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エクストラステージ ふぇありーていまーず2
133-エルフ村への帰還
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時は少し戻って、カナタ達がヤズマト国へ到着してから数刻後。
パーティを離脱したサツキたち一同は、フルルの空間転移によって聖王都プラテナへと帰還し、そのままエルフの村へと向かったのだが――
【聖王歴128年 赤の月 30日 昼前】
<聖王都プラテナ南部 エルフの森>
『ちょっ、ちょおおおおおーーーっ!?』
オイラが悲鳴を上げるのを気にかけることなく、サツキちゃんはダッシュで森を駆け抜けてゆく。
そして、オイラの眼前には目を回してひっくり返ったエルフ男性の姿。
確か『ジューダさん』とかいう名前で本職は陶芸家だったはずだけど、いきなり彼が樹の上から『貴様達は何者だ!』と弓を構えてきたところに、フルルがいきなり先制攻撃をくらわせたんだ。
『大丈夫……魔法で眠らせただけ』
「それ、やる気ギンギンで眠れない夜とかに便利そうだね~」
『でもこれ睡眠じゃなくて昏倒っすから。気をつけないとベッドの角とかに頭ぶつけるっすよ』
彼女達はのんきなコトを言っているけれども、自分達に向けて威嚇してきただけのエルフに対し、いきなり状態異常魔法をぶっ放すだなんて……。
『っていうか、オイラが事情を説明すれば普通に応対してくれたと思うんだけど、なんで攻撃するのさっ!?』
その問いに対しフルルは首を横に振ると、オイラの頭をぽふぽふと叩きながらニヤリと笑った。
『いきなり威嚇してくる無礼者に……名乗る名などない』
『なんでやねん』
何故か自慢げに鼻で笑うフルルを見てガクリと肩を落としつつ、オイラはジューダさんを背負ってズルズルと引きずりながら運ぶ。
『それ置いていかないんすね。真面目クンっすか?』
『さすがにね……』
大の大人を抱えていくのは大変だけど、いつもサツキちゃんの荷物持ちをやって鍛えられていたおかげか、意外と苦では無い。
それに、口では否定的なことを言っていたはずのハルルも、何故か運ぶのを手伝ってくれたので助かったよ|(身体は小さいのに意外と力があってビックリ!)。
……しかし、一年近くも離れていたはずなのに森の木々を見るだけで村までの道のりが分かるというのは、自分でもなんだか不思議だ。
言葉で表現するのは難しいけれど『なんだか分かる』って感じかな。
そこからしばらく進み、村まで目と鼻の先のところまで来たところで皆に向かって呼びかけた。
『ちょっとストップ!』
「お?」
これまで先頭を歩いていたサツキちゃんを手で制しつつ前へ出る。
『このままサツキちゃんが先頭を行くと騒ぎになりそうだから、ここからはオイラが前を歩くよ』
「確かに。宿を襲撃された時みたいに、いきなり矢で攻撃されたら怖いもんね~」
彼女が言っているのは、初めて皆と出会った日の夜のこと。
エルフ村から送り込まれた刺客によって、宿へと猛毒の矢を撃ち込まれた時の話だ。
皆を巻き込まないために逃げていたはずなのに命を狙われたのは、今思い出してもさすがにショックだったなぁ。
……と、思いきやフルルが何故やら『くくく』と怪しげに笑う。
『大丈夫……もし攻撃されたその時は……倍返しだ』
『なにが大丈夫か全然わかんないけど、次に会った人とは普通に対話させておくれよぅ』
切実に懇願するものの、何故かフルルはニヤニヤと笑うばかり。
このままじゃサツキちゃん達にエルフ村が滅ぼされてしまうんじゃないかと内心ハラハラしつつ、オイラを先頭に険しい森を進んで行くのであった……。
◇◇
<エルフの村>
それから何事もなくエルフの村に到着したものの――
『む、お前達は何者――って、ユピテルじゃないかっ!? それにどうしてジューダを背負ってるんだ! 誰にやられたっ!!』
『ジューダがやられただとっ!?』
予想はしていたけれど、村中が大騒ぎになってしまった。
というか、どちらかというとオイラが戻ったこと以上に、ジューダさんがやられてしまったことの方が騒ぎの原因になってる気がする。
だけどジューダさんが目を覚ませば真相が明らかになってしまうし、前もって正直に話しておくべきだろう。
『ゴメンよ、いきなり威嚇されたオイラの仲間がビックリして、やっつけちゃったんだ』
『なんだって!?』
そして皆の視線はオイラの仲間……つまりサツキちゃんに向いた。
「へ? あたし???」
皆に注目されて、サツキちゃんはキョトンとした様子。
ハルルとフルルは……フードの中に隠れたまま黙っているけど、微妙に振動しているのので、どうやら笑いをこらえているっぽい。
『なんてこった……ジューダの奴、こんなちっちゃい女の子にやられちまったのか!』
『コイツ、前から運動は苦手って言ってたし、やっぱ、警備を当番制でやるのは無理なんじゃねーか。次は花屋のローナだろ?』
『ちゃんと賃金を出して、腕自慢の奴にやらせたほうが……』
大人達が赤裸々な内部事情を語り始めちゃって、なんだか申し訳ないやら情けないやら。
だけど前までロクに見張りなんて置かなかったのに、エルフ村も一年でずいぶんと様変わりしてしまったなぁ。
その後も続々と村人が集まってきたものの『人間の女の子にやられたジューダさん』という一大事件のインパクトがあまりにも強すぎたためか、途中からオイラは完全スルー状態。
ねえ、これ泣いていい? 泣いていいよね???
