【本編、番外編完結】血の繋がらない叔父にひたすら片思いしていたいのに、婚約者で幼馴染なアイツが放っておいてくれません

恩田璃星

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晴臣との関係は改善されることのないまま、時間だけが淡々と流れていく。

今日は一人式場選びに来ている。

椎名家に挨拶に行った時、晴臣が式の日を決めて驚いた。
てっきり籍だけ入れるものだと思っていたから。
光城家と蓮見家が姻戚関係を結んだことを印象付けるために、式は絶対するようにと光城から念押しされたらしい。

平日というのに周りを見れば、幸せそうなカップルばかり。

私が一人で来たのは、忙しい…というより、最近では私を避けているのではないかと疑うほどワーカホリック気味の晴臣の負担を少しでも減らすため。
これも数少ない、私が晴臣のためにできること。

と気負って来たものの。
よりによって私の担当者さん、前のお客さんの対応が長引いているらしい。
結局、むせ返る幸せオーラにいたたまれなくなって、ちょっと周囲を散策させてもらうことにした。

今回の式場は、普段礼拝堂として使われている教会に併設された施設で、このあたりでは割と格式高目なところ。

まずはやっぱり…と一旦外に出て、お目当ての教会のドアを押し開けた私は、眼前に広がる光景に硬直してしまった。

厳かな雰囲気のはずの室内には、見覚えのある三脚、ストロボ、レフ板など、撮影で使われる機材が並べられていたのだ。

これって、まさか。
まさか、ね。

でも、万が一のことがあってはと思い、誰も来ないうちに急いで礼拝堂を出ようとすると、外から話し声が聞こえてきた。

この声―
間違いない。
クリスマスイブに私に別れを告げた、遼平くんの声。

やっぱり…!
よりによって、今日ここでeternoのポスター撮りをしているんだ。

どうしよう。
どんどん遼平くんの声が近づいてくる。
さすがにまだ顔を合わせられない。

でも、入り口は一つだけ。

間一髪。
扉が開く直前に、壁際に設置された木製の小部屋に逃げ込んだ。
これで一安心と思いきや。

電話を終えたのか、遼平くんの声は聞こえなくなったものの、代わりに静かな礼拝堂に靴音がコツコツと響く。
しかもその靴音は、声と同様、段々とこちらに近づいて来た。

お願い。
こっちに来ないでー!!

私の願いも虚しく、ドアが開く音がしてしまった。

見つかってしまった!と恐る恐るドアの方を見れば、背後のドアは閉まったまま。

そして、なぜか私の正面の仕切り板の向こうから遼平くんの声がした。

「神様なんて信じてないけど…懺悔します」

私はこの時やっと、自分が逃げ込んだのは告解室だったことに気づいた。
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