おひとよしシーフ(Lv99)による過去改変記

Imaha486

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最終章 愛しきひとを救う者カナタ

207-ニューゲーム

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【???】

<???>

「……って、あれ?」

 さっきまで【黒い塊】と戦っていたはずなのに、ふと気づけば真っ暗闇の中で突っ立っていた。

「ここ…………どこ???」

 辺りを見渡しても皆の姿は見えず。
 ここに居るのは自分一人だけである。
 まさか、シャロンの攻撃に続けてライトニングダガーを突き刺した後、最後っ屁を食らって消し飛ばされた?

「え、マジで……?」

 勢いに任せて「俺達の勝ちだ」とか言った覚えはあるのだけど、勝利宣言をしたところを吹っ飛ばされて死んだのだとすれば、恥ずかしすぎて目も当てられない。

「うあああああああ……」

『キミはそういうトコが抜けてるよねえ』

「うわっ!?」

 真っ暗闇で唐突に声をかけられたものだから驚いて声を上げてしまったけれど、俺はすぐに身構えて声の主に対峙たいじした。
 そして、俺の目の前に現れたのは――

「え、フルル……? って、でっけえな!!」

『セクハラ?』

「いや、特定部位を指してるわけじゃなくて!!」

 慌てて弁解するけれど、どう見たって俺の目の前にいる女性はフルルにしか見えない。
 しかしスケールが明らかにおかしいというか、普通に人間と同じくらいの背丈があるゆえに「でっけえ」と言っただけである。
 他意は無いんだよ、ホントに!!

『それにしても、勇者と一緒に旅をしていた平凡なシーフの男の子がキーパーソンだなんて、気づくのに時間がかかるわけだよね』

『まったくです……』

「!」

 フルルっぽい女性の後ろから現れたのは、キャシーの能力によって視た別の未来において、カネミツ達に世界の終わりを告げた人物だ。
 いや、人物ではないな。
 彼女の名は女神フローライト――聖王都中央教会の信者どころか、世界中の民が崇拝する【この世界の創造主】である。
 ……って、もしかして!!

「女神フローライトより立場が上って言ってたの、アンタか!!」

 俺がフルルっぽい女性を指差して叫ぶと、女神はギョッとした顔で手をバタバタした。

『ちょちょちょーーーい!! この方をアンタ呼ばわりとか、身の程知らずめーー! こちらにおわす御方をどなたと心得るーーっ!!』

「いや、そもそも、この方が誰だか知らねーんですけど!」

 ていうか、この神様なんだかセツナを彷彿とするなぁ。
 凜々しさというか、神々しさがぜんぜん足りない。

「で、このフルルっぽい女性はどちら様です?」

『フルルもどきさんって呼んでいいよ』

『あーうーりーあーさーまああああ~~~!!』

 どうやら、このフルルもどきさんはアウリアという名前らしい。
 女神フローライトをからかってニヤニヤと笑う姿はフルルらしくないけれど、どちらにせよコイツが重要な情報を握っているのは間違いない。
 当然、俺が知りたい情報はただ一つ。

「……エレナはどうなった?」

『ん~~~』

 アウリアは顎に手を当てて、何故か俺の斜め上あたりを眺めている。
 その仕草にどんな意味があるのかは分からないけれど、まるで何かを確認しているようにも見えた。

『水の精霊エレナは、キミの能力によって完全消去された』

「それは知ってる。俺が聞きたいのは、アンタが絶対に取り戻すと言った後のことだよ」

『そうだね』

 それに、ずっと解せないことがある。

「かなり記憶が曖昧なんだけど、グレーターデーモンを倒す直前に俺はエレナと再会した気がするんだ」

『!』
 
 俺が疑問を口にした途端、何故かフローライトが驚愕の表情でアウリアの方へと向いた。

『やっぱりリソース消費量が急激に膨らんだのは!』

『かもね~』

「?」

 さっきから、ふたりのやり取りの意味がちっともわからない。
 神様の意図を理解しようってのがおこがましいのかもしれないけれど、もう少し人間に歩み寄ってくれないものだろうか?
 と、俺が不満そうにしていたところ、アウリアが再びこちらへと顔を向けて口を開いた。

『キミがフォーマッターに刃を突き立てた途端にステータスが異常値を示し、同時にフォーマッターのプロセスがターミネートしたんだ』

「はあ」

 もはや、言葉の意味すらサッパリわからない件について。

『計算上はキミ達の負けで終わるはずだった。だけど、そうならなかった。ボク的には好ましくない言い回しではあるのだけど、愛が成し得た奇跡~……とでも言うべきかな』

「はい? 愛???」

 言葉の意味はわかるけど、やっぱり意図はわからない。

『まあ、ボクが出来ることは全てやったよ。後は……キミの頑張り次第さ』

「え、頑張り?」

『ぐっどらっく』

「ちょ、ちょっと――――……」










「ハッ!」

 目が覚めるとそこは……とても見慣れた部屋だった。
 安っぽい板張りのベッドで身体を起こした俺の目に入ったのは、父さんとの稽古に使う木剣にボロボロの鞄、それとサツキに押しつけられた色々な雑品。
 間違いなく我が家の二階の自室である。

「ふぅ……」

 なんだかとても長い夢を見ていたような気がする。
 だけど寝起きのせいか、ずいぶんと頭がぼんやりとして――

                    ドドドドドドッッッ!!!

