜は、どんなお客様が来店されるのでしょう? ※異世界食堂や異世界居酒屋「のぶ」とは 似て非なる物として見て下さい

処理中です...