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ダメ!
今のナシ!!
私が好きなのは遼平くんなのに。
このままでは、まんまと晴臣に全てを奪われかねない。
どこまで本気か知らないけど、晴臣に考え直してもらわなければ。
「だ、だとしても、何で急に…今までだって我慢してたんだから、これからだって…」
そうすれば私も今までどおり遼平くんを思っていられる。
遼平くんを思い続けている限り、私は誰のものにもならない。
晴臣とも、これまでどおり幼馴染でいられる。
変わらない関係性を願うのは私のワガママなのだろうか。
「これ以上は無理だ」
「だから、何でよ?」
「千歳は気付いてないかもしれないけど…」
珍しく、晴臣が何かを言いかけて口籠った。
「何?」
「千歳は昔から馬鹿みたいにモテるんだよ。あの男には相手にされないとしても、目の前で別の男に掻っ攫われるなんて御免だから」
「そんなことあるわけないじゃない!!」
「じゃあeternoに入ってから何回食事に誘われたか言ってみろよ?」
「え?20回くらい?」
「バーカ。43回だよ」
「何でそんなこと晴臣が知ってるのよ!?」
「人事のネットワーク舐めるなよ」
さっきのとは違う、得体の知れない悪寒が背中を駆け上がる。
「学生時代は学校も学部もゼミもサークルも同じだったから全部排除できてたけど、会社でまでは無理だからな。割と規模大きいし」
本気で悔しそうな顔をする晴臣は、私の知っている晴臣とは別人だった。
「とにかく!!」
あからさまに引いている私に気づいた晴臣が、変な空気を追い払うかのように咳払いをしてみせたけれど。
「もうまどろっこしいことは止める。朝も帰りも販促部に迎えに行くから」
その意味は全く無くて、堂々とストーカー宣言して来るなんて、驚きを通り越してずっこけそうになる。
「何で!?ヤだ!!」
「ヤだじゃない!離れてたら千歳を守れないだろう?あ、昼休みも危ないんだったな。迎えに行く」
「わ、私の中で晴臣が一番危ない気がするんですけど!!」
ピシャリと跳ね返すと、晴臣はガックリと項垂れた。
私のためを思って言ってくれたのに、ちょっと言い過ぎたかもしれない。
「晴臣?」
ちょんちょん、と肩を叩くと俯いたまま返事が聞こえてきた。
「…そうだ。自分でも自覚してる。でもー」
予想外の肯定。
肩に置いた手を私が引っ込めるより早く、晴臣が掴み、パッと顔を上げた。
「俺のこと危ないって思ってくれたってことは、千歳の中の俺のポジション、ちょっと変わったってことだよな?」
私が長年見てきた中で一番嬉しそうな表情で、私の手の甲にキスをする晴臣に、思わず見惚れていたら、しっかり釘を刺されてしまった。
「俺が暴走する前に、一秒でも早く俺のこと好きになれ」
ストーカーなのに。
脅されてるのに。
不覚にもほんのちょっとときめいてしまったなんて言ったら、何をされるか分からないので、黙って手を引っ込めた。
今のナシ!!
私が好きなのは遼平くんなのに。
このままでは、まんまと晴臣に全てを奪われかねない。
どこまで本気か知らないけど、晴臣に考え直してもらわなければ。
「だ、だとしても、何で急に…今までだって我慢してたんだから、これからだって…」
そうすれば私も今までどおり遼平くんを思っていられる。
遼平くんを思い続けている限り、私は誰のものにもならない。
晴臣とも、これまでどおり幼馴染でいられる。
変わらない関係性を願うのは私のワガママなのだろうか。
「これ以上は無理だ」
「だから、何でよ?」
「千歳は気付いてないかもしれないけど…」
珍しく、晴臣が何かを言いかけて口籠った。
「何?」
「千歳は昔から馬鹿みたいにモテるんだよ。あの男には相手にされないとしても、目の前で別の男に掻っ攫われるなんて御免だから」
「そんなことあるわけないじゃない!!」
「じゃあeternoに入ってから何回食事に誘われたか言ってみろよ?」
「え?20回くらい?」
「バーカ。43回だよ」
「何でそんなこと晴臣が知ってるのよ!?」
「人事のネットワーク舐めるなよ」
さっきのとは違う、得体の知れない悪寒が背中を駆け上がる。
「学生時代は学校も学部もゼミもサークルも同じだったから全部排除できてたけど、会社でまでは無理だからな。割と規模大きいし」
本気で悔しそうな顔をする晴臣は、私の知っている晴臣とは別人だった。
「とにかく!!」
あからさまに引いている私に気づいた晴臣が、変な空気を追い払うかのように咳払いをしてみせたけれど。
「もうまどろっこしいことは止める。朝も帰りも販促部に迎えに行くから」
その意味は全く無くて、堂々とストーカー宣言して来るなんて、驚きを通り越してずっこけそうになる。
「何で!?ヤだ!!」
「ヤだじゃない!離れてたら千歳を守れないだろう?あ、昼休みも危ないんだったな。迎えに行く」
「わ、私の中で晴臣が一番危ない気がするんですけど!!」
ピシャリと跳ね返すと、晴臣はガックリと項垂れた。
私のためを思って言ってくれたのに、ちょっと言い過ぎたかもしれない。
「晴臣?」
ちょんちょん、と肩を叩くと俯いたまま返事が聞こえてきた。
「…そうだ。自分でも自覚してる。でもー」
予想外の肯定。
肩に置いた手を私が引っ込めるより早く、晴臣が掴み、パッと顔を上げた。
「俺のこと危ないって思ってくれたってことは、千歳の中の俺のポジション、ちょっと変わったってことだよな?」
私が長年見てきた中で一番嬉しそうな表情で、私の手の甲にキスをする晴臣に、思わず見惚れていたら、しっかり釘を刺されてしまった。
「俺が暴走する前に、一秒でも早く俺のこと好きになれ」
ストーカーなのに。
脅されてるのに。
不覚にもほんのちょっとときめいてしまったなんて言ったら、何をされるか分からないので、黙って手を引っ込めた。
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