「んんん?」

 何やら部屋の外から激しい足音が聞こえてきた。
 そしてドアの目の前でズザーッと音がするや否や……

 バーーーーンッ!!!

「うおわっ!?」

 すごい勢いでドアが開かれ、思わず声を上げてしまった。

「おにーちゃん! どうなってんのこれッ!!」

「寝起き早々にいきなりノックもせず、兄の部屋のドアを豪快に開けるお前こそどうなってんだよ」

「いやいやいやいや! だって、さっきまで聖王都にいたじゃん!!」

「はあ?」

 いつも破天荒な我が妹であるが、今日はいつにも増してぶっ飛んでいる。

「ハルルとフルルも居ないし、お父さんもお母さんも普通だし、意味わかんない!」

「俺としても意味わかんない」

 すっごい睨まれました。

「おにーちゃん、それ本気で言ってる? 本気で忘れちゃったの?」

「忘れたって、お前と約束した覚え無いんだけど」

 俺の答えを聞くや否や、今まで見たことないくらい悔しそうな顔で奥歯をギリリと噛み締めながら、顔を伏せて右手を振り上げた。

「もういい! さっさと起きるべしべしべしッ!!!」

「べしべし言いながら殴んな! つーか、引っ張んなっ!!」

 訳の分からないまま妹に手を引かれながら階段を降りてゆくと、母さんがちょうど食卓に朝食を並べ終えたところだった。

「おはよう父さん、母さん」

「うむ」

「おはようカナタくん」

 この歳になってくん付け・・・・は気恥ずかしいのだけど、前に「そろそろ呼び方を……」と伝えたところ、さらっと拒否されたので今もこの呼び方のままである。
 それから皆が席についたタイミングで、父さんが口を開いた。

「急な話だが、今日から聖王都に行くことになった」

「っ!」

 何故かサツキがガタッと席から立ち上がり、また座った。
 なんなんだコイツは。
 と思っていたら、父さんの話に割り込む形でサツキが挙手した。

「理由は?」

「ん? ああ、どうやら百年以上も続いた戦争が終わったらしい。それも聖王都と帝国だけでなく、世界各地の王族、さらには魔王までも和平調印するらしく、警備の人手がまったく足りないんだそうだ」

「ッッッッ!!!!!!!!!」

 さっきからサツキの反応がなんかすっごい!
 いや、俺も歴史が変わる瞬間を実際に目の当たりにして内心メチャクチャ驚いてるんだけど、妹が挙動不審すぎてそっちの方が気になるよ。
 そろそろ苦言の一つでも吐こうと思った直後、いきなりサツキがテーブルに両手をバンと打ち付けて叫んだ。

「おとーさん! あたしも連れてって!!!」

「はあ!?!?」

 俺の苦言は代わりに素っ頓狂な声になってしまった。

「いや、お前マジ何言い出してんの?」

「わかってる! けれど、これは一生のお願い!! マジだから!! 一生おこづかいゼロでいいからッ!!! だから……だからああ……!!」

 どうしてコイツがここまで必死になるのか全く分からないけれど、わんわんと泣く姿はどう見ても冗談とは思えない。
 さすがに父さんも折れたのか、少し迷いながらも肩をがくりと落として応えた。

「わかった……サツキの同伴を認めよう」

「ホント!?」

「だが、あくまで仕事のために行くのであって、観光目的ではないからな」

「うんうんっ!!!」

 そんなわけで、トントン拍子でサツキの聖王都への冒険が決定してしまった。
 それから我が妹は、こちらを見てジーーー……と口で言っていた。

「いや、俺は行かねーぞ」

「…………」

 これまで聖王都に何度か行ったことはあるけれど、とにかく人混みがヤバいんだ。
 あんなの、目的も無しに俺らみたいな田舎者が行く街じゃないんだよなあ。
 ところがサツキは先ほどまでとは一転、即答した俺に対し、まるで汚いモノを見るような目でチラリとこちらを見てから、不機嫌そうに黒パンをかじっていた。
 一体、なんなんだよ……。

・・

 そんなわけで朝食が終わるや否や、手早く準備を終えた父さんとサツキは旅の荷物をまとめて席を立った。

「それでは、行ってくる」

「はい、いってらっしゃいな。サツキも、気をつけてね」

「うん」

 そして、サツキは母さんに返事をすると俺の方へ駆け寄り~……っておい!?

「どっせいッ!!」

「ぎゃあああっ!!」

 いきなりのドロップキックをくらった俺は、ひとたまりも無く横転。

「ふんっ、そのまま寝っ転がってるがいいさ! 負け犬めッ!!」

 そのままサツキはきびすを返し、出ていってしまった。

「いや、マジなんなん……」

 意外と痛くなかった自分に驚きだけど、なんだか気分が悪くなってきた。

「ごめん母さん、ちょっと上で休むわ」

「あらあら……」

 心配そうに見つめる母さんを尻目にいそいそと二階へ上がり、再びボロいベッドに寝転がる――ん?

「ケツいってえ……」

 ズボンの後ろポケットに硬い異物感を覚えた俺は再び立ち上がり、ポケットに入っている何か・・を手に取った。
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