と、内心さっさと帰りたい気持ちになっていたそのとき――
『ユピテルくんっ!』
村の向こうから、オイラの名を呼ぶ優しい声が聞こえた。
パーティを離脱したサツキたち一同は、フルルの空間転移によって聖王都プラテナへと帰還し、そのままエルフの村へと向かったのだが――
【聖王歴128年 赤の月 30日 昼前】
<聖王都プラテナ南部 エルフの森>
『ちょっ、ちょおおおおおーーーっ!?』
オイラが悲鳴を上げるのを気にかけることなく、サツキちゃんはダッシュで森を駆け抜けてゆく。
そして、オイラの眼前には目を回してひっくり返ったエルフ男性の姿。
確か『ジューダさん』とかいう名前で本職は陶芸家だったはずだけど、いきなり彼が樹の上から『貴様達は何者だ!』と弓を構えてきたところに、フルルがいきなり先制攻撃をくらわせたんだ。
『大丈夫……魔法で眠らせただけ』
「それ、やる気ギンギンで眠れない夜とかに便利そうだね~」
『でもこれ睡眠じゃなくて昏倒っすから。気をつけないとベッドの角とかに頭ぶつけるっすよ』
彼女達はのんきなコトを言っているけれども、自分達に向けて威嚇してきただけのエルフに対し、いきなり状態異常魔法をぶっ放すだなんて……。
『っていうか、オイラが事情を説明すれば普通に応対してくれたと思うんだけど、なんで攻撃するのさっ!?』
その問いに対しフルルは首を横に振ると、オイラの頭をぽふぽふと叩きながらニヤリと笑った。
『いきなり威嚇してくる無礼者に……名乗る名などない』
『なんでやねん』
何故か自慢げに鼻で笑うフルルを見てガクリと肩を落としつつ、オイラはジューダさんを背負ってズルズルと引きずりながら運ぶ。
『それ置いていかないんすね。真面目クンっすか?』
『さすがにね……』
大の大人を抱えていくのは大変だけど、いつもサツキちゃんの荷物持ちをやって鍛えられていたおかげか、意外と苦では無い。
それに、口では否定的なことを言っていたはずのハルルも、何故か運ぶのを手伝ってくれたので助かったよ|(身体は小さいのに意外と力があってビックリ!)。
……しかし、一年近くも離れていたはずなのに森の木々を見るだけで村までの道のりが分かるというのは、自分でもなんだか不思議だ。
言葉で表現するのは難しいけれど『なんだか分かる』って感じかな。
そこからしばらく進み、村まで目と鼻の先のところまで来たところで皆に向かって呼びかけた。
『ちょっとストップ!』
「お?」
これまで先頭を歩いていたサツキちゃんを手で制しつつ前へ出る。
『このままサツキちゃんが先頭を行くと騒ぎになりそうだから、ここからはオイラが前を歩くよ』
「確かに。宿を襲撃された時みたいに、いきなり矢で攻撃されたら怖いもんね~」
彼女が言っているのは、初めて皆と出会った日の夜のこと。
エルフ村から送り込まれた刺客によって、宿へと猛毒の矢を撃ち込まれた時の話だ。
皆を巻き込まないために逃げていたはずなのに命を狙われたのは、今思い出してもさすがにショックだったなぁ。
……と、思いきやフルルが何故やら『くくく』と怪しげに笑う。
『大丈夫……もし攻撃されたその時は……倍返しだ』
『なにが大丈夫か全然わかんないけど、次に会った人とは普通に対話させておくれよぅ』
切実に懇願するものの、何故かフルルはニヤニヤと笑うばかり。
このままじゃサツキちゃん達にエルフ村が滅ぼされてしまうんじゃないかと内心ハラハラしつつ、オイラを先頭に険しい森を進んで行くのであった……。
◇◇
<エルフの村>
それから何事もなくエルフの村に到着したものの――
『む、お前達は何者――って、ユピテルじゃないかっ!? それにどうしてジューダを背負ってるんだ! 誰にやられたっ!!』
『ジューダがやられただとっ!?』
予想はしていたけれど、村中が大騒ぎになってしまった。
というか、どちらかというとオイラが戻ったこと以上に、ジューダさんがやられてしまったことの方が騒ぎの原因になってる気がする。
だけどジューダさんが目を覚ませば真相が明らかになってしまうし、前もって正直に話しておくべきだろう。
『ゴメンよ、いきなり威嚇されたオイラの仲間がビックリして、やっつけちゃったんだ』
『なんだって!?』
そして皆の視線はオイラの仲間……つまりサツキちゃんに向いた。
「へ? あたし???」
皆に注目されて、サツキちゃんはキョトンとした様子。
ハルルとフルルは……フードの中に隠れたまま黙っているけど、微妙に振動しているのので、どうやら笑いをこらえているっぽい。
『なんてこった……ジューダの奴、こんなちっちゃい女の子にやられちまったのか!』
『コイツ、前から運動は苦手って言ってたし、やっぱ、警備を当番制でやるのは無理なんじゃねーか。次は花屋のローナだろ?』
『ちゃんと賃金を出して、腕自慢の奴にやらせたほうが……』
大人達が赤裸々な内部事情を語り始めちゃって、なんだか申し訳ないやら情けないやら。
だけど前までロクに見張りなんて置かなかったのに、エルフ村も一年でずいぶんと様変わりしてしまったなぁ。
その後も続々と村人が集まってきたものの『人間の女の子にやられたジューダさん』という一大事件のインパクトがあまりにも強すぎたためか、途中からオイラは完全スルー状態。
ねえ、これ泣いていい? 泣いていいよね???
と、内心さっさと帰りたい気持ちになっていたそのとき――
『ユピテルくんっ!』
村の向こうから、オイラの名を呼ぶ優しい声が聞こえた。
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